韓国では、名門大学を卒業して希望通り一流企業へ就職できたら、それで人生の成功者になれるのかと言えば、そうではありません。
サムスンでは、「上位5%の人材を活用すれば、90%は後からついてくる。残りの5%は早く切り捨てろ」というのが人事政策の基本だそうです。
サムスングループのなかで比較的に社員同士の競争がゆるいサムスン物産でも、社員は月曜から土曜、深夜に至るまで働いて、日曜日には会社が薦める書籍を読んでいる・・・・・・ひとときも休む間もない競争がそこにはあるということです。
そして、50歳までに部長に昇進できなければ、「名誉退職」という名のリストラが待っています。
また、取締役になったとしても、毎年実績を審査され、成績が悪ければ1年でクビ。
それが昨今の大企業のやり方なのです。
早期退職させられた人は、退職金や年金だけでは生活が苦しいので、自分で仕事をはじめる人も多いのです。
大企業で実績を重ね、人脈もあればそれなりの仕事に就けますが、そうではなければ、飲食業などまったく別の業種で稼がなければなくなります。
しかし、50代の未経験者がいきなり店を出しても、うまくいくケースはほとんどありません。
やがて廃業に追い込まれ、老後の暮らしがますます厳しくなるわけです。
加えて、息子が結婚する場合、父親が住まいを準備する習慣が韓国にはあります。
良家から嫁をもらう場合には、なおさらしっかりした家を用意しなければなりません。
そのためには、老後の安泰を手放して退職金をはたくことになります。
息子は息子で、子供の教育費に四苦八苦するばかりで、親の面倒を見る余裕などありません。
受験戦争に敗れた子供、就職が叶わなかった若者、競争社会の中で脱落していった人々、そして老後の生活のアテを失った高齢者たち・・・・・・韓国の人びとを取り巻く環境は日に日に悪化し、改善の予兆すらありません。