今まで、数回にわたり、東北関東大震災の大学による支援活動についてブログに書いてきましたが、今日は大学らしい支援の一つの事例として長崎大学の取り組みをご紹介しましょう。
と申しましても長崎大学のホームページ上で公開されている情報をご紹介するだけなのですが・・・
長崎大学のホームページを開いていただくと、右上に『「東日本大震災」 長崎大学は復興支援に尽力することを決断しました!』と大きく書かれたバナーがあります。これをクリックすると『長崎大学の全支援活動』という見出しで、今までの長崎大学が取り組んだ支援活動のすべてが列挙されています。
まず、片峰茂学長による3月15日付けの『学長コメント「東日本巨大地震に思いを馳せて」』では、「長崎大学は、日常業務を少々犠牲にしても、東日本巨大地震の被災者の皆様の支援と被災地の復興支援に尽力することを決断しました。」と書かれており、片峰学長の並々ならぬ思いが伝わってきますね。
次にプレスリリースを見ていただくと、その画面では5つしか見えませんが、『プレスリリース一覧』をクリックしていただきますと、実に14回ものリリースをしておられることがわかります。
まず3月12日はDMATの出動ですね。このプレスリリースにはDMATという専門用語についても懇切な説明がなされていますよ。
『DMATとは災害派遣医療ーム(Disaster Medical Assistance Team)の 頭文字をとって訳して「ディーマット」と呼ばれています。医師、看護師、その他の医療職員及び事務職員などで構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間)に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームです。』
長崎県の要請にもとづき、5名からなるDMATが福岡空港から自衛隊の飛行機で移動し、仙台市若林区の霞目飛行場で活動しました。全国の大学病院をはじめ、基幹病院から多くのDMATが派遣されましたが、阪神大震災の時にはなかったシステムで、今回の大震災で大きな働きをしていただきました。(14日に帰崎されました。)
翌13日には文科省の依頼を受けて『長崎大学病院国際ヒバクシャ医療センター』の医師及び看護師6名を千葉市にある放射線医学総合研究所に派遣しています。福島原発の損傷に対して最悪の場合も念頭においた迅速な対応ですね。原子爆弾の被爆地にある長崎大学ならではの対応です。
また、同日ハイチ地震の際に国際援助隊の一員として現地に赴いた実績のある山本太郎熱帯医学研究所教授を派遣しています。医師としての支援活動と今後の支援方策を進める上での情報を把握する目的です。
14日には学長を本部長とする『危機対策本部』が設置されています。これは、自分の大学の危機に対応するという意味ではなく、被災地域の、そして日本全体の危機に対応するという意味ですね。このような支援のための対策本部は、他のいくつかの大学でも設置されています。
緊急ひばく者医療対応としては福島市内の避難所でひばくの確認の業務に従事しています。
同日長崎県の要請を受けて、救援物資の輸送のために出動する附属練習船長崎丸に乗船する教職員と学生からなる支援チームの結団式が行われました。同船には放射能測定装置が積み込まれ、放射能を測定しつつ被災地へ向かいました。
15日、市内の街頭で長崎 SHIPSという学生団体が募金活動し、377,777円の募金を集め日赤長崎支部に届けています。16日以降は他の学生グループも加わって連日街頭募金を行っています。
16日危機対策本部で岩手県遠野市に医療活動拠点を設置することに決定。追加の食料や医療器具等を積み込んで熱帯医学研究所の医師たちがすでに現地で活動している山本教授に合流するべく車で出発。
18日福島県知事からの依頼で、チェルノブイリ原発事故後の国際医療協力等の実績のある山下俊一医歯薬総合研究科長が福島県立医科大学へ出発。
19日国境なき医師団の要請で熱帯医学研究所医師が仙台市滞在中。三陸海岸避難所へ向かう予定。
また、義援金については、学生達の募金活動に加えて、大学として一般向けと大学関係者向けの二種類を19日から受け付けています。一般向けは銀行振り込み、大学関係者向けは振り込みと募金箱の両方で、募金の使い道は(1)長崎大学の医療救援活動に対する支援と、(2)日本赤十字社を通じての被害者のための支援、のどちからを選んでいただく方式です。
学生の自主的な募金活動に対して大学としてもきちんと把握して支援するとともに、大学組織としても募金活動を行い、日赤に寄付をするだけではなく、独自の使い道を決めていることが長崎大学の大きな特徴です。
以上のように、学長の並々ならぬリーダーシップのもと、DMAT派遣による緊急の医療支援に加えて、ひばく者医療への対応、練習船による救援物資の搬送、現地での医療活動拠点の設置、支援のための危機対策本部の設置、学生と大学とが一体となった独自の募金活動など、長崎大学の専門性を生かした大学らしい災害支援活動が矢継ぎ早に実行されています。しかも、それを頻回にプレスリリースし、ホームページ上で詳細に紹介していることはすばらしいことです。
今日は長崎大学の取り組みをご紹介しましたが、非被災地の大学はすべてDMATの派遣をはじめ、その専門性に応じてさまざまな支援を行っています。支援活動は長期にわたると考えられ、今後も復興のフェーズに応じて、各大学の専門性を生かした支援活動が継続されるものと思われます。
昨年は、大学への大幅予算削減案から政策コンテストが行われ、政治決断によってかろうじて予算が確保される案が出されました。こういう事態に至ってみると、予算が確保される可能性が出されたことはほんとうに良かったと思っています(まだ国会を通っていませんから、予断は許されませんが・・・)。 余力が多少とも残っていなければ、このような危機に対応することはできませんからね。