最初はアムステルダムのある空港で導入されたそうだ。男性トイレの小便器の中に黒いハエを描いておく。結果、何が起きたか▼これだけのことで、例の「飛び散り」が8割減ったという。便器にハエを見つけると人はどういうわけかオシッコで狙いたくなるものらしい▼行動経済学の「ナッジ理論」の例としてよく紹介される。「ナッジ」とは「そっと後押しする」の意味で、強制や命令ではなく、ちょっとした工夫によって人々の行動に変化を促す方法のことをいう。強制されない分、気分よく受け入れられやすいという。日立製作所が最近、発表した新しいエスカレーター。これも「ナッジ理論」を応用しているのだろう▼ハエではなく、ステップ面に立ち位置を示すLEDライトが二つ配置されている。これによって2列で乗るよう促す効果があるそうだ▼片側を空ける習慣は非効率なうえ、接触事故につながるといわれながらもなかなかにしぶとい。この歳末、駅やデパートの混雑するエスカレーターの前で「なぜ2列で乗らないのか」と腹を立てた方もいるか▼急ぐ人のために片側を空ける習慣は1970年の大阪万博に由来するという説がある。新型のエスカレーターは2025年大阪・関西万博に合わせて開業する「夢洲駅」に導入される。わずかな光は半世紀を超える習慣を変えられるか。効果を2列で待つとする。
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