韓国は身分が高い者は体を使わないという伝統があります
朝鮮王朝最後の王、高宗(고종)(1852~1919年)。
日本に統治権を奪われて悲劇的な最期を遂げたともいわれる人物だが、一方でこんなエピソードもよく語れてている。
19世紀末、朝鮮半島には各国から西洋人が駐在していた。
そうしたなか高宗(고종)はアメリカ人高官がテニスに講じているのをたまたま見かけた。
汗を流してラケットを振る姿を見た高宗(고종)は、「なぜ彼らのような高官があんなことをしているのか。使用人にやらせばよいのに」と語ったそうだ。
孟子の言葉に「労心者治人、労力者於人(心を労する者は人を治め、力を労する者は人に治めらる)」というのがある。
朱子学を重視した朝鮮半島の儒教では、神学論争のような学問が「心を労する」こととして尊ばれた。
その一方で現実の生活で有益な科学、数学、医学、農学といった学問は「雑学」といて蔑まれた歴史がある。
また同様に汗を流して体を使うのは「力を労する」こととして嫌われ、身分が高い者にはおごそかで悠然とした身のこなしがふさわしいとされた。
だからコートを走り回ってラケットを振るテニスも、「身分が低い者がやること」と見なされたわけだ。
また19世紀末にはミッション系女学校が体操を導入したところ、父母が抗議して登校拒否をさせたという話もあるようだ。