経産省によれば、2016年のインターネット通販市場規模は15.1兆円で、5年前と比較して1.8倍に増加した。これが、今後はさらに増えると予測されている。2020年には20兆円を超え、最終的には小売全体の2割を占める60兆円市場にまで成長するという。
つまり、若干のハレーションを経て、インターネット通販は今後も継続的にその量を増やしていき、宅配現場の仕事量は将来的には今の4倍になると言われている。
さて、今回のヤマトの値上げ提案で、おそらくアマゾンも一定の値上げを飲まざるを得ないだろう。なにしろ、ヤマト以外にアマゾンの荷物を運べるパートナーはいないのだから。
その結果、ヤマトが目論むような20%の値上げになるのか、タフな交渉で5%程度の値上げにしかならないのかはまだわからないが、1つ確実に言えることがある。アマゾンは値上げを受け入れる代わりに、荷主として交換条件をヤマトに突き付けるはずだ。それは、今後も増加する荷物を安定的に受け入れられるように投資をすることである。
ヤマトの歴史は、荷主の要望を受け入れてきたことによる発展の歴史だ。故小倉昌男会長は「サービスが第一で、利益はその後についてくる」という経営哲学だった。荷主が「なんとかしてくれ」と言えば、必死になってなんとかする方法を考えイノベーションを実現するのが、ヤマト運輸という企業なのだ。
近年の宅配業界のイノベーションで、面白い事例がある。ヤフオクを利用する人はよくご存じの「はこBOON」というサービスだ。
たとえば、東京都内から同じ都内に100サイズの荷物を送る場合、コンビニに持ち込んでヤマトの宅急便を頼むと、運賃は1088円になる。ところが、仮にこの100サイズの大きさの荷物が2キログラム以下なら、ファミリーマートに持ち込んで「はこBOON」で頼むと494円で運んでくれる。*5割強も安くなる、
そして面白いところは、「はこBOON」で頼んだ荷物はヤマト運輸が宅配してくれることだ。同じヤマトが配達するのになぜ安いのかというと、要は「はこBOON」はファミマの親会社である伊藤忠商事がヤフオクと提携して始めた大口荷主としての新サービスだからなのである。
安くなるポイントとしては、以下のことが挙げられる。
(1)ヤフオクの商品を扱うので、そもそも大量の荷物を集めることができる
(2)ファミリーマートまで発送者が持ち込んでくれるので、集荷コストがかからない
(3)ファミポートで受け付ける関係で、現場での発送伝票の記入が不要
(4)日にち指定をしないので、1日1回のファミリーマートへの集荷時間に合わせて発送できる
ということで、つまりは小口荷物を集めて大口荷主になることによって、その分のコストと価格を下げているわけだ。
とにかく、荷物はこれからも増え続けるのだ。だから宅配業界は値上げも検討しつつ、本質的にはイノベーションをどんどん検討して行かざるを得ないだろう。そしてイノベーションは、最終的に宅配コストを下げることになる。つまり近未来の宅配業界は、値下げと大量の配達を両立させる方向へと発展していくべきなのだ。*GOOGLE news(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)