新年にふさわしい一冊だと思います。
数多くの著作のある司馬遼太郎氏ですが、子ども向けに書かれたのは、本書におさめられている二作品だけだそうです。
一つは本書の書名である 『二十一世紀に生きる君たちへ』。これは小学校六年生の教科書に採用されています。もう一作品は 『洪庵のたいまつ』 という、緒方洪庵の生涯を扱ったもので、こちらは五年生の教科書に載っています。
自然との共生、他人への思いやり、歴史の重みを、前者はストレートに、後者は洪庵の生き方を通して、21世紀を生きる子どもたちに語りかけています。 カバーには“むだのない、考え抜かれた名文が私達の感動をよび起します”とあります。
どんな内容か、それぞれ書き出しをご紹介してみましょう。
■■■ 二十一世紀に生きる君たちへ ■■■
私は歴史小説を書いてきた。
もともと歴史が好きなのである。両親を愛するようにして、歴史を愛している。
歴史とはなんでしょう、と聞かれるとき、
「それは、大きな世界です。かつて存在した何億という人生がそこにつめこまれている世界なのです。」と、答えることにしている。
私には、幸い、この世にたくさんのすばらしい友人がいる。
歴史の中にもいる。そこには、この世ではもとめがたいほどにすばらしい人たちがいて、私の日常を、はげましたり、なぐさめたりしてくれているのである。
■■■ 洪庵のたいまつ ■■■
世のためにつくした人の一生ほど、美しいものはない。
ここでは、特に美しい生涯を送った人について語りたい。
緒方洪庵のことである。
この人は、江戸末期に生まれた。
医者であった。
彼は名を求めず、利を求めなかった。
あふれるほどの実力がありながら、しかも他人のために生き続けた。そういう生涯は、はるかな山河のように、実に美しく思えるのである。
といって、洪庵は変人ではなかった。どの村やどの町内にもいそうな、ごくふつうのおだやかな人がらの人だった。
ホリエモンや村上ファンドの村上氏、ボクシングの亀田選手など、何でもあけすけに言うことがウケて、マスコミもそういうキャラクターを持ち上げるという世相です。かつては、ビートたけしさんやさんまさんなど、コメディアンが人の本音やあさましさをネタにしていただけのような気がしますが、もちろん今はお二人とも大物スターです。
昔は裏でこっそりと言ってきたことがどんどん表に出てきた印象で、司馬遼太郎がここで語っていることが、子どもたちに響くかどうか…。いやむしろ、大人たちが読むべきか。 私も繰り返し読みました。
(当教室の中川にある集団指導部門は、“中川適塾” と言いますが、まさに洪庵の築き上げた適塾の理想を、少しでも現代に引き継ぎたいと考えてのものです)
司馬氏は96年に亡くなっていますが、自分が21世紀を生きられないということを覚悟した上でのメッセージで、本書の他に、「このままではこの国は滅びる」という危機感が書かせた、“日本人への遺言” という本もありました。
本書は、そういう時代を生きていかねばならない子どもたちに、何をしたらよいのか、何のために生きるのかを伝えたいという意思(遺志)を感じます。美しい写真がふんだんに使われた一冊で、司馬氏の言葉とともに印象深い本になっています。
生徒諸君!お年玉のことばかり気にしてないで(笑)、お年玉をもらったら、たまにはこういうまじめな本を買ってみて下さいね。
■■ ランキング、1位でスタートです ■■
おかげさまで、昨年は大変ありがたいことに、両方のランキングとも1位で締めくくることができました。ありがとうございました。
こうなりますと、理論上、あとは落ちるだけですが(笑)、そう簡単に負けるわけにもいかず、どこまで続けられるのか楽しみながら挑戦します。なるべくお役に立てるような良書を取り上げたいと思いますので、どうか昨年同様、応援下さるよう、よろしくお願いします。
http://tokkun.net/jump.htm 【当教室HPへ】
『二十一世紀に生きる君たちへ』 司馬遼太郎
世界文化社:47P:1260円
二十一世紀に生きる君たちへ 世界文化社 詳 細 |
P.S. 私はまだ入手しておりませんが、ドナルドキーンさんが英訳したものがあるようです。知りませんでした。こちらもすぐに見てみたいと思っております。
↓
対訳 21世紀に生きる君たちへ 朝日出版社 詳 細 |
『21世紀に生きる君たちへ』司馬遼太郎・ドナルドキーン 訳・ロバートミンツァー 訳 朝日出版社:41P:893円
この司馬さんの本は去年、小5の子供に買ってあげました。これをきっかけに「坂の上の雲」や「竜馬がゆく」などを読んでくれないかなあと、親は画策しておりましたが、まだ大人になっていないのか、読んでくれません。
わざとらしく全巻本棚に揃えているのですが。
でもVIVAさんがご紹介してくださった今までの本の中からは子供も読んでみたい物を選んで、
「これ買っておいてね。」と親に注文し、
買ってきておくと、風呂場やトイレにまで持っていってむさぼるように読んでおります。
その力を勉強にも発揮してくれ~と親は願っているのですが、読書にはまっている息子には
何を言っても無駄のようです。
洪庵のたいまつに書かれている「世のためにつくした人の一生ほど、美しいものはない。」というのを、子供も自然に感じるのか、そういう人の逸話は好んで読んだり、聞きたがったりしますね。
買ってみようかな?
昨日はコメント欄でお手数おかけしてすみませんでした。
旧年中は大変お世話になりました、今年も旧年と相変わりませぬご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。
お久しぶりです。親は同じようなことを考えますね(笑)。小学生で「坂の上の雲」や「竜馬がゆく」を読めたらすごいですよね。時々いるんですよ、うちの塾にも。でも年齢相応のものの方が、良いような気がします、特に中学生くらいまでは。
トイレにまで持ち込むようになれば、すでに完璧ですよ。今年もいくつか参考にしていただけるような本をご紹介できると良いのですが…。よろしくお願いします。
内容ももちろん心に残ると思いますよ。
明けましておめでとうございまーす!
やっと開きました!Yahoo~です。今まで3週間ほど、VIVAさんと他の方のブログが開かなかったんです。その間2度だけ開くことはできても、コメントを残そうとするとウィンドウがクローズする状態になって、全くアウト!でした。
何かハックされてる感じがしたので、暮れに入って思い切ってシステムから再インストールしました。その代わりIDが変わったためMacのブログを再構築しなくてはいけないので、急遽臨時のブログをexciteでスタートしました。
楽園通信もysbeeもすでに使用済みだったのでブログ名は『米流時評』、exciteブログでの名前はysbee-Macで、今日のURLからリンクしてます。サダムの速報を書きたかったのがその理由。もう旧聞になってしまいましたが、ぜひお越し下さい。
このあと、また今日の記事にコメントしますね。(^_^)Y
私自身西洋史専攻だったので、物事を大局から見る目が育ったように思えます(小人ですが…)。特に最近のように目まぐるしく激変する世界の情勢を理解するには、100年ぐらい時を経た目で考察しないと、時代の渦巻きに翻弄されてしまいそうです。
温故知新とはよく言ったもので、すべての現象はその由来を探ればこれから先のベクトルも見えてくるんじゃないでしょうか。年を取れば取るほど、未来の足下が明るく見えてくるというのは真理でしょうね。一応人生のUターン地点をとうに過ぎているので、そこらへんも徐々に納得できてきました。年を取るってなかなか悪くないですよ~。(これも一種のレジスタンスというやつでしょうか?)
素晴らしい内容だったのでその後すぐに買いました。
最近は定期的に読んでいるのですが、読むたびにわかってくることがあるような気がします。
現在の社会で起きている問題は、結局は思いやりのなさ、やさしさの欠如によるもの。
司馬氏はすでに見通していたのだと思います。
人間が生きていく上で、その年代年代で巡りあうべき書というものがあるかと思いますが
小学校高学年で読むべき書だと思います。
小学校の卒業式で、今後何かあった際はこの本を読みなさいと言って全員に配布したら良いのではないでしょうか。
やさしさは本能ではなく訓練によって身につけるもの
というようなフレーズがあるのですが
その訓練が教育なんでしょうね。
私は、はっきりとものをいってしまうので
敵を造ってしまうことや傷つけてしまうことがあります。
自覚していますが、もっと、気をつけなくてはと思います。
よいご本のようですね。今年も宜しくお願いします。