TOBA-BLOG 別館

TOBA作品のための別館
オリジナル水辺ノ世界の作品を掲載

「海一族と山一族」14

2016年09月06日 | T.B.1998年

「あらら」

ハルカが海面を眺める。

「この辺りはダメね。
 今日は引き返しましょう」

立ち上がると、
舟を漕ぐソウタに言う。

はぁ、と
同じく海面を覗き込み
彼もため息をつく。

「ここ最近、多いな」


「どうした事だ?」

いつもより早い時間に
港に戻ってくる舟の多さに
ミツグは声を掛ける。

「ああ、ほら見てみろ
 数日は休漁だ」

指さされた海面が
赤く濁っている。

「……赤潮」

「あれがくると
 休みが増えるよ」

いやいや、と
違うだろとミツグは笑う。

「たまには網の補修をしたらどうだ。
 相方頼みにしていたら
 そのうち愛想を尽かされるぞ」
「言うなってそれは」

そうやって、暫く雑談をした後
ミツグはその場を離れる。

「回数が増えている」

ぽつりと静かに呟く。

赤潮は
珍しい事ではあるが
希に起こる事。

「まだ」

まだ、村人は気付いていない。
それを含め
あちらこちらで
小さい異変が起きている。

ある水場が汚れている事。
一つの井戸が涸れた事。
野菜の不作がにわかに起こっている事。

一つだけならば
今回はそういう物かもしれないと
思うだけに留まる。

そんな事。

「早く、異変を鎮めなければ」

沢山の異変が繋がっていると
村人が気付くその前に。


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