ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

東北関東大震災への大学らしい支援・・・長崎大学の場合

2011年03月21日 | 日記

今まで、数回にわたり、東北関東大震災の大学による支援活動についてブログに書いてきましたが、今日は大学らしい支援の一つの事例として長崎大学の取り組みをご紹介しましょう。

と申しましても長崎大学のホームページ上で公開されている情報をご紹介するだけなのですが・・・

長崎大学のホームページを開いていただくと、右上に『「東日本大震災」 長崎大学は復興支援に尽力することを決断しました!』と大きく書かれたバナーがあります。これをクリックすると『長崎大学の全支援活動』という見出しで、今までの長崎大学が取り組んだ支援活動のすべてが列挙されています。

まず、片峰茂学長による3月15日付けの『学長コメント「東日本巨大地震に思いを馳せて」』では、「長崎大学は、日常業務を少々犠牲にしても、東日本巨大地震の被災者の皆様の支援と被災地の復興支援に尽力することを決断しました。」と書かれており、片峰学長の並々ならぬ思いが伝わってきますね。

次にプレスリリースを見ていただくと、その画面では5つしか見えませんが、『プレスリリース一覧』をクリックしていただきますと、実に14回ものリリースをしておられることがわかります。

まず3月12日はDMATの出動ですね。このプレスリリースにはDMATという専門用語についても懇切な説明がなされていますよ。

『DMATとは災害派遣医療ーム(Disaster Medical Assistance Team)の 頭文字をとって訳して「ディーマット」と呼ばれています。医師、看護師、その他の医療職員及び事務職員などで構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間)に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームです。』

長崎県の要請にもとづき、5名からなるDMATが福岡空港から自衛隊の飛行機で移動し、仙台市若林区の霞目飛行場で活動しました。全国の大学病院をはじめ、基幹病院から多くのDMATが派遣されましたが、阪神大震災の時にはなかったシステムで、今回の大震災で大きな働きをしていただきました。(14日に帰崎されました。)

翌13日には文科省の依頼を受けて『長崎大学病院国際ヒバクシャ医療センター』の医師及び看護師6名を千葉市にある放射線医学総合研究所に派遣しています。福島原発の損傷に対して最悪の場合も念頭においた迅速な対応ですね。原子爆弾の被爆地にある長崎大学ならではの対応です。

また、同日ハイチ地震の際に国際援助隊の一員として現地に赴いた実績のある山本太郎熱帯医学研究所教授を派遣しています。医師としての支援活動と今後の支援方策を進める上での情報を把握する目的です。

14日には学長を本部長とする『危機対策本部』が設置されています。これは、自分の大学の危機に対応するという意味ではなく、被災地域の、そして日本全体の危機に対応するという意味ですね。このような支援のための対策本部は、他のいくつかの大学でも設置されています。

緊急ひばく者医療対応としては福島市内の避難所でひばくの確認の業務に従事しています。

同日長崎県の要請を受けて、救援物資の輸送のために出動する附属練習船長崎丸に乗船する教職員と学生からなる支援チームの結団式が行われました。同船には放射能測定装置が積み込まれ、放射能を測定しつつ被災地へ向かいました。

15日、市内の街頭で長崎 SHIPSという学生団体が募金活動し、377,777円の募金を集め日赤長崎支部に届けています。16日以降は他の学生グループも加わって連日街頭募金を行っています。

16日危機対策本部で岩手県遠野市に医療活動拠点設置することに決定。追加の食料や医療器具等を積み込んで熱帯医学研究所の医師たちがすでに現地で活動している山本教授に合流するべく車で出発。

18日福島県知事からの依頼で、チェルノブイリ原発事故後の国際医療協力等の実績のある山下俊一医歯薬総合研究科長が福島県立医科大学へ出発。

19日国境なき医師団の要請で熱帯医学研究所医師が仙台市滞在中。三陸海岸避難所へ向かう予定。

また、義援金については、学生達の募金活動に加えて、大学として一般向けと大学関係者向けの二種類を19日から受け付けています。一般向けは銀行振り込み、大学関係者向けは振り込みと募金箱の両方で、募金の使い道は(1)長崎大学の医療救援活動に対する支援と、(2)日本赤十字社を通じての被害者のための支援、のどちからを選んでいただく方式です。

学生の自主的な募金活動に対して大学としてもきちんと把握して支援するとともに、大学組織としても募金活動を行い、日赤に寄付をするだけではなく、独自の使い道を決めていることが長崎大学の大きな特徴です。

以上のように、学長の並々ならぬリーダーシップのもと、DMAT派遣による緊急の医療支援に加えて、ひばく者医療への対応、練習船による救援物資の搬送、現地での医療活動拠点の設置、支援のための危機対策本部の設置、学生と大学とが一体となった独自の募金活動など、長崎大学の専門性を生かした大学らしい災害支援活動が矢継ぎ早に実行されています。しかも、それを頻回にプレスリリースし、ホームページ上で詳細に紹介していることはすばらしいことです。

今日は長崎大学の取り組みをご紹介しましたが、非被災地の大学はすべてDMATの派遣をはじめ、その専門性に応じてさまざまな支援を行っています。支援活動は長期にわたると考えられ、今後も復興のフェーズに応じて、各大学の専門性を生かした支援活動が継続されるものと思われます。

昨年は、大学への大幅予算削減案から政策コンテストが行われ、政治決断によってかろうじて予算が確保される案が出されました。こういう事態に至ってみると、予算が確保される可能性が出されたことはほんとうに良かったと思っています(まだ国会を通っていませんから、予断は許されませんが・・・)。 余力が多少とも残っていなければ、このような危機に対応することはできませんからね。















 

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始まった大学における東北関東大震災義援金募金活動・・・大学らしさを出すには?

2011年03月18日 | 日記

先のブログで、全国の大学病院からの救急医療チームの派遣や、原発関係の技術的な支援など、大学の専門性を生かした緊急の支援活動がただちに行われたことを紹介しました。また、入試への対応や被災学生への修学支援体制など、必要な措置が迅速・適切にとられたと思います。”支援対策本部”のような組織をを立ち上げている大学も多くあります。

また、大学自体も被災しており、非被災地域の大学から被災大学への救援物資が搬送されています。(国立大学協会も呼びかけました。)

これからは徐々に息の長い復興支援活動のフェーズに入ろうとしていますが、各大学においても緊急の支援活動に引き続いて、それぞれの大学の専門性を生かしたさまざまな復興支援活動がなされるものと思います。

このような専門性を生かした”大学らしさ”を感じさせる支援以外に、一般的な支援活動、たとえば義援金の募金活動も各大学で始まっています。

当センターが支援している86の国立大学法人のホームページを調べたところ、何らかの形での義援金の募金活動をアナウンスしている大学が3月17日の時点で25ほどありました。募金を予告している大学もかなりあり、この数は順次増えていくものと思います。

さて、大学による義援金の募金活動ですが、一口に募金活動と言っても各大学によっていろいろなパターンがあり、大学の個性が表れるものです。

募金活動を開始した大学の多くは、大学という組織として、学長等が発起人となって募金を呼びかけ、大学が窓口になって募金を募り、それを日本赤十字の支社、自治体、あるいは公的な募金団体等に届けるというのが最も多いパターンでした。大学の各学部に募金箱を設置したり、振り込み口座を設けたり、いろんな集め方の工夫しています。

集め方の工夫としては、例えば佐賀大学は、通常の募金箱以外に学位記授与式及び入学式において、出席者に対しワンコイン義援金募金を呼びかけることにしています。なかなか良いアイデアだと思いました。

大学という組織以外が募金する形をとっている例としては、同窓会組織で呼びかけているところもありますし、また、大学という組織自体は募金の窓口になっていませんが、学生が中心になって募金し、それを大学として紹介・支援しているところもあります。神戸大学では「神戸大学学生311救援ネットワーク」を設立し、複数の学生ボランティア団体のネットワークをつくって街頭で募金をしています。長崎大学のHPでも、15日に学生団体が街頭で約38万円を集めて日赤に届けたとのアナウンスがなされています。

大学の募金活動に加えて、学生の募金活動を紹介しているのが佐賀大学。大学と学生等がいっしょに発起人となって募金している例としては滋賀大学があります。やはり、大学と学生がいっしょになって募金をするというのが、”大学らしさ”を感じさせる募金のやり方ではないかと思いました。

ただ、ある大学では、学生が街頭に立って募金をしていることに対して、あまりに強制的な感じを受けるやり方をしていると市民から大学にクレームが寄せられたそうです。そんなことがあったので、その大学では学生といっしょに募金することは止めたとのことです。こんなことで大学らしい募金活動に水がさされるのはちょっと残念ですね。

また、このような義援金は、阪神大震災の経験からは、最初のうちは集まるけれども、時間が経つと急速に少なくなってしまうそうです。長期にわたって腰を据えた募金活動が望まれます。

そんなことを見越してだろうと思いますが、室蘭工業大学の義援金募集のお願いには「なお,今後の状況に応じて,別途お願いをする可能性もありますので,その旨もあらかじめご了解願います。」とちゃんと書かれていますよ。









 

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学校等の被害状況と被災地の復興に向けて

2011年03月16日 | 日記

現時点(3月16日午前6時)で文部科学省が確認した文科省関係の国公私立学校や研究所等の被害状況をご紹介します。

まず、人的被害についてですが、死亡が確認された方が20人にのぼっています。

東京都:九段会館において私立専門学校の教職員2名

岩手県:釜石市の生徒1名、大船渡市の児童1名、園児1名(市町村不明)

宮城県:仙台市の学生1名、南三陸町の児童1名・生徒1名・教員1名、七里ヶ浜町の生徒1名、東松島市の児童4名・生徒1名、石巻市の児童4名、塩竃市の生徒1名

また、安否の確認できていない行方不明者数は、岩手県、宮城県、福島県では”不明”であり、今後死亡者数がかなり増えることになると思われます。その他の県では、秋田県(3)、山形県(6)、茨城県(7)、群馬県(8)、東京都(13)、石川県(1)、京都府(3)、広島県(3)、愛媛県(1)、長崎県(11)、沖縄県(1)となっています。

また、負傷者は132名となっています。

物的被害については、大きな被害から軽微の被害まで含めますと、全体で3694施設と多数に昇っています。100施設以上被害があった地域は、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県です。

3月12日、13日の入試を取りやめた大学は36大学(国立18,公立10,私立8)にのぼり、。高校入試についても、被災県で延期措置が検討されています。

未曾有の被害をもたらした東北地方太平洋沖地震(東北関東大震災、東日本大震災)ですが、多数の幼い生徒さんや若い学生さんがお亡くなりになられたこと、安否が未だに不明であることについては、ほんとうに心が痛みます。

そんな中で、青森の八戸市の小学校が授業を再開したというニュースが入ってきました。大きな被害を受けて授業再開の見通しも立っていない学校もまだまだ多いと思いますが、明るいニュースです。

緊急援助の次には、日本人の”米百俵”の精神から学校が復興されることにより、被災地(あるいは日本全体)のほんとうの復興が始まるのではないか、と感じました。





 

 

 

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東北関東大震災の救援。大学や文科省関係機関の貢献の意義

2011年03月14日 | 日記

今回の東北地方太平洋沖地震(東北・関東大震災、東日本大震災)の惨状は、日を追うにつれて明らかになりました。被災をされた多くの皆さん、未だにご家族の安否のわからない皆さんの極限状態におかれたお気持ちを考えると、言葉も見つかりません。心からお見舞いを申し上げます。また、懸命に現場で救助にあたっておられる多くの皆さん、ほんとうにありがとうございます。

今回の甚大な震災の復興には、緊急の救援から中長期に渡る支援のフェーズに応じて、日本人全員が各々のできる範囲で協力が求められていると思います。

緊急の救援は救助隊や警察、自衛隊等が中心となるわけですが、当センターが支援をしてきた国立大学や附属病院をはじめ、他の文部科学省関係の多くの機関も、すでに緊急の救援活動に参画しています。

文科省のHPから拾ってみますと、まず、国公私立の全大学病院に対し、災害派遣医療チーム(DMAT)の要請がなされ、3月14日06:30現在での派遣人数は346名(57大学)に昇っています。これはすでにニュースでも報道されていますね。

やはり”地域医療の最期の砦”とも表現される大学病院の高度医療を通した地域貢献には大きいものがあると思います。

以下、今までに各大学や文部科学省関係機関が実施した被災地・被災者への救援・支援活動を列挙します。

・東京大学:茨城県東海村の研究施設に対して物資を搬送開始(3月13日15:40)

・長崎大学:緊急被ばく医療対応として、国際ヒバクシャ医療センターの医師を中心とした派遣チームを編成(計6名:医師2名、放射線物理士1名、看護師2名、放射線技師1名)し、(独)放射線医学総合研究所へ派遣。(3月13日19:00)※医師1名は本日(3月14日)派遣予定。

・(独)国立青少年教育振興機構の国立磐梯青少年交流の家(福島県耶麻郡猪苗代町)及び国立那須甲子青少年自然の家(福島県西白川郡西郷村):福島県災害対策本部からの東京電力福島第一原子力発電所等の損傷に伴う避難者の受け入れ要請を受け、今後受け入れの予定。

・国立岩手山青少年交流の家(岩手県岩手郡滝沢村):岩手県災害対策本部からの要請を受け、地震被災者を受入れ予定。※3施設とも定員400名。さらに体育室等も活用可能。(3月13日10時45分現在)

・(独)宇宙航空研究開発機構: 陸域観測技術衛星「だいち」による被災地域の緊急観測。被災状況の把握等に資するため、画像を関係機関に提供(3月12日から提供)

また、原子力関係の支援として、以下のような活動がなされています。

・文部科学省職員8名、日本分析センター専門家4名、原子力安全技術センター専門家2名、日本原子力研究開発機構専門家18名、放射線医学総合研究所専門家13名、原子力安全研究協会専門家2名、広島大学専門家4名、福井大学専門家2名を現地に派遣。原子力安全技術センター専門家8名が現地に移動中。また、日本原子力研究開発機構の専門家(人数調整中)、放射線医学総合研究所専門家1名、原子力安全研究協会専門家2名、広島大学専門家3名、長崎大学専門家5名が現地派遣に備えて現在待機中。

・文部科学省の水戸原子力事務所と茨城原子力安全管理事務所、日本原子力研究開発機構緊急時支援・研修センター(NEAT)のモニタリングカー(計3台)が3月13日に現地到着。モニタリングを実施中。

・文部科学省から都道府県に対して、環境放射能水準調査測定データを臨時的に報告するよう依頼。13日17時現在、異常の報告なし。

・放射線医学総合研究所専門家4名がモニタリングカー及び救急車(それぞれ1台)にて現地に到着(13日23時40分)。

やはりこのような専門的な立場からの救援が、大学や文科省関係機関の支援の特徴であり、大きな意義だと思います。

また、震災を伝える報道の中で、各大学や研究機関の地震や津波、そして原子力の専門家の皆さんが専門的知識に基づいて、適切なコメントをしておられますが、このような活動も、大学や研究機関の専門的立場からの社会への貢献としてあげられます。

なお、東京大学大気海洋研究所の国際沿岸海洋研究センターが、津波の被害を受けた岩手県大槌町にあり、職員や学生の安否が心配されていました。HPには

「東京大学大気海洋研究所は、東北地方太平洋沖地震災害対策本部を立ち上げ、岩手県大槌町にある国際沿岸海洋研究センターに関する情報を収集し、必要な対策をとることに全力をあげています。3月13日午後13時現在、同センター所属および来訪中の教職員、学生の多くの方の無事が確認されつつありますが、まだ、数名に関する情報が入っておりません。引き続き情報収集につとめております。」

と書かれており、一部の方々の安否が確認されていないようです。

まだ安否が確認されていない多くの住民の皆様のご無事とともに、センター関係者のご無事を心から祈っております。

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

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