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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『私の「戦争論」』吉本隆明・田近伸和

2006年11月25日 | 教養
 

私の戦争論 吉本隆明.jpg

今、日本全体が右傾化していると危惧する声が聞こえます。確かにその通り、小泉首相の訪朝以来、テポドン、ノドンなどのミサイル発射を受け、国防意識は急速に高まり、憲法改正を堂々と掲げる安倍総理大臣がついに登場、麻生外務大臣や中川昭一政調会長は核武装まで議論しようとしています。


“何とかして この動きを止めたい”、というのも、もっともな感情で、少し考えれば、現在が “異常事態” だと感じるはずです。戦後の政治史において、こんな急激な変化はあったでしょうか。川の水が一気に逆流しているようなもので、のんびりしていると呑み込まれてしまう危険を感じます。


実際、よく見るとすでに、自民党だけなく、二大政党のもう一方、民主党の小沢党首も憲法改正論者ですし、首都東京の知事は石原慎太郎氏。護憲、平和で完全理論武装していたはずの公明党も改憲を否定しませんし、社民党、共産党は見るも無残な凋落振り。どうすれば良いのか、拠るすべがありません。

 
一方で、そもそも今までがあまりにも自虐的、土下座外交ばかりで、お金だけは貯めたけれど、日本人の誇りも何もあったもんじゃない。矜持を失った民族の末路は歴史が証明している。ここに来て、やっといくつかのタブーがはずれ、ついに日本人が生き返ったのだという高揚感があります。


まるで60年ずっと耐えてきた魂に、やっと灯がともったかのようです。


また、高校生以上の生徒にも、変化を感じます。彼らと話していますと、拉致事件もそうですが、むしろそれ以上に、中国人による反日デモ。生卵を投げたり、大使館を襲ったり、さらにサッカーアジアカップ時の暴動が、あまりにも衝撃的だったようです。

なぜ自分たち日本人はこんなに嫌われているのか。過去の戦争で日本がどれほど悪いことをしたとしても、少なくとも、サッカー選手は関係ないだろうという感じでしょうか。どこかおかしいという戸惑い、素朴な疑念をいだいたと思います。本能的な、逆の危機感とでもいうようなものです。


いくらこちらが、東アジアの人たちに、“仲良くしましょう” と言っても、相手にされないし、政治的、軍事的な仲間であるはずのアメリカ、ブッシュ政権は、そうすることがまるで当然のようにイラク戦争をはじめてしまい、日本の自衛隊は法律まで変えてでも、それを助けざるを得ない。


ハンチントンは大著、『文明の衝突』 の中で、日本は将来、アメリカにつくか、中国と手を組むか、迷ったあげく、中国側につくと予言しました。歴史的に見れば、放っておけば、日本はそうなってしまうので、アメリカはそれを必死にくいとめろと主張しているわけです。

今の日本は、アメリカにせよ、中国にせよ、どちらかについていけば、本当に平和があるのか、という悩みを抱えているようにも見えます。


いずれにしろ、小泉、安倍政権と続いたことによって、今までの大きな流れが変わったという認識では一致しているように思います。米中、どちらも信頼できない以上、他の国がどうであれ、自律神経を使って、自国のことを考えなければならない段階に意識が高まってきたと思います。


もう、かなり前から、右と左、あるいは、保守VS革新や進歩主義で語る時代ではなくなったと感じられますが、本書の著者、吉本隆明氏 (吉本ばなな氏の父上です) の生き方自体が、それを象徴しているのではないかと感じます。


『言論統制列島 (鈴木邦雄森達也斎藤貴男)』 という本の中で、どなたかが

“昔は、天皇万歳と言っていれば、誰でも右翼になれた。左翼になるには、プロレタリア革命などの勉強が必要で、インテリの多くは、それに惹かれ学生運動をした。今は逆で、権力批判をしていれば、進歩的であるという時代が終わり、国の歴史や文化を語ることのできるものが右翼になれる”、というような趣旨のことを言っていました。


確かに、慰安婦問題南京事件など、教科書の記述だけを鵜呑みにしていて、反対意見を勉強していなければ、今、日本で起きていることが、理解できません。


吉本氏はマルクスを信奉し、かつては新左翼の教組と呼ばれていたかと思うと、あとになっては小沢一郎氏を絶賛。氏の全集でも購入し、部屋にこもって勉強しなければ、正直、本書を読んだだけの、私のような凡人にはとうてい理解を超えています。


本書で、氏はあざやかに、右も左もバッサバサ斬ってしまいます(わかりやすいので、右・左と使いますが…)。「右」は、小林よしのり西部邁・石原慎太郎・西尾幹二新しい歴史教科書をつくる会江藤淳司馬遼太郎 など。「左」=「進歩的民主主義」者は、久米宏・筑紫哲也・岩波書店・朝日新聞 などなど。


編集者の田近氏を、かなり挑発的な聞き手として、戦中、軍国少年だった吉本氏が、どう考えてきたかをべらんめえ調で語ります。どこにもおもねることなく、ご自分で考える姿勢には感心しますが、どうしても未来像が共感を持って響いてきません。 


内田樹氏も、私は非常に好きですが、やがて国家という枠組みはゆるやかに弱まるとどこかに書いていたような気がします(不正確です)。吉本氏も先進国が、工業化から第3次産業に移ることで、国家の解体というものを論じます。


確かに、今、日本と中国が一時的にでも仲直りせざるを得なかったのは、経済的側面、つまりグローバリズムの影響を抜きには考えられません。

国際競争が、これだけ激しくなってくると、利害の一致するものに関しては、時にこうして、靖国問題など、政治を脇においてでも、協力するでしょうが、やがて資源などで、利害が背反する問題が起こった時 (すぐにそうなりそうですが)、競争が激しい分だけよけいに結束しようという動きにならないでしょうか。 


“思想界の巨人” と帯にあります。影響力が強い言論人、世論をリードする知識人と呼ばれる人々が、国境の弱体化を予言しますが、今のところ、韓国も中国も、ロシアも、こと領土問題に関しては、極めて強行です。


国家が解体されるのは日本だけかもしれない、そんな印象をもたざるを得ない一冊でした。


私の「戦争論」

筑摩書房

詳  細


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『私の「戦争論」』吉本隆明・田近伸和 
筑摩書房:249P:735円 


『美と共同体と東大闘争-三島由紀夫VS東大全共闘(討論)』動画 (YouTube ユーチューブ)

2006年11月06日 | 教養


美と共同体と東大闘争.JPG


日本共産党(筆坂秀世)』 をご紹介させていただいて、その本やあるいは拙文よりも、頂戴したコメント、特に学生運動に関するものに刺激されました。

実は以前より、学生運動が盛んだった時の、学生らを惹きつけた理想や理論を知りたくて、本書を読んでいたのですが、レベルが高いというか、観念的というか、おもしろいところと、意味不明なところが半々くらいでしょうか。

もちろん、私自身の無知が一番の原因ですが、ご紹介して、何らかのご意見を伺いたいという一冊です。



例えば、わからない一節を抜粋しますと、時間ということを議論している中で、三島が未来について …


??????? 以下抜粋です ???????



三島『(前略)われわれは未来というものに手を伸ばす時に、そこに闇の中に確かに人がいると思ってこうやってさわってみたらいなかった。アッという時の瞬間の手の握り具合-私はそういうものが未来だと思うのですね。』

全共闘C 『それは時間がイマージュだからじゃないですか。』

三島 『イマージュかもしれないね。ここに何か固いものがあって…ここに壁があれば安心だ…』

全共闘C 『記憶や時代は抹消されてるでしょう。抹消されるわけじゃないですか?』

三島 『それが抹消されないのだね、おれには。』

全共闘C 『時代は抹消されていますよ。』

三島 『時代は抹消されても、その時代の中にある原質みたいなものは抹消されないのだよ。君らたとえば戦後の時代というものを二十年間ね…。』

全共闘C 『だからプレズンスそのものを見よと言い出すやつがいるわけでしょう。』

三島 『そうだ、それはおれも同感だ。』

全共闘C 『だからこそ、弁証法もイマージュというやつがでてくんでしょう。』

三島 『それも同感だ。』

全共闘C 『その時にイマージュとしての時間がこわれるわけですよ。』

三島 『しかしイマージュとしての時間はだね。』

全共闘C 『記憶が抹消されるのは、過去は自立しないわけだし、当然そのアンチテーゼとしてせり上がってきた未来も消えるわけで、その辺の無時間性にどう対処するかが問題であって、過去があるのないのということは意味ないですよね。』

三島 『それはね、君の言うのはね、つまり無時間性というものに逃げ込んでいるのだ。』

全共闘C 『じゃないのだけどね。』

三島 『それはそうだ。つまり、君の言うのはね、おそらくアンフォルメルな未来の形態を現在から過去まで全部のっぺらぼうに…』。


??????? 以上です ???????



一方で、天皇の問題など、非常におもしろい内容も含まれていました。


先日、毎日新聞の在日の記者による、天皇に対する言説が非常に問題になりましたが、全共闘の側の天皇に対する意見を読み、それで今だに、天皇(制度)を強く嫌悪する人がいるのかと思った次第です。

最後に双方が、自分の意見をまとめて、討論を振り返っています。そこで双方とも、相手に矛盾があり、自分が正しかったと主張しているわけですが、私には三島のいわんとすることはわかりましたが、全共闘側の主張はやはり観念的で理解できませんでした。



本書をとりあげました、もう一つの大きな理由は、YouTube で、この時の映像を偶然、見つけたことです。ここでは、分かりやすいところだけ、あるいは、天皇に対する侮辱などが含まれていないところだけで編集されていました。

よろしければご覧下さい。本書の雰囲気が感じられ、大変、刺激的でした。


【三島VS東大全共闘】(1969年5月)

http://www.youtube.com/watch?v=3dKnQ63iUSc  

美と共同体と東大闘争

角川書店

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推薦図書などがあれば、教えていただけるとありがたいです。



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『美と共同体と東大闘争-三島由紀夫VS東大全共闘(討論)』
角川書店:173P:420円 


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『神さまがくれた漢字たち』白川静(監修)山本史也(著)よりみちパン!セ

2006年11月04日 | 教養
 

神様がくれた漢字たち.jpg


文化功労賞 や 文化勲章 など、数々の受賞をされた白川静氏が先日、亡くなられました。きっと日本一の漢字博士でしょう。追悼の意味で、本書を取り上げてみます。

本書は中学生以上を対象に、白川氏の後継者である、山本史也氏が書いた、漢字の成り立ちについての一冊です。よりみちパンセのシリーズに入っています。


当教室 でも漢字検定を実施しています。受験希望者は、英検に劣らず熱心で、その数も多く、親も教師も、生徒にはしっかり漢字を身に付けて欲しいと考えます。

そういう方にうってつけの一冊、と申し上げたいのですが、残念ながら、本書はとても普通の中学生の手に負えるとは思えません。

学校の勉強とは異次元の世界が広がっているからです。

中学生用で売り出されていますので、そのお薦めリストに入っていることが多いのですが、高校生どころか、大学の国文科でちょうど良いのではないかと思われるほど、歴史、文化において密度の高い一冊です。 白川先生と山本先生、お二人の本気度を痛切に感じてしまいます。


白川氏は、熱心な研究によって、従来の漢字解釈を根底から覆してしまった、まさに文化の功労者なのです。従って、その理論の根拠となるものは、中国の古典書物などであり、漢文ですから、易しいはずがないのです。


例えば、『人』 という漢字は、人と人が支えあっている形からできたのだ、と聞いたことがありませんか。私は、子供の頃、学校でも、ある偉いお坊さんからもそう習いました。

ところが、本書では、いくつか根拠を示したあとに “それでは人の尊厳を傷つける” として反論し、以下のように、解説します。

大変に長いので、抜粋しながら紹介します。本当は図での説明が必要ですが…
(出展などの部分は省きます)



■■■ 以下抜粋です ■■■



「人」の字形は、もとは、すこし首をすくめた人を横から見る形、で示されました。(中略)

もとより「人」は、崇高な存在として重んぜられていたわけではありません。かえって「人」は、神に試され、操作され、ときにはそのからだを傷つけられ、また神の意向のままに、たやすく生命を損ねてしまう場合さえあったのです。

たとえば甲骨文には、羊や牛とともに、「南人」 と呼ばれる南方の異族、「羌人」 と呼ばれる西方の異族の多数が捕獲され、生け贄として神にささげられたという内容の記事がしきりに見えます。

(中略) ひどく哀れな「人」の「物語」ではありますが、しかしそれから目をそらすことなく、あったがままの漢字の世界を語りつがねばなりません。


■■■ 抜粋以上です ■■■




省略しすぎて、ちょっと分かりにくいですね。すみません。

要するに…、

「人」の形を、勝手に二人が助け合うなどと、きれいごとで解釈せず、そのかたちは、殺される存在として、肩を落としている姿から来ている。種々の記録を見ればそれがわかる、

ということを、ゆがめないで、きちんと伝えておくことが大切だという解説なのです。


他にも「切り取られた耳」や「棄てられる子」など、もっと悲惨な話しが続きますし、これまでの象形文字や会意文字といった分類、学校で教えていた漢字の成り立ちなど、ことごとく覆されたという印象を持ちます。

まったく新しい世界に、驚きの連続で読了しましたが、こうした新発見、信憑性の高い新説を出し続けた白川氏が亡くなられたのは残念でなりません。立派な後継者がいらっしゃるようなので、中国の漢字文化と日本の文化の違いなどが、さらに具体的な形で解明され続けることを願います。


本書に限らず、貴重な本をたくさん遺していただきました。

謹んで、先生のご冥福をお祈りいたします。

 

神さまがくれた漢字たち

理論社

詳  細

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『神さまがくれた漢字たち』白川静(監修)山本史也(著)よりみちパン!セ
理論社:172P:1260円


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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『スヌーピーの処世哲学』 廣淵升彦

2006年10月14日 | 教養


Snoopy.jpg


こちらのブログに時々コメントを下さる、国際ジャーナリストでエッセイストの廣淵升彦先生。先生の、大変ユニークで、おもしろい、好奇心を刺激する新刊が出版されました。本書です。

副題は、『感性をみがく言葉の力』 とあり、本の帯には 『スヌーピーたちに学ぶユーモア、人情の機微、会話術』 と書いてありますが、まさにその通りの一冊です。


まず、スヌーピーが登場するマンガ 「ピーナッツ」 や、その登場人物の簡単な紹介があります。なんと、「ピーナッツ」は50年!も続いているんです。“サザエさん”と互角です。

そして、サザエさんに、日本的な風景や社会、日常が描かれているように、ピーナッツにはアメリカ的なものが、ぎっしり詰まっているわけです。しかもそれがアメリカにとどまらず、世界中の人の心をとらえてはなさない。


個人主義が発達し、生存競争が激しく、自分をアピールしなければならないアメリカ社会。サザエさんの穏やかさとは対照的ですが、そこで生まれ育ったピーナッツは、よ~く観察してみると、教養豊かな会話や知的ユーモアの宝庫、毒も笑いもあって、“処世哲学”がふんだんにちりばめられているので、それを学んでしまおうというわけです。


本書で紹介される「ピーナッツ」は、4コマ程度が中心ですので、サザエさん以上に、より象徴的に、凝縮した形で、表現されています。お見せした方が早いと思いますので…、こんな感じです。

Snoopy 中.JPG


見にくくて恐縮ですが、例えば、このマンガ、ある出来事がきっかけで、女の子(サリー)が男の子(ライナス)にさんざんの悪態をつき、

どこで会っても、絶対に口をきかない” といって去りますが、最後に男の子が

 もしもボクがライ麦畑を通ってきたらどうする

How about if I were coming through the rye?” と呼びかけています。


なぜこれが、オチになるのか、すんなり分かれば良いのですが、白状しますが、私も本書で学んだ次第です。こういった文化的背景や、英語に関する解説が、マンガに続きます。ピーナッツで使われる英語自体も、妙な副詞や修辞句を用いることのない、しっかりした英文なのですね。“しょせんマンガ” とあなどってはいけません。


廣淵先生はご自分のブログ “ View of the World - Masuhiko Hirobuchi ” でも、本書でも、正しい言葉、生き生きとしたやりとり、そして気の効いたユーモア(できれば高い教養)などを強調されます。


今の日本の言語空間が非常に安易な、単一の言葉で、さまざまな事象を解説し、片付けられてしまっている現実に警鐘を鳴らします。

言葉は、本人が気付く以上に、自分の評価を上げたり、下げたりし、意思伝達の手段であると同時に、思考の源でもある。そこが貧困になれば、個人の思考も、そしてやがては、社会や国家まで貧困な精神が蝕んでしまう。そのことに意識を向けて欲しい、そんな願いを感じる一冊です。


“哲学” とは言っても平明な言葉で解説してありますので、国際人と呼ばれることをめざす夢多き若者から、我々のような英語教師はもちろん、中学生まで興味を持って読めると思います。

純粋にマンガを楽しむのだって“アリ” (あっ、怒られる、もとい“No problem”?)だと思いますよ(笑)。


尚、廣淵先生の作品がおさめられた、別の一冊、日本エッセイスト・クラブが出した 『片手の音 ’05版ベスト・エッセイ集』 も、以前ご紹介しましたので、ご覧いただければ幸いです。





P.S. 
自分の無教養をさらしてしまいますが、実は、私はスヌーピーというキャラクターは見慣れておりますが、それがそもそも「ピーナッツ」から生まれたということすら知りませんでしたので、本来、レビューを書く資格すらあやしいのです。先生、すみません。

でも、まぁ勇気を振り絞って(笑)、書きました。安直な言葉の汚染の片棒を担いでいる身にとっては、耳の痛い話で、本記事が、先生のご著書を汚すことのないことを祈りつつ。


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スヌーピーの処世哲学

海竜社

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『スヌーピーの処世哲学』 廣淵升彦
海竜社:230P:1575円


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↑で、サザエさんを例に出しましたが、そういえば、以前、『 バカモン!波平、ニッポンを叱る(永井一郎) 』をご紹介した折に、唯一コメントをいただけたのは廣淵先生でした。偶然でしょうかね?

それを思い出して、2位とも離されましたし(笑)、記念にこんなバナーを作ってみました。

ややヤケクソ気味でございます(あっ、また怒られる)。よろしければ、応援の1クリックをしていただけると、大変うれしいです。

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『 調理場という戦場 』 斉須政雄

2006年09月08日 | 教養


調理場という戦場 ほぼ日ブックス

朝日出版社

詳   細


 京大生八橋 』 『 学問のすすめ・最中 』 そして tani先輩 から、“筑波大ラーメン” をいただき…、

あっそうそう ysbee さんからはコナコーヒーまでごちそうになったので、料理に関する良い本を思い出しました。

新聞か何かの書評で絶賛されていたので何気なく買ってしまいました。そのまま放置したのを、思い出して読んでみますと、筆者の情熱がこちらに伝わり、途中で読むのをやめたくない稀有の一冊だとわかりました。こういう時は、道端で貴重なものでも拾ったようで、本当にうれしいものです。

筆者の斉須氏は若い頃、フランスへ料理の修業へ行き、底辺から登りつめ、帰国後は自分の店を経営しています。今や、日本のフレンチレストランの最高峰といわれる  「コート・ドール」 のオーナーシェフだそうです。もちろん行ったことはありません(笑)。


以前、“料理の鉄人” という人気テレビ番組がありました。斉須氏もそのレベルの超一流シェフです。テレビで見た鉄人たちもプロ中のプロで、その創造力や、芸術性プラス、現場の統率力や技術は、実に見事で、多くの国民の心をつかみ、料理というものの見方を変えたと言えるでしょう。

当時、塾に来る生徒の中に、料理人になりたいという男の子がかなりいましたから、相当な影響力があったはずです。アメリカでもテレビ放送されたと聞きました。


本書では、一流レストランの調理場がどういうものかを描き、料理を通して、それにとどまらない人間観察、社会、経営、人生などが語られます。

料理の話では、私のような素人でも感心しながら楽しめます。料理人を志す人が読めばきっと多くの示唆を与えるでしょうし、経営者が読んでも、技術者が読んでも、職人が読んでも、高校生が読んでも本物の「プロフェッショナルとは?」ということを教えてくれます。

頑張っている人がさらに頑張れる、うまくいかない人には勇気やヒント与えてくれる、どんな人が読んでも背筋をピンとさせてくれる本で、何度も読み返す価値があると思います。私は二度読みました。


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『 調理場という戦場 』 斉須政雄
朝日出版社:272P:1890円 (文庫も出ています。630円)


■■  仕事場はどこでも戦場 ■■

勉強でも、部活動でも教育は教育です。フリーターが多いと言われますが、そういう若者にとって今、最も刺激的な教育は、プロ中のプロの職業観を聞く時でしょうか。勇気を持って仕事場と言う戦場に出て欲しいですね。そうだなと思われましたら

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『一神教VS多神教』 岸田秀

2006年09月03日 | 教養
 
例えば、“常に笑顔を絶やさず、人付き合いの良い人” のことを、“八方美人で信頼のおけないやつ” と批判することは、決して的外れではありませんよね。(え~と、明石家さんまさんとか?)

逆に、“思慮深くて、慎重な人” は、“決断力のない暗いやつ” になりますし、(今なら福田元官房長官?) さらに単純化すると、“元気で活発な人気者の女の子” は ただの“おてんば” と一言で片付けられたりします(笑)。(い~っぱい、いますよね)


これらは、すべて同じ人物の同じ資質を、肯定的に評価するか、否定的に切って捨てるかだけなのですが、本書の著者、岸田氏は、人間を、 

“理性のある動物” としてではなく、 “本能が壊れた動物” であると規定します。

どう思われますか。哲学的にはこういう言い方は普通なのでしょうか、私はいきなり深く考えてしまいました。同じことの逆の言い方ですよね。う~ん、なるほど、と。 

その、本能のままに行動できない動物である人間は、どうしても必要なものとして、“自我” を持ち始めます。しかし、そもそも自我というのは肉体以外には実体のないものであるため、非常に弱く、当然単独では成り立たず、他人あるいは “神” という存在を意識せざるを得ないのだというわけです。

特に差別、殺戮などをされた経験のある弱い民族 (ユダヤ教、キリスト教、イスラム教信者) は、自分を支えるために、他とは妥協しない強い自我を求めるようになり、他の存在を否定するような、一神教が誕生したというのです。 


海の神、山の神など、何でもあがめてしまう八百万(やおよろず)の神 の日本とは相容れないわけで、そう言われてみると、“なんでそこまでやるの” というような争いは、一神教の国々に多く見られます。逆に、日本人は何を考えているのかわからないと指摘される原因でもありそうです。

本書は、多神教である我々が、一神教というものをどう理解し、付き合うのかのヒントを与えてくれます。インタビュー形式で、テンポ良く読み進められます。

なるほど世界観はこれほどまでに違うということを、政治家ならずとも、特に若い人たちも、よく考えておく必要性を感じました。

以前、ご紹介した 『 世界がわかる宗教社会学入門(橋爪大三郎) 』 も、高校生、大学生にお薦めの一冊でしたが、本書の指摘も新鮮でした。関心のある方にぜひ。


P.S. 実は、岸田氏の著作は好きでいくつも読んでいるのですが、一方で、これまた私の好きな、小谷野敦氏が、『 バカのための読書術 』 の中で、岸田氏の別の著作を “かつては夢中で読んだが、オカルト的と気付いた” というような趣旨のことが書かれており、困ったなぁ~と思って、ご紹介をするのを逡巡しておりました(笑)。そういう意見もあるということを、一応お伝えしておきます。


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一神教vs多神教

新書館

詳 細


『一神教VS多神教』 岸田秀
新書館:249P:1575円

■■ 宗教は難しい ■■

とにかく日本人にとって、苦手なのが宗教。教科書にも載っていませんしね。でも海外に出たい、大きな会社で活躍したい、という生徒は避けて通れません。少しずつ勉強していきましょう。まぁ少し付き合っても良いかと思われましたら、 クリックしていただけるとありがたいです。

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『日本人らしさの構造』 芳賀綏

2006年08月30日 | 教養


全部、覚えてしまいたいし、国語でも社会でも英語でも授業に役立ちそうなものばかりでした。

言語文化論講義と、大学の授業みたいで、ちょっと難しそうな副題が付いていますが、『文化とはそんなに難しいものじゃない』 という考えを紹介し、日本人の特徴を浮き彫りにします。


これまで私が見聞きしたことのあるいろんな、日本人の特徴、エピソードなどが、ほとんど紹介されて、大変役立つ一冊です。興味のある高校生なら十分読めるでしょう。

そもそも人間における言語や文化とは何だろうという、考察から始まります。もちろん言語と文化は不可分ですから、日本語のキーワードでまずは日本文化の姿を探ります。キーワードとなるのは他の文化にあって日本語にないもの、または日本文化にあって他にないものですね。


その指摘は、どんな本でもよくなされますが、本書では例示が非常に奥深く、おもしろいのです。実に数多くの、古典や名著と呼ばれる作品を引用します。ここでも英語文化圏と異なることはもちろんですが、“儒教的発想をする東アジア圏” と、時に文化的にも地政学的にも一くくりにされる韓国、中国との大きな文化的差異が示されます。

この指摘は、ハンチントンの『文明の衝突』 でも明確にされていますね。本書ではさらに、ひょっとしたら“日本と西洋” の差異よりも、“日本と中国(韓国)” の差異の方が大きいのではないかとすら、ほのめかします。

そこまでをまとめる言葉として、筆者は、日本は『凹型文化』 だとします。


“自然との調和・一体化というのが日本人の自然観、宇宙観であり、他律・他人志向の処世を好み、非分析的で成り行き本位の思考方法を持ち、謙遜・自己修養の道徳感覚で、ささやか・陰影・風流という美意識を持つ。 ”  


それが日本人の精神空間なのだということです。さらに続けて、宗教文化や法律、政治にかかわる言語に焦点を当てたり、文法を分析したり、自動詞が多いことを指摘。

例えば 『この電車は全車両禁煙車となっております』 『食堂はあちらになっております』 など、自分たちがそうしているのに、まるで自然現象のような言い方です。(ちょっとわかりにくいかな) その上、慣用句や名付けに見られる特色を考察します。

男子の名前に、誠・正義・孝行などの道徳意識、女子の名に、弥生・小春・小百合など自然に優しいもの。料理やお菓子には、月見・春雨・卯の花・うぐいす餅・さくら餅など。電車は、こだま・やまびこ・しおさい・あさぎり・銀河…。

きりがないのでやめますが、相撲部屋、お酒の名付け、などまで話は及び、海外の『ベートーベン号』という電車や『ケネディー空港』など、人の名を冠したものがほとんどないことも指摘します。


最後には高文化、いわゆる文芸作品についても日本的なるものを紹介、分析します。まだまだ、本当は、ここでご紹介したいことがいっぱい詰まっている一冊で、最初から最後まで本当に興味の尽きない話題で、趣味で読んでおくだけではもったいないくらいでした。(“もったいない” という言葉も日本人的ですね)


生徒ばかりではなく、講師はもちろん、一般の方にも広くお薦めしたい一冊でした。

日本人らしさの構造―言語文化論講義

大修館書店

詳  細

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『日本人らしさの構造』 芳賀綏
大修館書店:315P:2100円


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『なぜ人を殺してはいけないのか』 永井均 VS 小泉義之

2006年07月16日 | 教養

『もう、聞きたくない』 と思うほど、殺人事件が連日、テレビ、新聞で報道されます。

数年前 「朝まで生テレビ」 という番組で、中学生がコメンテーターに対し、「なぜ人を殺してはいけないのですか?」 と疑問を投げかけ、一流の論客たちを驚かせたということがあったそうです。

私も塾の生徒から、『 なぜ勉強するの? 大学に行かなきゃ行けないの? 』 はよく聞かれますが、さすがに、殺人について聞かれたことはありません。

ただ、哲学的な疑問を持っている生徒は、毎年、一定割合はいるように感じています。自分の子どもや、生徒にそう問われたら、いったい何と答えれば良いのでしょうか。
『バカなこと言ってんじゃない!そんなこと当たり前だろ!』 では納得できないから、そもそも、そういう問いが出てくるんでしょうから。

本書は全部で三章の構成です。“人気哲学者” のお二人が各一章を書き、もう一章はお二人の対談形式です。対談というよりバトル、はっきりいえばけんかです。双方、気合充分、好戦的です。一方が「殺すべきだ」 と挑発すれば、他方はより根源的な問いかけをします。

が、この対談の章は、私には議論がかみ合っているようには思えませんでした。対談以外の、各々が別々に書かれた内容のほうがずっと読みやすく、私はどちらかといえば永井氏の考えに惹かれます。

仮に中学生が『なぜ人を殺してはいけないのか』 と聞いてきたら何と答えますか?永井氏は、少なくとも、以下のように学校の先生方は答えて欲しいそうです。

『君の問いはまったく正当な問いであり、そういう問いをどこまでもまっすぐに、常識と妥協させずに、とことん理詰めで探求する、哲学という領域がある。それは学習すべき学問なのではなく、自分自身でするものなのだ。そしてそれこそが本来の学問なのだ。だから本当は、他のあらゆる学問は、そういう問いと、それに基づく君自身の探求とに支えられて、はじめて意味を持つのだ。だから、君がそういう疑問を持ったなら、君ははじめて本当の学問ができる端緒に立ったんだ』


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『 なぜ人を殺してはいけないのか? 』永井均 VS 小泉義之
河出書房新社:148P:1470円


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なぜ人を殺してはいけないのか?

河出書房新社

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『君主論』マキアヴェリ(池田康 訳)

2006年07月09日 | 教養
  
『君主論』 のわかりやすい新訳が出たと、友人から聞いて読んでみました。また、ある人から、このブログで『もうちょっと古典を紹介して』 と言われました(笑)。

学生時代に君主論だけでなく、政策論などを読みましたが、インパクトがあったというのは覚えていますが、とても難解で、内容を理解したとは言えませんでした。外国の古典を読むとなると、まずこちらの歴史的教養を試されているようで、なかなか手が出せません。

マキアヴェリについても、君主論そのものからではなく、それを解説した日本人の本で、マキアヴェリを理解していたように思います。

本書はすでに何種類も出ている訳書の中でも際立って、読みやすく書かれておりお薦めできます。他のものだと、失礼ながらこれは日本語か?と思わせるほどのものもあったように記憶しています。250ページほどの厚さですが、本文は半分くらいで、残りはすべて注釈です。

もう一つ、外国の古典を読むときの難点は、本文をいったん離れて注釈を読むことのわずらわしさですよね。本書の注釈は非常に読みやすいですし、訳がこなれているために特に注釈を無視してでもマキアヴェリの言いたいことは理解できるのではないでしょうか。

権謀術数の元祖のように言われますが、当時の君主が間違わないように、また民衆が君主にだまされないようにという知恵が詰まった一冊で、申し上げるまでもなく、現代社会にもそのまま使える名著だと思います。多くの人に読んで欲しいですね。

昔、会田雄次だと思うのですが、何かの著書の中で、なぜ日本人はこうも戦略がないのかと嘆いたあと、 “日本の政治家はもっと古典を読むべきで、欧米の指導者だけでなく、イラクのフセインであれ、金日成であれ、君主論や孫子など、暗記するほど読んでいる” と指摘していたのを覚えています。


新訳 君主論

中央公論新社

詳  細

http://tokkun.net/jump.htm


『君主論』マキアヴェリ(池田康 訳)
中央公論新社:244P:820円


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『文明の衝突』 サミュエル・ハンチントン

2006年06月18日 | 教養
 
少し前の田中宇氏の、メルマガのタイトルは、【文明の衝突と東チモール】 でした。要旨は、【アメリカは、冷戦後、イスラム諸国を相手に、文明の衝突をたくらみ、世界を反米に向かわせることに成功した。しかし不必要に過激な行動が、反米グループの中でも多極化を生み、東チモールがそのあおりを受け混乱している】 と理解しました。

スポーツは政治や文化とは別だ、という見方もありますが、ワールドカップサッカーなどはそう思えません。何となく文明・文化(同義ではありませんが) ぶつかっていると感じてしまいます。

日本選手は行儀が良いと感じますし、クロアチア人にとって、サッカーは生活そのものという報道もあります。イギリスは紳士の国、といいながら、フーリガンは何でしょう。 中国でのアジアカップの騒ぎは? 

そもそもが、戦争で勝ち取った相手の将軍の首を蹴りまわして、戦果を称えたのが起源だそうですから、サッカーは武器を持たない戦争だと断言する専門家も多くいますね。自国の文化の優秀さを競うという気持ちが、世界中を熱狂させるのではないかと思うわけです。

そんなことから、今日は、その、文明の衝突を取り上げます。世界中に衝撃を与えた一冊というのは、大げさでしょうか? だいぶ前に読み、あの中国の反日デモを見てもう一度読み、今日また、パラパラと読みかえしてみました。

9・11などテロの過激化やアメリカがアフガニスタン、イラクなどと戦争をすることを予言した形になっていたハンチントン氏 (田中氏の嫌いなハーバード大の教授) が、世界の文明を8つに分けて論じています。

中華と日本は別文明だということは学者の中ではほぼ同意ができているようです。キリスト教を信ずる西欧文明はすでに成熟期に入っており、徐々に衰退していく傾向であり、代わって発展してくるのが、中華文明、イスラム文明、インドを中心とした南アジアのヒンドゥー文明。

本書が書かれた時点(98年)で衝突が起こる可能性が最も高いのがイスラムだとしていたわけです。その後、中国が急速に成長を遂げた時に、衝突の確率が高いシナリオは、 “中華文明 VS 西欧文明” ですが、氏の予測では、日本は迷いに迷って、アメリカではなく、中国と共同歩調を取る方を選ぶのではないかというものでした。(2010年頃の推測として書かれています)

昨今のニュースを見ていると信じがたいのですが、何と言っても、ハンチントン氏の分析です。田中氏なら、それも、日本にショックを与える謀略だと指摘するでしょうか?

本書は 『文明』 を視座に、さまざまな紛争や歴史的できごとの分析、将来予測などが書かれています。分厚い本で、気軽に読める類ではないのですが、非常に刺激的ですので、歴史に興味のある生徒さんにも薦めたい一冊です。アメリカ社会に興味のある方は、同氏の『分断されるアメリカ』 もお薦めです。


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文明の衝突

集英社

詳 細


『文明の衝突』サミュエル・ハンチントン
集英社:554p:2940円



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本当に、目を疑ったのですが にほんブログ村 本ブログへ でのランキングが 1位 になっておりました。ついこの前まで大差を付けられ、相手の強さに感心し、半分、あきらめていたので、大いに驚き、感激しました。ありがとうございます。

(実は2位と1位の差は、私の場合は、プライドの問題などではまったくなく、見ていただける数が大きく違うということです。偉そうで恐縮ですが、わずかな経験から申し上げますと、2位から1位になりますと、そこからのアクセスは倍増します。したがって逆に落ちた時には、半減しました。物販・アフィリエイトなどを中心にしているサイトでは死活問題なんでしょうか?素人ながら、多くのサイトがクリックをうながすのは“はげみ”であり、“客”の数が違うということだと理解しました)

私も、これまでのように、偉そうに、バナーを貼って、置いておくだけでなく、ランキングで応援して欲しいなら、きちんとお願いをしなければならないということも分かりました。今後は目障りにならない程度に、コメントさせていただきます。

たとえ一瞬に終わるにせよ、再び、1位に押し上げていただいたのですから、これでまた、すぐに落ちますと、見ている生徒から “カッコわり~” となりそうです(確実になります) ので、1位に恥じない記事がアップできるように努力いたします。

そして、1位キープだけではつらいので、次の目標は、最大のサイトらしい  で、10位以内。そして、 で、遊馬道さんとのカップル制覇です。(アベックというのは死語に近い、歳がバレバレだと、教えていただきました(笑))。


(ここ数日ランキングの話ばかりで、不愉快に思われる方もおられるかもしれません。ご容赦下さい)

『武士道』 新渡戸稲造 

2006年06月12日 | 教養
 

日本人以上に、外国人が“サムライ” に惹かれているようにも思います。今日はサムライたちが世界を驚かすことを夢見て、『武士道(the Soul of Japan)』 を取り上げ、世界レベルの偉人、Dr.Nitobe を紹介します。

5000円札のデザインが樋口一葉に変わりましたが、お札のおかげで新渡戸稲造の知名度はぐんと上がりました。しかし、それでも彼の活躍に比べれば、ずっと低いんです。

彼は、「少年よ、大志を抱け」 と語ったクラーク博士の教え子。芥川龍之介の先生であり、その小説「手巾(ハンケチ)」 のモデルですが、いずれも新渡戸より相手のほうが有名です。

しかし彼、新渡戸稲造こそが近代日本の最初の国際人であり、そして、それを可能にしたのは、なんといっても、彼の抜群の英語力です。

太平洋の架け橋になりたいと願い、東大を中退し、米、独に留学、58歳で国際連盟事務局次長に就任。欧州を演説してまわり、アインシュタイン、キューリー夫人、HGウェルズなど当時の科学者、文化人と議論を戦わせていたそうです。

「我、願わくば太平洋の架け橋にならん」 とは新渡戸が東大の入試面接で語ったといわれる言葉ですが、その精神は100年後、今でも日本の外務大臣などはこれを紹介し、ブッシュ米大統領が国会演説で触れるなど、外交の場に生きています。

37歳で “Bushido : the Soul of Japan(武士道)” を英語で出版しました。その日本語訳が本書です。25ヶ国語にも翻訳され、エジソンの愛読書であり、文人外交官の駐米英国大使のブライス卿によって「英文学の珠玉」と絶賛されたほどすばらしい英文です。

これを読んで感銘を受けていた当時のアメリカ大統領セオドア・ルーズベルトは、60冊を購入し、友人に配布しただけでなく、「キリスト教文明に勝るとも劣らない高い精神文明を持った極東の小国を世界地図から消してはならない」 と日露講和の仲介をしたと言われています。当時としては日米関係を築き、日本を救った大功労者です。

お気付きでしたでしょうか、新渡戸稲造の5000円札にだけ世界地図が(太平洋が広々と)描かれていたのはそういう訳なのです。夢の実現のため、弟子たちによれば、睡魔に襲われたときは井戸端で水を浴びてから勉強を続けたということです。

英文科に進みたい高校生。このレベルのものが読めれば、英文科でも優等生間違いなしです。原書にチャレンジしてみて下さい。

5000円札から新渡戸が消えたとしても、その志、そして『 Soul of Japan 』 を多くのサムライたちが引き継いでくれるでしょう。今日の試合、負ければ切腹!のサムライ魂、は無茶ですが(笑)、命がけの戦いを期待しましょう。


p.s. 日本海側の架け橋が全部崩れていますね。


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武士道

岩波書店

詳細


葉隠―武士と「奉公」

講談社

詳細

『武士道』 新渡戸稲造
岩波書店:159P:420円 

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武士道』 新渡戸稲造    サムライ  ジーコジャパン

『封印される不平等』 橘木俊詔

2006年05月20日 | 教養

 
小泉政権というか、景気回復後の日本のキーワードの一つが、格差社会ですね。山田昌弘氏の『希望格差社会』は、まだご紹介していませんが、かなりのインパクトがありましたし、三浦展氏の『下流社会』 の売れ行きはものすごいですね。内田樹氏も『街場の現代思想』 でヨーロッパ型の格差社会は、日本には適切ではないと警告しています。

実際はどうなんでしょうか。格差が広がっていると感じることがあるでしょうか。私は学習塾で教えていて感じるのは、全体の学力低下とともに、かなり上と下の学力差が大きくなっているということです。公立学校が前向きにこの問題に取り組まなければ、さらに広がるのではないかと思っております。

本書は経済学者の橘木氏(京都大学助教授)が中心になって、教育学者の苅谷剛彦氏、ジャーナリストの斉藤貴男氏、社会学者の佐藤俊樹氏、4人の座談会を収録した第1部と、それを踏まえた橘木氏が実証的、論理的に日本の不平等を分析した第2部からなっています。

いずれの方も社会の不平等に関する著作があり、現在の日本社会の不平等化を懸念しています。ただ不平等と言ってもさまざまな観点があります。

ご存知のように、苅谷氏は『教育改革の幻想』 などの著作で、親の収入が直接、子供の受ける教育の格差に直結していることをデータを用いて示しました。東大生の親の年収がかなり高いというデータです。経済学的に見れば、所得の再分配の問題があります。

今所得税の最高税率が20年前の約半分に引き下げられましたから、相続税が現在のままであれば、これは結果の平等ではなく、次の世代にとっては、機会の平等に反するということになります。最低賃金という法律があってもそれは生活保護費にも満たない額であり無意味だというわけです。

フリーターの問題もあります。今年は改善されたとはいえ、今の就職難に遭遇している人々は、何年かたって、熟練労働者になれるのかという問題です。なれなければおそらく生涯にわたって収入は上がらないということになります。

年金問題を考えれば、同世代の中だけでなく、世代間の不公平があります。少子化という現象をどのように克服し、世代間の負担の公平を図るのかというのは大問題ですね。まさに赤川学氏が『子どもが減って何が悪いか!』 で展開した主張です。

他にもいろいろな観点で不平等が語られます。同じ“不平等”を扱う専門家どうしでも、例えば “アメリカは非階層社会” とか “スウェーデンは福祉国家” などといった一般的なテーゼにおいて、かなり見解が異なるのも興味深かったです。“不平等入門”としてお薦めします。本書から、さらに気に入った方の著作を読むのがよいでしょう。

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『封印される不平等』橘木俊詔
東洋経済新報社:233P:1890円



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封印される不平等

東洋経済新報社

詳  細


『日本人の生き方』 会田雄次

2006年05月07日 | 教養

もうかなり以前、1976年に出された本です。すでに何度も読んでいましたが、他人に貸しているうちに、どこかへいってしまったため、もう一度、今年購入して読んでみました。

やはり同じような感動がありました。わずか80ページ、厚さにすれば5ミリあるかどうかの薄い本です。特に高校生や大学生に読んでもらいたい一冊です。

アメリカ人、イラク人、イスラエル人、中国人、北朝鮮人、何人でもいいのですが、「~人」と聞けば、ぼんやりイメージがわきます、わいてしまいます。もちろん人は人種より、個性によって評価される「べき」ではありますが…、それを戒めても詮無いことで、メディアの議論も常にそのようになされます。

では日本人は一体どういう国民なのでしょうか?「同じ日本人であっても、僕と君とは違う人格だ」と主張するのは、自由で当然ですが、同じ日本人で、同じ親とか同じ世代、または性別、出身地、学校だとなれば、他から見れば、それは一つのくくり(まとまり)になってしまいます。

では日本人をどうくくればよいのか、実際にくく(ら)れるのか?皆さんはどのようにくくりますか?あくまでくくりを否定しますか?もし、自分の思いと違うくくり方をされていたら、どうするか、そんな事を考えさせてくれる一冊です。

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日本人の生き方

講談社

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『日本人の生き方』会田雄次
講談社:79P:525円

『食品の裏側』安部司

2006年04月25日 | 教養

                       

『痛烈な内部告発書である。食品添加物の専門商社の敏腕セールスマンだった著者が、食品メーカーの“手口”を次々に暴露していく。』というのが日経ビジネスの書評の書き出しです。衝撃的で、私も『う~ん』とうならざるを得ませんでした。

廃棄寸前のとても食べられないクズ肉も30種類の食品添加物で、『激安!人気ミートボール』に化け、色の悪い低級タラコが添加物に一晩漬けるだけで、赤ちゃんの肌のようなつやつやの高級明太子に変身!サボテンに寄生する虫をすりつぶして染めた「健康飲料」!?そんな例がたくさん紹介され、具体的に何が安全かどうかは疑わしいというのです。その根拠は役所の行うラットの実験の仕方、食品衛生法の不備だと指摘します。

私もミートボールや明太子が好きなだけでなく、胃を手術したことがあるため、医者に勧められ、コーヒーにミルクを入れて飲みますが、いわゆる“コーヒーフレッシュ”、ファミリーレストランやコーヒーショップでなどで、ただで出てくるあれです。何とその正体は、植物油に水を混ぜ、添加物で白く濁らせ、長持ちし、ミルク風にするため、さらにたくさんの添加物を入れたシロモノ。本書を読んでしまったらとても飲めません。牛乳を使うよりずっと安上がりで長持ちするんだそうです。容器が小さいためにそれを表示する義務はないし、大きなケースの方にも一言も“牛乳”とは書かれていないからもちろん、合法。

と、こんな話を他の先生としていると、タイミングよく(悪くかな?)、今日の彼のお昼はコンビニのおにぎり。そこで、記念撮影です。すると

          

ホントだ、本書に書いてあった通り。長くなりますので、説明しませんが、食品添加物の表示は9種類くらいだけれど、実際は…。かなりの問題が表示にあるということです。

『食育』という言葉ができ、子どもの食、すなわち家庭でも食がおかしい、“切れる子ども”との関連や、学力との関連などにまで言及されています。そして食品添加物はアレルギーやアトピーなどの関連も取りざたされていますね。

実際、うちの教室で生徒たちに食事について聞いてみますと、しっかり気を配っている家庭もありますが、朝ごはん抜きや、インスタント食品ばかりという生徒が信じられないほどいます。また近くの食品スーパーの安売りには長蛇の列ができます。お母さんのおにぎりより、コンビニのおにぎりの方がおいしいという生徒も多いです。

筆者はメーカーや行政だけでなく、消費者が安いもの、便利な食事を求めることも戒めます。が、食品を作っている人が『自分なら絶対食べないけど…』などというセリフがどこにでもあるそうで、『ちょっと待ってよ~』と言いたくなる一冊でした。


食品の裏側―みんな大好きな食品添加物

東洋経済新報社

詳  細

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『食品の裏側』安部司
 東洋経済新報社:244p:1470円


『村松友視の東海道中膝栗毛』村松友視

2006年04月15日 | 教養
 
東海道中膝栗毛は、日本史の教科書にも出ている十返舎一九が残した江戸時代の代表作品ですね。本書はそれを村上友視氏が“大胆に”現代語に訳したものです。私は不勉強ですから、オリジナルとの対比は専門家に任せますが、我々日本人はなぜこういうお話を教科書に載せてまで読み続けるのでしょうか?

実におもしろい本でした。残念なことに、今、生徒たちに『君たちはヤジキタコンビだなぁ』と言っても、ほとんど通じません。プロレスの味方『村松友視』なら知っている生徒が時々います。(おそらく100年後の日本史の教科書には出ないでしょうが(笑))

弥次さん喜多さんの名コンビがくりひろげるお笑い道中記ですが、だじゃれや、バカ話だけでなく、そもそもなぜ二人は旅に出たのか、宿場の様子や、各地の名物などもうまく話に織り込まれており、楽しみながら読者も一緒に東海道を下っていきます。品川、小田原、浜松と…。

江戸時代の人々が目の前に生き生きとよみがえったような感覚に導いてくれます。古典嫌いな人が読めば、それが一発で治る薬にもなるというのは言い過ぎかも知れませんが、とにかくおもしろい一冊で、旅に出たくなる人までいるかも知れません。古典の魅力は案外こんなところにあるのかなと思わされた本でした。

http://tokkun.net/jump.htm
村松友視の東海道中膝栗毛

講談社

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『村松友視の東海道中膝栗毛』村松友視
講談社:309p:1260円