東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2018年10月24日 | Weblog

 締め切りが迫っているのにまったくアイデアが浮かばない。作家にとっては冷や汗ものの状況であろう。なんとしても、原稿用紙のマス目を埋めなければならない▼とにかく行数を増やすための方法にこんなのがあるそうだ。作品の中に兵隊を描く。整列させ、点呼を取る。「一」「二」「三」「四」…。そのたびに改行する。十人の兵隊がいれば、これだけで十行。もっと増やしたければ、「もう一度!」と書けばよい▼武者小路実篤の「秘技」と聞いたことがあるが、真偽のほどはよく分からぬ。「先生、かんべんして」という編集者の声が聞こえてきそうだが、これに比べれば、作家の「点呼」がかわいく思えてくる、中央省庁による障害者雇用の水増しである▼障害者をきちんと雇用しているという体裁のためだろう。対象外の職員三千七百人を不正に計上していた。その分、本来、雇用されるべきだった方がいる。それが単なる水増しではなく、障害者の心まで傷つける行為だとなぜ誰も気がつかなかったか▼調査報告書によれば、在職していない人、視力の弱い人に加え、既に亡くなっていた人まで障害者としてカウントしていたという▼国の機関の法的雇用率2・3%の数合わせのために、この世になき人まで動員していたとはでたらめな「点呼」が過ぎる。猛省と厳格な対応を。「もう一度!」など断じて許されぬ。

 
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】