田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『スノーデン』

2017-01-31 10:03:22 | 新作映画を見てみた

 

『スノーデン』(16)

オリバー・ストーンに大きな変化が

 2013年、NSA(米国家安全保障局)の職員エドワード・スノーデン(ジョセフ・ゴードン・レビット)が、米国政府による膨大な個人情報監視の事実を暴露した。

 彼は英雄なのか、それとも国家の裏切り者なのか…。“扇情監督”オリバー・ストーンが、ドキュメンタリー映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』でも描かれた実話を基に描く。

 ところで、ストーンと言えば、陰謀の暴露による扇情と持論の押し付けが真骨頂の監督。

 この映画についても、題材が題材だけに、嫌な予感がしたのだが、今回は、香港のホテルの一室で取材を受けるスノーデンの回想という形で物語を展開させ、パートナーのリンゼイ・ミルズ(シャイリーン・ウッドリー)との関係を中心に描きながら、彼の内面に迫るという手法を取っている。

 驚いたのは、あくまでも淡々と描いているところ。それ故、大事件を描きながら、若者たちの恋愛劇の趣すら感じさせる。これまでとは大きく違うその作風にストーンの変化を感じた。

 これは、人は声高に叫ぶとかえって反発するということにストーンが気づいた結果なのか? それとも、彼も年を取って多少は丸くなったということなのか?

 また、ストーンの映画は総じて脇役がいい味を出すのだが、今回も主役の二人に加えて、メリッサ・レオ、ザカリー・クイント、リス・エバンス、そしてニコラス・ケイジと、脇役たちが光っていた。

 「日本が同盟国でなくなったら…」などという箇所もあるので、人事とは思えない怖さがある映画なのだが、劇映画なのに、スノーデン本人を登場させたラストシーンには違和感を抱かされた。

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『映画の森』「2017年1月の映画」

2017-01-30 08:00:00 | 映画の森

 共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)1月29日号で、『映画の森』と題したコラムページに「1月の映画」として5本を紹介。独断と偏見による五つ星満点で評価した。

ラインアップは

下品な下ネタ満載の相棒コメディー『ダーティ・グランパ』☆☆
これは復讐なのか、それとも正義なのか『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』☆☆
スコセッシ自身の葛藤が反映された力作『沈黙-サイレンス-』☆☆☆☆
魔術を駆使する新ヒーローが登場『ドクター・ストレンジ』☆☆
「七人の侍」と「荒野の七人」を受け継ぐ『マグニフィセント・セブン』☆☆☆

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【ほぼ週刊映画コラム】『マグニフィセント・セブン』

2017-01-28 19:09:09 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

『七人の侍』と『荒野の七人』のDNAは本当に受け継がれたのか?
『マグニフィセント・セブン』




詳細はこちら↓

https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1089506
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『ドクター・ストレンジ』

2017-01-27 09:45:44 | 新作映画を見てみた

『ドクター・ストレンジ』(2016.12.7.ディズニー試写室)

魔術を駆使する新ヒーローが登場



 「アベンジャーズ」シリーズをはじめとする「マーベル・シネマティック・ユニバース」の新作。

 天才的な技術を誇る傲慢(ごうまん)な神経外科医スティーブン・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は、突然の交通事故で“神の手”を失う。
手の回復を模索したストレンジは、神秘の魔術と出会い、修行に励むが、強大な敵との戦いに巻き込まれていく。

 チベットで修業するストレンジの姿や、師となるエンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)の哲学的な教えなどによって、欧米から見たアジアの神秘が強調されているが、ストレンジのキャラクターに少々とぼけた要素を加えるなどして、随所に笑いをちりばめている。

 また、時間の逆行、停止、ループ(輪)を駆使して何度も繰り返される闇の魔王との対決シーン、時間と空間の概念を超えた万華鏡のような光景など、現実離れした映像に目を奪われる。

 ただし、本作は新たなキャラクターによる物語の序章なので、中途半端な印象を抱かされるのは否めない。

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【ほぼ週刊映画コラム】『沈黙-サイレンス-』

2017-01-21 15:46:13 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

スコセッシ自身の葛藤が反映された力作
『沈黙-サイレンス-』




詳細はこちら↓

https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1088286
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『本能寺ホテル』

2017-01-16 14:24:54 | 新作映画を見てみた

『信長協奏曲』に匹敵するボム(大失敗)映画



 京都、本能寺の跡地に建つ「本能寺ホテル」に泊まったヒロイン(綾瀬はるか)が、本能寺の変の前日にタイムスリップして、織田信長(堤真一)や森蘭丸(濱田岳)と出会う。

 この手の映画に、はなから史実云々を求めるつもりはなかったが、それにしても戦国時代の描き方がひどすぎる。

 タイムスリップを描きながら、意外性も、面白さも皆無。ヒロインの人物設定がひど過ぎて、成長物語とも思えない。

 コメディーが作りたかった節は見られるが、ギャグはほとんど上滑り。妙なテンポと間にもあ然とさせられる。

 『プリンセス・トヨトミ』のスタッフ、キャストが再集結しているが、俳優たちも設定や演出に戸惑っているのか、全く緊張感がないように見える。音楽も流し過ぎであざとく聴こえ、かえって耳障り。

 フジテレビの役員監督と彼お気に入りの音楽家兼脚本家は観客をなめているとしか思えない。同じくフジテレビ製作のタイムスリップものである『信長協奏曲』に匹敵するボム(大失敗)映画。

 最近は、年のせいか、ボム映画を見ても寛容になったと思っていたが、久しぶりに許せないレベルの映画と出会ってしまった。

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『マッケンナの黄金』

2017-01-09 18:06:07 | 映画いろいろ

西部劇に、黄金伝説をめぐる冒険活劇の要素を取り込んだ異色大作



 1975年のリバイバル公開時以来の再見となった。当時、同じくリバイバルで『アラビアのロレンス』(62)を先に見たので、オマー・シャリフがラクダではなくて馬に乗る姿に違和感を覚えたことも懐かしい。

 この映画の製作者は『戦場にかける橋(57)などの脚本家カール・フォアマンと映画音楽の巨匠ディミトリ・ティオムキン。音楽はクインシー・ジョーンズ。主題歌はプエルトリコ出身の盲目の歌手ホセ・フェリシアーノ。何だか妙な組み合わせだ。

 監督はイギリス出身のJ・リー・トンプソン。脚本フォアマン、監督トンプソン、そして主演はグレゴリー・ペックの冒険活劇とくれば『ナバロンの要塞』(61)がある。いわばこの映画は『ナバロンの要塞』の西部劇版だと言えないこともないのかな。ファーストシーンとラストシーンにハゲタカ(コンドル?)が映るのは、確か『戦場にかける橋』と同じ。これはフォアマンの趣味なのか。

 また、同じく黄金探しを描いた名作ジョン・ヒューストン監督の『黄金』(48)やグレン・フォード主演の『秘境』(49)をスケールアップした感もある。

 ところで、この映画、大筋は、黄金の谷への道を知る連邦保安官マッケンナ(ペック)と、彼を捕らえて谷へ案内させる悪党コロラド(シャリフ)の道中劇なのだが、そこに、テリー・サバラス、イーライ・ウォラック、エドワード・G・ロビンソン、レイモンド・マッセー、バージェス・メレディス、リー・J・コッブ、キーナン・ウィン、アンソニー・クエイルといった重鎮脇役が絡んで、カミラ・スパーブとジュリー・ニューマーが花を添える。

 そのほか騎兵隊やインディアンも入り乱れ、この雑多な人物たちにどう収拾をつけるのかと思いきや、中盤で脇役たちをまとめて始末して退場させるという荒技を発揮する。彼らは一体何のために出てきたのかという印象は今回も変わらなかったが、皆、物故した今となっては貴重な映像になってしまった。

 ただ、道中に登場する圧倒的な風景や奇岩の数々、乗馬シーンなどのアクションを強調するための特異なカメラワーク、黄金の谷が崩壊するスペクタクルシーンなどは今見てもなかなか見応えがあるし、コロラドの憎めないキャラクターも面白い。

 また、タランティーノは集団劇を撮るがうまいのだから、どうせ西部劇を撮るなら『ヘイトフル・エイト』(15)のような悪趣味なものではなく、こういう映画を撮ればいいのにとも感じた。

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『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』

2017-01-08 09:03:37 | 新作映画を見てみた

何故これほど多くのナチス関連映画が作られるのか



 1950年代後半に起きたナチス戦犯アドルフ・アイヒマンの拘束劇の裏側を、ドイツの検事長フリッツ・バウアーとその部下の動静を通して描く実録サスペンス。

 ユダヤ人であるバウアーにとって、これは復讐なのか、正義なのかが大きなテーマになっている。また、バウアーと架空の人物である部下を同性愛者とすることで、迫害されし者の思いを強調した。旧ナチス党員が影響力を保ち続ける当時のドイツの複雑な状況、イスラエルの情報機関モサドとの関係など、興味深い事実も知らされる。

 それにしても、去年の『サウルの息子』『栄光のランナー』『アイヒマン・ショー』『帰ってきたヒトラー』『奇跡の教室』『手紙は憶えている』『ヒトラーの忘れもの』などに続いて、今年もこの映画や『ヒトラー最後の代理人』が公開される。戦後70年余の今になって、何故これほど多くのナチス関連映画が作られるのか。検証の要ありだ。

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【ほぼ週刊映画コラム】『ダーティ・グランパ』

2017-01-07 16:18:21 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

デ・ニーロの○○シーンに目が点になる
『ダーティ・グランパ』




詳細はこちら↓

https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1086079
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『天使にラブ・ソングを2』

2017-01-05 09:48:16 | 映画いろいろ

 年末年始、まともに見た映画はこれだけだった。



 ウーピー・ゴールドバーグ扮する“偽シスター”が、音楽を使って、オリジナルでは教会を、そしてこの『2』では学校を救う様子がコメディータッチで描かれる。

 ウーピー絶好調といった感じの映画だが彼女は続編に出る気はなかったという。では何故出演したのかといえば…。



 また、レナード・マルティンの『Movie Guide』によれば、この2作は大昔のビング・クロスビー主演の『我が道を往く』(44)と続編の『聖メリーの鐘』(45)の影響を強く受けているという。なるほど、そういうことだったのか。

 ところで、こうした映画を見るとゴスペルがブラック・ミュージックのルーツであることがよく分かる。それが根っこにない日本人が、いくら上手にまねしてみても、妙な感じがするのは当たり前なのだと思う。

 ブレーク・エドワーズと組んだ『地上最大の脱出作戦』(66)『荒野の隠し井戸』(67)以来、久々にジェームズ・コバーンのコミカルな味を引き出していたのも面白かった。

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