『探偵マーロウ』(202.5.30.オンライン試写)
1939年、ロサンゼルス。私立探偵のフィリップ・マーロウ(リーアム・ニーソン)のもとに、裕福そうなブロンド美女クレア(ダイアン・クルーガー)が現れ、姿を消した元愛人を捜してほしいと話す。依頼を引き受けたマーロウは捜索を進めるうちに、急成長するハリウッドの裏の世界を知る。
レイモンド・チャンドラーが生んだハードボイルドヒーローを主人公にした一編。ジョン・バンビルがベンジャミン・ブラック名義で執筆し、チャンドラーの『ロング・グッドバイ』の続編として本家から公認された『黒い瞳のブロンド』を原作に、ニール・ジョーダン監督が映画化。クレアの母親の映画女優役でジェシカ・ラングも出演している。
恐らく日本の宣伝会社が付けたと思われるが、「リーアム・ニーソン出演100本記念作品」だそうだ。
マーロウを演じた俳優は多く、中でも、ハンフリー・ボガートとロバート・ミッチャムが当たり役としたが、チャンドラーがマーロウのイメージに合っているとしたのはケーリー・グラントだったという。
その点、憂いと困惑の表情を得意とするニーソンもちょっと違う気もするが、今回は渋く演じて新たなマーロウ像を生み出している。そろそろアクション物がきつくなってきたニーソンにとっては、今後はこういう役の方がいいのではないか。
30年代の雰囲気を出すために、建物、車や装飾、ファッション、小道具、照明などは凝ったものを使っているので、そこも見どころ。ただ、イメージとしては、70年代に作られた『さらば愛しき女よ』(75)や(マーロウ物ではないが)『チャイナタウン』(74)に近いものがあると感じた。
マーロウの相棒になる黒人のセドリック(アドウェール・アキノエ=アグバエ)が面白いキャラクターとして印象に残る。パトリス・ルコントの『メグレと若い女の死』(22)もそうだが、今どきこうした映画が出てくるのはうれしい限り。