田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ベスト・キッド4』

2017-05-31 08:00:38 | 映画いろいろ

思いのほか楽しめた



 前作までのダニエル少年(ラルフ・マッチオ)に代わって、この映画では少女ジュリー(ヒラリー・スワンク)がミヤギ(ノリユキ・パット・モリタ)に弟子入りする。

 相変わらずの珍妙な修行風景、ジャック・ニコルソンを極悪にしたような顔つきのマイケル・アイアンサイドが演じる敵役の壊れた性格、『天使にラブソングを』(92)の尼僧をまねたような禅僧たち、など突っ込みどころ満載。今やカルトムービー扱いの珍品だが、思いのほか楽しめた。

 今となっては、スワンクが後に『ミリオンダラー・ベイビー』(04)でボクサーを演じる下地が垣間見れたようで楽しかったし、先日『騎兵隊』(59)で再会したコンスタンス・タワーズがジュリーの祖母役で端役出演していたのには驚いた。

 パット・モリタもすでに亡くなって久しいのだなあ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー』

2017-05-30 08:00:02 | 新作映画を見てみた

名もなく貧しく美しく



 1950年代から映画の絵コンテ(脚本をカメラの視点で捉え、カットごとにイラスト化する作業)を担当した夫のハロルド・マイケルソン、後に映画リサーチャー(映画製作に必要な情報を調査・収集する)として活躍した妻のリリアン。多くの映画作りに多大な貢献をしながら、ほとんど“無名”だった二人の人生にスポットを当てたドキュメンタリー映画。

 『十戒』(56)『鳥』(63)『卒業』(67)など、ハロルドが関わった映画の名場面を見せながら、(ハロルドの絵コンテと実際の映画のシーンが一致するところには快感を覚える)、彼らの職業人としての業績や夫婦の心の絆を描いていくのだが、映画製作の裏側を知ることへの興味、喜びに加えて、二人が提示するユニークな夫婦像が目を引く。また、その中から、スタジオシステムの崩壊や独立プロ(コッポラのゾートロープ)の没落といった映画史の側面が浮かび上がってくるところが、この映画の優れたところでもある。

 インタビューの端々に、無名ではあるが、自分たちの仕事や人生に対する矜持が感じられ、まさに「名もなく貧しく美しく」を地でいくような二人の姿に、すがすがしさを感じた。だからこそ、後輩たちが礼として『シュレック2』(04)の王と姫に二人の名前を冠したというエピローグが心に残るのだ。

 日本では、例えば黒澤明のように、自ら精密な絵コンテを描いてしまう監督もいるが、この映画を観ていると、改めて分業で映画を作るハリウッドとの違いが明らかになるところがある。また、映画のエンドロールになぜスタッフの名前が延々と流れるのか、ということについても考えさせられる。

 もちろん、そこにはハロルドとリリアンのような、無名ながらも素晴らしい仕事をした人たちをたたえる意味もあるのだが、アメリカでは、原則として映画製作に関わった者全員が、それなりの権利を持つことになっているので、劇場公開の後、テレビ放映やビデオ、DVDなどの発売によってもスタッフに新たな報酬が発生する。クレジットは、その際の権利者リストの役割も果たすのだそうだ。

 長いエンドロールに飽きたら、ハロルドとリリアンのことを思い出そう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『映画の森』「2017年5月の映画」

2017-05-29 08:00:21 | 映画の森
共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)5月29日号で、
『映画の森』と題したコラムページに「5月の映画」として5本を紹介。
独断と偏見による五つ星満点で評価した。

ラインアップは

ウディ・アレン流「ラ・ラ・ランド」の趣「カフェ・ソサエティ」☆☆☆☆
映画館でこそ真価を発揮する映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」☆☆☆
緩急自在の語り口が見事「マンチェスター・バイ・ザ・シー」☆☆☆
知的好奇心を刺激する哲学的なSF映画「メッセージ」☆☆☆
やっかいだけどいとおしい家族の姿「家族はつらいよ2」☆☆☆
番外編として 価値観の多様性を喚起「ムーンライト」

クリックすると拡大します↓






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『光』

2017-05-28 08:15:10 | 新作映画を見てみた

水崎綾女が大化けした!



 視覚障害者向けの映画の音声ガイドを担当する美佐子(水崎綾女)は、弱視のカメラマン(永瀬正敏)と出会い、反発しながらも、やがて心を引かれるようになるが…。

 一般的になじみのない、音声ガイドの仕事を見せながら、劇中映画「その砂の行方」を見せるという二重構造。視力(光)を失っていくカメラマンの姿を中心に、一番大切なものを失う人間の絶望感や焦燥、人生の不条理を描く。大げさに言えば、なぜ、よりによってベートーベンが聴力を、アベベが脚力を失うことになるのかという不条理にも通じる重いテーマだ。

 それが描き切れているとは思えないが、以前の河瀬直美の映画に比べるととても分かりやすくなっている。また、河瀬による美佐子の心理描写がいささか弱いのが難点だが、比較的地味な女優だった水崎が大化けした映画としても記憶に残るだろう。カリスマキャバクラ嬢を演じた『ユダ』(13)の時に取材したので余計そう思うのかもしれないが…。

https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/52806

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ほぼ週刊映画コラム】『家族はつらいよ2』

2017-05-27 15:22:34 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

やっかいだけどいとおしい家族の姿を描いた
『家族はつらいよ2』



詳細はこちら↓

https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1110347
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リアルタイム、ジェームズ・ボンド=ロジャー・ムーア逝く

2017-05-24 08:59:08 | 映画いろいろ

 初代ジェームズ・ボンド、ショーン・コネリーのシリーズはリバイバルや名画座で見た。だから、オレにとってのリアルタイム、ジェームズ・ボンドはロジャー・ムーアなのだ。そのムーアが90歳で亡くなった。

    

 コネリー・ボンドの最終作となった『ダイヤモンドは永遠に』(71)では、ボンドがやけに老けて見えたのに対し、ボンド役がムーアに交代した『死ぬのは奴らだ』(73)を見た時は、「おっ、ボンドが若返ったぞ」という印象を持ったのだが、実際はムーアの方が三つ年上だったらしい。

 さて、ポール・マッカートニー&ウィングスのテーマ曲に乗って颯爽と登場したムーア。ボンドガールは、後に『ある日どこかで』(80)にも出演した美女ジェーン・シーモア、敵役のヤフエット・コトーも怪演を見せたが、映画の出来はいまいちだった。

 クリストファー・リーを敵役に迎え、ブリット・エクランドとモード・アダムスという“ダブル・ボンドガール”で臨んだ『黄金銃を持つ男』(74)も不調で心配したが、(同時期に『ゴールド』という詰まらない映画も公開されたので、友と一緒にムーアを“黄金野郎”と呼んでちょっとばかにしていた)。

 敵役のジョーズ(リチャード・キール)とボンドガールにバーバラ・バックを得て、コミカルな味も出した『私を愛したスパイ』(77)から“ムーア・ボンド”路線が確立されていったと思う。

 ムーア・ボンド作品の私的ベストツーは、カーリー・サイモンが主題歌を歌った『私を愛したスパイ』と、トポルが助演し、シーナ・イーストンがテーマ曲を歌った『ユア・アイズ・オンリー』(81)かな。どれもモーリス・ビンダーのタイトルデザインが素晴らしい。

https://www.youtube.com/watch?v=F2k_95fxCzg
https://www.youtube.com/watch?v=Wy-c8aAntWA
https://www.youtube.com/watch?v=8kNksLL0sv4

 また、日本でムーアの人気を盛り上げた陰の功労者は吹き替えを務めた広川太一郎だろう。「ダンディ2 華麗なる冒険」ではムーアではなく相棒役のトニー・カーティスの方を吹き替えていたっけ。どれも懐かしい思い出だ。



ロジャー・ムーアのプロフィールは

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『夜に生きる』を見て考える「ギャング映画とは…」

2017-05-22 08:00:34 | 映画いろいろ

 ところで、ベン・アフレックは、『夜に生きる』を撮るに当たって「ワーナーのギャング映画にオマージュを捧げるチャンスだと思った」と語ったという。それは、1930~40年代、ジェームズ・キャグニー、エドワード・G・ロビンソン、ハンフリー・ボガート、ジョージ・ラフトらを擁して、ワーナーで作られた数々の映画のことを差すのだろう。



 それらの中には、キャグニー主演作では、ウィリアム・A・ウェルマン監督の『民衆の敵』(31)、マイケル・カーティス監督の『汚れた顔の天使』(38)、ラオール・ウォルシュ監督の『白熱』(49)。アル・カポネをモデルにした主人公をロビンソンが演じ、マービン・ルロイが監督した『犯罪王リコ』(31)(ロビンソンのその後については『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(15)でも描かれた)。暗黒街出身とささやかれたラフトも登場する、ポール・ムニ主演、ハワード・ホークス監督の『暗黒街の顔役』(32)などの名作がある。アメリカではこれらの映画がクラシックとしてきちんと認知されているのだなあ。



 と、ここからは、ワーナーのギャング映画とは直接関係のない俳優の話に移る。現代のギャングスターという意味ではアル・パチーノとロバート・デ・ニーロが筆頭だろう。親子役ですれ違い共演した『ゴッドファーザーPARTⅡ 』(74)は別として、パチーノ主演作では『暗黒街の顔役』をリメークしたブライアン・デ・パルマ監督の『スカーフェース』(83)、同じくデ・パルマ監督の『カリートの道』(93)、デ・ニーロ主演作ではセルジオ・レオーネ監督の『ワンス・アポン・ア・タイムス・イン・アメリカ』(84)、カポネを演じたデ・パルマ監督の『アンタッチャブル』(87)、マーティン・スコセッシ監督の『グッドフェローーズ』(90)『カジノ』(95)、パチーノと再共演したマイケル・マン監督の『ヒート』(95)などがある。

 ギャングとマフィアの違いはまた別の話になるとして、これら、ギャング映画のパターンは、最低の人間が、自分自身のルールに従ってのし上がるという、悪(ワル)の魅力を表現することにある。そこには、けれん味たっぷりの演出、華麗なファッションが施され、滅びの美学を表現する派手な見せ場も多く、内面的な演技も要求されることから、役者としては演じたい役ということになるのだろう。

 

 だから、最近ではジョニー・デップも『パブリック・エネミーズ』(09)でジョン・デリンジャーを、『ブラック・スキャンダル』(15)でジェームズ・バルジャーを、と実在した新旧のギャングを演じたが、どちらもあまり似合わず、成功作とは言えなかった。パチーノやデ・ニーロに比べると、明らかに貫禄不足なのだ。そうした流れが今回のアフレックの勘違いにも通じるのではないかと思うのだが…。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『夜に生きる』

2017-05-21 08:02:19 | 新作映画を見てみた

ベン・アフレックの誤算



 舞台は1920~30年代、禁酒法時代のボストン。警察幹部の息子ジョーは、戦場からの帰還後、父に抗い一匹狼のギャングとなるが…。ベン・アフレック監督、主演作。

 彼はギャング映画の魅力について「無秩序な感覚の魅力、見る者を異世界へ誘う」と語っている。確かに、ギャング映画の最大の魅力とは、主人公のカッコ良さや人間的な魅力によって、観客に、その悪事を大目に見てしまうというという矛盾した思いを抱かせるところにある。

 という訳で、この映画も、野望、女、金、成り上がり、復讐、抗争…と、道具立ては揃えたのだが、善にも悪にも成り切れないジョーの中途半端なキャラクターには魅力が感じられない。本国では、このキャラクター設定は善と悪の間で揺れるアフレック自身の私生活の反映か? とも言われているらしい。

 ただ、現代の目で禁酒法時代のギャングを描く、あるいは見せることの難しさはあると思う。そこには、人種問題への配慮など、昔のギャング映画とは別のタブーが存在するからだ。

 この映画でも、黒人や移民に肩入れする主人公、その結果、白人同士が殺し合うという妙な図式が展開し、違和感を抱かされた。そうしたところにもアフレックの誤算があったのではないだろうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ほぼ週刊映画コラム】『メッセージ』

2017-05-20 16:50:58 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

知的好奇心を刺激する哲学的なSF映画
『メッセージ』



詳細はこちら↓

https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1109227

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ワイルドなスピード! AHO MISSION』

2017-05-19 08:00:38 | 映画いろいろ

こっちの方がオリジナルをきちんと踏襲



 ケーブルテレビで何の気なしに見てしまった「ワイルド・スピード」シリーズのパロディ映画だが、どうやら映画館では上映しなかったようだ。ヴィン・ディーゼルと故ポール・ウォーカーに似た雰囲気を持つ無名の俳優、ヒスパニック系の美女、アジア系やモデル風のメンバー、ドウェイン・ジョンソン風の警官など、あまりにもばかばかしくて大笑いさせられる。

 妙にパワーアップして大げさになってしまった本家シリーズは、ストリートレースが主だった、最初の頃のB級っぽい味わいを捨ててしまったが、その意味では、こちらの方がきちんと踏襲しているところが、皮肉が効いて面白い。何も考えないで見るには打ってつけの映画だ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする