田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』

2018-01-30 09:50:15 | 新作映画を見てみた
 1971年、ベトナム戦争が泥沼化し、反戦の機運が高まる中、国防総省(ペンタゴン)が作成した、ベトナム戦争に関する極秘文書が流出する。スクープ記事でニューヨーク・タイムズに先を越された、ワシントン・ポストの編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、残りの文書を入手し、公表しようと奔走するが…。というスティーブン・スピルバーグ監督作。



 実はこの映画の主人公は、ブラッドリーではなく、メリル・ストリープ演じるワシントン・ポストの社主キャサリン・グラハムである。彼女の米新聞社初の女性社主としての葛藤、報道の自由と友人(マクナマラ国防長官)の立場との板挟みに悩む姿、などが描かれていく。

 去年公開された『ドリーム』を見た時に、『ライトスタッフ』(83)と二本立てでやったら面白いと思ったが、この映画の後に起きたウォーターゲート事件を描いた近作『ザ・シークレットマン』、あるいは『大統領の陰謀』(76)と二本立てで見たら、さらに面白いのではと感じた。

 詳細は後ほど。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『15時17分、パリ行き』

2018-01-29 17:43:13 | 新作映画を見てみた
 クリント・イーストウッドが、2015年にアムステルダム発パリ行の列車内で起こった無差別テロ事件を映画化。同事件で現場に居合わせ、武装した犯人に立ち向かった3人のアメリカ人の若者たちの実話を描く。



 『ジャージー・ボーイズ』(14)『アメリカン・スナイパー』(14)『ハドソン川の奇跡』(16)と、80を過ぎてからのイーストウッドの仕事ぶりは、本当に驚くべきものがあるのだが、今回も、俳優ではなく事件の当事者が自分自身を演じ、実際に事件が起きた場所で撮影するという、新たな試みに挑んでいるわけで…。その旺盛な創作欲に脱帽させられる。

 実話を、映画的に、時系列を操作して描くという手法は、前作『ハドソン川~』と同じだが、94分という短い時間の中で、事件そのものを描くのはラスト近くの20分ほどで、それよりも問題児扱いされた3人の子供時代や、事件直前のヨーロッパ旅行のスケッチを丹念に描いたところには、正直なところ、ちょっとはぐらかされたような気がした。

 イーストウッドとしては、あくまで普通の人々の物語として描く、あるいは、問題児がヒーローになる皮肉を描きたかったのかもしれないが、『ハドソン川~』と比べると、手放しでは褒めちぎれないところがあった。

 詳細は後ほど。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

沢島忠監督が亡くなった

2018-01-29 09:49:05 | 映画いろいろ
沢島忠監督が亡くなった。
もちろんリアルタイムではなく、テレビで見たものばかりだが、
コミカルでスピード感にあふれた“沢島時代劇”は大好きだった。



以前、橋本治の『完本チャンバラ時代劇講座』を読んだ時に、
沢島時代劇の魅力を見事にいい当てた、週刊誌の記事の引用があり、
孫引きさせてもらったが、ここに再び転載し、哀悼の意を表します。

(沢島忠が)昭和32年に一本立ちの監督になってからは、
恐ろしいもので、撮る映画のどれも、登場人物が、ひたすら走りに走っているので、
映画評論家も観客もビックリしてしまった。

一心太助が走り、
若さま侍が走り、
お染が久松の手をひいて野崎村のドテ道をこけつまろびつ突っ走り、
ふり袖小僧がふり袖をひるがえして町の中をかけぬけ、
弥次さんと喜多さんが命からがら全速力で逃げ、
どこへ行ったかむっつり右門の旦那を、泡を吹いておしゃべり伝六が追っかけ、

助さん格さんは若いから走ってもフシギはないとして、
水戸黄門までがかけだしていたし、
爺さんがかけるのは黄門だけじゃなく、大久保彦左衛門までかけ足で、
江戸城のなかを、徳川家光まで全速力でつっ走るというのだから、
沢島時代劇は、下(しも)は横丁の犬から、上(かみ)は公方(くぼう)さままで、
ヒタスラムヤミに狂気のごとく走り通しているというので人気がわいた。




フィルムセンターで2015年に開催された「日本映画史横断6 東映時代劇の世界Part2」で、
初めてスクリーンで沢島時代劇を見ることができた。『殿さま弥次喜多 捕物道中』(59)↓
http://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0b1d89f54af1489fd86b36d6bef2fc0e
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ダークタワー』

2018-01-28 06:54:53 | 新作映画を見てみた

これは序章故の物足りなさなのか?



 少年ジェイクは、夢で見た「巨大な黒いタワー」「拳銃使いの戦士」「魔術を操る黒衣の男」が、「中間世界」と呼ばれる異界に実在することを知る。実はダークタワーは、世界の均衡を保つ塔であり、ジェイクは、それを崩壊させようとする黒衣の男(マシュー・マコノヒー)と、それを守ろうとするガンスリンガー(イドリス・エルバ)の争いに巻き込まれていく。

 監督はデンマーク人のニコライ・アーセル。これは一種のパラレルワールド物なのだろう。シングルアクションの二挺拳銃を持つガンスリンガーのキャラクターは、西部劇のそれを思わせ、ちょっと面白いが、全体的には支離滅裂な話で、90分なのにひどく長く感じる。スティーブン・キングの原作は全7部構成だとか。だとすると、これは序章故の物足りなさなのか?

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ほぼ週刊映画コラム】『祈りの幕が下りる時』と『嘘を愛する女』

2018-01-27 16:21:29 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

松本清張の影響を感じさせられる
『祈りの幕が下りる時』と『嘘を愛する女』



詳細はこちら↓

https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1138803
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ポスターでみる映画史Part3 SF・怪獣映画の世界」

2018-01-26 08:58:39 | 映画いろいろ

 京橋のフィルムセンターで、「西部劇」「ミュージカル」に続く、「ポスターでみる映画史Part3 SF・怪獣映画の世界」を展覧。



http://www.momat.go.jp/fc/exhibition/sf-kaiju/

 『キングコング対ゴジラ』(62)『モスラ』(61)の横長の特大ポスターが壮観だった。ビデオ上映されていた、荻野茂二監督の影絵アニメ―ション『百年後の或る日』(33)も興味深く見た。

 こうして振り返ってみると、『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』が日本で公開された78年は、日本のSF界にとっては、エポックな年だったのだなと改めて思う。ふと、映画館、テレビ、ビデオ…、見た形態は様々だが、展示されたほとんどの作品を見ていることに気付き、われながら苦笑した。

 西部劇の時はこんな感じで、同好の士が集まり、大いに盛り上がった。中には、この後亡くなった人もおり、今となっては懐かしい思い出だ。
https://www.youtube.com/watch?v=ecqQhZoP4_M

フィルムセンターを取材した「違いのわかる映画館」
https://www.enjoytokyo.jp/feature/season/cinema/vol06.html

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「TOHOシネマズ 日劇」閉館

2018-01-25 12:44:57 | 映画いろいろ

 「TOHOシネマズ日比谷」のオープンに伴い、マリオン内の「TOHOシネマズ 日劇」が閉館となる。跡地は多目的ホールとプラネタリウムになるという。



 日劇の跡地に有楽町マリオンができたのは1984年。日劇の円型を生かしながら作られた銀色に輝くビルは、バブルの前兆を象徴するような豪華さだったが、すぐにゴジラの標的になったのには笑った。

 東宝系の映画館は3つ。松竹系の「丸の内ピカデリー1、2」と合わせてシネコンの走りだったと言えないこともない。試写で映画を見させてもらうようになる前は、結構通っていたなあ。

日本劇場(日劇1)…大作ロードショー館
 『ゴースト・バスターズ』(84)、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)、『植村直己物語』(86)、『ベスト・キッド2』(86)、『アンタッチャブル』(87)、『ニューヨーク東8番街の奇跡』(87)、『タッカー』(88)、『オールウェイズ』(89)、『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)、『トータル・リコール』(90)、『ゴッドファーザーPART3』(90)、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(91)、『ターミネーター2』(91)、『ケープ・フィアー』(91)、『シティ・オブ・ジョイ』(92)、『フック』(92)、『ジュラシック・パーク』(93)、『ミセス・ダウト』(93)、『メジャーリーグ2』(94)

日劇東宝(日劇2)…東宝映画の一番館
 『ゴジラ』(84)、『竹取物語』(87)、『快盗ルビー』(88)、『あ・うん』(89)、『ゴジラVSキングギドラ』(91)、『ゴジラVSモスラ』(92)、『まあだだよ』(93)、『ゴジラVSメカゴジラ』(83)、『四十七人の刺客』(94)、『ジャッジ・ドレッド』(*95)、『ドラえもんのび太の宇宙漂流記ほか』(99)

日劇プラザ(日劇3)…ちょっと渋めのロードショー館
 『愛と哀しみの果て』(85)、『ハスラー2』(86)、『ハリーとヘンダソン一家』(87)、『ロジャー・ラビット』(88)、『裸の銃を持つ男』(88)、『ファミリー・ビジネス』(89)、『ロボコップ2』(90)、『キンダガートン・コップ』(90)、『バックドラフト』(91)、『心の旅』(91)、『フォー・ザ・ボーイズ』(91)、『エイリアン3』(92)、『ドラキュラ』(92)、『ホットショット2』(93)、『ザ・シークレットサービス』(93)

こうした看板なども、何年か後には、皆懐かしいものになるのか…。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『最後の航海』のドロシー・マローン

2018-01-24 06:05:27 | 映画いろいろ

 ブロンドの髪、ちょっと垂れ目が印象的な女優のドロシー・マローンが亡くなった。

 かわいい顔をしてジョエル・マックリーを裏切る女を演じた『死の谷』(49)『ワーロック』(59)など、西部劇に多数出演する一方、ダグラス・サーク監督のメロドラマ『風と共に散る』(56)でアカデミー助演賞を受賞した。テレビのシリーズドラマ「ペイトンプレイス物語」でのミア・ファローの母親役も印象に残る。



 とはいえ、俺にとって最も忘れ難い彼女の出演映画は、廃船となる豪華客船を使って、日本でロケされた海洋パニック映画『最後の航海』(60)なのである。製作はMGM、監督・脚本はアンドリュー・L・ストーン。

何回目かに見た際のメモが残っていた。

 今回、10数年ぶりにテレビで放映されたので見直してみたら、やっぱりウッディ・ストロードがいいんだな。

 主人公ロバート・スタックの妻ドロシー・マローンは、船の爆発の衝撃で崩れてきた鉄材に足を挟まれて身動きができなくなる。彼女を助けるには、鉄材を焼き切るためのアセチレンボンベが必要なのだが、それがなかなか見付からない。船は沈み始め、彼女が水没してしまう時も刻一刻と迫ってくる。

 そんな中、自らの命の危険も顧みず、最後まで彼らを見捨てずに助ける水夫役を演じていたのがストロードだった。

 今回は、二か国語放送だったので、原語で聴いていたら、彼はスタックを「ミスター」と、マローンを「マム」と敬称で呼んでいた。そのことからも、黒人たちがまだ完全なる人権を得ていなかった当時の風潮が垣間見えるのだが、だからこそ、スタックが、妻と娘を助けるために奮闘してくれた彼を、人種を超えて「この人だけは自分の手で助けたい=This is one guy I'm gonna help aboard personally!」 と言いながら、救命ボートに引っ張り上げるラストシーンに感動するのだ。

 この映画のマローンは、身動きができないまま、ずっと水につかっているという大変な役だったが、「何としてでも助けたい」と思わせるような、とても感じのいい奥さん像を見事に表現していた。水につかりそうになる彼女の顔を、夫役のスタックが必死に支える場面が、妙に切なかった覚えがある。


https://www.youtube.com/watch?v=VcBrBYS6OL8

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セルゲイ・エイゼンシュタイン生誕120周年

2018-01-23 09:07:43 | 映画いろいろ

 昨日のGoogleの扉絵?は「セルゲイ・エイゼンシュタイン生誕120周年」だった。



 エイゼンシュタインはソ連(ロシア)出身の映画監督。『戦艦ポチョムキン』(25)の「オデッサの階段」のシーンなど、モンタージュ(視点の異なる複数のカットを組み合わせて表現する)理論の実践者として、映画史にその名を残す。そのシーンについては、ブライアン・デ・パルマが『アンタッチャブル』(87)で見事な“パクリ”を見せた。



 学生の頃、映画史を勉強する感覚で、岩崎昶の『映画の理論』(岩波新書)や、杉山平一の『映画芸術への招待』(講談社現代新書)でエイゼンシュタインについて読み、高田馬場にあったACTミニ・シアターや新宿アートビレッジで彼の映画を見た。今ならYouTubeですぐに映像が見られるが、昔はそんな感じだったのだ。
https://www.youtube.com/watch?v=AUFGJ0KQkdE

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ジャージー・ボーイズ』を途中から再見

2018-01-22 17:09:08 | 映画いろいろ



 今回も、娘を失ったフランキー・ヴァリのバックに流れる「瞳の面影」、ボブ・ゴーディオがヴァリを元気付けるために作った「君の瞳に恋してる」、音楽の殿堂入りでの4人の再会、そして、キャスト全員が歌って踊るフィナーレという、流れの見事さに酔った。

 この映画、『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』と、監督としてのイーストウッドは、80歳を超えてからの方がすごいことに驚く。新作『15時17分、パリ行き』は3月1日公開だ。

初見時の記事は、
http://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/91356d36a8e1d08dcd0a328f744484a2
http://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8489231fc9bd6267b49c5cd43a63bf77

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする