田中雄二の「映画の王様」

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『ぼくの映画人生』(大林宣彦)

2020-09-20 13:18:41 | ブックレビュー

 先頃亡くなった大林宣彦監督が、70歳を機にその半生と映画論を縦横に語った「自伝のような一冊」で、装丁と絵を、同じく今年亡くなった和田誠さんが担当している。

 この本は、著者の語りを、編集者やライターが文章としてまとめる、いわゆる聞き書き本の一種。自分も淀川長治先生との間で聞き書きをしたが、これがなかなか難しい。もともと語りと文章は別のものだから、担当者が聞いた話を、文章として適当に変えなければならないのだが、あまり変え過ぎると語り手の味を消してしまうことになるからだ。

 その点、この本は大林監督の語りを見事に再現しているばかりでなく、とても読みやすい。赤川次郎氏が、解説「『ふたり』の思い出」の中で、「あの声で、かんでふくめるように語られると、誰でも「ああ、その通りだな」と納得してしまう。映像の人でありながら、あれほどの語りの達人だったのは不思議なくらいだ」と書いているように、大林監督は淀川先生に勝るとも劣らない語りの名手であった。

 生前、ロングインタビューをした時、「大林映画は苦手」だと言っていた同行者が、取材後「話を聞いている時に感動して泣きそうになった」と告白したのを覚えている。ある意味、究極の人たらし。あの語り口に一体どれだけの人が魅了されたのだろうか。そんなことを思わせる一冊だった。

 

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『ビリーブ 未来への大逆転』ルース・ベイダー・ギンズバーグ

2020-09-19 23:01:49 | 映画いろいろ

頭文字をとって「RBG」と呼ばれ、親しまれた、アメリカのルース・ベイダー・ギンズバーグ連邦最高裁判事が亡くなった。彼女のユニークな半生は、ミミ・レダー監督、フェリシティ・ジョーンズ主演で『ビリーブ 未来への大逆転』(18)として映画化されている。

『ビリーブ 未来への大逆転』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f210e899758d1914e36564ad95302217

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『スパイの妻』

2020-09-19 11:59:07 | 新作映画を見てみた

 1940年、神戸で貿易商を営む優作(高橋一生)は、商用で赴いた満州で、偶然、恐ろしい国家機密を知り、正義のためにそのことを世に知らしめようとする。そして、妻の聡子(蒼井優)の知らぬところで、優作は別の顔を持ち始める。だが、夫への愛が、聡子をある行動へと突き動かしていく。

 昭和初期の神戸を舞台にしたミステリー。黒沢清監督、初の“時代劇”という触れ込みで、ベネチア映画祭で銀獅子(最優秀監督賞)を受賞した。

 だが、もともとはNHK BS8Kで放送されたテレビドラマ。そのせいか、戦時中を描いた過去の映画に比べると、何か物足りなさを感じた。まあ、自分も実際にその時代を知っている訳ではないのだが…。この違和感は一体どこから生じるのだろうと考えながら見ることになった。

 また、ストーリーも濃いようで実は薄い。夫婦の行動の動機に関する描写も弱い。もっと重層的で凝った戦時ミステリー&ロマンスはたくさんある。だからベネチアで受賞した理由もよく分からない。確かに、黒沢監督作としては、見た後に残るもやもや感はいつもよりは少ないのだが…。

 ただ、受賞理由の一つに、満州での関東軍の所業を入れ込んだ点も入っているのかもしれない。いまだに戦争をひきずるかつての同盟国、イタリアとドイツは、自国の犯した罪や傷を映画の中で描き続けているから、こうした部分には敏感なのではないかと思った。

 トリックにも使われる優作が撮った劇中映画や、夫婦が山中貞雄の『河内山宗俊』(36)を見るシーンなどに黒沢監督の趣味性を感じた。高橋、蒼井ともに好演を見せるが、聡子の幼なじみの憲兵隊長を演じた東出昌大がなかなかよかった。

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『レッド・サン』

2020-09-18 07:22:04 | ブラウン管の映画館

『レッド・サン』(2018.10.21.)(1974.11.4.渋谷スカラ座.併映は『ドラゴン危機一発』)

このポスターの構図はタランティーノの映画みたい。ウルスラ・アンドレスが主役か?



 この映画、舞台設定はメキシコだが、ロケはスペイン。およそ西部劇らしからぬ風景が映るが、ガンマン(チャールズ・ブロンソン)と侍(三船敏郎)の珍道中は何度見ても面白い。

 侍が米西部に行って…という設定では、日本の少年剣士が西部で活躍する手塚治虫の『冒険狂時代』があるが未読。後に岡本喜八監督が撮った『EAST MEETS WEST』(95)や、『アリゾナ無宿』に始まる逢坂剛作の小説も、この範疇に入るだろう。

All Aboutおすすめ映画『レッド・サン』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/469e977ed783889db23eb4f6859c1dc8

『アリゾナ無宿』『逆襲の地平線』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a355958b890be25217b944f8f962e299

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【ほぼ週刊映画コラム】『ようこそ映画音響の世界に』

2020-09-18 06:31:17 | 本業はこれだ!vol.1 ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
「音は感動を伝える。映画体験の半分は音だ」
『ようこそ映画音響の世界に』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1242262

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