小学校の卒業式でよく行われる「呼びかけ」。卒業生たちが短い文章を分担し声を出し、ときに声を合わせ、六年間の思い出などを語っていく。「楽しかった!」「修学旅行!」。戦後、どこかの小学校が導入し、全国に広まったと聞く▼卒業式のシーズンがやってくると、同い年の友人は決まって、この「呼びかけ」の思い出を語りたがる。なんでも友人に与えられた呼びかけのせりふは「そして!」のみだったそうだ。「たった三文字の接続詞だよ」。四十年も昔の力不足をいまだに嘆いている▼三月には喜びの色と悲しみの色が混じり合っているようである。卒業や新しい進路に胸を躍らせる若者がいる。その一方、進学、就職などで望んだ通りの道を歩むことがかなわなかった若者がいる。挫折に声を上げて泣く者もいるだろう▼あの友人は気に入らなかった「そして!」を誰よりも大きな声で発し、絶賛されたそうである。何のことはない、自慢話なのだが、担当した「呼びかけ」の言葉が何であったか、思い出せぬ身にはちょっとうらやましい思い出でもある▼考えてみれば、「そして」とは深い言葉かもしれぬ。その接続詞の後には、自分次第で変えられる未来や可能性がある▼挫折し「そして、泣き続けた」と続けるのか。それとも、「そして、立ち上がった」と続けるのか。三月の「痛み」にこの三文字を贈る。
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