ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

20日の視察で尾立議員がご指摘になられた“稼働率”を調べて見ました。

2010年04月23日 | 日記
本日23日から、いよいよ独立行政法人の事業仕分けが始まりますね。財務・経営センターの仕分けは28日の予定です。

20日の日の枝野大臣、蓮舫議員、尾立議員、菊田議員の財務・経営センター視察の際に、尾立議員が貸し会議室の稼働率を日別で計算していることについて、それが不適切であることをご指摘になられました。日別計算とは1日に1回でもその会議室が使用されたら1と数え、それを使用可能日の数で割る計算の仕方です。他の計算方法としては“コマ別”というのがあって、これは例えば一日を午前、午後、夜間などに分けて稼働率を計算する方法で、通常日別計算よりも低い値となります。

その時の模様を21日の毎日新聞朝刊では

『職員とのやり取りでは、昨年度は「6~7割」とされた同センターの貸し会議室の稼働率が1日1回でも利用されればその日は「100%稼働」としていたと判明。尾立氏は「粗っぽい説明だ。民間ではありえない。」と苦言を呈した』

と伝えています。

財務・経営センターは、学術総合センタービルの1階と2階にある講堂と会議室の貸し館業務を管理しており、それも今回の事業仕分けの対象業務となっているんです。

尾立議員から稼働率の日別計算の不適切さを指摘されて、視察が終わった後で、私はその資料を作成した担当の女性職員に “コマ別でもちゃんと計算していたのに、どうしてわざわざ日別計算で計算した稼働率を資料として提出したの?”と聞いてみました。そうしたら、彼女は何となく答えにくそうにしていたのですが、“他の貸し会議室をしているところも日別計算で出しているようですので・・・”という答えが返ってきました。

私は、学術総合センターと比較するのに適切な他の貸し会議室業務をしている団体の稼働率がどのように出されているか、もっときっちりと調べて見なさいという指示をしました。しばらくすると彼女が、東京近辺にある貸し会議室業務をしている団体の稼働率をホームページ上で調べて、そのリストを持ってきてくれました。それが次の表です。








そうすると、彼女の言うとおり、東京国際フォーラムや横浜パシフィコといった東京近辺の貸し会議室業務をしている最も代表的な団体の稼働率は、ホームページに日別で計算されて公表されており、しかもこの二つは株式会社が管理している「民間」でした。

私は、その職員に対して自分の無知を恥じました。

財務・経営センターが管理する講堂と全会議室の平均の日別稼働率は、平成21年度は67.4%であり、年々稼働率が上昇していて、今年度はほぼ間違いなく70%を越える見込みです。

関東甲信越静地区の公立文化施設の稼働率は、やはり日別稼働率で公表されており、平成18年度の平均が57.8%とのことでした。ただ、この公共文化施設には、東京都内よりも田舎の地域も含まれるということを考慮しないといけませんし、一方、文化施設であるので、会議以外にも興業的な催しも含まれている可能性に注意する必要があります。ちなみに昨年私が理事長をしていた三重県文化振興事業団が指定管理者となっている三重県総合文化センターの貸し館業務の稼働率は日別で80%程度で、全国でもトップレベルであると誇りを持っていました。担当者に確認したところ日別稼働率70%という数値ならがんばっている方だと思うとのことでした。 

彼女の調べてくれた数値からは、東京国際フォーラムには及ばないが、およそパシフィコ横浜と同程度の成績をあげていると思われ、非常に良いという評価はできないないかもしれませんが、けっこうがんばっているという評価になるのではないでしょうか?

したがって、もし、仕分け人の方々が、単に財務経営センターの貸し会議室業務の成績が悪いということを理由にして、財務・経営センターは学術総合センタービルから出て行け、というような結論を出されるのであれば、その見識が疑われることになるのではないかと感じます。

また、学術総合センターの会議室は、国立大学関係者や学術関係者には廉価で使用していただいています。現場の学術関係の皆さんはこの会議室を重宝がられて、年々使用率が上昇しています。今、全国の国立大学は運営費交付金の削減によって論文数も減り始め、また、大学病院の機能低下により地域医療の崩壊に拍車がかかり、地域のイノベーション力や国際競争力が低下しつつあります。そのような状況の中で、少しでも全国の学術関係でがんばっている皆さんに便宜を図りたいというのが私たちの思いです。仕分けの結果によって、そのようなことがかなわなくなるかもしれません。

ただし、視察前の枝野大臣の記者会見では、「そこを取り上げることで、竹橋以外のところにある他の独法、他の省庁の所管の独法の東京事務所についても、いわゆる横串が刺せるのではないか、非常に1カ所に固まっているので、象徴的でわかりやすいという問題意識です。」と述べておられます。

「非常に1カ所に固まっている」とおっしゃっても、東京事務所を置く独法は財務・経営センターと大学評価学位需要機構の2つしかないんですけどね。でも、ここを「象徴的に」なものにする意図ということであれば、こちらがどんな理由を述べたとてしても、取り上げるという結論をお出しになるかもしれません。

でも、全国の国立大学の皆さんのためにも、できればそういうことのないことを願っています。

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