ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

授業改善・大学改善の秘訣=顧客(学生)の立場に立ったPDCAを粘り強く回すこと

2014年01月30日 | 高等教育
滞りがちな僕のブログの更新を心待ちにしておられたDさんから、さっそくメールをいただきました。
 
何時ものように、失礼なこと、勝手なことを申し上げます。それは、学生さんのアンケートの結果が、良いこと、褒め言葉ばかりで、欲を言えばが殆どないことです。勿論、QC活動で、発表の講評をする立場と、アンケート等に答える学生の立場とは異なりますが・・・。よく分かりませんが、アンケート等の結果が満点に近いということは良いことでしょうか?」

まったく、おっしゃる通りですね。アンケートでもっとも重視すべきものは批判的意見です。以前のブログでもご紹介しましたが、僕は毎回の授業で学生さんに無記名のアンケートをとっています。学生に責任のある回答を求めるために記名のアンケートにする先生も多いのですが、僕は、記名にすると批判的意見が少なくなる可能性があると考え、あえて無記名にしています。
 
そして、学生からの書き込みは、次の授業ですべて学生に提示します。改善できることとできないことがあるのですが、できることはすぐに次の授業で改善し、できないことは、できない旨を伝えます。このフィードバックをするということが非常に大切ですね。フィードバックをしないと、学生さんもアンケートに回答する意欲を失ってしまいますからね。
 
 前回のブログでお見せをしたアンケート結果は15回の講義の最終日にとったアンケートなので、良い書き込みばかりになっていますが、実は、早い回の講義では、批判的な書き込みもけっこうあります。それに対して一つ一つ回答してPDCAを回していきます。そうすると、最後の方では、良い書き込みばかりになってしまいます。
 
ちなみに以下は2回目、3回目の学生の書き込みと、僕の回答です。
 
<2回目の講義に対する学生の意見> 
•(アンケート)アンケートの結果を学生に公開して驚いた。他の学生の意見も分かるので良いことだと思う。⇒今後も、公開していきますよ。
•(総合的に)前よりよくなった/良かったです/最高でした/お疲れ様でした/よいです/よかったです/良かったです/よかった/最高
•(楽しさ)楽しい授業でした/楽しくできました/今日も楽しくできた。
•(眠たさ)今日は少し眠かった。/集中できた。
•(わかりやすさ)よくわかりました/わかりやすい授業でした。正解すると身についている気がする/わかりやすかった/変わった授業でわかりやすい/わかりやすかったです/わかりやすかったです/分かりやすくよかったと思う/説明が丁寧で分かりやすいです/説明も丁寧でよかったです。
•(難しさ)AEDの問題が地味に難しかった/今日の問題は難しかった。あと、早く終わってうれしい。^□^
•(学んだこと)心電図同期の核医学に通ずるのでしっかり復習したい/知らなかったことを学ぶことができて良かった/AEDの講習を受けたことがあってもここまで詳しく教えてもらったことがないので良いと思った/AEDの使用について改めて理解することができた/心停止にもいろいろあるんだなと思いました/心静止について知れてよかった/AEDを使用する場合としない場合を理解することができた/AEDについてよくわかった/AEDが有効・無効なものの違いがよく分かった/AEDの使い方がわかった。心停止にもいろんなパターンがあることが分かり勉強になった/心電図について理解が深まって、良かった/AEDについて知れてよかった。
•(動画)動画が多くわかりやすかったです/動画とかあってわかりやすかった/心臓の動きを見ながらの説明がわかりやすかったです/DVDが良かった/サイトで動画まで見つけてくれて飽きない授業でした/DVDを入れてくれてわかりやすかった/ビデオがわかりやすく理解できる/ビデオを途中で見れるのでわかりやすい。
•(プリント)覚えるところが穴埋めになっているので覚えやすい/心電図は難しかったですが、プリントが分かりやすかったので理解することができました。
•(プリントの改善点)プリントの字が小さくて見にくい/3ページ右下のスライドの中の心室細動の心電図が見にくかった。⇒コピーの方法を改善しました。
•(図)図とかわかりやすかった。
•(スライド)スライドの数もちょうど良かった/スライドがゆっくりで良かった。
•(クリッカー反対意見)クリッカーを使わなければもっと早く授業が終わると思う。
•(クリッカー賛成意見)クリッカーはいい!/クリッカーを用いることで眠くなりにくい/クリッカーいいですね/クリッカーに慣れてきたので使いやすかったです/クリッカーの使い方に慣れてきました/クリッカーにも慣れました。
•(出席確認方法)出席の表示が小さくて見えない/クリッカーの確認をするとき、スライドの字が小さくて見えない/出席確認に時間がかかるのでカードリーダーにしてほしい/出席確認に時間がかかるのでカードリーダーで出席をとった方がよい。⇒すみませんね。でも、しばらく続けます。拡大鏡をつかってみます。
•(質問)質問数を増やして欲しいです。 ⇒ 了解
•(実体験)AEDを実際につかってみたい⇒そういう機会があるといいのですが・・・
 
<3回目の講義に対する学生の意見>
時々スライドが早い。時々マイクが入っていない⇒スライドが早いことに対しては穴埋めの時にスライドにアニメーションを入れることで、また、マイクについては、ハンドマイクに戻すことを試みます。
クリッカーがベトベトしていた⇒ティッシュで拭いてね。
国試問題を解くとき、問題文を先生に読んで欲しい。⇒了解
問題は前までのように学んだ後にやりたい。⇒了解。ただし、最初に問題をやる意味は、正解を求めているのではなく、問題意識をもってもらうという意図です。たまに使うかもしれません。
ビデオの時だけ眠かった。穴埋め、クリッカーの時は眠くならずにいられる。⇒ビデオの見せ方になんらかの工夫が必要かな?
•クリッカーが楽しい。
•わかりやすかった/わかりやすかった。
•VTRがあるので講義がより理解しやすいです。/ハイムリック法が動画のおかげで分かりやすかったです。/映像を見せてくれるので文字だけではわかりずらいところもよくわかります。/ビデオのおかげでイメージができて良かったと思う。
•先生の熱意が伝わる講義です。ただ、初めのアンケートの部分は「各自で見といて」ぐらいで軽く流して欲しい。今後ともよろしくお願いします。⇒前回はプリントの字があまりに小さくなり、また、重要な点が含まれていたので口頭で説明しました。今回からアンケートについても少し字を大きくし、プリントを追加することで説明をしなくても良いように心がけ、重要な点だけ口頭で説明します。
授業のスライドをPDFでももらうことは可能ですか?カッコの見逃しや書くのが間に合わないところがあるのでできれば配布お願いします。⇒PDFを授業資料にupしたよ。
•実際の経験を話してくれると分かりやすい。
•酒を飲む年頃なので気道異物の処置はしっかり身に付けたい/いろんな圧迫法があるとわかった/溺水者のCPRは知らなかったので勉強になった。
•本日も良かった/素晴らしい/よかったです/よかった!!!\(^o^)//豊田バンザイ/毎回、最高の授業ありがとうございます/いつも楽しいです/今日の授業はとても楽しかったです。/毎回問題がたくさんあって良いです/楽しく学べるので良いと思います。頭に入りやすい。(とても)
•豊田先生は学長なんですか?/学生の意見に向き合ってもらえてうれしいです。学長さん!/生徒の意見をきいてくれてありがとうございます/すごい先生なんですね。

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実は、アンケートには、僕の授業に対する意見だけではなく、大学に対する要望を書く欄も作っています。大学への要望については、学校法人側の判断を仰がないといけないので、僕が勝手に回答するわけにはいかない事項も多く、なかなか難しい面をもっています。でも、必ずすべての要望事項について学生たちに何らかの回答します。学生たちに”できない”という返事をすることは心苦しい面もあるのですが、できることはすぐに対応し、できないことについてはできない旨をフィードバックすることが、学生と大学の信頼関係を構築する上で非常に大切であると考えています。ちなみに以下は3回目の講義の時にとった大学への要望と、それに対する4回目の講義での僕の回答です。
 
<大学への要望>
 
•みんな好き放題書きすぎ(笑)
•学生の要望に対してすぐに対応していただけてありがたいです。⇒できないことの方が多いけれど、できることには対応します。
•レポート多すぎ。⇒どれだけ負担になっているのかな?自習時間のアンケートとります。
•テストの日程が同じ日のものをずらして欲しい。⇒1日に多くの科目の試験をしないで欲しいということ?1日何科目までだったらいい?
•コピー枚数を100枚ごとに知らせて欲しい。⇒可能かどうか検討中
•学割を教務課の所以外でもくれるようにしてほしい。⇒教務課が混むからですか?例えば学生課でももらえるように、という意味?
•パソコンの利用時間を長くしてほしい。⇒検討中
•図書館のパソコンにWord, Excelを入れて欲しい。⇒後期より使えるようになりました。
•パソコンを1台いただきたい⇒いろいろな理由から難しいです。
•図書館の本が少なすぎる。同じ本でも数を増やしてほしい。/図書館に本をもっと増やしてほしい。⇒レポートなどの際、必要な本が数冊しか置いてないので、早く借りないとなくなることがある。/稀な症例の載っている本を少し増やしてほしい。⇒希望する図書名を図書館のリクエストボックスに入れておけば、図書委員会で検討されます。
•A棟の1回男子の入って2番目の大便器身を挟んで痛い。/A棟1階の男子トイレの便座に少しひびが入っていて痛い。2番目のトイレです。⇒了解。10月14日応急対応しました。今後取り換え予定です。
•B棟1階の女子トイレの蛍光灯が半分ずっとつかない。直してほしい。⇒了解。10月9日に交換しました。
•ロッカー数増やしてほしい。⇒今の状況は、一つのロッカーを複数の学生で使っているということかな?
•去年トイレの水が冷たかった。⇒温水供給の実現はむずかしいです。
•トイレにジェットタオル1つでもいいから欲しい。⇒環境活動ではCO2削減のために「ハンカチを持ち歩いて、ペーパータオルやジェットタオルを使わないようにしよう」と呼びかけられていますよ。
•椅子にクッションをつけて欲しい(´з`) ⇒自分で持ってきてね。
•駅までの道の街灯を増やしてほしい。⇒鈴鹿市に何度もお願いしていますが残念ながら実現しません。防犯グッズを必ず携帯してね。
•駐車場を自由に使わせてほちい/学生実習中だと車を移動させる余裕がないため、もう少し、どうにか時間を長くしてほしい。⇒10月11日朝に鈴大の学生の運転する改造車が爆音を立てて学生駐車場に乗り入れたところです。以前にも夜間に起こり周辺住民からクレームが寄せられ、再発すると大学として住民対応が極めて困難になるので、当面の間21時までとします。別件ですが、先週末JARTの入り口前で鈴大生が20時半頃音楽を大音響で鳴らしてダンスの練習をしていたことに対して住民の方がクレームを申し込みに来られました。
•夜12時くらいまで学校を開けてほしい。⇒防犯上の理由から早く閉めています。今回、実態調査をした結果、学食の開放時間を21時から22時に延長したところです。なお、教員が遅くまでいる場合は各教員の指導の下で学生名を届ければ研究室での居残りは可能です。
•白子キャンパスの食堂が地下にあるって本当ですか?⇒yes
•食堂メニューに海鮮丼が欲しいです!!/からあげ丼を毎日出してほしい。(たまにしか出ていないから)⇒業者に伝えておきます。
•夜レムシャイド開けて下さい。⇒研究厚生棟の食堂が夜いっぱいになったらね。
•指定寮のメリットがない。高いだけ。⇒調べてみます。
•学祭をもっとおもしろくしてほしい!!⇒学生さん次第です。いいアイデアがあれば、実行委員会に提案してください。
•△△先生はなぜ、放射線科なのですか?⇒平成3年に大学設置基準(法律)が緩められ、各大学(東大を除く)がそれまであった「教養部」をいっせいに廃止し、教養部の先生方は各専門の学部・学科に振り分けられました(「分属」と言います)。本学はちょうどその時に創立され、一般教養の先生方をいずれかの学科に配属するという形でスタートし、現在もその形が続いています。
•下品な言葉を用いる先生がみえるので・・・・/◇◇先生の声が小さい。⇒学期末に行っている学生による授業アンケートに記入してください。今までは、学生の書き入れた自由記載は担当の先生しか見ることができず、果たしてその先生が改善しようとしているのかどうかはっきりしませんでしたが、今後、各先生に学生の意見に対してどう改善するかシラバスに明記していただく制度にするつもりです。
•でかいスクリーンでゲームやりたい。⇒クリッカーをもう少し工夫して、ゲーム的に授業が進められたら、おもしろいかもね。
 
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Dさんからは「アンケート等の結果が満点に近いということは良いことでしょうか?」というご意見をいただいたのですが、前回のブログでご紹介した”満点に近い”アンケート等の結果というのは、一朝一夕に得られたものではありません。毎回の講義において、僕の授業および大学に対する意見や要望を無記名のアンケートという形でとり、どのような意見があったのか批判的意見を含めてすべて学生に公開し、改善できる事柄はすぐに改善し、希望に添えない事柄はその旨を回答するというフィードバックを続けてきた賜物であると考えています。一言でいえば顧客(学生)の立場に立ったPDCAを粘り強く回すこと、ですね。このPDCAの粘り強い継続こそが、授業の改善、大学の改善の秘訣であると考えています。
 
 
 
 
 
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久しぶりのブログ

2014年01月28日 | 高等教育

 さて、例によって気が付けばずいぶんと日が空いてしまいました。2014年の新年を迎えて一度もブログを書いていませんでしたね。この間、なぜか猛烈に忙しく、日々、授業の準備も含めて、常に締切に追われている感じで、ブログまで手が回りませんでした。今日は、後期の授業の15回目も終わり、定期テストの問題の作成も出来上がったこと、そして、鈴鹿医療科学大学で立ち上げたIR推進室の最初の分析に目途がついたこと、また、国立大学協会から頼まれていた運営費交付金と論文数の関係の分析にも目途がついたので、やっとブログに手が回ったという次第です。

とりあえず、最後の授業で学生たちにとったアンケートの自由記載の結果をあげておきますね。

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2013/1/27 放科3年救急医学概論授業アンケート・・・自由記載まとめ(豊田)

<全体的に>

・  ありがとうございました。

・ 授業ありがとうございました!

・  半年間ありがとうございました。

・  半年間授業ありがとうございました。

・  15回お疲れさまでした。

・  今までお疲れさまでした。

・  良かった。

・  とても良かった。

・  先生最高です!!

・  素晴らしい授業をありがとうございました。

・  ありがとうございました!!!とても良い講義でした。

・  先生の授業とても良かったです。もっとたくさん持ってもらいたかったなって思います。

・  とても分かり易く、質問したことは詳しく説明して頂いて良かったです。3年後期だけでなく、もっと多くの授業を豊田先生にしてもらいたかったです。ありがとうございました。お疲れ様でした。

・  豊田先生大好きです。ありがとうございました。

・  豊田先生ありがとうございました。僕、先生大好きです。

<授業内容>

・  放射線の専門知識だけでなく、基礎医学的なものもしっかり勉強しなければならないと思いました。お疲れ様でした。ありがとうございました。

・  復習ができなかった。時間の使い方をうまくしたい。

<丁寧さ>

・  丁寧に教えてもらって良かったです。

・  とても丁寧でわかりやすい授業でした。試験の日程を変更してくださったので、とても助かりました。半年間ありがとうございました。

<わかりやすさ>

・  わかりやすかった。

・  とてもわかりやすかったです。

・  とてもわかりやすかったです。講義お疲れさまでした。

<楽しさ>

・  授業楽しかったです。ありがとうございました。

・  楽しく授業を受けれてよかった。1回も寝ることはなかった。

・  とても楽しかったです。ありがとうございました。

・  毎回楽しい授業でした。いろいろな工夫があってありがたかった。

<クリッカー>

・  授業で問題を解くのがよかった。ありががとうございました。

・  問題も多くたいくつしない授業でした。楽しかったです。

・  クリッカーでの授業は新鮮で楽しかった。

<アンケート>

・  クリッカーや動画を使ったわかりやすい講義でした。アンケートを書いてもレスポンスがあるので有意義でした。15回ありがとうございました。

・  しっかり勉強したいと思います。毎回アンケートをとるのがいいと思いました。

・  学生の意見を積極的に聞いてもらって良かったです。ありがとうございました。

・  要望を聞いていただいてありがとうございました。先生の「やらなければ可能性は0%」という言葉が心に残っています。これを忘れずに何事にも挑戦したいと思います。

<熱意>

・  先生の熱意がとても伝わってくる、とてもいい授業で毎週楽しみにしていました。飲み会にも参加できて楽しかったです。ありがとうございました。

<テストに向けて>

・  半年間お疲れさまでした。期末がんばります。

・  ありがとうございました。テストがんばります。

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 授業の準備は、一般の方々や、あるいは学生さんが想像しているよりも、教員は大きな労力をかけているのではないでしょうか。もちろん、教員の講義に対する姿勢にもよりますけどね。聞いている学生さんの立場に立って少しでも良い講義にしようすればするほど、しんどいものです。講義の改善をしようとすれば去年のスライドをそのまま使うわけにはいきません。毎週毎週新たな講演会の準備の締切に追われてしている感じですね。僕は講義の直前までスライド原稿に手を入れます。土日は講義の準備で完全につぶれてしまった感じがします。

 でも、学生さんからのポジティブな反応が、しんどかったことをすべて忘れさせてくれますね。やはり、労力をかければ、その分、学生に伝わっている気がします。

 次回のブログは、研究力シンポの報告(2)から再開しないとね。そして、引き続いて、国立大学協会から頼まれた運営費交付金と論文数の関係の分析の結果も報告したいと思います。実は、2月6日までに、国大協に分析結果のスライド原稿を送らないといけないんです。まだ、分析作業が終了していないので、締切に間に合うように、しばらく”かんかん”になって、根をつめてエクセル上の膨大なデータに向かわないといけません。

 

 

 

 

 

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