田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

大河ドラマ「どうする家康」最終回

2023-12-18 00:13:42 | 大河ドラマ

大河ドラマ「どうする家康」最終回

 最初は、映画『レジェンド&バタフライ』同様に、古沢良太の脚本に納得できず、何度か脱落しかかったのだが、途中から、これは徳川家康(松本潤)を主人公にした一種のファンタジーなのだと思って見ることにしたら、何だか見るのが楽になった。

 ファンタジーだから、史実を無視しても構わないし、何が起きてもおかしくはない。よく言えば自由だが、悪くいえば暴走。特に織田信長(岡田准一)と豊臣秀吉(ムロツヨシ)の描き方がひどかったのだが、要は家康を悪者にできないと考えれば、こうなるということか。一方、家康と家臣団との絆のくだりは、途中から面白くなった。そして、この脚本の家康という面から見れば、松潤は案外適役だったと思う。

 最後は、血なまぐさい大坂夏の陣から一転して、カーテンコール的な明るい夢落ちで終わらせた。これも賛否あるところだろうが、やはりこのドラマはファンタジーだったのだとわが意を得た思いがした。

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「鎌倉殿の13人」と「草燃える」

2022-02-28 09:17:35 | 大河ドラマ

 今年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を見ていると、「草燃える」(79)のリメークのようだと感じる。脚本の三谷幸喜は自分とほぼ同年代で、しかも大河ドラマフリークのようだから、恐らく「草燃える」に対する思い入れも相当強いものがあるはず。

 「草燃える」は、基本的にセリフが現代語だったので物議を醸したが、「鎌倉殿の13人」もそれを踏襲している。また、「新選組」(04)の時に、かつてドラマで土方歳三と沖田総司を演じた栗塚旭と島田順司を登場させたり、「真田丸」(16)の時は、三谷自身が大好きだったという、「国盗り物語」(73・明智光秀「黄金の日日」(78・石田三成で活躍した近藤正臣を本多正信役に起用した。

【インタビュー】「真田丸」三谷幸喜
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5c44ca52acc342d4f73e25564e8a0ddd

 で、今回も、「草燃える」で北条義時を演じた松平健を平清盛役で、丹後局の草笛光子を比企尼役で、藤原定家の岡本信人を千葉常胤役で起用している。さすがは大河ドラマフリークだけのことはある。

「草燃える」と「鎌倉殿の13人」のキャストを比較してみた。

北条時政:金田龍之介→坂東彌十郎
北条宗時:中山仁→片岡愛之助
北条政子:岩下志麻→小池栄子
北条義時:*松平健→小栗旬
北条保子:真野響子→宮澤エマ(実衣)
北条時房:森田順平→瀬戸康史
北条泰時:中島久之→坂口健太郎
牧の方:大谷直子→宮沢りえ(りく)

源頼朝:石坂浩二→大泉洋
源範頼:山本寛→迫田孝也
阿野全成:伊藤孝雄→新納慎也
源義経:国広富之→菅田将暉

大姫:池上季実子→南沙良
源頼家:郷ひろみ→金子大地
源実朝:篠田三郎→柿澤勇人

大庭景親:加藤武→國村隼
伊東祐親:久米明→浅野和之
伊東祐清:橋爪功→竹財輝之助
伊東祐之(架空):滝田栄→なし
茜(架空):松坂慶子→新垣結衣(八重)?
山木兼隆:長塚京三→木原勝利
工藤祐経:加藤和夫→坪倉由幸

安達盛長:武田鉄矢→野添義弘
三浦義澄:早川雄三→佐藤B作
三浦義村:藤岡弘→山本耕史
和田義盛:伊吹吾郎→横田栄司
梶原景時:江原真二郎→中村獅童

比企能員:佐藤慶→佐藤二朗
比企尼:なし→*草笛光子
畠山重忠:森次晃嗣→中川大志

土肥実平:福田豊土→阿南健治
上総広常:小松方正→佐藤浩市
千葉常胤:小笠原弘→*岡本信人

大江広元:岸田森→栗原英雄
三善康信:石濱朗→小林隆

平清盛:金子信雄→*松平健
平宗盛:西田健→小泉孝太郎

後白河法皇:尾上松緑→西田敏行
丹後局:*草笛光子→鈴木京香
藤原定家:*岡本信人→?

文覚:観世栄夫→市川猿之助
藤原秀衡:なし→田中泯

熱海・伊豆山神社「草燃える」と『炎環』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c693f91891eebb371bda6f2674c844e4

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橋田壽賀子脚本「泣いてたまるか 日本で一番もてない男」「おんな太閤記」

2021-04-07 10:29:39 | 大河ドラマ

 大御所脚本家の橋田壽賀子が亡くなった。彼女の代表作といえば、「となりの芝生」「おしん」「渡る世間は鬼ばかり」などが挙がるのだろうが、正直なところこれらは苦手だ。とは言え、好きなドラマもある。

 渥美清が毎回違う役をやる「泣いてたまるか」というドラマシリーズの中に、橋田が脚本を書いた「日本で一番もてない男」(67)という回があった。(1989.1.1.)

 もてないサラリーマンの八田万作(渥美)は、社内のマドンナ的存在の絢子(佐藤オリエ)を妻に迎えるが、「こんな美人がなぜ俺のところに嫁に来た。過去に男がいたのではないか」と疑心暗鬼に陥り、猜疑心に悩まされるという話。ちょっと『アパートの鍵貸します』(60)をほうふつとさせるところもある。

 最後に、絢子は、もてて母を苦労させた父親に対する反感から、自分だけを見てくれるであろうもてない万作に目を付けたと打ち明け、「私はあなたがもてない男だから好きなの」と告白する。

 で、美しい佐藤オリエにこう言われたら、万作のように単純に喜んでしまうのかもしれないが、よく考えたら、これは随分屈折した皮肉な心情だし、見方によっては、相当意地が悪いとも思える。女性の本音や独自の視点、という意味では、橋田脚本さすがに鋭いと言うべきか。

「泣いてたまるか」(作詞・関沢新一、作曲・木下忠司)
https://www.youtube.com/watch?v=chf7mSgCUYw

「おんな太閤記」(81)

 男性=武将が中心の戦国時代を、豊臣秀吉(西田敏行)の正室・ねね(北政所=佐久間良子)の視点で描いたユニークな大河ドラマ。

 ねねを「おかか」と呼ぶ秀吉に象徴されるように、彼らを囲む、秀吉の母・なか(大政所=赤木春恵)、弟・小一郎秀長(中村雅俊)、姉・とも(長山藍子)、妹・朝日姫(泉ピン子)によるホームドラマとしての要素も強い。

 中でも、秀長が重要なキャラクターとして登場したのはこのドラマが初めてで、彼の兄の片腕としての存在感、「兄者」という呼び方、ひそかにねねに寄せる思慕などは、後に『秀吉』(96)で高嶋政伸が演じたキャラクターにも引き継がれた。橋田壽賀子に先見の明あり。

橋田ドラマのテーマ曲と言えば、作曲は坂田晃一
https://www.youtube.com/watch?v=G1vyvz_WOHo

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秀吉=緒形拳逝く

2021-02-13 07:10:50 | 大河ドラマ

秀吉=緒形拳逝く(2008.10.14.)

 緒形拳逝く。映画では『鬼畜』(78)『復讐するは我にあり』(79)といった主演作よりも、『風林火山』(69)で演じた三船敏郎扮する山本勘助に最後まで従う畑中武平、『砂の器』(74)の元警官で図らずも被害者となる三木謙一、『八甲田山』(77)で生き残る村山伍長(ラストシーンのアップがすごい)など重要な脇役の方に強い印象がある。以前、インタビューで「(『砂の器』で)本当は本浦千代吉がやりたかった。でも、加藤嘉さんの千代吉、良かったねえ」と語っていた。緒形拳の千代吉も見てみたかった。

 ところで、この人の幅広い出演作の中でも特筆すべきは、やはりNHKの大河ドラマだろう。「太閤記」(65)での成り上がっていく木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)、「源義経」(66)の武蔵坊弁慶(最後の立往生は子供心にも強烈な印象が残った)、「風と雲と虹と」(76)の平将門(加藤剛)の盟友・藤原純友、そして「黄金の日日」(78)での再びの秀吉など、ここでも主人公というよりも、裏の主役としての存在感が抜群だった。

 「おんな太閤記」(81)の西田敏行や、「秀吉」(96)の竹中直人のも良かったが、やっぱり秀吉といえばコミカル味とすご味が同居する緒形拳のイメージなのだ。そういえば、「太閤記」や「源義経」を演出した吉田直哉も先日亡くなった。

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「功名が辻」最終回

2021-02-12 09:07:26 | 大河ドラマ

「功名が辻」最終回(2006.12.12.)

 大河ドラマ「功名が辻」が終了した。戦国時代の脇役、山内一豊(上川隆也)と妻の千代(仲間由紀恵)を主役にして、1年通しで描くのは大変だったとは思うが、本来なら「こんなところに一豊や千代はいないはず」という歴史の重要場面に必ず2人を絡ませるルール無視の作劇と、サラリーマン風の出世物語仕立てで強引に乗り切った感がある。これではまるで「黄金の日日」(77)の呂宗助左衛門だ。

 その分、豊臣秀吉役の柄本明や徳川家康役の西田敏行が目立ったのは仕方がないところか。というわけで、途中からはフィクションとして楽しんだ。上川は老けたらもっといい俳優になるかもしれない。

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「義経」最終回

2021-02-12 08:27:39 | 大河ドラマ

「義経」最終回(2005.12.13.)

 大河ドラマ『義経』の最終回はひどかった…。源義経(滝沢秀明)主従は、北行伝説でも持ち出さない限り、結局は平泉で死ぬわけだから、見どころは彼らの死に様なのに、バタバタしていて、まるでスターかくし芸大会みたいだった。

 おまけに、義経昇天を爆発音とともにCG処理されては…。京の五条大橋での義経VS弁慶(松平健)の時も、CG過多のひどい演出だった。黛りんたろうは普通の演出が嫌いなのか…。

 また、このドラマは、義経を戦乱の世の悩める理想主義者の如く描いてしまったため、義経の、人を引き付ける不思議な魅力に最後まで迫れなかったのではないか、という気がした。ただし、岩代太郎作曲のテーマ曲はなかなか良かった。

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『獅子の時代』最終回

2021-02-11 19:07:25 | 大河ドラマ

『獅子の時代』最終回(1980.12.21.)
「なじょする」

 快作だった。「花神」(77)「黄金の日日」(78)と、良作が続いたNHK大河ドラマも、去年の「草燃える」(79)はちょっといただけなかったが、この「獅子の時代」でまた盛り返してくれた。とにかく山田太一の脚本が素晴らしかった。

 明治維新が、必ずしも万民のためのものではなく、そこにはさまざまな悲劇があり、それぞれの階級なりの悩みがあり、希望があり、といった、本当の意味での維新を問い直しながら、そこに生きた人々の群像を描いている。

 元会津藩士のアウトロー平沼銑次(菅原文太)と元薩摩藩士の苅谷嘉顕(加藤剛)という架空の人物を主人公とし、出だしは何とパリの現地ロケで始まり、今までの大河ドラマの狭苦しさを一気に解消していた。加えて、音楽をダウンタウンブギウギバンドが担当し、ここにも大河ドラマの変革が感じられた。

 そして、文太の形容しがたいほどの素晴らしい演技によって、アウトサイダーの目から見た維新を描きながら、庶民の側からすれば、決して維新ではなかったのではないか、という疑問を投げ掛ける。これは岡本喜八の『赤毛』(69)の「葵が錦に変わっただけじゃねえか」というセリフにも通じるものだ。

 これまでの明治維新物は、歴史上の人物から見た維新=正義のように描かれたものがほとんどだった。ところが、このドラマはそうではなかった。だから、現在、維新の後を受け継いで生きているわれわれにも迫ってくるものがあったのだ。最終回のラストには、『明日に向って撃て!』(69)を思い起こさせられた。

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『秀吉』

2021-02-10 07:46:23 | 大河ドラマ

大河ドラマ『秀吉』(1996.2.2.)

 今年の大河ドラマは、面白くなりそうな予感がする。もともと豊臣秀吉の生涯自体が、日本史上最大の出世物語としての面白さがある。それに加えて、今回は秀吉を陰から支えた弟の秀長(高嶋政伸)にも光を当てたところが、きらりと光る脇役好きの自分にとっては楽しみなのだ。

 竹中直人の大げさな演技と大声が少々気になるが、秀吉は日本三大大声の持ち主であり、もちろん目立ちたがり屋なのだから、案外適役なのかもしれない。

 原作の一つである堺屋太一の『豊臣秀長 ある補佐役の生涯』を読んでみた。堺屋には、作家というより経済評論家としてのイメージが強くあり、この小説でもそのにおいはするのだが、秀長という人物に関するこちらの興味を巧みに刺激され、上下巻を一気に読まされてしまった。

 この小説から最も強く感じられることは、書く素材となる人物への思い入れの強さについてだ。しかも、その人物(秀長)が、世間にあまり知られていなければ、そこには一種の広め人としての自負や愛情も加わるから、自然、話にも熱が入ることになる。それ故、ドライな印象がある堺屋にしては、珍しく、読み手の情に訴えかけてくるところもあるのだ。

【今の一言】このドラマで村上弘明が演じた明智光秀は、「国盗り物語」の近藤正臣とともに、ベスト・オブ・光秀だと思っていたが、今回の「麒麟がくる」の長谷川博己が加わって、ベストスリーとなった。 

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「新選組!」最終回「愛しき友よ」

2021-02-09 13:30:12 | 大河ドラマ

「新選組!」「愛しき友よ」(2004.12.12.)
大団円

 大河ドラマ「新選組!」がいよいよエンディングを迎えた。何より、最初は違和感ばかりが目立った香取慎吾演じる近藤勇や隊士たちが、どんどんと成長、変化していく様が面白かった。最後は近藤や新選組を多少美化し過ぎたきらいはあるが、幕末という、何が正しいのかよく分からない混沌とした時代の中で、それでも何かを信じて懸命に生きた若者たちの青春群像として見られたのが大きかった。

 そして、三谷幸喜にしては珍しく真面目に? 野田秀樹扮する勝海舟に、近藤の最後について「どう死んだかではなくどう生きたかだ」と言わせたり、栗塚旭演ずる土方の兄に「(新選組が)正しかったかどうかなんて、100年、200年後の人に決めてもらえばいい」と言わせたところに、三谷なりの新選組に対する思いが込められていたのだろうと感じた。

 それと、ラストシーンに続く、テーマ曲をバックにした“カーテンコール”も良かった。後は新旧の土方、沖田役の共演も。何より、三谷自身が作詞したというテーマ曲が全てを語っている気もする。それは男が勝手に抱くヒロイズムやロマンチシズムなのかもしれないが。
 
 「愛しき友は何処に、この身は露と消えても、忘れはせぬ、熱き思い、誠の名に集いし遠い日を、あの旗に託した夢を」
https://www.youtube.com/watch?v=1h-Ue3XL_ww

 ある小学生が、「愛しき友は何処に」のところを「勇は香取慎吾だ」と替えて歌っていた。子供の発想はすごいなあ。

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「新選組!」「流山」

2021-02-09 10:36:33 | 大河ドラマ

「新選組!」「流山」(2004.12.5.)

 昨日の大河ドラマ「新選組!」を見ていて、新選組物としては最後の見せ場の一つとなる、相手を近藤勇(香取慎吾)と知りながら共感する薩摩の有馬藤太(古田新太)は、「勧進帳」の富樫や「忠臣蔵」の垣見五郎兵衛のような役割だなあと改めて感じた。三船敏郎が近藤を演じた映画『新選組』(69)では中村錦之助が特別出演の形で有馬を演じて最後を締めていた。まあ、何が正義なのかは別にして。

 また、中村獅童演じる捨助という架空の人物の設定に、三谷幸喜の大河ドラマフリークぶりを感じる。以前、何かの対談記事で、「昔『黄金の日日』を見ていて、主人公の呂栄助左衛門(市川染五郎)が、半ば架空の人物なので、どんな歴史的な場面、例えば、比叡山焼き討ちや本能寺の変に立ち会っていてもおかしくない。これは脚本家としてはおいしい役」みたいなことを語っていた。つまり、今回の大河での捨助は、「黄金の日日」の助左衛門なんだな、きっと。

 それから、今回は、沖田総司(藤原竜也)が静養している植木屋の主人役で昔の「燃えよ剣」などで沖田を演じた島田順司が登場。前半は、土方歳三(山本耕史)の兄役で、やはり昔土方を演じた栗塚旭も出ていた。こういうリスペクトの仕方はいいなあ。

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