田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「山梨湯けむりツアー殺人事件」「尾道・倉敷殺人ルート」、そして『三十六人の乗客』

2022-08-31 22:49:51 | テレビ

 妻に付き合って、バスツアーを題材にしたトラベルミステリードラマを続けて見た。

 1本目は、名取裕子主演の「早乙女千春の添乗報告書10 山梨湯けむりツアー殺人事件」(00)。監督・長尾啓司、脚本・いとう斗士八。

 舞台は山梨ということで、甲府、石和温泉、昇仙峡などを巡る旅。ツアー客は、記憶喪失の兄(辰巳琢郎)と妹(細川ふみえ)、訳ありの夫婦(中西良太、相本久美子)など。

 途中で殺人事件が起きても平気でツアーを続けるのはご愛敬。名取演じる千春の上司役の蟹江敬三、執事役の沼田爆がいい味を出していた。


 2本目は「西村京太郎サスペンス 十津川警部シリーズ15 尾道・倉敷殺人ルート」(98)。監督・脇田時三、脚本・長坂秀佳。

 尾道・倉敷2泊3日のツアーバスがジャックされたという報を聞き、十津川警部(渡瀬恒彦)は驚く。そのバスには十津川の先輩刑事の船木夫妻(高松英郎・野口ふみえ)が乗っており、船木の息子の一郎(西村和彦)は十津川の部下だったからだ。犯人から身代金の要求があり、十津川と亀井刑事(伊東四朗)が事件の解明に乗り出す。

 バス消失のトリックは、同じく西村京太郎原作で、新幹線から巨人軍の一行がいなくなる『消えた巨人軍』を思わせるところがある。尾道・倉敷と言いながら、名所巡りの場面はほとんどなかった。

 どちらも20年以上前の2時間ドラマなので、小道具(携帯電話)や衣装、風景に時代を感じる。


 そういえば、バスツアーを題材にした傑作映画があったことを思い出した。原作・有馬頼義、監督・杉江敏男、脚本・井手雅人/瀬川昌治、撮影・岡崎宏三、音楽・神津善行による『三十六人の乗客』(57)だ。何度かテレビドラマ化もされている。

 情婦(淡路恵子)と共に失踪した刑事(小泉博)が、スキーツアーバスの乗客となる。ところが休憩所で、凶悪犯もバスに乗り込んだことを知らされ、図らずも36人の乗客の中から凶悪犯を探すことになる、というストーリー。

 乗客は、千秋実、多々良純、中谷一郎、森川信、佐藤允らくせ者揃い。高校生の頃、テレビの深夜放送で一度見たきりなので、常々もう一度見たいと思っている。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ほぼ週刊映画コラム】『さかなのこ』

2022-08-31 12:01:39 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
「幸せな気分で映画を作るのはこんなにいいものなんだ」
『さかなのこ』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/?p=1347352&preview=true


【インタビュー】『さかなのこ』のん&磯村勇斗
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6951b3725ea34e4069865ac15fb2bbc5

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ゴルバチョフとアメリカ映画

2022-08-31 07:45:49 | 映画いろいろ

 

 今となってはペレストロイカも功罪がささやかれ、評価が分かれるところもあるが、ミハイル・ゴルバチョフの登場と政策は衝撃的だった。映画でも、例えば、『ロッキー4/炎の友情』(85)『パッケージ/暴かれた陰謀』(89)にはそっくりさんが登場した。

 その頃、アメリカ映画でゴルバチョフを演じられそうな俳優は、その髪形や風貌から、ピーター・ボイルが案外適役だと思うと書いたことがあった。

『ロッキー4/炎の友情』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/da804f5f7be18494b66c20d6f952312d

『レッドブル』(88)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7ec9ceca04ab3527dd5babb7e6095a5c

『パッケージ/暴かれた陰謀』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5c02db1c95c21fdac78d3fe7e4ae8cfc

『レッドオクトーバーを追え!』(90)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d5eb5819e196e3322230e09b112cb417

『ロッキーVSドラゴ ROCKY IV』(22)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8f4e74b9060de402ef4521e1be8e9265

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イチロー、マリナーズの殿堂入り2

2022-08-30 00:01:48 | 名画と野球のコラボ

 2004年、イチローは、84年間破られることのなかったジョージ・シスラーのシーズン通算安打257本を更新して262本とし、2度目の首位打者を獲得した。あの夏の日の興奮は今もはっきりと覚えている。

イチローとメジャー・レコード(2004.8.21.)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/29873f0cd4eda02605d5765bb94e14fe

やったぜイチロー(2004.8.27.)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c17a5fc656fc37d40258102d42d3a5a4

イチローとメジャー・レコード 続き(2004.9.5.)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c1434a5638ca2bfd1d124935f55df433

アメリカン・ジョークのイチロー(2004.9.26.)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c78b23138bf88a6420d376ce2cc8c9a9

イチロー・グッズで前祝い(2004.9.30.)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/69014583db05a80dcf6df72891fb8257

イチロー、シスラーを抜く! 夏草や兵どもが夢の跡(2004.10.14.)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2c4835a32f1bfc20d35b11c794d42eba

マーロウとディマジオ、俺たちとイチロー、そしてシスラー 『さらば愛しき女よ』(2014.8..10.)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/3d654a53d9418b1f04b52c796030d7de

イチロー引退 晩年のイチローについて(2019.3.22.)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/59c9b5f84ed9288039359f295f4e0404

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イチロー、マリナーズの殿堂入り

2022-08-29 23:06:25 | 名画と野球のコラボ

 イチローがマリナーズの殿堂入りを果たした。史上10人目だという。過去は、最後は近鉄に来たアルビン・デービスをはじめ、ランディ・ジョンソン、ケン・グリフィー・ジュニアという、マリナーズ球団史上の名選手が名を連ねている。

 後の6人は、イチローがメジャーデビューをした2001年の時のメンバーだ。専属アナウンサー:デイブ・ニーハウス、監督:ルー・ピネラ、DH:エドガー・マルティネス、捕手:ダン・ウィルソン、投手:ジェイミー・モイヤー、かつてのスターでこの年限りで引退したジェイ・ビューナー、そして右翼:イチロー。

2001年の主なラインアップは、
1.右翼:イチロー:打率350.8本塁打.69打点.56盗塁
2.左翼:マーク・マクレモア:打率286.5本塁打.57打点.39盗塁
3.DH:エドガー・マルティネス:打率306.23本塁打.116打点
4.一塁:ジョン・オルルッド:打率302.21本塁打.95打点
5.二塁:ブレット・ブーン:打率331.37本塁打.141打点
6.中堅:マイク・キャメロン:打率267.25本塁打.110打点.34盗塁
7.三塁:デービッド・ベル:打率260.15本塁打.打点64
8.遊撃:カルロス・ギーエン:打率259.5本塁打.打点53
9.捕手:ダン・ウィルソン:打率265.10本塁打.打点43
控えに
アル・マーティン:打率240.7本塁打.打点42
スタン・ハビエラ:打率292.4本塁打.打点33
トム・ランプキン:打率225.5本塁打.打点22
ジェイ・ビューナー:打率222.2本塁打.打点5

先発投手
ジェイミー・モイヤー:20勝6敗
フレディ・ガルシア:18勝6敗
ポール・アボット:17勝4敗
アーロン・シーリー:15勝5敗
ジョン・ハラマ:10勝7敗
ジョエル・ピネイロ:6勝2敗
ライアン・フランクリン:5勝1敗
ブレット・トムコ:3勝1敗
中継ぎ
アーサー・ローズ8勝0敗3セーブ
ジェフ・ネルソン4勝3敗4セーブ
ノーム・チャールトン4勝2敗1セーブ
ホセ・パニアクア4勝3敗3セーブ
抑えは
大魔神・佐々木主浩 45セーブ

 この年は、このメンバーで何とシーズン116勝もしたのだ。皆、今はどうしているのだろうか。イチローは新人王、首位打者、盗塁王、シーズンMVP、シルバースラッガー賞、ゴールドグラブ賞などを獲得した。それにしても、こういう式典をみていると、イチローは最後にマリナーズに戻ってきて本当によかったと思う。

https://www.baseball-reference.com/teams/SEA/2001.shtml

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『川っぺりムコリッタ』

2022-08-29 09:13:14 | 新作映画を見てみた

『川っぺりムコリッタ』(2022.8.28.オンライン試写)

 荻上直子監督が自身の小説を映画化。孤独な青年がアパートの住人たちとの交流を通して社会との接点を見つけていく姿を描く。

 北陸の小さな町にある小さな塩辛工場で働き口を見つけた山田(松山ケンイチ)は、社長(緒形直人)から紹介された古い安アパート「ハイツムコリッタ」で暮らし始める。

 できるだけ人と関わることなく、ひっそりと生きたいと思っていた山田の静かな日常が、隣の部屋に住む島田(ムロツヨシ)が「風呂を貸してほしい」と訪ねてきたことから一変する。

 山田と島田の間には、少しずつ友情のようなものが芽生え始めるが、ある日、島田は山田がこの町にやってきた秘密を知ってしまう…。

 タイトルの「ムコリッタ(牟呼栗多)」は、時間の単位を表す仏教用語で、ささやかな幸せなどを意味するのだという。全体的には、山本周五郎原作、黒澤明監督の『どですかでん』(70)の影響を強くうかがわせる。

 特に、吉岡秀隆演じる墓石のセールスマン親子は、明らかに『どですかでん』のこじき親子の模倣だ。

 ただ、白飯、牛乳、塩辛、漬物、野菜などを通して、シンプルに「食べること」について考えさせるところと、骨を媒介に、生と死のはざまや死生観を浮かび上がらせるところが、いかにも荻上流という感じがした。

 いい話のようで残酷なところもあり、シンプルなように見えて実はシュールな映画なので、印象としては、傑作と駄作の間を行きつ戻りつするようなところがあって、見ながら戸惑いが生じた。このあたりも『どですかでん』と重なるところがある。

 ラストも黒澤の『夢』(90)の中の「水車のある村」をほうふつとさせる。荻上監督の映画がここまで黒澤を感じさせるとは、ちょっと驚いた。ムロが好演を見せる。


『どですかでん』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/657b78d783fb148163c7bf94f7c66dec

名画投球術「ダメな人間ばかり出てくる映画を観て安心したい」黒澤明
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5b428edd45778476ab0530bc08c0ef67

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【インタビュー】『ブレット・トレイン』山本舞香

2022-08-29 07:34:12 | インタビュー

 伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』を、『デッドプール2』のデビッド・リーチ監督が映画化した『ブレット・トレイン』が9月1日から公開される。本作で、ブラッド・ピットが演じる主人公レディバグを翻弄(ほんろう)する謎の女子学生プリンスを演じたジョーイ・キングの日本語吹き替えに山本舞香が起用された。吹き替え初挑戦となった山本に話を聞いた。

「改めて、声優さんはすごいなと思いました」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1344808


『ブレット・トレイン』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/fbb3a7915683d4247cb9c8d15ea09f4e

【インタビュー】『ブレット・トレイン』真田広之
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/81d382cfbeeaa0d9d4b0df54bea77414

【インタビュー】『ブレット・トレイン』ブラッド・ピット&デビッド・リーチ監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0d0e8c613c7cc1652fc1335f14640cf0

『ブレット・トレイン』新幹線での“動く”レッドカーペット開催!
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/94a1e4a5b0fbbc66196c0291f8bc87b6

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【インタビュー】『さかなのこ』のん&磯村勇斗

2022-08-29 07:01:00 | インタビュー

 魚類に関する豊富な知識で学者としてさまざまなメディアでも活躍するさかなクンの半生を、沖田修一監督が映画化した『さかなのこ』が9月1日から公開される。主人公のミー坊を演じたのんと、ミー坊との絆を深める不良の総長を演じた磯村勇斗に話を聞いた。

のん「『男か女かはどっちでもいい』という貼り紙を見て、純粋にお魚が好きなミー坊を演じればいいんだと思いました」 磯村勇斗「日常的に魚をさばいたりするのが好きになりました」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1345755


【インタビュー】『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』のん
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/ef7705ecd90874abad7872f46ca69b1b

【インタビュー】『子供はわかってあげない』沖田修一監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b400a897e65fd9aa9bc0c48ebb781800

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ビデオ通話で西部劇談議『燃える平原児』

2022-08-28 19:22:37 | 駅馬車の会 西部劇Zoomミーティング

 今回のお題は、エルビス・プレスリー主演の『燃える平原児』(60)

 エルビスがチェロキーの血を引いていることを考えると、この映画は象徴的なものとして映る。今回は、同時期にオードリー・ヘプバーンが白人に引き取られたインディアン娘を演じた、ジョン・ヒューストン監督の『許されざる者』(60)があったことも話題となった。

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/124989c17be6492d8a800406942c54b5

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『犬も食わねどチャーリーは笑う』

2022-08-28 11:14:15 | 新作映画を見てみた

『犬も食わねどチャーリーは笑う』(2022.8.27.オンライン試写)

 裕次郎(香取慎吾)と日和(岸井ゆきの)は結婚4年目を迎える仲良し夫婦、というのは表向き。毎日、鈍感な夫にイライラする日和は、積もりに積もったうっぷんを、SNSの「旦那デスノート」に書き込み始める。そこには、夫たちが見たらゾッとするような、妻たちの恐ろしい本音の投稿がびっしりと書き込まれていた。

 ある日、裕次郎も「旦那デスノート」の存在を知ってしまう。投稿者のペンネームはチャーリー。それは日和と一緒に飼っているフクロウの名前。ということは「これって俺のことか…」。果たして夫婦生活の行方は…。

 ある夫婦のすれ違いとバトルを描いたブラックコメディ。監督・脚本は『箱入り息子の恋』(13)『台風家族』(19)の市井昌秀。すれ違いの合間に挿入される、仲が良かった頃の回想があまりにも対照的で切なく映る。これが結構効果的。

 香取、岸井が共に好演し、特に岸井がとてもチャーミングに映るから、ひどいことをしても憎らしくは見えない。これは監督の計算のうちだったのか。

 互いに引かれ合い、結婚したのに、なぜ愛が憎しみに変わるのか。それは夫婦はそもそも他人であり、恋愛と生活は別であり、人間は思考やシステムではなく感情で動くからなどと説く。

 結婚や夫婦生活に関する“あるある”が満載で、身につまされることも多々あり、笑いと怖さが同時に生じる。特に、この夫婦には子どもがおらず、2人だけで向き合わなければならないところがきつい(我が家も同様)。

 けれども、裕次郎の同僚で、自身も「旦那デスノート」に参加している蓑山さん(余貴美子)とのこんな会話が救いになる。

 「夫婦って何だと思います。分かんなくなっちゃいました」

 「分かんないっていうのは正解かもね。うなぎのつかみ取りかな。触れたと思ったら、ぬるっとすり抜けちゃうじゃない。相手のことが分かった瞬間にまた分からなくなる。でも、つかむ努力をしないともっともっと分からなくなるんだ」

 そして蓑山さんは、夫が病気で入院中だといい、「当たり前に一緒にいれて、当たり前に不満が持てて、それって全然当たり前なんかじゃない」と寂しげに告げるのだ。

 このシーンこそが、この映画のテーマを端的に表していると思った。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする