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今日の筆洗

2017年11月24日 | Weblog

 その昔、隠岐島には、こんな習わしがあったという。年貢米を京の御所に送るのが島民の務めだったが、海が荒れ続け、舟が一向に出せぬ年がある。そういう時は風が吹く日に岬に集い、年貢米に火をともす。その煙が宮廷の方角にたなびくのを見て拝むことで、「納税」としたそうだ▼戦前、ある税務官僚はこの風習を「実利的に考えると愚かなことだが、精神的に考えれば誠に心持ちのよい話」だと紹介し、わが国には古(いにしえ)から続く「租税道徳心」があるはずだと納税者に説いたという(日本租税理論学会『税金百名言』)▼さてこちらは「実利的に考えても、精神的に考えても、誠に心持ちの悪い話」である。森友学園への国有地売却を調べていた会計検査院が結果を公表した。百二十二ページの報告書で「根拠が確認できない」といった表現が十回以上も出てくる▼なぜ八億円もの値引きをしたのか。それを検証するために必要な書類が「廃棄」されたり、そもそも「失念」して作られていなかったり▼財務相は「会計検査院で必要とするような文書はきちんと残している」と断言していたが、検査院は「検証を十分に行えない状況」だと厳しく指摘した▼国有地売却の責任者だった財務省理財局長は国税庁長官に栄転し、「租税道徳心」を説く立場に。年貢米ならぬ「道徳心」を焼いた煙が、官邸の方角にたなびいていないか。