田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『アースクエイクバード』ウォッシュ・ウェストモアランド監督にインタビュー

2019-10-30 12:30:03 | 仕事いろいろ
 本作は、日本在住経験のあるイギリス人作家スザンヌ・ジョーンズの同名ミステリー小説をNetflixが映画化。製作総指揮はリドリー・スコット。
 
 
 舞台は1989年の東京。日本に住む外国人女性リリー(ライリー・キーオ)が行方不明となり、友人のルーシー(アリシア・ヴィキャンデル)に嫌疑が掛かる。この2人の間にはミステリアスな日本人カメラマン禎司(小林直己)の存在があった…というサスペンスミステリー。
 
 日本の大学で学んだ経験を持つウェストモアランド監督は、“東京ノワール”的な映画を目指したことや、スコット監督作で同じく日本での異邦人の姿を描いた『ブラック・レイン』(89)とのつながり、黒澤明の『酔いどれ天使』(48)からの引用、日本語のセリフを頑張ったヴィキャンデルについてなど、興味深いエピソードを語ってくれた。
 
 詳細は後ほど。
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『キューブリックに魅せられた男』

2019-10-30 11:24:18 | 新作映画を見てみた

 このドキュメンタリー映画の主人公であるレオン・ヴィターリは、『バリー・リンドン』(75)に出演後、俳優の道を捨て、自ら志願してスタンリー・キューブリックの助手となった。
 
 以後、キャスティング、演技指導、プリント・ラボ作業、サウンドミキシング、効果音の製作、字幕と吹き替えの監修、宣伝レイアウトの作成、海外向けの予告編の製作、在庫管理、配送、公開スケジュールや配給の調整…と、キューブリックの映画製作における、あらゆる雑務をこなしていく。ヴィターリ自身も「僕はフィルムメーカーではなく、フィルムワーカー(仕事人、奉公人=映画の原題)だ」と語る。
 
 この映画は、ヴィターリの、まるで奴隷のようなキューブリックへの奉仕ぶりを追っていくのだが、その行為は明らかに異常で、ある者は「ヴィターリの行動を理解するためには、まず、天才で悪夢で、温かくよそよそしく、冷たくておおらかで、知の巨人にして、映画に取りつかれた男(キューブリック)が、どう映画を作るかを理解しなければならない。これは大変だ」と語る。そして、そんなヴィターリの姿を通して、映画作りの中毒性や、人たらしと暴君というキューブリックの二面性が現れてくるあたりが、この映画のユニークなところだ。
 
 実際、「スタンリーは僕を食べ尽くした」と語り、やせ細り、評価もされず、経済的にも恵まれない、今のヴィターリの姿は哀れを誘うが、「でも自分で選んだことだから。全力を尽くしたし、後悔はしていない」と語る姿には、『キューブリックに愛された男』の専属運転手エミリオ・ダレッサンドロ同様、キューブリックと共に過ごした日々や、自らの仕事への矜持が感じられて、救われる思いがする。
 
 そして、ヴィターリやダレッサンドロのような、数多くの無名の人々が映画作りを支えていることを、改めて思い知らされる。この2本のドキュメンタリーを見て、キューブリックの映画が見たくなるのは、そんな彼らの仕事を称えたい気持ちが湧くからなのだろう。

 

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『ジョン・デロリアン』

2019-10-29 15:45:52 | 新作映画を見てみた
 
 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでタイムマシンに改造されて登場し、世界的に有名になったデロリアン。この伝説的な車を作った男ジョン・デロリアン(リー・ペイス)の物語を、実話を基に映画化した。果たしてデロリアンは詐欺師だったのか、それとも天才だったのか…。
 
 監督のニック・ハムと脚本のコリン・ペイトマンは「複雑なデロリアンの人生の一部、一定の時間だけに焦点を合わせて伝記映画を作ろうと考えた」という。そして、舞台を1977年前後のカリフォルニアに絞って、実業家、ペテン師、FBI、麻薬ディーラーが入り乱れる、一種のブラックコメディに仕立て上げた。 
 
 加えて、この映画のユニークな点は、デロリアン本人ではなく、彼の隣人でFBIの情報提供者だったジム・ホフマン(ジェイソン・サダイキス)との関わりを中心に描いているところ。だから、サダイキスが「この映画は、デロリアンとホフマンのラブストーリーともとれる」と語るように、2人の不思議な友情物語として見ることもできるのだ。
 
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八千草薫さんが亡くなった…

2019-10-29 10:31:50 | 映画いろいろ
 
 映画では、稲垣浩監督『宮本武蔵』三部作のお通、本多猪四郎監督『ガス人間第一号』(60)の日本舞踊の家元、篠田正浩監督『美しさと哀しみと』(65)の弟子(加賀まりこ)と同性愛関係にある日本画家など、着物の似合う和風美人役が印象に残る。その意味では、山田洋次監督『男はつらいよ 寅次郎夢枕』(72)の、寅(渥美清)に惚れる美容師役は異色か。
 
 また、自分にとってのリアルタイムでは、鎌田敏夫脚本「俺たちの旅」(75)のオメダ(田中健)の母、倉本聰脚本「うちのホンカン」の駐在さん(大滝秀治)の妻、山田太一脚本「岸辺のアルバム」(77)の浮気する主婦、向田邦子脚本「阿修羅のごとく」(79)の四姉妹の次女、そして山田太一脚本「シャツの店」(86)の横暴な夫(鶴田浩二)からの自立を考える妻など、テレビドラマでのさまざまな主婦役が印象深い。当時、こうしたドラマを見ながら、倉本聰や山田太一は、同年代の憧れの人の魅力をどう引き出すか、と考えて脚本を書いたのではないかと思ったものだ。
 
 八千草さんは、純粋無垢なかわいらしい女性、控え目な日本女性、成熟した色っぽい女性など、さまざまなキャラクターを演じたが、どれも“きれいな人”だったという点で共通する。自分の親と同世代の人だが、とてもそうは思えなかった。
 
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『遠すぎた橋』

2019-10-28 10:11:19 | 映画いろいろ
『遠すぎた橋』(77)(1977.7.30.池袋東急)
 
 
 『史上最大の作戦』(62)で描かれた第二次世界大戦下の連合軍のノルマンディー上陸作戦から3カ月後に行われたマーケット・ガーデン作戦を描いた戦争映画の力作。さすがに大金を懸けただけあって、戦闘シーンには迫力があった。中でもパラシュート隊の降下の場面は圧巻。
 
 加えて、スターたち、それぞれの持ち味を生かしたリチャード・アッテンボローの監督としての力量も大きなものがあると感じた。中でも、アンソニー・ホプキンス、ショーン・コネリー、ジーン・ハックマンが好演を見せる。そして、戦争の空しさを感じさせるラストの医師(ローレンス・オリビエ)の姿と、ジョン・アディソン作曲のテーマ曲が印象に残る。
 
   
    
 
 
【今の一言】確か、レッドフォードがやった役は、当初は『大脱走』(63)『砲艦サンパブロ』(66)でアッテンボローと共演したスティーブ・マックィーンがやるはずだったように記憶している。もしやっていたら…。
 
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『キューブリックに愛された男』

2019-10-28 08:51:13 | 新作映画を見てみた
 
 映画監督スタンリー・キューブリックの専属運転手兼世話係を長年務めた、イタリア人のエミリオ・ダレッサンドロへのインタビューを中心にしたドキュメンタリー映画。

 2人の縁は、エミリオが『時計じかけのオレンジ』(71)の大道具(巨根)を丁寧に運搬したことから始まる。ちょうど運転手を探していたキューブリックが、エミリオに「映画は好きかい?」と尋ね、「映画よりも車が好き」と答えた彼を気に入って専属運転手としたのだ。
 
 そして、『バリー・リンドン』(75)から、『シャイニング』(80)『フルメタル・ジャケット』(87)を経て、遺作となった『アイズ ワイド シャット』(99)まで、エミリオは、几帳面で細かい指示を出し、メモ魔で電話魔で甘えん坊のキューブリックに、献身的に尽くす羽目になる。この間、エミリオは芸術家の気まぐれに翻弄され、家庭生活を犠牲にし、変人の世話に辟易しながらも、キューブリックから絶大な信頼を得、2人の間には不思議な友情が育まれていく。
 
 そんなエミリオの目を通して、キューブリックの映画製作の舞台裏、素顔や日常生活など、完璧主義、徹底したこだわりで知られたこの映画監督の素顔が浮かび上がり、ドライな作風とは違い、意外にウエットな人間性がにじみ出てくるところが興味深く映った。
 
 また、これほど濃密な関係を築きながら、一時引退後するまで、エミリオが「長過ぎる」としてキューブリックの映画を一度も見たことがなかったという事実にも驚いた。そして「どれが気に入った?」(キューブリック)、「『スパルタカス』(60)だね(エミリオ)、「あれは大した映画じゃない」(キューブリック)という、ちぐはぐな会話は、2人の関係性を象徴するようで面白い。

 あるいは、『アイズ ワイド シャット』の撮影現場に招かれたエミリオの妻が、エージェントと間違って寄ってきた者たちに対して、「私は誰でもないわよ」と言い放つ場面もそうだが、あくまで庶民的というか、映画の世界にどっぷりと浸かっていない普通の感覚を持ったこの夫婦を、キューブリックが愛したことがよく分かって微笑ましくなる。よくある暴露ものではなく、キューブリックから慕われた“普通の男”の矜持が心に残る名編になっている。
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『映画の森』「2019年10月の映画」

2019-10-27 10:00:59 | 映画の森

 共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)10月28日号で、『映画の森』と題したコラムページに「10月の映画」として5本を紹介。独断と偏見による五つ星満点で評価した。

平凡な日々こそがいとおしい
『エセルとアーネスト ふたりの物語』☆☆☆☆

負のパワーに引き付けられ、圧倒される
『ジョーカー』☆☆☆☆

ノンストップアクションに驚く
『ジョン・ウィック パラベラム』☆☆

もしビートルズが存在しなかったら…
『イエスタデイ』 ☆☆☆☆

是枝裕和が撮ったフランス映画
『真実』☆☆☆

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『新アリゲーター新種襲来』

2019-10-23 08:49:46 | 映画いろいろ
『新アリゲーター新種襲来』(13)

 

 先日、テレビで翼竜が登場する劇場未公開の『プテラノドン』(05)をちらっと見て、そのあまりのばかばかしさに大笑いしたのだが、この映画も、それに負けず劣らずのすさまじいものがあった。
 
 舞台はルイジアナの湿地帯。主人公?は、最近では『クロール凶暴領域』にも登場した巨大ワニ。今やサメとともにワニもこの手の映画の“大スター”になった。密造酒を作るための化学物質を川に流したために、それによって凶暴化したワニが人間を襲うのだが、この映画のミソは、噛まれた者はワニになってしまうという滅茶苦茶な設定にある。
 
 昔『恐怖のワニ人間』(59)という映画をテレビで見たが、あれはあくまでもワニと人間の合体であり、ワニそのものに変身してしまう、というこの映画の強引な力業には驚いた。
 
 ほかにも、田舎町の家同士の対立が、「ロミオとジュリエット」と西部劇を足したような、妙な展開で描かれ、ある意味で、あっと驚くラストシーンへとつながる。いやはや何とも…。
 
 エド・ウッドの映画は、B級を遥かに飛び越えたZ級映画と言われたらしい。となると、この映画はC級かD級といったところか。とか何とか言いながら、何も考えずに見られる、この手の映画は決して嫌いではない。
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【ほぼ週刊映画コラム】『真実』『スペシャルアクターズ』

2019-10-22 10:05:00 | ほぼ週刊映画コラム

エンタメOVOに連載中の

『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
“演じること”について描いた
『真実』『スペシャルアクターズ』

  

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/?p=1203567&preview=true

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『真夜中まで』

2019-10-21 11:08:59 | 映画いろいろ
『真夜中まで』(99)

 

 ジャズトランペッターの守山(真田広之)は、演奏の合間の休憩中に、殺人事件を目撃したクラブのホステス(ミッシェル・リー)を助けたことから、2人で逃走する羽目になる。次のステージまであと1時間。果たして守山は再びステージに立てるのか。
 
 なぜかタイミングが合わず、和田誠監督作で唯一見逃していた映画。装丁を担当したエド・マクベインの『ダウンタウン』を思わせるところもある。
 
 殺人現場の駐車場からジャズクラブへと一気に移動する撮影(篠田昇)、夜を強調するスタイリッシュな照明(熊谷秀夫)、「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」を演奏するジャズトランペットの音色…という冒頭から引き込まれる。
 
 『罠』(49)『真昼の決闘』(52)と同じように、彼らの逃避行の様子と実際の時間をシンクロさせたリアルタイムサスペンスで盛り上げるあたりが映画狂・和田誠の真骨頂。キーワードとなるのは「ソー・ホワット=それがどうした」と「月の砂漠」だ。
 
 真田が犯罪に巻き込まれていく形は『快盗ルビイ』(88)と同じだが、何があってもトランペットを離さないなど、この映画では、過去にアクション俳優として鳴らした片鱗がうかがえるのがうれしい。
 
 ホームレスの名古屋章、奇術師の小松政夫、トラック運転手の六平直政ら、彼らとかかわるゲストの扱いも面白い。
 
 リアルタイムで見逃して、宿題のように残っていた最後の映画を見終わって、もっと映画を撮ってほしかったと思う半面、『麻雀放浪記』(84)ではモノクロのピカレスクロマンを、『快盗ルビイ』ではミュージカルコメディを、『怖がる人々』(94)ではオムニバスホラーを、そしてこの映画ではジャズ映画をと、和田さんは自分が好きなジャンルの映画を一通り撮り終えたのかもしれないと思った。
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