町内会区議員
年末のある夕方。町内会の役員3人が自宅に来た。
町内会長は4歳年上の輝夫さんだった。
輝夫「来年度、町内会長をやってくれんかねえ」
聞くと、町内会は700世帯もあるとのこと。
役員は、会長、副会長、会計の3人の他に、各地区の代表として15人の区議員から構成しているとのこと。
一郎「なんで私なんですか」
輝夫「世帯数は多いんだが、ほとんどが勤め人で、ウイークデイに時間がとれない人ばかりで、できる人がいないんだ。農業なら時間が取れるんじゃあないかと、無理を承知でお願いしている」
一郎「町内会の必要性もあまり感じていない。特に隣近所で組を作るのは昔の五人組を思い出し抵抗がある。実家を長く離れていたんで、町内会のことはよくわからない」
輝夫「まあ突然来てお願いするのも無理と思うので、ちょっと考えておいてくねんかねえ」
町内会の役員は帰って行ったが、断ってしまったことに多少後ろめたさがあった。
輝夫さんには、子供のころよく遊んでもらった。
それに、3年前に農事組合副組合長を受けた時も、時間に縛られることはきつかったが、農業の人とは知り合いができた。
一郎は58歳、こんなに早くから町内会長就任の要請があるとは、残された人生において毎年せっつかれるだろう。
やるなら記憶力が多少残っている若いうちに済ませておいた方が楽か。
しかし、いきなり町内会長というのは、全然自信がない。来年度は区議員をやって少し様子を見ることにするか。
2~3日経って、2回目の訪問を受ける前に、輝夫さんにその旨を伝えた。
一郎「何も知らないで、町内会長は無理と思う。来年度は区議員をやらせていただいて勉強したいと思います」
輝夫「わかった。さすがいっちゃんだ。よろしく頼みます」
余りの早い受け答えに、区議員を選ぶのにも苦労していたのではないか、うまいことふっかけられたかなあ。