田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『キック・オーバー』

2020-05-31 12:14:34 | 映画いろいろ

『キック・オーバー』(12)(2012.9.5.シネマート六本木)

 初めて試写状の写真を見たときは、正直なところ、メル・ギブソンの人相の変わり様というか、やつれ具合にがく然とした。思えば『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(90)でアカデミー賞を取った後から凋落が始まったケビン・コスナー同様、ギブソンも『ブレイブ・ハート』(95)での受賞後は迷走しているのだから皮肉なものだ。

 最近のギブソンは、飲酒運転やDV絡みの離婚裁判などのスキャンダルで話題になることが多く、そのやつれ具合も、さもありなんと思えたのだが、今回の映画の出来は思ったほどひどくはなかった。

 舞台は、スラム街のようなコミュニティーを形成しているメキシコに実在した刑務所。そこに、国境で捕まった現金強奪犯(ギブソン)が入所したことで巻き起こる騒動が描かれる。

 「ハウ・アイ・スペント・マイ・サマー・バケーション」というふざけた原題からも分かる通り、全体のテイストはB級アクションで、ナレーションもギブソンのぼやき気味の独白だ。

 何だかなりふり構わぬヤケクソ的なところ(隠し技?としてクリント・イーストウッドの物まねも披露)も多々あるが、もともと彼は演技派の俳優ではなくチンピラ役が似合うような野卑なところに魅力があったのだ。

 してみると、この映画はただ原点に戻っただけだと言えるのかもしれない。実際この映画の彼は、見た目よりはずっと生き生きとしていたし、監督はこれがデビュー作ののエイドリアン・グランバーグだったが、B級アクションとしても上出来で、見ていてうれしくなってくるところがあった。メル・ギブソン復活か?

 

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『ランボー ラスト・ブラッド』

2020-05-31 10:55:47 | 新作映画を見てみた

『ランボー ラスト・ブラッド』(19)

 元グリーンベレーのジョン・ランボー(シルベスター・スタローン)は、ベトナム戦争のトラウマに悩まされながらも、故郷アリゾナの牧場で、古い友人のマリアとその孫娘のガブリエラと共に“家族”として穏やかな生活を送っていた。ところが、ガブリエラがメキシコの人身売買カルテルに拉致され、命を落とす。愛する“娘”を奪われたランボーは元グリーンベレーのスキルを総動員し、カルテル一味への復讐を企てる。

 最初の『ランボー』(82・原題「ファースト・ブラッド」)から38年。『ロッキー』シリーズとともに、スタローンの俳優人生を支えた『ランボー』シリーズもついに完結となった。

 ただ、残念ながらこの映画は、メキシコの扱いのひどさも含めてストーリー展開が雑で、アクションも残忍なだけで何のカタルシスもなく、見ながら暗い気持ちになってくる。

 監督のエイドリアン・グランバーグは、同じくメキシコを舞台にしたメル・ギブソン主演の『キック・オーバー』(12)では、捻りを効かせてなかなか面白く仕上げていたのだが、今回はちょっといただけなかった。

 さて、ロッキーはアポロの遺児クリードへとバトンタッチすることができたが、ランボーは孤独で救いのないままの完結ということになる。これは陽のロッキーと陰のランボ―というキャラクターの違いに寄るものだろう。

 エンドクレジットで“ランボーの歴史”が映ったときは、感慨深いものがあったが、それも映画の出来云々ではなく、時の流れに対する思いから浮かんだものだった。

『ランボー』から『ランボー3/怒りのアフガン』まで
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6689ba4d10a6303a7c5da0c323df7ced

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『戦国自衛隊』

2020-05-30 15:52:50 | 映画いろいろ

 久しぶりにテレビで再見したら、何もかもが懐かしかった。千葉真一芸能生活20周年・ジャパンアクションクラブ(JAC)発足10周年記念作品だったそうである。後のドラマ「影の軍団」シリーズにつながる馬上アクションがいまさらながらすごかった。

『戦国自衛隊』(79)(1981.1.2.)

 自衛隊の一部隊が戦国時代にタイムスリップして…という、半村良の原作を用いたこの映画は、確かに奇想天外でエネルギッシュではあるが、だからと言って、素晴らしい作品であるとは言えない。

 恐らく製作側は、現代の若者が極限状態に陥った時(この場合は戦国時代へのタイムスリップ)、どのように対処するのか、ということを、彼らの青春像に絡めながら描こうと考えたのだろう。

 そうした意図は分かるのだが、全体的には全てが中途半端に終わった感は否めない。まあ、千葉真一扮する伊庭が、自身の奥に潜んでいた、好戦的な性質を徐々にあらわにしていくところはなかなか面白かったのだが。

 それにしても、実際のところ、現代の兵器が戦国時代の戦術に、ああも簡単にやられてしまうものなのだろうか? 確かにベトナム戦争でのアメリカの例もあるが…。しかし、考えたら、戦国時代の精神的、肉体的にタフで、戦にも慣れた人たちに、今の平和な世の中に生きている我々がかなうはずもない。その点では、この原作や映画も当を得ているのかもしれない。

 いやいや、そもそもこの映画は、歴史的事実をしばし忘れて見るべきものなのだろうから、理屈を言っても始まらないか。千葉真一と並んで、長尾景虎役の夏八木勲が怪演を見せてくれた。

 

 

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【ほぼ週刊映画コラム】「エール」古山裕一のモデル、古関裕而が鎮魂の思いを込めた「モスラの歌」

2020-05-28 07:10:44 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
「エール」古山裕一のモデル、古関裕而が鎮魂の思いを込めた
「モスラの歌」

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1228001

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『ライムライト』

2020-05-27 06:49:46 | 映画いろいろ

『ライムライト』(52)(1975.5.1.池袋文芸座 併映『黄金狂時代』『犬の生活』)



 編集・解説を担当した『淀川長治の証言 チャップリンのすべて』から。淀川先生は、この映画の撮影中にハリウッドを訪れ、チャップリンと再会したという。先生は「これがチャップリンの終点だね」としみじみおっしゃっていた。


https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c1b90f2a7d3da72c38d9332f11b50328

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『映画の森』「シーズン開幕が待ち遠しい! 野球映画ベストナイン」

2020-05-26 14:39:39 | 映画の森

 共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)5月26日号で、『映画の森』と題したコラムページに「シーズン開幕が待ち遠しい! 野球映画ベストナイン」を紹介。

1番「42~世界を変えた男~」(13)
2番「2番目のキス」(05)
3番「フィールド・オブ・ドリームス」(89)
4番「ナチュラル」(84)
5番「メジャーリーグ」(89)
6番「人生の特等席」(12)
7番「マネーボール」(11)
8番「プリティ・リーグ」(92)
9番「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」(99)
リリーフ「ワン・カップ・オブ・コーヒー」(91)
監督「ミスター・ベースボール」(92)

共同通信のニュースサイトに転載
https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2020-05-22_2770760/

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『どら平太』

2020-05-25 08:22:46 | 映画いろいろ

『どら平太』(00)

 役人たちが悪人と手を組み悪政がはびこる某藩に、江戸から望月小平太(役所広司)が町奉行として送り込まれる。役人らしからぬ豪快な振る舞いで“どら平太”の異名を持つ望月は、一人悪の巣くつに乗り込んでいく…。

 1969年。黒澤明、木下惠介、小林正樹、市川崑によって結成された映画製作グループ「四騎の会」が、山本周五郎の『町奉行日記』を基に共同で脚本を執筆したが、映画化には至らなかった。

 四騎の会は黒澤の『どですかでん』(70)を製作したのみで解散。その後、この脚本は宙に浮いたままになっていたが、30年あまりの時を経て、オリジナル脚本を大幅に変更し、市川が監督して映画化された。とは言え、さすがに80を過ぎた市川の演出に往年のような冴えは見られず、残念ながら往時をしのぶにとどまった感がある。
 
 『町奉行日記』の映画化としては、大映の三隅研次が勝新太郎主演で撮った『町奉行日記 鉄火牡丹』(59)もあるが、岡本喜八が仲代達矢のとぼけた味を生かして「着ながし奉行」(81)としてドラマ化したものが秀逸だ。

市川崑は文芸映画の監督でもあった
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/1c70eff55ee456f1dbeebf39ec5e6913

『赤ひげ』と山本周五郎原作映画1
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/155329009d0d95e785d4aced7ca898e9

『赤ひげ』と山本周五郎原作映画2
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f6dd0ca1574fbed6a5436e5ba1323fde

 

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『予期せぬ出来事』

2020-05-25 06:38:08 | 映画いろいろ

『予期せぬ出来事』(63)(1989.6.4.

  濃霧で出発が延期されたロンドンの空港のVIPラウンジ。そこには、恋人(ルイ・ジュールダン)と駆け落ちしようとする富豪夫人(エリザベス・テイラー)、妻への思いを手紙に託す夫(リチャード・バートン)、脱税のため国外へ出ようとする映画プロデューサー(オーソン・ウェルズ)と女優(エルザ・マルティネリ)、経営に行き詰まった実業家(ロッド・テイラー)と秘書(マギー・スミス)…などさまざまな人々がいた。

 原題の「VIPS」は、今でこそ一般的な言葉になっているが、公開当時は何のことだか分からない人の方が多かったのではないか。だからこその邦題のはずなのだが、意味不明なものになったのはなぜなのだろう。

 ところで、この映画はある場所に集まったさまざまな人々の、複数のドラマを交錯させる「グランドホテル形式」を取っているいるのだが、映画自体の出来はどうということはない。リズとバートンの結婚記念にいろんな役者が駆け付けた、そんな感じの映画である。

 ただ、この後のリズとバートンの波瀾万丈の人生を考えると、なるほど、2人にとってのその後は、まさに“予期せぬ出来事”だったんだろうなあ、と妙なところで邦題が生きてきた。

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『イルカの日』

2020-05-23 08:59:25 | 映画いろいろ

『イルカの日』(73)(1976.10.17.日曜洋画劇場)

 海洋動物学者ジェイク(ジョージ・C・スコット)は、妻のマギー(トリッシュ・バン・ディーバー)と共に、イルカに簡単な言葉を覚えさせる研究を行なっていた。研究は成果を上げ、2頭のイルカ、ファーとビーは人間との会話が出来るまでになる。だが、財団は大統領暗殺計画にイルカを利用しようと考える。 監督はマイク・ニコルズ。

 よく考えたら自分勝手な人間たちを描いためちゃくちゃなポリティカル(政治)フィクションなのだが、ジョルジュ・ドルリューの甘い音楽と、ジェイクとマギーをパーとマーと呼ぶイルカの鳴き声が切なく響いて、うまくごまかされてしまう。

 公開当時は、『カサンドラ・クロス』(76)などのリチャード・ハリスとアン・ターケルもそうだが、スコットはディーバーという若くてきれいな奥さんをもらって夫婦共演までしてうらやましい、などと思っていた。

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『映画の森』「シーズン開幕が待ち遠しい! 野球映画ベストナイン」転載

2020-05-22 14:22:42 | 映画の森

「KyodoWeekly」5月25日号から「シーズン開幕が待ち遠しい! 野球映画ベストナイン」共同通信のニュースサイトに転載

https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2020-05-22_2770760/

1番「42~世界を変えた男~」(13)
2番「2番目のキス」(05)
3番「フィールド・オブ・ドリームス」(89)
4番「ナチュラル」(84)
5番「メジャーリーグ」(89)
6番「人生の特等席」(12)
7番「マネーボール」(11)
8番「プリティ・リーグ」(92)
9番「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」(99)
リリーフ「ワン・カップ・オブ・コーヒー」(91)
監督「ミスター・ベースボール」(92)

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