日本では珍しいピカレスク(悪漢)映画
結婚相談所で独り身の高齢男性を見付け、その資産を狙って結婚詐欺を行う後妻業の女・小夜子(大竹しのぶ)を主人公に、色と欲にまみれた人間喜劇が展開する。
まずは、小夜子と彼女を陰で操る結婚相談所所長の柏木(豊川悦司)、彼らの犯罪を暴こうとする怪しい探偵(永瀬正敏)による、裏をかいたりかかれたりの関係が面白い。
しかも舞台が大阪なので、関西弁のせりふが絶大な効果を発揮する。深刻な話も笑いに展化してしまう関西弁の“魔力”と鶴橋康夫監督のテンポのいい演出で、実は陰惨な話なのに、まるで吉本新喜劇や漫才を見ているような気分にさせられる。
本作は、息子を息子とも思わない小夜子、「爺(じじい)をだますのは功徳や」とうそぶく柏木のような、安易に人情には走らない人物を得て、日本では珍しいピカレスク(悪漢)映画になっているが、そこはかとないペーソスも漂うので、どこか昭和の匂いがする。
だからこそ、「君こそわが命」や「黄昏のビギン」といった昭和歌謡の挿入歌がぴたりとはまるのだ。