田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

【ほぼ週刊映画コラム】『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』

2023-06-30 09:01:10 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
“時の流れ”が物語の核となるハリソン・フォード“最後のインディ・ジョーンズ”『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1394082

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「午後のロードショー」『今そこにある危機』

2023-06-30 06:11:43 | ブラウン管の映画館

『今そこにある危機』(94)(1995.2.24.渋谷東急)

 過去の『レッド・オクトーバーを追え!』(90)『パトリオット・ゲーム』(92)、そしてこの映画、というシリーズ3作を通しで考えてみると、アメリカの、というよりも、大げさに言えば、世界情勢の緊張の流れの変化が見えてくる。

 1作目はソ連崩壊間際の亡命、2作目は冷戦終了後の民族紛争やテロ、そして今回は、南米の麻薬戦争、といった具合に、主人公のジャック・ライアンが巻き込まれる事件の背景が、たかが数年の間に激変しているのだ。

 もちろん、このシリーズはそうした背景が生む問題を声高に叫んでいるわけではないのだが、硬い社会派映画とは違い、初めから告発的な意図を持って作られてはいない娯楽映画だからこそ、かえって、その奥に潜む怖さが見えてくるところがある。気が付けば、描かれている事件がどんどん身近なものになってきているのだ。

 ところで、前回の『パトリオット・ゲーム』の時は、ライアン役がハリソン・フォードに代わったことを歓迎していたのだが、今回は何だか嫌々やっているようなところが見え隠れして、見ていて少々つらかった。まあ、これは渋々上役の代わりをさせられるという、今回のライアン像に対する彼なりの計算の演技なのかもしれないが。

 さて、トム・クランシーの原作はまだまだ続くようで、今回惜しくも殺されてしまったジェームズ・アール・ジョーンズに代わって、ウィレム・デフオーとその部下たちが、ライアンのボディガードとしてレギュラーに参入するらしい。正直なところ、ここらあたりでそろそろ打ち止めにしておいた方がいいような気もするのだが…。

 

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ジュリアン・サンズの出演映画『アラクノフォビア』

2023-06-29 08:48:36 | 映画いろいろ

『アラクノフォビア』(90)(1991.3.11.丸の内ピカデリー1)

 アマゾン熱帯雨林で昆虫学者のアサートン博士(ジュリアン・サンズ)は、猛毒を持つ新種のクモを発見する。そのクモは、自らが刺して殺したカメラマンの死体にまぎれてカリフォルニアの小さな町に上陸、次々と町の住人を殺していく。奴らにクモ恐怖症の医師(ジェフ・ダニエルズ)たちが立ち向かう。タイトルは「クモ恐怖症」の意。

 これまでスピルバーグ一家を陰から支えてきたフランク・マーシャルの監督デビュー作。ヒッチコックの『鳥』(63)『めまい』(58)、あるいは盟友スピルバーグの『ジョーズ』(75)などの影を感じさせながら、自分なりの処理をして、そこそこ面白い映画に仕上げていた点は評価したい気がする。

 実際、爬虫類と並んでクモ(昆虫)も、人間にとっては決して気持ちのいい生物ではないのだが、この映画では、『グレムリン』(84)同様、ユーモアとグロテスクさが同居したような描き方をしているため、見た後に気持ち悪さが残らない。そのあたりが、いかにも“スピルバーグ印の映画”だとも言えよう。

 ただ、『エイリアン』(79)『ザ・フライ』(86)のような、グロテスクさを強調した映画を見慣れてしまうと、この映画のようなソフトなものは、軽く見えてインパクトが弱くなる。実際、最近のスピルバーグ印映画の観客動員に陰りが見える原因の一つは、こうしたところにもあるのかもしれない。今日の客席など『オールウェイズ』(89)にも増してガラガラの状態だった…。スピルバーグ一家にも、新たな冒険が必要なのかもしれないと感じた。

 主人公の妻を演じたハリー・ジェーン・コーザックがなかなか魅力的だった。これはかつてのメリンダ・ディロンやディー・ウォーレス、ジョベス・ウィリアムズといった、スピルバーグ印の映画に登場してきた女優たちの系譜につながる。この辺の趣味が一致しているのも、彼らの映画を見限れない理由の一つなのかもしれない。

【今の一言】この頃よりも、もっと過激さを前面に押し出す映画が増えた今となっては、こうしたソフト味が懐かしく感じられる。そして今は、逆にソフトで面白い映画を作ることの方が難しいのかもしれないとも思う。

 最近は年のせいか、自分の最期について考える。好きな山で死ねたサンズは幸せだったのかもしれない。


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「奥さまは魔女」のダーリンなど、柳沢慎一

2023-06-28 16:36:40 | テレビ

 残念ながらジャズ歌手やボードビリアンとしての全盛期は知らないので、洋画やドラマでの達者な吹き替えのイメージが強い。

 例えば、洋画では『腰抜け二挺拳銃』(48)のボブ・ホープ、『虹を掴む男』(47)のダニー・ケイ、『皇帝円舞曲』(48)のビング・クロスビー、『ポケット一杯の幸福』(61)のグレン・フォード…。

 ドラマは、しゃべる馬の「ミスター・エド」(61)のエドの飼い主、そして何と言っても「奥さまは魔女」(64~72)の主人公サマンサ(エリザベス・モンゴメリー=北浜晴子)の夫ダーリン・スティーブンス(ディック・ヨークとディック・サージェント)役が印象に残っている。

 サマンサの母エンドラ(アグネス・ムーアヘッド=北原文枝)、ダーリンの会社の社長ラリー・テイト(デビッド・ホワイト=早野寿郎)との丁々発止のやり取りが面白かった。ナレーションの中村正も忘れ難い。

 ほかには、人形劇「ひょっこりひょうたん島」の海賊トーヘンボクも。

 実写ドラマでは、山本周五郎の『人情裏長屋』を原作とした、高橋英樹主演の時代劇「ぶらり信兵衛 道場破り」(73~74)がある。これは江戸時代の「十六店(じゅうろくだな)」という裏店長屋を舞台にした人情喜劇。柳沢は長屋の住人で、銀太(渡辺篤史)とコンビ組む駕籠かきの金太を演じていた。

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『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』

2023-06-28 10:24:21 | 新作映画を見てみた

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(2023.6.27.TOHOシネマズ新宿.公開直前イベント)

 ザ・ビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」が流れ、アポロ11号の月面着陸で沸く1969年。考古学者で冒険家のインディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)の前に、旧知のヘレナ(フィービー・ウォーラー・ブリッジ)が現れ、インディが若き日にヘレナの父バジル(トビ―・ジョーンズ)と共に発見した伝説の秘宝「運命のダイヤル」について語る。

 それは人類の歴史を変える力を持つとされる究極の秘宝であり、その秘宝を巡って、インディは因縁の宿敵である元ナチスの科学者フォラー(マッツ・ミケルセン)を相手に、全世界を股にかけた争奪戦を繰り広げることになる。

 「インディ・ジョーンズ」シリーズの第5作。前作から15年ぶりの新作となり、前4作を監督したスティーブン・スピルバーグはジョージ・ルーカスとともに製作総指揮に回り、ジェームズ・マンゴールドが監督を引き継いだ。音楽はおなじみのジョン・ウィリアムズ。サラー役のジョン・リス・デイビスがカムバックし、アントニオ・バンデラスも登場。そしてラストには、あっと驚くあの人も…。

 このシリーズは、毎回とんでもない秘宝が登場するが、今回も「アンティキティラ」という「運命のダイヤル」の奪い合いが、第2次大戦末期の1945年と、この映画の現在である69年という二つの時代で描かれる。

 というわけで、CGの助けを借りた若き日のインディと実年齢とクロスする69年のインディをフォードが演じ分けているのだが、それが『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(81)からの40年という月日の流れとも重なって見えるところがあり、感慨深いものがあった。

 そして、冒頭の連続アクション、敵はナチスドイツ、秘宝の奪い合い、勝ち気な女性相棒と少年、車やバイク、飛行機によるチェイス、乗馬、超常現象など、シリーズに一貫する“決まりごと”をきちんと踏襲し、連続性を感じさせるところがいい。

 また、前作『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(08)のときは、スピルバーグの演出にスピード感の衰えを感じたので、今回のマンゴールドへの交代は正解だと思った。

 秘宝の特性、フォードの風貌の変化、ちょっと泣けるラストも含めて、この映画のキーワードは“時の流れ”だろう。ハリソン・フォードの“最後のインディ・ジョーンズ”としては、実にいい形での幕引きになったと思う。


「インディ・ジョーンズ」シリーズ
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/eb96bbaf421200c455587aab28f33161

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「ハンス・ジマー 映画音楽の革命児」(NHK)

2023-06-27 07:25:23 | 映画いろいろ

「ハンス・ジマー 映画音楽の革命児」(22・BBC)

 おびただしい数の映画音楽を手掛ける作曲家ハンス・ジマー。革命児と言われるその創作の秘密を、本人や監督らの証言で解き明かす。

 1957年生まれのジマーは、ユダヤ系のドイツ人。10代でイギリスに移住し、後にバンド活動を開始。『ディア・ハンター』(78)のスタンリー・マイヤーズに師事し、映画音楽の世界へ。

 シンセサイザーを駆使し、既存の楽器を使うだけでなく自分で音を作り出すこともある。繰り出される音楽は、映像と一体となって観客を怖がらせ、感動させ、高揚させる。その創造の現場に迫る。

 証言者は、『レインマン』(88)のバリー・レビンソン、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのゴア・バービンスキー、『バットマン ビギンズ』(05)から『ダンケルク』(17)に至る一連のクリストファー・ノーラン、『ダ・ヴィンチ・コード』(06)のロン・ハワード、『それでも夜は明ける』(13)のスティーブ・マックィーン、『ブレードランナー2049』(17)『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)のドゥニ・ヴィルヌーブほか。

 ジョン・ウィリアムズら、いわゆるオーソドックスなクラシック系の映画音楽家とは全く異質の存在。ジマー自身が「“遊び心”を忘れないことが大事」と語っていたのが印象的だった。


どちらもジマーの音楽についても語っていた。

【インタビュー】『ブレードランナー2049』ドゥニ・ヴィルヌーブ監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4137d002806f69d6761f8b94925c781a

【インタビュー】『ダンケルク』クリストファー・ノーラン監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/563b964893e573512ff2b9a1b807ec3e

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『おとなのデジタルTVナビ』2023.8月号

2023-06-26 10:19:21 | おとなのデジタルTVナビ

『おとなのデジタルTVナビ』(2023.8月号)

「劇場へ行こう!」(新作映画紹介)


「BS松竹東急」


「BS&CS(TV初放送)」

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『映画の森』「2023年 6月の映画」

2023-06-26 06:09:38 | 映画の森

共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)6月26日号で、『映画の森』と題したコラムページに「2023年6月の映画」として、5本の映画を紹介。独断と偏見による五つ星満点で評価した。

本当の“怪物”とは何なのか
『怪物』☆☆☆

生田斗真が名演を見せる
『渇水』☆☆☆

若者に優しいエールを送る
『水は海に向かって流れる』☆☆☆

リーアム・ニーソン出演100本記念作品
『探偵マーロウ』☆☆☆

時代劇の形を借りたファンタジー
『大名倒産』☆☆☆

クリックで拡大↓

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フレデリック・フォレストの出演映画『カンバセーション…盗聴…』『地獄の黙示録』『ワン・フロム・ザ・ハート』

2023-06-25 13:12:43 | 映画いろいろ

『カンバセーション…盗聴…』(73)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5d28d09f859de86469874f3fc42ffb60


『地獄の黙示録』(79)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7aa55490013bc2c9808a32194c8eb7b7


『ワン・フロム・ザ・ハート』(82)(1982.9.16.渋谷文化)

 見る前にさまざまな不評を耳にした。そして、確かに前半は、自分も納得ができない映画だという気がしていた。映像の美しさは認めるにしても、そこで展開する何ともとりとめのないラブストーリーに違和感を抱かされたのである。

 ただ、これは全編をラスベガスを模した街並みを再現したセットで撮影し、映画の中にビデオを入れ込むという新たな試みをコッポラが実験的に行ったのだと思い直せば、ストーリーの粗雑さはさておき、美しい映像とトム・ウェイツとクリスタル・ゲイルの歌声に素直に酔っていればいいのかもしれない。

 そう思うことで、自分自身を納得させ、もう一度映画の中に入り込んでみたら、不思議なことに、面白くないと思っていた映画が輝き始めた。つまり、自分の中から現実感を取り去った時に、初めてこの映画の中に入り込めたのだ。

 実際、この映画の内容は、男と女の愛の難しさ、悲しさをベースに作られているのだが、どこまでが夢で、どこからが現実なのか…という不思議なストーリーになっているし、全体がセットで撮影されているため、ばかばかしいと思いながら見れば、これほどうその世界に見えてしまう映画も珍しい。

 だが、いったんこの映画の持つ不思議な魅力がある世界に入り込めば、あとは深く考えずに、見続ければいいのだ。きっとこの映画を酷評した人たちは、あまりにも人工的な美しい映像の中で繰り広げられる男女の愛憎劇にアンバランスなものを感じたのではないだろうか。

 フレデリック・フォレストとテリー・ガーの新たな魅力を発見した。

【今の一言】まあ支離滅裂な映画ではあるので、40年前の自分の文章も支離滅裂、と言い訳を。


『ワン・フロム・ザ・ハート』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/53fb3781a6f5d2e581cd0077a9d3d8cf

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フレデリック・フォレストの出演映画『タッカー』

2023-06-25 12:42:59 | 映画いろいろ

『タッカー』(88)(1988.11.5.日本劇場)

 1945年、革新的な自動車を開発し旧来的な業界を変えたプレストン・タッカーの実話を、フランシス・フォード・コッポラ監督&ジョージ・ルーカス製作総指揮で映画化。

 この映画は、監督のコッポラが言うようにプレストン・タッカーという忘れられた男の生涯を掘り起こすことによって、全てのクリエーターや職人たちの夢に捧げられたような映画に仕上がった。

 タッカーの生きざまを見ながら、ピーター・ボグダノビッチがジョン・フォードの映画に送った「敗北の中の栄光」という言葉が浮かんできた。

 だがそこに、物を作り出す際に生じる苦悩や、個人の才能を押しつぶそうとする権力や体制を同時に描き込むことによって、コッポラのアメリカン・ゾートロープ、ルーカス・スタジオ、そしてスピルバーグのアンブリンといった個人の映画製作会社の存在とイメージが重なるところがあった。

 そして、この映画の最も愛すべきところは、描かれた時代が40年代ということもあるが、久々にアメリカの古き良き家族像やデモクラシーの美しさをストレートに描き、昔の心温まるアメリカ映画をほうふつとさせた点だろう。

 このあたりは、コッポラとルーカスのタッカーに対する思い入れの強さもあろうが、この映画を亡き息子に捧げているコッポラの、家族に対する思いも大きく反映されているのだろうと思う。

 加えて、相変わらずの見事なカメラワークを示したビットリオ・ストラーロの撮影、好漢タッカーを見事に演じたジェフ・ブリッジス、大人の女の色香を感じさせた妻役のジョアン・アレン、驚くべき老け役のマーティン・ランド―、ジェフとの親子共演となった上院議員役のロイド・ブリッジス、タッカーの息子役でクリスチャン・スレーター、技師役にはコッポラお気に入りのフレデリック・フォレスト、おまけにマコ岩松まで出てくる。こうしたいいキャスティングにも魅せられた。

 このところ不振が続いたコッポラだが、久々に本領を発揮した映画といってもいいだろう。それだけに、うわさされている引退など、まだしてほしくないと強く感じた。

 タッカーの法廷での最後の演説に全く脚色がなかったとしたら、まさしく彼は自動車産業の未来を予見していたことになる。あまりにも今の状況と類似しているのだ。これには驚かされた。

【今の一言】珍しくフォレストが主演したビム・ベンダースの『ハメット』(82)もなかなかよかったが、彼はやはりコッポラの秘蔵っ子という印象が強い。故に、コッポラの凋落と重なって活躍の場が失われていった気がするのが残念だ。


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