定年楽農

第二の人生を農で楽しもう

小説定年楽農22

2018-07-21 17:40:10 | 小説定年楽農
農事組合副組合長  
集落には、シソの葉の生産農家が3軒あり、いずれも、温室を何棟も持ち、パートを使い大々的な専業農家がある。その中で、一位番大きく経営している道夫さんが訪ねてきた。
道夫「来年度、農事組合の副組合長をやってくれんかね」
一郎「農業のことは何もわからないので、いきなり副組合長と言われても」
道夫「組合長は、ベテランだから大丈夫だよ。任期は1年だし」
道夫さんは、10歳年上の集落の大物で、風格があり、一郎は「ちょっと考えさせてください」というのが精いっぱいだった。
後日、用務も分からず、しぶしぶ引き受けた。
昭子もそうだったが、役員のなり手がなく、新人にすぐ回ってくる。
農事組合は、古くは、畑作も含めた農事全般であったが、今は、水田の水管理など、水稲栽培に関するものが主体となっていた。
組合員も100名程度あり、書類の配布など、農家への接触も増え、お日待ちでは、集落にとけ込めるかと不安も覚えたが、顔見知りも一挙に増えた。
わからないことが多く、組合長や道夫さんに丁寧に教えてもらい、特に親しくなった。


小説定年楽農22-2
おくみどり
東赤土の圃場は、生け垣があるといいような地形となっているため、お茶を植えて、自分で製茶して楽しもうかと思い、静岡県に行く機会があったので、静岡県茶業試験場に立ち寄り、職員の方に「自分で製茶して楽しみたいが、一番お勧めの品種は?」とたずねたところ
職員「お茶の栽培は栽培適期、防除等、相当な熟練を要するので、やめておいた方がいい」と言われてしまった。
退職して自由になってみると、あれもしてみたい、これもしてみたいと、夢だけ膨らむ。
職員の方は、その辺を見抜いていたのかもしれない。
調べてみると、お茶の品種は、ほとんどが「やぶきた」ですが、その中で「おくみどり」がよさそうであった。
おくみどりは、「濃緑色の色沢で、さわやかですっきりした香味のくせのない晩生品種」とあった。
しかし、園芸店で売っているのは、やぶきたばかり。
そこで、愛知県農業試験場に問い合わせたところ、おくみどりは、豊橋市で6軒の農家が栽培しているのみで、苗木は市販されていないとのこと。
苗木を入手するのは、栽培農家から分けてもらうしかないとのこと。
試験場から栽培農家の代表の方の連絡先を聞き、連絡したところ松居忠夫さんを紹介してくれた。
早速、松居さんを訪ね、おくみどりの苗を数本分けてもらった。
松居さんは、素性もわからない私に快く対応してくれた。
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小説定年楽農21

2018-07-05 20:54:04 | 小説定年楽農
やわた旬鮮の開店
JAグリーンセンターへの出荷はできなくなったが、出荷していた正月菜の他に、アスパラガスがたくさん採れるようになり、味も美味しく、その他に碧南鮮紅五寸にんじん、治郎丸ほうれんそう、サトイモなど、初めてにしてはまずまずの作柄であったため、品ぞろえも増えるし、自宅で無人直売所を開店することにした。
名前は「やわた旬鮮」を考えました。
やわた旬鮮の考え方として
1 脱サラで栽培技術がゼロであったことから、青果市場に出荷するほど、きれいな野菜は当面作れない。
2 現在の野菜の流通システムは消費者ニーズといいながら流通業者の都合のよい野菜が販売されているなど、もともと流通システムに不満を持っていた。
3 直売により、新鮮さを競えば、競争力はある。逆に言えば当面は新鮮さしか競争力がない。
4 見た目はともかく美味い野菜を作らなければならないが、当面技術はない。しかし旬の野菜は美味い。旬の露地野菜を主体とする。
5 スーパーとは価格競争はしない。去年は秋口から寒波が来て野菜が不作、高値でした。今年は暖冬、安値です。でも、やわた旬鮮は値段を変えません。野菜を値段で買ってほしくないのです。昨年は、高値のために遠くから買いに来た人がいましたが、今年は近くの人も買う量が減っています。しかし我慢の時です。スーパーとは競争にならない違う野菜を生産したい。
午前中に収穫、包装を行って、正午から開店することとした。
売り切れない量については、青果市場へ出荷することとした。
しかし、野菜の形状などが揃わず、青果市場へ出荷できるのは、現在のところ、サトイモだけだ。
自宅は、片側1車線、歩道つきの県道に隣接していたため、グリーンセンターに出荷前から、いずれは自宅で無人直売所を開店しようとは考えていた。

小説定年楽農21-2
ホウレンソウの播種
 ホウレンソウの発芽は、「温度よりも土壌水分に大きく影響されることと、光線が当たると発芽が悪くなることから、覆土は1cm程度と深くし鎮圧する。」ことが重要だ。
 就農最初のころは、覆土が浅すぎて、何年も発芽に失敗した。
 ホウレンソウは土壌PHが重要ということは有名ですが、あまり神経質にならなくてもいい。
 それよりも、土壌の湿り過ぎに注意が必要だ。水はけの悪い圃場では、高畝にするだけでも効果がある。
 「地温が高く乾燥している場合は2cm、軽い火山灰土では厚めにするが3cmが限度」(「新野菜つくりの実際」(農文協)との報告もある。)

小説定年楽農21-3
播種で気をつける事
 農業大学校での公開講座で、JAあいち経済連園芸部の講師から、講義の資料の中に、「タネの知識」として以下の記述があった。
 一郎は今も大切に見返している。
発芽と温度の関係
ナス、トマト、ウリ類、インゲン、ゴボウなどは、高温性で、発芽温度は25~30℃。
ホウレンソウ、レタス、ミツ葉、セルリーなどは、低温性で発芽温度は15~20℃。
ナス、ミツバ、アスパラガスは、1日のうちで高温、低温と変動すると発芽がよい。
発芽と光の関係
光線を当てると発芽のよものは、セルリー、シソ、ミツバ、ゴボウ、レタスなどで、覆土を薄くする。
光線に充てると発芽の悪いものは、ダイコン、ネギ、タマネギ、ナス、トマト、トウガラシなどで、覆土を厚めにする。


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小説定年楽農20

2018-07-03 21:33:19 | 小説定年楽農
JA女性部の役員就任を要請される
正月明けに、JA女性部の役員から、「来年度、昭子さんに、役員をやっていただきたい。用務は、直売所の清掃や、会員の連絡等」とのこと。
昭子「自分は他の仕事も持っているので、用務は夫が出てはだめですか」
役員「女性部の活動なので、女性でないと」
昭子「ちょっと考えさせてください」
昭子は、朝8時30分から自宅を出て19時に帰宅している。その間に家事をこなしている。とても役員は対応できない。翌日、女性部の役員の方に、役員を受けられない事情を話し、役目を果たせないのも申し訳ないので、会員も脱退することを伝えた。
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