『スノーデン』(16)
オリバー・ストーンに大きな変化が
2013年、NSA(米国家安全保障局)の職員エドワード・スノーデン(ジョセフ・ゴードン・レビット)が、米国政府による膨大な個人情報監視の事実を暴露した。
彼は英雄なのか、それとも国家の裏切り者なのか…。“扇情監督”オリバー・ストーンが、ドキュメンタリー映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』でも描かれた実話を基に描く。
ところで、ストーンと言えば、陰謀の暴露による扇情と持論の押し付けが真骨頂の監督。
この映画についても、題材が題材だけに、嫌な予感がしたのだが、今回は、香港のホテルの一室で取材を受けるスノーデンの回想という形で物語を展開させ、パートナーのリンゼイ・ミルズ(シャイリーン・ウッドリー)との関係を中心に描きながら、彼の内面に迫るという手法を取っている。
驚いたのは、あくまでも淡々と描いているところ。それ故、大事件を描きながら、若者たちの恋愛劇の趣すら感じさせる。これまでとは大きく違うその作風にストーンの変化を感じた。
これは、人は声高に叫ぶとかえって反発するということにストーンが気づいた結果なのか? それとも、彼も年を取って多少は丸くなったということなのか?
また、ストーンの映画は総じて脇役がいい味を出すのだが、今回も主役の二人に加えて、メリッサ・レオ、ザカリー・クイント、リス・エバンス、そしてニコラス・ケイジと、脇役たちが光っていた。
「日本が同盟国でなくなったら…」などという箇所もあるので、人事とは思えない怖さがある映画なのだが、劇映画なのに、スノーデン本人を登場させたラストシーンには違和感を抱かされた。