ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

鈴木寛副大臣のお話によると、来年度の大学関連の予算は非常に厳しくなりそう

2010年06月30日 | 日記
昨日(6月29日)「国立大学法人学長・大学共同利用機関法人機構長会議」が如水会館であり、私も陪席しました。

冒頭、鈴木寛副大臣のご挨拶がありました。そのメモの一部を以下にご紹介します。(正確でない部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください。)

・日本は知識基社会に本格的に踏み込みつつあり、文明史的転換の時期に当たっている。このことを踏まえて新政権では新たな国作り・政策作りに取り組んでいる。その際、新たなソーシャルモデルを示していくことが必要で、新しい社会の改革は大学から生まれること、経済的な意義にとどまらず人類・国民の幸せに直結する多様な意義と任務を持っているのが大学であることを明確に示す必要がある。

・新成長戦略においても、強い経済を引っ張る強い人材の育成が中心に位置づけられており、大学の役割は極めて大きいが、23、24年度の予算は極めて厳しい。

・新しい政権は良くも悪くも世論に敏感な政権であるが、大学、国立大学は一般国民から縁遠いものとなっている。進学率も50%に達していないので、大学にいっていない国民の方が多い。地方の中小企業に行っても、国立大学の出身者が必ずいるという状況ではない。大学が国民からなじみが薄く、そこに税金を投入する意義が十分に理解されないという悪循環に陥っている。

・コンクリートから人へという政策転換の中で、教育予算の増額には成功したが、大学への予算増額への支持は沸き起こらない。一方で、大学病院の診療報酬の増額は実現したが、これは大学病院が地域住民にとって身近であり、それによって増額へのコンセンサスが得られたものである。

・すべての若者に学ぶチャンスを保証することが民主党政権の大命題である。しかし、高等教育への進学状況は都会と地方、所得などにより大きな格差があるのが現状。

・大学進学率はすでにOECDの平均を下回り、東欧、南欧、タイなどにも抜かれており、大きな危機感をもっているが、有識者や経済界も含め高等教育へのチャンスを与えることの意義について懸念が呈せられている(大学に行っても役に立たない、遊んでいるだけ)現状は、深刻であるということを共有したい。

・大学はもっと多くのステークホルダーとのコミュニケーション、コラボレーションを深めてもらいたい。

・国立大学法人については、いろいろ意見もあると思うが、運用レベルの改善はするが、法律レベルを今いじる考えはない。

・23年度概算要求は極めて厳しい。管総理は未来に向けての投資のために必要な負担について議論が必要というところまでは踏み込んだが、23年度は税収が40兆円に満たない(22年度は37兆円)、国債発行は増やさないという前提の中で財政フレームは極めて厳しい。

・政策形成のベースは世論。投資を増やした場合どのようなアウトカムがあるか、経済的なものだけではなくて文化的なものも含めて説明していく必要がある。

・国立大学は巨大なシンクタンクであり、こうしたことに向けてしかり知恵を絞ってもらいたい。




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大学病院と財務経営センターのグランドデザインを国民にわかりやすく描くことが喫緊の課題

2010年06月28日 | 日記
6月28日(月)は財務・経営センターの運営評議会が開かれました。東大総長の濱田純一さんを初めとして、代表的な国立大の学長の皆さん、国立大学附属病院長会議常置委員会委員長で千葉大病院長の河野陽一さん、(独)国立高等専門学校機構長の林勇二郎さん、(独)国立大学評価学位授与機構長の平野眞一さん、国立情報学研究所長の坂内正夫さん、というそうそうたるメンバーにお集まりいただきました。

会長には互選で濱田純一さんが選ばれ、主な議事は平成21年度の財務経営センターの事業報告と会計報告で、淡々と進みました。そして今回の事業仕分け結果の報告をさせていただいたのですが、坂内さんからすばらしいご意見をいただきました。

坂内さんは「大学が個別にものごとに当たるよりも、財務経営センターのような大学間の連携を活かす組織の存在が、より効率的で、よりリスクの低い経営を可能にするという、本質的なことを訴えて行くべきである。」というご主旨の発言をされました。

まったく同感ですね。私がこの間、仕分けの現場で発言させていただいたことや、ブログや雑誌で主張してきたことも、まさにこの点ですね。

私は、委員のみなさんに、まず、附属病院長会議と国立大学協会が政務経営センターの機能廃止にただちに反対声明を出していただいたこと、そして、パブコメについても、地味な間接部門であるが故にこの組織の存在すらご存じない方々が多い中で、まずまずの件数が寄せられたことに感謝しました。そして、坂内さんのおっしゃるとおり、このセンターの費用対効果および効果的なセーフティーネット機能という、本質的な重要性を訴えると同時に、できることは今年度から着手をして実績をあげるつもりであることをお話ししました。

この会の後、委員である旭川医科大学長の吉田晃敏さんは、著名な医学部長経験者が、“大学病院は民間からお金を借りればよく財務経営センターは不必要”というような発言をしておられることに、たいへん憤っておられました。

財務・経営センターの重要な意味をおわかりいただくのは、大学関係者においてもなかなか難しいということだと思います。大学病院がどうあるべきか、ということすらはっきりしておらず、いろんな人が自分勝手な主張を叫んでいるというのが現状ではないでしょうか?大学病院がどうあるべきかがはっきりしないのに、その経営を支援する財務経営センターがどうあるべきかもはっきりしないのは当然だと思います。

そんなことで、私は、大学病院のグランドデザインを描くと同時に、それに連動して財務経営センターのグランドデザインを国民にわかりやすく描くことが喫緊の課題であると感じました。

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“ど根性松”を見習って、与えられた限界の中でやれることをやってみよう

2010年06月23日 | 日記
先週の高松市で開催された附属病院長会議で、高松城公園の庭園の中にあった“ど根性松”をご紹介しましたね。岩の上に小さな松が生えているのですが、樹齢は15年と書いてあったと思います。この松は、自分に与えられた厳しい環境の中で、他の松のように大きくはなれないけれども、それなりに精一杯生き続けてきたんですね。

財務・経営センターについても、事業仕分けで、全事業の廃止という最も厳しい結果をいただき “ど根性松”と同じ非常にきびしい環境におかれています。

そんな、将来の組織の存続の見通しがつかず、また、仮に存続したとしても大幅に予算を削減されると予想されるきびしい環境の中で、私も“ど根性松”を見習って、大きな制約の中でも、できることはすぐにやってみようと思い立ちました。

特に大学病院の経営について、「融資・交付」「調査・研究」「現場と国への提言」という3つの機能を三位一体として有機的に機能させることが、この財務・経営センターのあるべき姿であるので、それを少しでも具体化したいと思っています。


そのための第一歩として、外部のメンバーにも入っていただいて、大学病院経営分析チーム(仮称)を立ち上げます。さっそく、このチーム結成の準備のためのミーティングを明日開くことにいたしました。

”ど根性松”に負けないように!!


そんなことで、このブログの読者の皆さんの中にも、私からご協力のお願いが行く人がいるかもしれませんよ。その節はよろしくお願いいたします。



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国立大学附属病院長会議にて

2010年06月18日 | 日記
6月17日、18日、高松で開催された国立大学附属病院長会議に、財務・経営センターもオブザーバーとして出席。大学病院のグランドデザインを今後どのように検討していくかなど、多くの重要なテーマで活発な議論がなされました。

会議の冒頭で財務・経営センターの理事長として挨拶をさせていただき、事業仕分けでの結果を改めてご報告し、そして、附属病院長会議には、仕分けの当日に緊急声明を出していただいたこと、6月15日に締め切られたパブコメ募集にも積極的に応じていただいたことについて、御礼を申し上げました。

陪席をされておられた文部科学省の方の報告によると、パブコメの結果については、文科省関係の独法全体については3632件、うち財務・経営センターに関する意見が928件、うち、事業の廃止に反対の意見が864件であったということでした。文科省の独法の中では、財務・経営センターがもっとも多かったとのことでした。

多くの皆さんからは、財務・経営センターの存在すら知らない人が多い中で、予想していたよりもたくさんパブコメが集まったね、とおっしゃっていただきました。

17日の夕方に、高松城跡(玉藻公園)を散策。




海に面した水城で、堀の水が海とつながっており、鯛がたくさん泳いでいましたよ。




「鯛願城就」と書かれた旗のところで記念撮影。





庭園内に「ど根性松」と名付けられた岩の上に生えた小さな松がありました。





何か私の今の境遇にぴったりのところに来てしまいましたね。 
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国立大学法人化の検証についての副大臣によるヒアリング終わる

2010年06月16日 | 日記
昨日の6月15日の13時から、国立大学法人化後の現状と課題に関する関係団体からの意見聴取が文科省内で行われました。

国立大学協会から、東大総長の濱田純一さん、筑波大学長の山田信博さん、東京芸大学長の宮田亮平さん、京大総長の松本紘さん、山口大学長の丸本卓哉さん、(独)大学評価学位授与機構長の平野眞一さん、そして(財)国立大学財務・経営センターから私が参加しました。

国会対応で、川端大臣、鈴木副大臣、後藤政務官が出席されなかったのは少し残念でしたが、中川副大臣と高井政務官が出席され、熱心に私どもの意見を聞いていただきました。

最初に国大協から20分、評価機構から5分、財経センターから5分の説明をさせていただきました。

私の出番では例のパネルで説明。

「世界の中で日本だけが医学部の論文数が減少したこと。さらに国立大学病院は交付金の大幅削減と、過大な債務により、資金繰りが悪化し、教育・研究・高度医療・地域医療支援という、大切な使命機能が低下しつつあること。

文科省が作成した“中間まとめ”の12頁には附属病院は6年間で1225億円収益が増加したという記載があるが、これは誤解を招きやすい記載であること。つまり、附属病院はこのデフレの世の中で毎年4%収益を増加させるという驚異的な頑張りを見せたが、患者数や手術件数を増やそうと思えば、病院のような労働集約型の企業体では、変動費だけではなく固定費もふやさなければならないので利ザヤが小さく、交付金の削減によって資金繰りが悪化し、現場の疲弊が残ったこと。

国立大学全体としても交付金の削減、そして、施設費が大きく不足していることもあって、地域と国のイノベーション力が低下しつつあること。

地域と国のイノベーションを促進し、地域医療の確保を行うことによって、日本国の成長を図るというのが法人化の本来の目的であると考えるが、法人化の目的に反して逆の結果が起こってしまったこと。

国立大学財務・経営センターは、「病院への長期・低利の融資、建物改修・修繕費交付」「経営に関する調査・研究」「現場と国への経営改善提言」を有機的・一体的に機能させることにより、民でも国でも困難な大学連携を活かして三位一体の機動的・効率的経営支援を行っている。そして、国立大学と附属病院の健全化経営と機能の向上を図り、法人化の目的である地域と国のイノベーション促進と地域医療の確保に貢献することがその目的。

国立大学の危機打開のためにはセンターの機能をむしろ一層高める必要がある。

さらに追加資料を配布させていただき、法人化後の国立大学と附属病院には財務・経営の難問が山積していること。したがってまだ完全に自立できる状況になく、調査・研究と機動的経営支援が必要不可欠であること。」

これだけのことを、5分でスラスラと説明しましたよ。今まで、枝野大臣をはじめとして、何回も説明していますからね。

次は質疑応答の時間。

まず、中川大臣から3つの問題提起がなされました。

1) 大学が自ら資金を集める知恵はないのか。
2) 予算を投入した時のアウトカム(数値)をどう評価するか。
3) 運営費交付金の配分は大学の機能別分化を踏まえてメリハリをつけるべきではないか。

なかなか厳しい面をもつ問題意識ですが、これに対して、各学長さんたちがいろいろと意見を述べられました。私も、けっこう言わせていただきましたよ。東大の濱田さんの次にたくさん発言をしたのではないかと思います。

そのうちの一つをご紹介しましょう。

「国も、中川副大臣がおっしゃったように、法人化の目的と数値目標を決め、それを達成できたかどうかで、法人化の成否を評価するべき。

たとえば、国は日本の学術論文数を増やそうとしているのか、維持しようとしているのか、低下させようとしているのか、低下させる場合はどの程度低下させようとしているのか?これは政策決定者が決めるべきである。

烈しい国際競争の中で、英国では大学への予算を増やして論文数を増やした。投資額と論文数は、概ね正の相関をすると言えそうである。我が国では国立大学への交付金を毎年約100億円減らし続けているが、これではその金額分、論文数が減るのも当然。

我が国は財政難によって引き続き100億円削減せざるを得ないということであるならば、それを50億円分の機能低下に押し戻すことが財務・経営センターの役割である。」


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国立大学法人化についての政務三役による意見聴取で、5分間のプレゼンを頑張ります。

2010年06月10日 | 日記
管直人総理大臣による新しい内閣が発足しましたが、文部科学省の政務三役については、留任となりました。今までの事情をご存じの方々になっていただいたので、ほっとしています。

今年の1月から文科省で「国立大学法人かの在り方に係る検証」が行われており、国民からの意見募集や関係者からの意見聴取を経て、「中間まとめ(案)」がまとめられ、さらに、今後国民からの意見募集、文部科学省『「熟議」カケアイ』サイトにおける「熟議」の実施、関係団体との意見交換等を経て、本年度夏に「中間まとめ」として公表されるとのことです。

近々、川端大臣、鈴木副大臣、中川副大臣、後藤政務官、高井政務官のご出席のもとで、「国立大学法人化後の現状と課題に関する関係団体からの意見聴取」が行われることになり、6月15日には、(社)国立大学協会、(独)国立大学財務・経営センター、(独)大学評価・学位授与機構の3つの団体が出席します。そういうことで、私は財務・経営センターの代表として出席をさせていただくことになりました。

6月15日というと事業仕分けのパブコメの締め切り日でしたね。

私には5分間の説明の機会が与えられるということです。たった5分なので、本当に重要なことだけに絞る必要がありますね。

そんなことで、やっぱり、例のパネルに再登場していただくことにしようと思います。基本的には、枝野大臣と蓮舫議員の財経センター視察の時にお見せをしたパネルと同じなのですが、少し修正をしました。







国立大学法人化の本来の目的は

地域と国のイノベーションの促進+地域医療の確保→日本国の成長

であるはずなのに、実際には、医学論文数が減少して学術の国際競争力が低下し、多額の負債を抱えた大学病院の資金繰りが悪化し、地域医療が崩壊し、運営費交付金の継続的削減や大幅に不足する施設費もあいまって、地域と国のイノベーション力が低下しつつあるという、まったく逆の現象が起こってしまいましたね。

昨年の6月に、私はIDE「現代の高等教育」という雑誌に、法人化は良い面もあったので元に戻すべきではないが、予算の削減等の影響もあって、目的が達成されるどころか逆のことが起こってしまったことから、この意味では“失政”と言わざるを得ない、というような論説を書きました。

今後も、国の財政が厳しい状況では、国立大学は引き続き厳しい状況が続き、その機能が低下し続ける可能性があると思います。

こんな、国立大学と附属病院にとっての、そして、延いては地域や国民にとっての危機を打開するためには、財務・経営センターの「民でも国でも困難な大学連携を活かした三位一体の機動的・効率的支援」の機能をさらに高める必要がある!!というのが、私の言いたいことですね。

これなら、5分間でしゃべれるのではないかと思っています。

それから、今まで何度もお願いしていますが、財務・経営センターの事業仕分けのパブコメの締め切りが15日に迫っているので、もし、読者の皆さんでまだ書いていない人がおられましたら、どうぞよろしくお願いをいたします。この際は、仕分け人のご意見と私の今までブログで書かせていただいた意見をよく読んでいただいて、ご自身が正しいと思う正直な意見を書いて下さいね。


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国立大学協会も財務経営センターの事業仕分けに対して声明文

2010年06月07日 | 日記
5日の土曜日には、財務・経営センター主催の、第51回高等教育財政・財務研究会で「今後の国立大学財務・経営センターの支援事業のあり方」というテーマで講演。約120人の国立大学関係者や民間の方々が参加。

事業仕分け前に予定されていたもので、当初はバラ色のお話をする予定であったものが、事業仕分けで一転して、すべての事業が廃止という結論を踏まえての「今後の支援事業のあり方」についてしゃべらされる羽目になるとは!!

パワーポイント80枚準備してお話をしましたが、この日の最後の結論は

「将来の見通しが不透明な現状においても、改革できるところはただちに改革し、特に附属病院に対して「融資・交付」「分析・研究」「相談・提言」を有機的に機能させた三位一体の、しかも強固な現場のネットワークを活かした機動的支援体制を可及的に構築して、実績を上げる。」

それにしても、パブコメノ締め切りがどんどん迫ってきました。皆さん、まだ書いていただいていない人がおられましたら、ぜひともご自分のお考えを書いていただきますようお願いします。

パブコメのサイト


https://www.net-research.jp/airs/exec/rsAction.do?rid=407716&k=346b632983

必ず16番、17番、18番の3つにパブコメを書いてください。5月27日のブログで書いた私の意見を参考にしてください。

もちろん19番、24番、27番の事業についても書いていただいて結構ですよ。


国立大学協会が6月3日付けの声明文をホームページ上にアップしました。これも大いに参考にしてください。

長くなりますが、引用しておきます。




平成2 2 年6 月3 日
国立大学協会
国立大学財務・経営センター事業の廃止は、国立大学法人の
運営に甚大な影響。格別のご配慮を。

先般実施された行政刷新会議の事業仕分けにおいて、国立大学財務・経営センターの事業がいずれも「廃止」との判定を受けたことについて、国立大学協会としては、極めて深刻に受け止めております。そこで、当協会経営支援委員会において、当該事業が廃止になった場合に国立大学法人として懸念される事項について、下記のとおり取りまとめました。

つきましては、下記に示します国立大学の教育・研究・診療を支える国立大学財務・経営センターの事業(機能)の継続について、格別のご配慮をお願い申し上げます。



Ⅰ 施設費貸付事業

国立大学附属病院の使命である教育・研究・高度医療・地域医療への貢献、なかんずく日本全体の地域医療を中心として担ってきたことは紛れもない事実であり、今後、医学研究の国際競争力、地域医療の再生を図るためには、「調査研究」と附属病院の「経営の分析・助言」に基づいた、低利・長期の附属病院施設の整備に対する貸付が必要不可欠である。

(1)我が国の医療の崩壊懸念

貸付事業を廃止し、各法人が民間金融機関等から個別に借入を行う制度にすると、法人の規模・資産等により調達力に差が生じ、国立大学法人によっては、低利・長期の施設費の借入が困難になり、附属病院に期待されている使命を果たすことができなくなり、我が国の医療の崩壊に繋がる恐れがある。

(2)新たな業務のコスト増
各法人が財政融資資金から借り入れる場合であっても、個々の法人毎に借入のための業務や債券発行などの新たな業務の発生によるコスト増が生じることなどを考えると、財務・経営センターが一括して借り入れ、各法人に貸付ける現行の仕組みの方が、全体的に見て効率的であると思われる。

(3)債務負担の軽減

厚労省のNC(ナショナル・センター)は独法化に際して、借入金債務の一部を承継していない。一方、国立大学は法人化に際して、債務の全部(約1兆円)を財務・経営センターが承継し、国立大学法人が実質的に負担している。国立大学附属病院は、債務の償還によって疲弊していることが問題であり、診療負担の増加、論文数の減少、不十分な設備投資などの悪影響が出ていることから、国において債務負担の軽減策を講じていただきたい。

Ⅱ 施設費交付事業

国立大学法人の施設整備費の不足により、国立大学施設の老朽・狭隘化が進み、教育研究の質にも影響を及ぼしつつある現状で、施設の改修・修繕に必要な安定した財源を確保するため、交付事業は必要不可欠である。大学の持つ資産を大学の充実に使えないようにしたのでは、欧米のみならず、アジアの大学に比しても見劣りのする国立大学の施設がますます劣化することになる。

(1)国立大学法人の施設整備費の一翼

国立大学法人の施設整備費は、年間2,200億円必要との試算(文部科学省)があるが、平成22 年度予算においては、文科省の施設整備費補助金463億円、財務・経営センターの交付金56億円、附属病院の長期借入金388億円の合計907億円にとどまっており、所要額の半分以下しか措置されていない。このような現状にある中で、国の厳しい財政状況の下、年々補助金が減額されており、さらに安定的な財源であったセンターの交付金までもが廃止されることは、国立大学法人にとって到底耐えられないことである。

(2)法人化の制度設計の一部

施設費交付事業は、国立大学の法人化の検討の際に、各法人が土地を処分した収入の半分をセンターに納付させ、それをプールして全法人の施設改修費等として有効利用し、併せて法人間の資産の再配分機能を果たす仕組みとして、法人化の制度設計の一つの要素として取り込まれたものであり、法人化後の国立大学に対する財政支援の重要な制度の一つとしてビルトインされたものであるから、国の厳しい財政状況の下、一般財源による予算措置が期待できない現状においては、交付事業を廃止することは容認できるものではない。

(3)土地処分のインセンティブが失われる

国立大学法人では、その土地処分収入の1/2を当該法人で使用し、残りの1/2をセンターの交付事業の財源として全国の国立大学法人の施設改修等に供しているが、この制度がなくなり、すべての収入が一般会計の収入となってしまえば、土地処分のインセンティブが失われる。

(4)代替地を獲得することが困難になり、教育研究機能が損なわれる国立大学法人は、公共用の目的に供するため、地方公共団体等に協力して法人の所有する土地を処分せざるを得ない場合があるが、その場合、法人は、教育研究機能を維持するため、代替地を確保する必要がある。しかるに、処分収入の1/2を法人に留保する制度がなくなり、国の厳しい財政状況の下、代替地を購入するための予算措置も十全には行われないことになると、国立大学本来の教育研究機能を果たすことができなくなる。

その他

○ 調査研究や経営相談事業は各法人の経営戦略の貴重な情報源

調査研究事業によるすべての国立大学法人の財務・経営に関するデータの蓄積や分析、附属病院の財務・経営分析、先進的な改善事例の集積を踏まえた経営相談事業は、各法人の経営戦略の構築や経営改善の実施に当たり、他法人等のさまざまな情報を獲得する貴重な情報源となっている。これらの調査研究等を各法人で行うことや、コンサルタントの活用も各法人でばらばらに行うことは、国立大学法人全体として見た場合非効率的であると思われる。

上記のような機能を果たしてきた国立大学財務・経営センターの事業の見直しに当たっては、これら国立大学法人全体に対する支援機能が一層向上するように配慮して頂きたく、国立大学のイノベーション力、国際競争力、高度医療・地域医療の最後の砦機能の低下につながることのないよう、重ねてご配慮をお願い致します。
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事業仕分けについてのパブコメ募集に一人でも多くの皆さんのご意見を!!(その4)

2010年06月02日 | 日記

今日は、ちょっと私にとってはショッキングなことがありました。国立大学協会の病院経営小委員会が開催され、それに陪席をした時のことです。

財務・経営センターの事業仕分けのことも議題にあげられており、委員の皆さんすべて当センターのことをとても心配しておられたのですが、この月曜日までのパブコメに寄せられた件数がわずかに49件との報告に愕然。

私も、ブログやツイッターで一生懸命パブコメについてお願いしてきたのですが、私の力不足を認めざるを得ません。

読者の皆さんにはぜひとも、パブコメにご自身の意見を書いてください。また、お友達に私のブログを読んでいただくように、お伝えください。

パブコメのサイト



https://www.net-research.jp/airs/exec/rsAction.do?rid=407716&k=346b632983

16番、17番、18番の3つにパブコメを書いてください。5月27日のブログで書いた私の意見を参考にしてください。

さて、私の考える財務・経営センターの存在意義を絵に描いてみました。「融資・交付」、「分析・研究」、「相談・提言」という3つの機能を三位一体に有機的・一体的に機能させ、しかも、国立大学の信頼にもとづいた強固なネットワークを活用して、効率的・効果的な経営支援を行うこと。これを、民間でもなく国でもない中立的で融通性のある第三者組織で行うことがベストと考えます。



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事業仕分けについてのパブコメ募集に一人でも多くの皆さんのご意見を!! (その3)

2010年06月01日 | 日記
パブコメ募集についてのブログの3回目ですね。パブコメに、ぜひとも皆さんのご意見を送ってください。そして、あなたのお友達にも、一人でも多くパブコメにご意見を出していただくよう、呼びかけてください。


https://www.net-research.jp/airs/exec/rsAction.do?rid=407716&k=346b632983


財務・経営センターに関係する項目の中で、皆さんにどうしてもご意見をいただきたいのは、16番、17番、18番の3つでしたね。5月27日に私の意見が簡単にまとめてあります。

さて、説明が足りなかったことの補足のつづきです。

<17番>
(3) 施設費交付事業、旧特定学校財産の管理処分、財産管理・処分・有効活用に関する協力・助言

この事業についての仕分け結論は「事業の廃止、不要資産は国庫返納」ということでした。

仕分け人のご意見としては、センターではなく国が財産処分をして、国立大学等の土地の売却費は国へ返納し、必要な予算であれば一般会計で要求すればよいではないか、というご意見でした。

私の意見は「当該事業は継続。施設費が大幅に不足している現状では、施設費交付事業は貴重。国立大学や財務・経営センターの資産は不要資産ではなく、国と地域の成長の源泉である国立大学、および地域医療の最後の砦である附属病院の健全な経営を図るために当該事業は必要不可欠」でしたね。

以前のブログでも、施設費交付事業の大切さはお話しました。

国立大学の建物を今後老朽化しないように維持するためには、毎年約2200億円の資金が必要なのですが、一般会計からは約900億円程度しか措置されておらず、全然足りません。それを少しでも補うために、毎年約50億円程度、当センターが各国立大学に修繕費を配分しているんですね。特に地方の小さな大学にとっては、この修繕費がたいへん貴重な資金となっています。

この財源をどうしているかというと、平成16年の法人化の時に、当センターが国から承継した国立大学の土地(財産)を順次売却して得た金と、そして、国立大学法人のキャンパス移転の時に、もし土地の売却益が生じた時には、その半分はその国立大学法人が、残りの半分はセンターに納付してもらって、それを各国立大学に配分しています。

これには、各国立大学法人の間で、最初から大きな資産の格差がある状況を、少しでも均等化するという大切な役目があります。どんな田舎にある小さな国立大学でも、その地域住民にとっての重要性は、大きな大学と全く同じだと思います。

現在センターが売却予定で所有している土地は、時価で約400億円近くありますが、これは売却されれば各国立大学に修繕費として交付され、まったく足りない施設費を補っているわけで、 “不要資産”では断じてありません。

これを国に返して、必要な施設費は一般会計に要求して獲得すればいいではないか、という仕分け人のご意見ですが、今まで、一般会計でいくら要求しても、必要な施設費の半分以下しか措置されていないわけですから、現実的にはありえないことだと思います。

それから、もう一つ、国立大学病院は、平成16年の法人化の時に、約1兆円の借金を受け継ぎ(つまり夕張状態)、しかも、病院運営費交付金を大幅に削減され、資金繰りに行き詰まるようになりました。大学病院の経営は、少しの環境の変化により、数億円単位ですぐに浮沈します。資金繰りがショートすれば、教育研究費から補填せざるをえません。

私は、安定的に確保するべき教育・研究費が、不安定な病院経営の浮沈に左右されて不安定化することは、本来あってはならないことだと考えます。

このような、大学病院の経営危機が突然おこった時に、この財務・経営センターが、その融資事業や交付事業を活かしてセーフティネット機能を提供できれば、絶対につぶしてはならない地域医療の最期の砦である大学病院、そして、教育・研究費の安定的な確保のために、たいへん重要な危機管理の役割を果たすことができると考えます。危機管理は迅速に機動的に対応する必要がありますが、この点で小回りの利く財務・経営センターがセーフティネット機能を持つことは最善と考えます。

財産管理・処分・有効活用に関する協力・助言も、個々の大学法人にとっては、土地の売買はそれほど頻繁に生じるものではなく、経験のある職員が少ないので、やはり当センターの存在がたいへん役にたっています。これもスケールメリットですね。また、財産処分に関係する業務を国へもっていっても、その経費や労力は変わらないわけですから、経費の節減にはなりません。
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