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今日の筆洗

2024年07月06日 | Weblog

ドイツ降伏から間もない1945年7月の英総選挙。首相チャーチルは自身が率いる保守党の惨敗に衝撃を受けた。妻が今後、幸せもあるだろうと「一皮下にはかえってよいことが隠されているのかもしれない」と慰めたが「今のところは、その一皮がひどく厚い」と答えたという(河合秀和著『チャーチル』)▼戦争に疲れた国民は福祉の充実を唱えた労働党にひかれたらしい。ヒトラーから国を守った戦時指導者を下野させるのだから、有権者も厳しいものだ▼英総選挙が投開票され、スナク首相が率いる与党保守党が惨敗を喫し、野党労働党が14年ぶりに政権を奪った▼保守党が勝った前回総選挙から4年半余。新型コロナウイルス禍の規制に国民が耐えていたころの首相ジョンソン氏は官邸でパーティーを開き、後任のトラス氏は財源の裏付けの弱い大型減税を掲げて市場を混乱させ、42歳で後を継いだ若きスナク氏も悪い流れを変えられなかった。チャーチルの時との違いは、大敗に驚く人がいないことだろう▼45年に下野したチャーチルは70歳だったが、引退しなかった。数カ月後の党の集会で「あの総選挙における国民の投票は、わが党が長い多彩な歴史の中で蒙(こうむ)った最悪の災厄の一つである」と語り、6年後に首相に返り咲くのだから相当な執着心だ▼首相をくるくる変えた今の保守党に、そんな人材はいるだろうか。


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