ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

国立大学論文数の分野別推移(国大協報告書草案22)

2014年10月21日 | 高等教育

 大学の仕事が忙しくなるとブログの更新が滞ってしまいます。学術論文数はFTE(full-time equivalent)研究者数、つまり、研究者の頭数×研究時間に相関するわけですが、僕の論文数分析の進み具合も、まったくその通りです。わが国の学術論文数を増やそうと思えば、まず、優秀な研究者に十分な研究時間を与えることが必要ですね。

 今回は、国立大学の論文数の分野別の分析結果です。

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3.学術分野別論文数の検討

 1)22分野および7分野における検討

 国立大学における学術分野別の論文数の推移を検討するために、基本的にはトムソン・ロイターのEssential science indicatorsの22学術分野にもとづいて分析を行なったが、22分野では全体の傾向をつかむのにはやや細かすぎるので、22分野の一部を統合した7分野での分析も行った。Essential science indicatorsの22分野と今回分析に用いた7分野の関係性を、図表III-20に示す。

 

まず、71国立大学(JAPAN: NATL UNIVERSITIES TOTALS)で、2011-2013年の平均論文数の22分野における割合を図表III-21に示した。臨床医学、物理、化学の3分野だけで47%と半分近い論文数を産生していることがわかる。次いで、バイオ系や工学系の分野が並んでいる。

 

  

 次に、これを7分野の論文数割合で示すと(図表III-22)、理工系、バイオ系、臨床医学でもって、全体の約8割の論文数が産生されていることがわかる。そして、国立大学においては、社会科学系の論文数は、わずか約3%にとどまっている。

 

 22分野における論文数の推移をみると(図表III-23)、多くの主要な学術分野で2000~2004年ころから論文数が停滞~減少していることがわかる。その中で、臨床医学論文数がここ数年増加に転じていることが目につく。

 

 7分野での論文数の推移をみると(図表III-24)、論文産生において最も主要な理工系分野(物理・化学・物質科学、エンジニアリング、情報)の2004年以降の急激な減少、そして、次の主要な分野であるバイオ系分野(基礎医学・バイオ・薬)の停滞~減少傾向が読み取れる。臨床医学は最も早く停滞を示したが、ここ数年増加傾向を示している。他の分野は、2004年以降も概ね増加傾向を示しているが、全体の論文数の6割以上を占める理工系およびバイオ系の減少傾向があるために、国立大学全体としては(あるいは日本全体としては)、論文数が「停滞」しているという結果になっている。

 

 7分野のうち複合分野を除いた6分野の論文数の2000年を基点とした推移では(図表III-25)、社会科学系分野、理学系分野(地球・宇宙・数学)の論文数の増加率が高いことがわかる。農・動植物・環境分野も増加を示していたが、最近やや停滞傾向を示しているようである。理工系、バイオ系、臨床医学分野の変動は上に記した通りの変動が読み取れるが、図表III-25のグラフではこれら3分野の変動は小さく見える。しかし、全体の論文数に占める割合が大きいために、全体の論文数に大きく影響すると考えられる。

 

 次に、2000年~2012までを3期に分け(第1期2000-2004年、第2期2004-2008年、第3期2008-2012年)、22分野それぞれの4年成長率および4年増加度(差分)でもって、各分野の順位の移り変わりを検討した。

 ただし、COMPUTER SCIENCE(情報)の2003年~2006年の論文数に不自然な増減があり(図表III-26)、これは、データベースへの学術誌収載の取捨選択や分類の変更などにもとづくものと推定される。そのために、2000-2004年および2004-2008年の分析からは、COMPUTER SCIENCE(情報)を除くことにした。

 まず、論文数の4年成長率では(図表III-27)、理工系の各分野は、第1期は中程度の成長率を示していたが、第2期に軒並み成長率が低下し、22分野の中で下位となっている。バイオ系の各分野は第1期から低めの成長率であり、それが2期、3期にかけて、わずかではあるが低下しつつある。臨床医学は第1期、第2期とも低かったが、第3期に上昇している。農・動植物・環境分野は、第1期、第2期とも比較的高い成長率であったが、第3期にやや低下した。地球・宇宙・数学分野、および社会学分野は第1期の宇宙を除いては、3期とも高い成長率を保っている。

 

 これを、7分野で示したものが図表III-28である。多くの分野では、第2期、第3期にかけて成長率が鈍っている。第2期に成長率が著しかった社会科学も、第3期には成長率が鈍っている。その中で、第2期、第3期にかけて成長率が大きくなっているのは、複合分野と臨床医学分野である。

  

  各学術分野の変化を増加度(差分)で示すと(図表III-29)、全体の論文数増加への各分野の寄与度が反映される。

 第1期では、理工系分野が全体の論文数の増加に最も貢献していたが、第2期、第3期には、逆に最も足を引っ張る存在に急変している。第2期では、動植物・環境分野が全体の論文数増加に最も貢献したが、第3期にはやや停滞傾向にある。第3期では、臨床医学論文数の急増が全体の論文数増加に最も大きく貢献した。そして、地球・宇宙・数学分野や社会科学分野の論文数増加も、全体の論文数増加に貢献する存在となった。

  これを7分野で示すと(図表III-30)、12年間の各学術分野の論文数の動向が、より単純化されて把握できる。

 

 いくつかの主要な分野の論文数が停滞ないし減少を示している中で、臨床医学論文数の第3期での大幅な増加は突出している。

 次の節では、第3期において大幅な論文数増加を示した臨床医学分野とそれ以外の分野に分けて、論文数の推移を分析することにする。

 

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