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今日の筆洗

2018年10月19日 | Weblog

 大昔からぐらぐらと揺れてきた国土にあって、法隆寺の五重塔は千年以上、立派に立っている。地震で倒壊したという記録もない。法隆寺の宮大工棟梁(とうりょう)だった西岡常一さんはその秘密を「がっしりとした大木」のような設計にあると見た。力を受けて大きく揺れても、しなって元に戻る。今なお驚嘆される柔構造などとよばれるつくりだ▼寸法がばらばらで、くせのある木を巧みに組み上げ、そんな構造の建物を実現した。飛鳥時代の棟梁と大工たちの腕、共同作業を成し遂げた力もまた末永く残る建物を実現した要因として称賛している。口伝で先人から伝わった「木組みは人の心組み」を感じるのだという▼地震多発の国で、末永く安全な建物を残そうという意識が、この企業の中では軽くなっていたのであろうか。油圧機器メーカーKYBと子会社による免震・制振装置のデータ改ざん問題である▼建物の揺れを少なくするためのオイルダンパーで、改ざんが判明した。製品は全国各地の公共施設や病院などにも、数多く設置されている▼人命に影響はないというが、業界大手で起きた問題だ。世の中にもたらす建物の安全への不信感は大きい▼不正は十数年にわたって続いていたようだ。似たような問題は東洋ゴムでもあった。先人から伝わり、息づいているはずの耐震への意識は廃れてきているのではないか。不安が募る。

 
 

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