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今日の筆洗

2023年06月05日 | Weblog
俳人の正岡子規はウナギが好物だった。が、代金のことはあまり考えなかったらしい。親友の漱石が「子規という奴(やつ)は乱暴な奴だ」とまわりにこぼしている▼旧制松山中学の教師だった漱石の下宿に子規が居候を決め込んだ。その二カ月の間、子規は毎日のようにウナギを食べていたという。支払いはどうしたか。「帰る時になって、万事頼むよ、とか何とか言った切りで発(た)ってしまった」(高浜虚子『回想 子規・漱石』)。代金は漱石が払った▼二人の関係ならともかく、頼りない「代金」の話が心配になる。政府が公表した少子化対策の「こども未来戦略方針」である▼児童手当の拡充などで子育て世帯の負担を軽くし、子どもを持つためらいをやわらげる。年間の出生数が八十万人を割り込む危機的な状況の中、思い切った手を打つのは当然だが、その財源となる「年三兆円台半ば」をどう用立てるかがどうも、はっきりしない▼国民に追加負担を求めず、消費税などの増税も行わないとおっしゃる。ありがたい話にも聞こえるが、それで本当に安定した財源を確保できるものなのか。そのやり方は「後はどうにでも」の子規のウナギ代を疑わせるが、それではせっかくの政策も怪しくなるだろう▼政府与党からこの手の虫がいい話が出てくるとあのにおいが漂ってくる。カバ焼きではなく、衆院解散・総選挙のにおいである。 
 
 

 


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