田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

ジョン・フォード生誕120年 『駅馬車』

2014-09-29 20:45:02 | 映画いろいろ

 ジョン・フォード生誕120年を記念して、シネマート新宿で『駅馬車』『静かなる男』を上映中。
http://mermaidfilms.co.jp/johnford/

 

 まずは、もう何度見ているか分からない『駅馬車』。7人の乗客と保安官と御者を乗せ、アリゾナからニューメキシコまでをひた走る駅馬車。何と言ってもその疾走感が素晴らしい。そして、個性豊かな俳優たちが繰り広げる人間ドラマや、モニュメント・バレーなどの圧倒的な景観を見せながら、メロドラマとアクションを見事に融合させたフォードの演出が光る。しかも、これだけさまざまな要素を盛り込みながら上映時間は何と99分! まさに映画の教科書と言える、名作中の名作だ。 

 今回は「ジョン・ウェイン所蔵の35ミリプリントを基に、デジタル・リマスター化した高品質の映像で上映」といううたい文句の通り、画面も音も予想以上にクリアになっていたのがうれしい。字幕も新たなものになっていた。陰影に富んだモノクロ映像の魅力を再確認しながら「オレは今本当にいい映画を見ているなあ」と思ったら何だか泣けてきた。こんなことは珍しい。やはり映画は映画館で見るべし。

 パンフレット(62・東宝事業課(日比谷映画劇場 No62-2))の主な内容
ジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン/解説とみどころ(岡俊雄)/梗概/「駅馬車」の音楽について」(岡俊雄)/駅馬車出演者こぼれ話(淀川長治)

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【ほぼ週刊映画コラム】『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』

2014-09-27 20:14:27 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

タイムトラベルを通して人生について考える
『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』



名台詞は↓

「人生こそが冒険に満ちたタイムトラベルなんだ」
byティム(ドーナル・グリーソン)

詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/969029

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『ジャージー・ボーイズ』つづき

2014-09-27 07:08:18 | 新作映画を見てみた

  

(続き)
 ところで、『ジャージー・ボーイズ』の製作者の一人であるグレアム・キングは、マーティン・スコセッシ監督の『ディパーテッド』(06)を製作したことでも知られる。本作についても「マフィアがいて、都会でうまく生き抜こうとするキャラクターがいて、しかもあの時代の歌が盛り込まれている。僕の大好きな題材」と語っている。

 となると、本作は同じくスコセッシが監督した『グッドフェローズ』(90)ともイメージが重なるのだが、あの映画のギャング役でアカデミー助演賞を得たジョー・ペシが、若き日、ジャージー・ボーイズと顔見知りで、彼らにゴーディーを紹介した人物として本作に登場する。さらに後に借金で身を持ち崩したデヴィートが、俳優として成功したペシの世話係になったというから驚く。これは本当の話。

 また、ジャージー・ボーイズを庇護する地元のギャングのボス役でクリストファー・ウォーケンも登場する。ウォーケンと言えば、彼がアカデミー助演賞を得た『ディア・ハンター』(78)で、ロバート・デ・ニーロらと「君の瞳に恋してる」を歌いながらビリヤードに興じる名場面があった。こちらはうれしい偶然。否、意図的なキャスティングか。

 そして『ジャージー・ボーイズ』のフィナーレは、まるでカーテンコールのように「1963年12月(あのすばらしき夜)」をはじめとするフォーシーズンズのヒット曲をバックに、出演者全員(ウォーケンまでも!)が歌い踊るという大サービス。というように、本作はディテールに注目するとさらに面白く見ることができる。

 蛇足:劇中、「恋はヤセがまん」のアイデアの基としてビリー・ワイルダー監督の『地獄の英雄』(51)が、また意外なシーンで、若き日のイーストウッドが出演した「ローハイド」がそれぞれテレビに映る。 

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『ジャージー・ボーイズ』

2014-09-27 06:37:26 | 新作映画を見てみた



イーストウッドが撮ったセンチメンタルなミュージカル

 米ニュージャージーの貧しいイタリア人街に生まれ育った4人の“ジャージー・ボーイズ”(フランキー・ヴァリ、トミー・デヴィート、ニック・マッシ、ボブ・ゴーディオ)。後に彼らは“ザ・フォーシーズンズ”として「シェリー」「恋はヤセがまん」「恋のハリキリ・ボーイ」「ステイ」「バイバイ・ベイビー」、そしてヴァリのソロで「君の瞳に恋してる」「瞳の面影」…数々の名曲を残した。

 ところが、彼らの曲を知っている者は多いが、その背景にあった物語を知る者はほとんどいない。早い話が、ビートルズの4人は有名だが、フォーシーズンズはリードボーカルのヴァリ以外は知る人ぞ知る存在なのだ。そんな彼らの栄光と挫折、友情と別れ、そして再起と再会を、彼らのヒット曲に乗せて描いたミュージカルがブロードウェーで大ヒットを記録した。実にいいところに目を付けたものである。

 そしてその映画版を、およそフォーシーズンズやミュージカルとは縁のなさそうな硬派のクリント・イーストウッドが監督したと聞いて驚いた。84歳にしてイーストウッドが初めてミュージカル映画を演出したのだ。という訳で、見る前はミスマッチを心配したのだが、実際目にすると、ミュージカルとしても青春群像劇としてもテンポ良く描かれ、おまけに適度にセンチメンタルで甚だイーストウッドらしくない。何だこういう映画も撮れるんじゃないか、と今度はうれしい驚きを抱かされた。

 ブロードウェイ版のオリジナルキャストでもあるジョン・ロイド・ヤング(真田広之似)がヴァリのファルセットボイスを見事に再現。他の3人もそれぞれ個性的な人物として面白く描かれているが、「ショート・ショーツ」(「タモリ倶楽部」のテーマ曲としても有名だ)も作曲したゴーディオのソングライターとしての存在がクローズアップされている。

 最も印象に残るシーンは、他の3人が初めてゴーディオと顔を合わせ、ゴーディオが作曲した「クライ・フォー・ミー」をコラボレーションする場面。才能を持った者同士の出会い、音楽を媒介とした心の高揚が見事に表現されている。このシーンは、本作の核心を言い当てた「まだ駆け出しの頃、街灯の下で、4人で俺たちだけのハーモニーを作った。あの時、ほかのことは消え失せて音楽だけがあった」というヴァリの言葉を象徴するものとしても印象に残る。時折ドラマを離れて4人がそれぞれの本音や心情を観客に向って語り掛ける趣向も面白い。

(つづく)

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神宮球場『野球狂の詩』『ヒーローインタビュー』

2014-09-26 19:48:25 | 雄二旅日記

 神宮球場でヤクルト対広島を観戦。新人・大瀬良が10勝目を挙げ、2年目の鈴木誠也がプロ入り初ホームランを打ち、カープが9対1で大勝。前日とは打って変わっての展開に、あらためて、流れをつかむことがいかに大切なのかを知らされた。ネット裏の2階席で見たので雨に濡れずにすんで大助かり。



 ところで、神宮球場の正式名称は明治神宮野球場で、本来は大学野球をはじめとするアマチュアのための球場だ。完成は1926年(大正15年)というから何と今年で88歳! 正式に数えたことはないが、多分、自分が最も数多く野球を見ている球場はここなのだ。

 さて、その神宮球場が登場する映画といえば、

 

 女性投手、水原勇気が入団した東京メッツの本拠地、国分寺球場として登場する水島新司原作の『野球狂の詩』(77)。『太陽を盗んだ男』(79)では球場外の回廊で沢田研二と西田敏行が遭遇する。1943年に行われた「出陣学徒壮行早慶戦」を中心に描いた岡本喜八監督の『英霊たちの応援歌 最後の早慶戦』(79)では、平和な時代の象徴として、現在の神宮球場で行われている東京六大学野球の様子が挿入される。

 トレンディドラマ風の『ヒーローインタビュー』(94)では、真田広之がヤクルトスワローズのベテラン選手を演じ、鈴木保奈美演じる新聞記者と恋に落ちる。『ミスターベースボール』(92)では、主人公エリオット(トム・セレック)が所属する中日ドラゴンズの遠征先の一つとして登場。などが思い浮かぶ。

 さすがに老朽化が目立つが、もしここがきれいな今風の球場になったら、それはそれで寂しいかもしれないとも思う。

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『シネマアベニュー 文化の泉』

2014-09-21 19:50:00 | SCREEN スクリーン



 執筆を担当した『シネマアベニュー 文化の泉』Vol.8が到着した。今回は「映画はこんな未来を創造する」のコーナーでSF映画について書かせていただいた。

 本シリーズは、映画雑誌『SCREEN(スクリーン)』が特別編集したオーソドックスな造りの映画誌で、スターや名場面の美しい写真が見どころとなる。

 サンスターが顧客に配布する非売品なので、書店には並ばないのが残念だ。歯科や理美容店、エステサロンなどで見掛けた際は、ぜひご一読を。

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「たまには映画もイタリアンといきたい」『道』『太陽がいっぱい』『ゴッドファーザー』

2014-09-20 20:48:37 | 名画と野球のコラボ

名画投球術 No.5「たまには映画もイタリアンといきたい」ニーノ・ロータ



 イタリア映画の音楽には、ほかのヨーロッパ諸国やハリウッドとは明らかに違った味わいがある。まず、オペラや交響楽などのクラシカルな音楽的素養を持った作曲家たちが多いこと=彼らの作り出すメロディーの多彩さと重厚さ、が一つ。その半面、彼らは名匠と呼ばれた監督たちとコンビを組むと、曲を聴けば大体どの作曲家が手掛けたのかが判別できる、そんな親しみやすさと音楽的な統一感を併せ持っていた。

 今回紹介するニーノ・ロータも若くしてオペラや交響楽を発表して神童と呼ばれ、後にフェデリコ・フェリーニ監督と出会って映画音楽の世界でも大活躍した。特に下記3本のテーマ曲は、「ポップス・ベストテン」 など日本のラジオ番組を賑わせた名曲としても有名だ。

ホームゲーム 『道(1954・伊)』 



 粗野な大道芸人ザンパノ(アンソニー・クイン)と、彼が買い取った少し頭の弱い女ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は旅から旅の流れ者。そこに綱渡りの青年“キ印”(リチャード・ベースハート)が現れ、奇妙な三角関係が生じる。サーカスの世界に憧れたフェリーニが、大道芸人のわびしい生活と不器用な愛の悲しさを描いた名作。

 サーカスのジンタを思わせる軽快なメロディーと、ジェルソミーナの象徴でもあるトランペットで奏でられる「ジェルソミーナのテーマ」の哀切が相まって観る者の心を打つ。フェリーニの監督デビューからロータの死まで続いた名コンビならではの、映像と音楽のあうんの呼吸が堪能できる。「シェルソミーナのテーマ」はシンプルだが奥深い名曲。

遠征試合 『太陽がいっぱい(1960・仏/伊)』



 貧しいアメリカ青年リプリー(アラン・ドロン)は、知り合った富豪の息子フィリップ(モーリス・ロネ)に嫉妬する。やがてフィリップを殺害し、彼になりすまそうとするリプリー。計画は完全かと思われたが…。ルネ・クレマン監督がヌーベルバーグに対抗して作り上げた青春サスペンス。リプリーを演じたドロンの野望に燃えた陰のある二枚目ぶりはいまや伝説。

 ロータがホームグラウンドのイタリアを離れ、フランスとの合作に挑んだ一作。これまたシンプルで憶えやすいメロディーのテーマ曲を、時にポップに、時に哀愁漂うというさまざまなアレンジで聴かせる。特にラストシーンの映像と音楽の相乗効果が素晴らしい。

メジャー進出 『ゴッドファーザー(1972・米)』



 アメリカの陰の政府ともいわれるイタリアン・マフィアの抗争と家族の絆を描いたフランシス・フォード・コッポラ監督による大河ドラマ。もともとオペラには暗殺や刃傷沙汰といったドロドロした話が多い。そこに目をつけたコッポラは、バイオレンス・シーンを緩和させる意味もあってロータを起用した。

 その音楽は、抗争や暗殺シーンのドキドキ感を盛り上げたかと思うと、一転、家族の絆を切々と歌い上げ、「愛のテーマ」という実に親しみやすい曲も作り出す多彩さを示し、結果としてこの映画に現代のオペラ的なスケールと美を与えた。アメリカ映画なのにこれほどイタリアを感じさせる映画も珍しい。この後、ロータは活躍の場をハリウッドにも広げた。

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【ほぼ週刊映画コラム】『猿の惑星:新世紀(ライジング)』

2014-09-20 20:24:27 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

猿の姿を借りて繰り広げられる“人間ドラマ”
『猿の惑星:新世紀(ライジング)』



名台詞は↓

「猿は猿を殺さない」
byシーザー(アンディ・サーキス)

詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/967846
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『おみおくりの作法』 ウベルト・パゾリーニ監督にインタビュー

2014-09-19 21:01:07 | BIG ISSUE ビッグイシュー

 孤独死した人を弔う民生係を描いた『おみおくりの作法』(Still Life)のウベルト・パゾリーニ監督をインタビュー取材。

 詳細は後ほど。

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広島 MAZDA Zoom−Zoom スタジアム~呉

2014-09-19 10:07:41 | 雄二旅日記

妻の実家がある広島へ。

 

 MAZDA Zoom−Zoom スタジアム(通称Zoomスタ)で巨人戦を2夜連続で観戦。残念ながらカープは連敗したが、芝生と土の心地良いにおいに酔いしれながら大好きな球場で野球を見る喜びは格別だった。

 メジャーリーグの球場をほうふつとさせるZoomスタは、ボルチモア・オリオールズの本拠地オリオール・パーク・アット・カムデン・ヤーズを参考にして造られたらしい。オリオール・パークは、1990年代以降、メジャーリーグの新球場建設の主流となった“ネオ・クラシカル様式”の代表格なので、古き良き時代の球場が持っていた雰囲気と近代的な設備を融合して造られている。Zoomスタはそれに倣ったわけだ。

 さらにオリオール・パークは、ブルックリン時代のドジャースが本拠地としていたエベッツ・フィールドをモデルにしているという。Zoomスタのルーツをたどると、ニューヨークまで行き着くと思うと何だか楽しくなる。


 連戦の合間に広島から呉までローカル線の旅としゃれ込む。

  

 第二次大戦中は帝国海軍の拠点であり、戦艦「大和」の誕生の地でもある呉では、『男たちの大和/YAMATO』(05)や海上保安官の活躍を描いた『海猿』(04)のロケが行われている。陸上展示された実物の巨大潜水艦、大和ミュージアムに展示された戦艦「大和」の10分の1の模型、戦艦「陸奥」の主砲身、スクリューなどから、軍港としての呉の歴史を垣間見た気がして複雑な心境を抱かされた。

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