定年楽農

第二の人生を農で楽しもう

小説定年楽農54

2019-03-23 08:20:09 | 小説定年楽農
町内会活性化委員会
  まず理想の町内会のコンセプトを明確にするために、委員を集める。
 委員は、これまで町内会のいろいろな役員を経験した時に、積極的な発言のあった人で比較的若い人10名程度。直近過去の町内会長2名。現町内会三役で構成した。
 住民の意識を調査するために、アンケートの設問について議論した。
 三役経験者以外は、町内会そのものの内容について、知識がなかったが、むしろ住民アンケートをつくるには、そういう人が回答できるような設問にする必要があった。
 アンケートは、町内会の世帯に1100通配布し、6割の回答があった。
 アンケート結果を基に議論し、町内会のコンセプトとして、以下のように取りまとめた。
 A 町内会の活性化とは、いろいろな価値観の人がなるべく多く納得して生活できることであ
  る。
   それは、活発な行事等の活動が一部の人々に終わるのではなく、約4000人の全住民が「み
  んな安心感を持ち幸せを感じる」ことである。
 B 大きな家族
   加入しなくても生活できるが、共に生きることの心地よさを感じるように。
   一般社会では、労働=対価の価値観が強いが、町内会は市場や一般制度に翻弄されるのでは
  なく、生活上の様々な問題に自分たちで対処する町内会でありたい。
   金銭で物事を評価するよりも、多くの人の共感を得ることで自分の存在感を感じる。
   町内会は、大きな家族であり、労働はお互い様であり、そこには対価の概念がない。
 C 行政は性悪説、町内会は性善説をとる。
   行政は厳しい規則で公正公平を保たなければならないが、町内会は、多少の利己的な行動を
  許し合える「寛容さ」が必要。「水清ければ魚棲まず」
   町内会は行政の下請けではない。また経済合理性が求められる会社組織でもない。根本的な
  考え方は真逆である。
 D 町内会活動への参加   
   町内会を知って交流が始まるのは、懇親会等への出席よりも、共同作業や役員の経験が顔見
  知りのきっかけとなることが多い。
   町内会活動への参加は、個性及び各人の距離感を尊重し、ゆるやかで、各人ができる範囲で
  の自由な参加が望ましい。
 E 現行の町内会役員の用務量を減らすとともに、役員の人数を増やすなど一人当たりの用務量
  をも減らし、一人に過度な負担がかからないようにする。役員を経験して町内会を知ることが
 多い。

 新年度に入り、新しい町内会長に、今年度は、いよいよ対策について委員会を進める様に伝えたところ。
 新しい町内会長「私は、町内会には今まであまりかかわりがなく、今年は前任者の行ったことを踏襲するだけで、手いっぱいで、新しく委員会のようなものを実行する余裕がありません」
 一郎「せっかくコンセプトまで作ったのだから、これを住民に浸透させつつ、施策を検討していきたいが、町内会長がそういわれるのであれば、残念ですが、しかたありません」
 一郎は、毎年町内会長が変わるので、その時その時での対応となってしまう。そのためにもコンセプトが必要ではあるが。会社組織ではない、それが町内会かとも思った。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 小説定年楽農53 | トップ | 小説定年楽農55 »

コメントを投稿