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中国の北朝鮮制裁本気化、北の石炭輸出激減で中北関係激変、双方で悪口の交換激化、

2017年05月10日 08時24分38秒 | thinklive

中国と北朝鮮の関係に異変が生じている。

国連安保理・北朝鮮制裁委員会によると、北朝鮮の石炭輸出量は3月期に6342トンにまで減少した。1月期の144万トン、2月期の123万トンと比べると、壊滅的な数字だ。最大の輸入国だった中国が輸入をストップしたことが大きい。従来、中国の北朝鮮制裁は制裁そのものには合意しておきながらも、各種の抜け穴、口実を使って貿易を継続していたのだ。ところが今年2月になって中国政府は制裁の厳格な履行を宣言し、実際に石炭貿易がストップしたとみられる。

異変は貿易統計のみならず、官制メディアを使った舌戦にまで発展している。中国の人民日報や環球時報は北朝鮮の核実験及びミサイル発射実験について厳しく非難した。

中国メディアが強い言論統制下に置かれているのは周知の事実だ。2013年には鄧聿文・学習時報副編集長(当時)が「中国は北朝鮮を見捨てるべきだ」と題した記事を発表したが、同氏は停職処分を受け、記事はネットから削除された。4年後の今は中国官制メディアが先頭切って北朝鮮批判を展開しており、まさに隔世の感がある。

環球時報にいたっては「6回目の核実験が行われた場合、原油供給を大幅に縮小する」という脅しめいた文章まで掲載した。中国からの原油共有は北朝鮮にとっては生命線だ。

環球時報の論説は先走りが多く、政権の意向を代表しているとは言い難いが、それでも官制メディアの端くれであることに違いはない。北朝鮮にとっては猛烈なプレッシャーとなった。

米国は今、北朝鮮の核開発阻止に本気の対応を示している。安全保障の原則から見て当然の行動と受け止めるべきだろう。

上述したように目標達成か否かによって外交を判断するのであれば、米国が北朝鮮による米本土を射程に収めた核ミサイル開発の阻止を絶対条件にすることは間違いない。さまざまな交渉、妥協が行われるだろうが、米国にとっての譲れない一線は北朝鮮に長距離ICBMを保有させないことである。

こうした前提を理解すれば、中国の姿勢の変化も理解できる。中国と北朝鮮という変数だけを見れば"時すでに遅し"だが、米国が実際に軍事行動に移りかねないという局面を迎えた今、北朝鮮の核開発阻止に関する優先順位は上がり、中国共産党も政治的リソースを使ってまで北朝鮮政策を変化させる時期を迎えたのだ。

本気モードになった米国と北朝鮮がどのように交渉するのかが主軸だが、日中韓の立場に立てば、両国の交渉にどのように関わり、どれだけ国益を引き出せるかが問われている。北朝鮮に対して一番多くのカードを持つ中国が先行している中、日本はどのように国益を得られるだろうか。[筆者] 高口康太 ジャーナリスト、翻訳家。

 

 


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