ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、前国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

積極的な業務改善に取り組み国立大病院(鳥取大学と島根大学の事例よりその2)

2011年01月29日 | 日記

1月24日、鳥取大病院の視察を終え、JRで夕方米子から出雲へ移動。駅の近くのホテルに泊まりましたが、さっそく駅のすぐそばにある「ランプの湯」という温泉へ。寒い季節には温泉は欠かせませんね。

25日10時に島根大病院を訪問。病院長の小林祥泰さん、事務部長の日出充一さんが出迎えてくれました。

島根大病院の業務改善の取り組みは数多くあり、2008年にも2事例を取り上げさせていただいています。(”第三者評価機関による「働きやすい病院」の機能評価の認証”、および ”プライバシーマーク(JISQ 15001)の取得”)

http://www.zam.go.jp/pdf/00000147.pdf

今回は「汚水排水量測定による下水道料金の削減」と「入院総合相談室設置による早期退院支援」の2つの取り組みです。

私も知らなかったのですが、下水道料金は給水量から減免申請分(たとえば防火用水や冷却水など)を差し引いた水量を汚水量と見なして算定されているとのこと。今回、汚水量の実測調査をしたところ汚水量が少なくなることが判明し、その結果下水道料金が削減できたというもの。(年間200万円以上の節約)

次は「入院総合相談室」の取り組み。

今までは、患者さんの退院の計画を立てる段階になって、早期退院を阻害する各種の問題を抱えていることが分かることがあり、それが退院が遅くなる一つの原因。より早い段階でメディカル・ソーシャルワーカー(MSW)による退院支援の必要性を把握し、患者さんの不安解消、在院日数の短縮を図るために「入院総合相談室」を外来に設置。相談室では入院の前(緊急入院の場合は翌日)に、退院支援が必要な患者さんかどうかのスクリーニングを行い、その情報を共有。

その結果、患者さんに不安や不満を与えることなく、在院日数の短縮が達成されたとのことです。

これら2つの取り組み事例以外にも、たとえば、「災害対応の外来患者用立体駐車場の設置」や「ネゴーシエーター支援による医療材料費削減」、「防災ヘリコプターによる救急医療の開始」など参考になる取り組みを8事例も提出していただきました。

また、島根大病院は現在再開発の最中で、6月に増築された新病棟が完成する予定です。内装工事中の建物を見学させていただきました。さまざまな工夫がなされており、今後再開発を進めようとしている大学病院には参考になると思います。機会があれば、完成された暁に再度訪問したいと思っています。

加えて、懸案だった7対1看護が近々達成できるとのことで、これをきっかけにいっそうの経営改善に弾みがつくものと思われました。ちなみに看護師さんの募集にはほんとうに苦労したとおっしゃっていました。

今回、鳥取大病院と島根大病院の二つを訪問させていただきましたが、教育・研究・高度医療、そして地域医療の最期の砦という大学病院の使命を果たすために、両大学jの粘り強い経営改善に取り組む姿勢を感じさせられた二日間でした。












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積極的な業務改善に取り組む国立大病院(鳥取大学と島根大学の事例より、その1)

2011年01月28日 | 日記

法人化後、各国立大学はさまざまな経営の改善に取り組んでおり、法人化前に比べると雲泥の差があると感じます。特に附属病院の経営改善への取り組みはかなりのレベルに達していると思います。

財務・経営センターでは、このような各大学法人と附属病院の業務改善の取り組みを集め、その中から、他大学の参考になると思われる取り組みを取り上げて、現地ヒアリングを行って他大学に紹介させていただき、情報の共有化を図ってきました。

今回は、鳥取大学の附属病院と島根大学の附属病院を訪問して、現地ヒアリングをさせていただいたので、それをごく簡単にご紹介します。(詳細は後日公表される事例集をご覧下さい。)

まず1月24日に鳥取大病院、翌日の25日に島根大病院を訪問しました。米子空港に到着した時は雪。この地域がお正月の大雪で車が立ち往生したことは皆さんの記憶に新しいことと思いますが、この日は雪とはいってもそれほど大した降りではありませんでした。

副学長の井藤久雄さん、医学部長の井上貴央さん、病院長の豊島良太さん、病院事務部長の神村茂さんを始め、職員の方々に暖かく出迎えていただきました。

鳥取大学病院は今までにもさまざまな業務改善の取り組みを行っていますが、今回はその中から、「全職横断的なプロジェクトチームによる人材確保」と「病院情報システムへのシンクライアント端末の導入」の二つを取り上げさせていただきます。

「全職種横断的なプロジェクトチームによる人材確保」の取り組みについては、病院長特別補佐(広報戦略、患者サービス、労働環境担当)の早川幸子さんから説明していただきました。早川さんは、2年前まで看護部長をされておられた方です。

従来、病院の人材確保は職種ごとに縦割りに対応してきたが、地元の養成校のない薬剤師、診療放射線技師、臨床工学技士の確保については苦慮してきたとのこと。それを、H22年2月に病院全体で横断的な「きらり輝く人材確保プロジェクト」を立ち上げ、医師、看護師・助産師、薬剤師、臨床検査技師、臨床放射線技師、臨床工学技士の採用について横断的・一元的に募集採用活動開始。

21回のプロジェクトチームの会議を通して、欲しい人材の明確化することから始めて、「鳥大病院総力戦」と位置づけて戦略を練り、テレビを含む全国的なPRや養成校訪問などの活動を精力的に実施。昨年8月13日に合同説明会にこぎつけ、県内外から予想以上の82名が参加。報道機関席も設けていたが、誰もこないので表示を破り捨てたところ、後ろにNHKが来ていることがわかり安堵。結局テレビ3社、新聞3社が来場し、大きく報道される。

私が特に感心したのは、医師の募集もいっしょに行われたことです。医師、医療専門職(コメディカル)、事務職員がいっしょに一つのプロジェクトを遂行するというのは、実はなかなか難しいことなのですが、ここでは「教職共同」が実にすばらしく行われています。教職員の皆さんの組織全体の方針に対する協力的な姿勢とともに、プロジェクトの責任者のお一人である早川さんのご努力とお人柄も大きなファクターではないかと想像しています。

もう一つの取り組みは「病院情報システムへのシンクライアント端末の導入」

私はITは詳しくないのですが、シンクライアントとは、「情報システムにおいて、ユーザーが使うコンピュータ(クライアント)に最低限の機能しか持たせず、サーバ側でアプリケーションやファイルなどの資源を管理するシステムの総称。また、そのようなシステムを実現するための、機能を絞った低価格のクライアント用コンピュータ。」とされています。

病院情報システムにシンクライアントを採用する手法には複数あるが、コスト面を考慮しserver-based computing (SBC)方式を採用。シンクライアントの実装メリットとしては、ハードディスクが不要のためにパソコンにデータが残らず、したがってセキュリティー管理が容易なこと。そして、端末の故障率が低く価格も安いことから端末管理コストが低くなること。

最近流行のクラウドコンピューティングを院内で行うという感じですかね。病院現場のユーザーは従来と何が変わったのか気づかない状況で、導入に成功したとのことです。

シンクライアントは大学病院としては鳥取大学が最初に実施し、現在数大学で検討されているとのことです。

これ以外にもすばらしい業務改善の取り組みがたくさんなされていますが、長くなりますので今日はこの辺りでやめて、次回は島根大学病院の取り組みを紹介します。













 

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財務・経営センターの格付けはAA+

2011年01月27日 | 日記

昨年末のブログでも皆様にご報告しましたように、事業仕分けの最終的な結論として、国立大学財務・経営センターは大幅な事業の縮小と将来的な組織の廃止という結論になりましたが、貸付と交付という2事業は当面存続されることになりました。

その結果、格付け会社による格付けについては、昨年1年間は、事業仕分けの結論が不透明であること等から「レーティング・モニター」となっていましたが、12月8日の時点で解除となっています。

http://www.zam.go.jp/o00/pdf/110114-1.pdf

つまり、括弧付きの(AA+)から、(  )が取れたということですね。

そんなことで、第6回目になるセンター債の発行をするべく、現在証券会社と準備中です。発行総額は従来と同様の50億円です。

このセンター債と財政融資資金を原資として、国立大学病院の再開発のための貸付を、従来通り、民間の金融機関よりも有利な条件でお貸しすることができることに、理事長としてもほっとしているところです。

過日行われた格付け会社による理事長ヒアリングにおいても、私どもの将来の見通しと同じ見通しをされ、安全な債権であるとの評価を示していただきました。

ただし、今後の国立大学病院の経営について、100%リスクが無いと考えて良いかというご質問を受けました。

それに対する私の返答の主旨

「国立大学病院は、その国策としての教育、研究、高度医療、そして地域医療における極めて大きな役割から、国にとっても地方にとっても絶対につぶすわけにはいかない組織体であり、リスクは極めて小さいと考えられる。しかし、その小さなリスクをさらに小さくするために、当センターは各大学病院の経営改善への取り組みを支援するとともに、審査能力をさらに向上させて万全のものとしたい。」

格付け会社の皆さんは、うんうんと頷いて帰って行かれました。








 

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平成23年度文教・科学技術予算案についての私感(その2)

2011年01月01日 | 日記

みなさん、あけましておめでとうございます。

前回のブログでも書かせていただきましたが、平成23年度の文教・科学技術予算案は、大学や科学技術関係者の深刻な懸念が現実のものとならずに、政策決定者によりかなりの配慮がなされたことは、たいへん良かったと感じています。

公表された平成23年度予算の政府案(http://www.mof.go.jp/seifuan23/yosan.htm)によれば、国立大学の運営費交付金の削減率は0.5%であり、これは法人化後の運営費交付金の削減率0.79~1.91%に比較して最も低い削減率に留めたとのことです。

従来の運営費交付金削減のかなりの部分は附属病院運営費交付金の削減でまかなわれていたのですが、そのために附属病院の機能が損なわれ、医学論文数の減少や地域医療の崩壊に拍車がかかったことは、私どもが法人化後間もなくの時期から主張し続けてきたことです。大学病院の窮状について政府関係者の理解が進み、ある程度の配慮がなされるようになりましたが、私が最も心配していたことは、附属病院を救おうとすると、他の大学部門の予算の削減がその分だけ増やされることでしたが、今回そうならなかったことは幸いでした。ただし、削減が続くことに変わりがないことは認識しておく必要があります。

また、施設整備関係の予算についても、「大学教育研究特別整備費」が新設され、運営費交付金の削減額相当の58億円が計上されています。その結果、「国立大学施設費等」は538億円と、前年度に比較して9億円の減(1.6%減)にとどまっており、従来の施設費削減に比較して緩和されています。ただし、現在の国立大学の施設を維持するにはほど遠い金額であることに変わりないことに留意する必要があります。

今回、文教・科学技術予算の削減は最小に留めていただいたようですが、その代わり「大学改革について文部科学省と以下の合意がなされた」という一文が書かれています。

「時代の要請に応える人材育成及び限られた資源を効率的に活用し、全体として質の高い教育を実施するため、大学における機能別分化・連携の推進、教育の質保証、組織の見直しを含めた大学改革を強力に推し進めることとし、そのための方策を1年以内を目途として検討し、打ち出すこと」

つまり、今回は大目に見たが、23年度にはっきりと目に見える大学改革案を打ち出さなければ、次回は予算を大幅に削減するぞ、ということでしょうね。

今年が国立大学および附属病院にとっての本当の正念場になりそうですね。

私個人にとっては、昨年は公募で国立大学財務・経営センターの理事長に選ばれたとたんに事業仕分けの洗礼を受け、また、年末には心房細動の治療で入院し、一部に三重県知事選挙出馬の要請があったのですが、それをお断りするなど、激動の1年でした。

事業仕分けの結果、財務・経営センターは大きく機能が削がれますが、平成23年の正念場の年に、国立大学と附属病院が少しでも国民にとり、同時に大学関係者にとって良い方向に向かうように、少しでも貢献したいと決意を新たにしたところです。







 

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