ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

「元気な日本復活特別枠要望」パブコメ結果の意味するもの

2010年11月09日 | 日記

11月4日に内閣官房から公表された「元気な日本復活特別枠要望」に関するパブコメ結果について、新聞報道やツイートのご紹介も含めて私の想いを書いておきましょう。

全提出意見数は約36万件、うち文部科学省関係の事業への意見数は約28万件と実に約8割を占め、結果が出る前の新聞報道の予想どおり、群を抜いた結果になりました。

文科省の事業別の順位を見てみましょう。番号は全189事業の順位、(  )内は提出意見数です。

1.「強い人材」育成のための大学の機能強化イニシアチブ(71747)

2.学習者の視点に立った総合的な学び支援及び「新しい公共」の担い手育成プログラム(55033)

3.小学校1・2年生における35人学級の実現(41722)

4.成長を牽引する若手研究人材の総合育成・支援イニシアチブ(39460)

5.安全で質の高い学校施設の整備(32389)

6.元気な日本復活!2大イノベーション(17693 )

7.我が国の強み・特色を生かした日本発「人材・技術」の世界展開(14107)

8.元気な日本スポーツ立国プロジェクト(5619)

15.未来を拓く学び・学校創造戦略(3130)

16.文化芸術による元気な日本復活プラン(2548)

賛成率も「元気な日本スポーツ立国プロジェクト」を除いては、他省庁に比べて高い賛成率でした。

翌5日の新聞報道では、一部の新聞が「教育関係組織票で偏り」、「文科省事業に国民の声8割集中、政策コンテストで組織票」などと、批判的に伝えています。

朝日新聞には

「狙われる文科省」という中見出しで、

「最大の標的は文科省。要望額は8628億円に達する。1省だけで全体の約3割を占めているのに加え、元気」「復活」という特別枠のテーマにつながらない既存予算の要求が少なくないからだ。予算査定を担う財務省幹部は『文科省の手法は目に余るというのが財務省に限らず、政権内の共通認識』と話す。

例えば、公立の小中学校の教員給与費2247億円。小学校1~2年生の担当する教員(約10万人)給与の国の負担分だ。毎年欠かせない予算なのだが、文科省は「質の高い教育」のために1クラスの児童数を40人から35人に減らすから、という理由をつけて特別枠に回した。  予算を大幅に削られると『教員の給与が払えなくなる。削れるわけがない』と、文科省幹部は足元を見る。

と記載されています。


次にパブコメ結果に関連したいくつかのツイートを紹介しておきましょう。(11月5~6日、アカウントは省略)

☆頑張って書いたもん!組織票とか言われたくないですよね.みんなの声だもん!新聞が書いているのは政策コンテストで不利になった他の産業界の差し金かしら?

☆政策コンテスト,意外なのは 35人学級よりも 大学の若者支援お願いします的な施策のほうが たくさんパブコメ集まっているんですよ!

☆なんか,文科省系のことを国民の声としていえるのは,政治家をとおしては無理.お金とか票にならないと評価されるからね.だからパブコメで訴えるしかない→政策コンテストパブコメが,文科省系大盛況では.利益誘導型の政治と決別しようという与党のもくろみを,新聞は理解してないのかなあ..

☆うちの業界でもパブコメの依頼が来てた。組織票自体は特に問題あるとは思わないんだけど、組織としての情報発信がパブコメしかない、ってのはちょっと変だと思ってる。

【高木文科大臣閣議後記者会見】全体の八割を超えるパブコメについて、「いろいろ議論もあるが、これは一つの大きな国民の声、生の声で、事実であり、非常に重いと思っている。今後、政務三役としても、公開ヒアリングの中で要望の根拠、背景をしっかり説明していく。」と発言。

☆政策コンテスト・パブコメ「元気な日本復活枠」、意見総数約36万件中、文部科学省約28万件(大学人材育成、35人学級など)。短期間でわかりにくいやり方でもこれだけ集まったのは(動員もあるだろうが)無視することはできないだろうな。

☆「科学技術に関する基本政策について」パブコメ締切が明後日。しかし、ここぞとコメントすると、「組織票に厳しい目」とか言われる。ルールが恣意的に動かされる戦いに疲れてくる。戦いの相手もはっきりしない。


私の想いは、ほとんどこれらのツイートでも語られています。

これだけ多数の意見が集まったことは、もちろん、大学教職員や学生へのパブコメ記入の周知と、一般市民にパブコメへを働きかけた結果だと思いますが、大学はさまざまな思想や考え方の人々の集まりで、「組織化」することが不可能な組織であることを考えると、この結果は驚くべきことです。それだけ、大学関係者の危機感が強かった証でしょう。

もし、今回のパブコメの結果が「組織票」として片付けられて、政策決定に反映されないということになれば、政府がパブコメを募集しておいて、それに応じる形で一生懸命パブコメに意見を寄せた大学関係者や学生、そして一般市民は、大きな憤りを感じることでしょう。

資源の少ない日本は、「米百俵」の精神で、広い意味でのイノベーションの創出、そしてイノベーションを生み出せる人材(イノベーター)の育成を最重点の政策にするべきです。質の高いイノベーションの数を、海外諸国に比較してある程度高く維持しないことには、海外から物が買えなくなるからです。単に予算を削るための予算削減ではなく、国としてのイノベーション創出の目標値を早く明確に決めて、大学や科学技術の政策や予算を考えるべきなのです。(1つの質の高いイノベーションを生み出すには99の無駄が必要なことも理解していただかなければなりませんが。)

しかし、残念ながら、大学や科学技術政策というのは、農家の個別補償や子ども手当などのように、直接的に個人に目に見える形での利益をもたらさず、選挙の票に結びつきにくい面があり、ほっておけば、どんどんと縮小していく危険性があります。これを防ぐには、利害関係者が主張することから生じる誤解をおそれず、大学関係者自らが、その重要性を国民に訴える必要があると思います。

利害関係者が主張すると、自分たちだけの利益のために主張していると受け取られがちですが、この誤解をできるだけ小さくするためには、困難なことですが客観的データに基づいた根拠を示しつつ、日本全体のために中・長期的に大きな利益があることを根気よく説明する必要があります。

私は、今回、組織化されていない組織で、これだけ多数のパブコメが集まったことは、従来にはなかった新しい形の良い意味での”政治力”を示すものではないかと感じています。

パブコメの結果が政策に反映されるのか、されないのか、わかりませんが、今回これだけ多数のパブコメが集まったという事実は、大学関係者は大いに自信を持ってよいと思います。そして、この良い意味での”政治力”を、日本をより良い方向に向かわせるために大いに働かせるべきであると思います。


 



 



 

 

 

 


 

 


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