アメリカ産の牛肉の輸入を再開しました。消費者が納得する改善策があったとはとても思えませんので、何か駆け引きがあったのでしょう。アメリカが輸出再開を強く望んでいるらしいので、“小泉首相はアメリカの言いなりだ”、と批判するのは良いのですが、本当にそれだけでしょうか。
アメリカ牛のBSE問題で大変な騒ぎになった時、逆に儲かってしまう食肉業者もいます。本書で取り上げられ、ついには逮捕された、浅田満がその代表格です。大阪出身で日本を代表する食肉取り扱い業者ハンナングループの総帥です。
浅田氏は、中学中退後、働き者の丁稚となり、そこから暴力と政治力を駆使し、日本中に食肉のネットワークを張りめぐらし、巨万の富を築き上げた男です。鈴木宗男の親分で自殺した中川一郎氏と親しく、鈴木宗男などは完全に舎弟扱い、呼び捨てで使っていたそうです。
大阪府元知事の横山ノックや、驚くことに、現役の太田房江現府知事すら、自宅に呼びつけるという想像を絶する大物です。政界だけではなく、スポーツ界、芸能界にも顔が広いそうです。挨拶代わりの100万円をねだるように人が集まるとか…。
極端に表に出ることを嫌っているそうで、逮捕されるまでは、めったに記事やニュースにはならない人物ですが、その交流の広さは、本書に出てくるだけでも相当なものです。
松山千春や星野仙一、元横綱の北勝海、他にもプロ野球選手、監督、プロゴルファーなどなど。『なべちゃん、なべちゃん』、と溝口氏が呼んでいたのは、結婚式の司会などで知り合いだった 『なべおさみ』 ではなく、山口組5代目の『渡辺芳則』組長のことだったという話まであります。
その男がどのように現在の立場と冨を築いたかを描きます。筆者によれば、食肉、建設業として彼の成長を支えたのは、“暴力と解放運動や同和問題”。そのいきさつや分析が描かれています。
致命的と思われるBSE問題のさなかですら、それを利用し、国の牛肉買い取り制度などを駆使し、相当の金をむしり取りとうとう逮捕されました。しかし、以前別の事件で逮捕された時も、政治家の見舞いやら、差し入れがあったとか。また今回の逮捕のあと、保釈金はなんと史上最高の20億円!というではないですか。
つまり、今回の輸入再開、これだけすばやい決着になったのが、アメリカだけならまだしも…、まさか、こういったグループや、それに逆らえない国内政治家たちの圧力がかかった、などということだけはカンベンして欲しいと思います。
本書は、講談社ノンフィクション賞、日本ジャーナリスト会議賞、編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞の3賞を同時受賞しています。また溝口氏はこちらでご紹介した、『武富士:サラ金の帝王』 のように、常に氏の取材対象はこわそうな実力者ばかりです。サラ金、山口組、チャイナマフィア、パチンコ業界、創価学会の池田大作氏などを扱っています。
いったい世の中どうなっているんだ!と叫びたくなる一冊です。
食肉の帝王―と暴力で巨富を掴んだ男講談社詳 細 |
http://tokkun.net/jump.htm
『食肉の帝王』溝口敦
講談社:231P:1680円(文庫あり)
BSE牛肉輸入再開
私もこの本を読みました、最初からわかっていましたがこれが日本の昭和時代からの悪の産物です、在日にしてもにしてもこのような問題はもっと公に出すべきだったと思います、今まで日本人の悪い癖として「臭いものに蓋をしろ」でやってきたことがまだ引きずっているのです。
明日、この件についてちょっと書いてみたいと思います
でもこれだけ情報化社会で、マスコミが強い力を持っていますと、あいまいにしておくことの同意を取り付けるのが、難しいかもしれませんね。
世の中どうなっているんだ!という感じですが、
こうした現実もあるのでしょうね。
金は力なり。
力は金なり。
この本が出た後で、逮捕されたというのは、
この本の影響もあったのでしょうか?
もし、本書がきっかけで逮捕されたということなどが本当にすごい調査力ですね。
逆に、捜査当局や権力側は何をやっているんだということにもなりますが…。