ジェームス三木の脚本といえば、大河ドラマ「独眼竜政宗」(87)や「八代将軍吉宗」(95)あたりが有名だが、自分としてはこの2作が印象に残っている。
銀河テレビ小説「愛さずにはいられない」(1980.11.7.)
母・冨江(賀原夏子)と二人で暮らしている36歳独身の勝利(川谷拓三)は工務店で働くかたわら定時制高校に通っている。その高校で勝利は新任教師・麗子(根岸季衣)のことが好きになり、36歳になって初めて愛に目覚めた。
川谷拓三が素晴らしい。中年男の哀感、持てない男の弱さ、学歴のなさに対する引け目などを実にうまく演じている。
銀河テレビ小説「煙が目にしみる」(1981.7.24.)
去年の「愛さずにはいられない」に続いての脚本ジェームス三木、川谷拓三、根岸季衣共演の銀河テレビ小説第2作。将棋の世界を舞台に、前作とは男女の立場を逆転させて、プロ棋士を目指す根本信吾(川谷)と子持ちのフラメンコダンサー宮坂千草(根岸)の悲しくもおかしな恋愛模様を描く。
プロ棋士の養成機関でもある奨励会に、30歳で四段にならなければ退会しなくてはならないという定年のような制度があるとは知らなかったが、考えてみれば、自分の才能のなさに気付きながら夢を追い続けていくよりも、こうしてきっぱりと「おまえはこの道ではこれだけの人間だからほかの道を探せ」と目の前に突き付けられた方がいいのかもしれないなどと思った。
それにしてもジェームス三木という脚本家は、こんないいドラマを書くかと思えば、『瞳の中の訪問者』(77)や「加山雄三のブラック・ジャック」(81)などという原作のイメージをぶち壊すようなものも書く。よく分からない人だ。とはいえ、「愛さずにはいられない」とこのドラマのラストはもろに映画『卒業』(67)からの頂きなんだけど…。