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田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『砂の器 映画の魔性-監督野村芳太郎と松本清張映画』

2025-03-18 10:01:51 | ブックレビュー

『砂の器 映画の魔性-監督野村芳太郎と松本清張映画』(樋口尚文)

 公開から半世紀を経た今も人気の映画『砂の器』(74)。観客はなぜ感動したのか? 松本清張原作を大胆に映像化した脚本(橋本忍)・監督(野村芳太郎)・音楽家(芥川也寸志、菅野光亮)による仕掛けとは? 初公開となる秘蔵資料を基にその秘密に迫る。

序章 『砂の器』とはなんだったのか

第一章 『砂の器』の脚本と演出
原作から脚本へ 橋本忍の「奇抜」
野村芳太郎監督の横顔 野村芳樹インタビュー
脚本から映像へ 野村芳太郎の「緻密」

第二章 『砂の器』の音楽
組曲「宿命」の数奇な原点 和田薫インタビュー
「宿命」はいかに撮影されたか 佐々木真インタビュー

第三章 『砂の器』の演技
「泣かせ」を極めた名子役の陰陽 春田和秀インタビュー
縦咲く映画ヒロインとしての華 島田陽子インタビュー
 
第四章 『砂の器』の宣伝・興行
宣伝から公開へ 興行戦略の再検証

第五章 『砂の器』の影響
中国の観客・作り手への影響 劉文兵インタビュー
新世代への影響 中川健太郎インタビュー

補章 松本清張映画全作品論

 野村芳太郎監督が遺した絵コンテや資料が目玉であろうに、何とも小さくて見づらいのが残念。ただ、資料を見せるための大判本ではなくソフトカバーの読み物としての本なのでこれは仕方がないのかもしれないが。


『砂の器』については自分もいろいろと考察したことがあった。

島田陽子の映画『砂の器』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/49bafb2ca2c62e5ee2c15304987db8f9

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『映画探偵―失われた戦前日本映画を捜して』

2025-03-10 19:08:12 | ブックレビュー

『映画探偵―失われた戦前日本映画を捜して』(高槻真樹)

  いつの間にか消えてなくなってしまった、戦前日本映画の名作たち。それら失われた映画に心を奪われ、フィルムを捜す「映画探偵」を追いかけた初のドキュメント。

「失われた戦前日本映画」
「一九四五年の断裂」敗戦と日本映画(フィルムセンター1)
「はじまりの一歩」『忠次旅日記』(フィルムセンター2)
「海のむこうへ」ゴスフィルモフォンド探索記(フィルムセンター3)
「情熱の星」プラネットと安井喜雄
「地域のアーカイブとして」(京都文化博物館)
「復元すれど収集せず」(映画保存協会)
「大学が映画を集めるとき」(早稲田大学・立命館大学)
「てのひらの映画」おもちゃ映画と太田米男
「語って集めて」活動弁士とフィルム保存
「コレクターたちの伝説」(安部善重・杉本五郎)
「映画を見つけたい」古道具市の海の中で
「復活」映画の保存とデジタル修復
「謎解き」「曼珠沙華」一九四五年九月

 「映画探偵」とはよくぞ名付けたもの。このルポは映画フィルムをめぐる一種のミステリーとしても読める。フィルムセンター(現・国立映画アーカイブ)や大学がやっと発掘調査や保存に乗り出したのは遅過ぎる感もあるが、何もしないよりはましか。それにしても個人コレクターの映画フィルムへの偏愛ぶりはもはや常軌を逸しているとしか思えない。何ともすごい世界だ。

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『プロパガンダ映画のたどった道 日本の選択4』

2025-03-06 07:46:42 | ブックレビュー

『プロパガンダ映画のたどった道 日本の選択4』(NHK取材班)

 1986年放送の「NHK特集ドキュメント昭和 世界への登場〔4〕トーキーは世界をめざす 国策としての映画」を書籍化した『トーキーは世界をめざす』の文庫版を古書店で見付けたので久しぶりに再読。

 第一次世界大戦が終わり、初めて国際政治の表舞台に登場した日本が、その後どのようにして太平洋戦争に突入していくのかを国際的視野で描くドキュメンタリーシリーズ。

 第4集は、トーキー映画の登場をナショナリズム高揚の時代の潮流と重ね合わせ、日本をナチスドイツと対比させながら映画がどのように国策に利用されていったのかを描く。

 アメリカのトーキー映画『ジャズ・シンガー』(27)の公開は、世界の映画界を一挙にトーキー革命の荒波に巻き込んだ。日本でも『マダムと女房』(31)をはじめトーキー映画が作られ始めたが、音と言葉を得た映画は、娯楽としてではなく、宣伝手段としても強い力を発揮することになった。例えば、アーノルド・ファンク、伊丹万作共同監督、出演・原節子、小杉勇ほかの日独合作映画『新しき土』(37)には、日独防共協定締結という時代状況が強く反映されている。

Ⅰトーキーがやってきた
「ニッポンの挫折」 お楽しみはこれからだ 日本的トーキーの誕生

Ⅱことばの壁をうちやぶれ
ことばの壁とハリウッド ことばの壁とウーファ 日本映画の状況

Ⅲナショナリズムとトーキー
ナチスの「朝やけ」 映画国策への胎動 「新しき土」の教えたもの

Ⅳ映画と政治
映画法への道 「コルベルク」と「カサブランカ」 アジアへ向かう日本映画 エピローグ さらば映画

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『手鎖心中』(井上ひさし)

2025-02-20 23:04:50 | ブックレビュー

 材木問屋の若旦那である栄次郎は、才能は全くないのに、絵草紙の作者として有名になりたいと願うあまり、自ら親に勘当され、頼み込んで奉行所から手鎖の刑を受け、果てはうその心中をたくらむが…。ばかばかしいことに命を賭け、茶番によって真実に迫ろうとする、戯作者の業を描いて、ユーモラスな中にすごみや悲しみが漂う直木賞受賞作。

 冒頭に大河ドラマ「べらぼう」の主人公である蔦屋重三郎が登場し、語り部は、後に十返舎一九となる“おれ”が務め、その仲間は後に曲亭馬琴と式亭三馬となる。栄次郎という架空の人物にこれら実在の人物を絡めて一種の群像劇として描く手法が面白い。井上お得意のおもしろうてやがて悲しき物語。 


 併録の「江戸の夕立ち」「たいこどんどん」として舞台化されている。

井上ひさしの芝居「たいこどんどん」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4985ee394fee9cf7148ec315ea98e78c

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『されど魔窟の映画館 浅草最後の映写』 (荒島晃宏)

2025-01-10 00:16:07 | ブックレビュー

『されど魔窟の映画館 浅草最後の映写』 (荒島晃宏)

 かつての映画館のメッカ浅草六区に残った旧作映画とピンク映画を上映する昭和レトロな映画館群「浅草中映劇場」「浅草名画座」「浅草新劇場」「浅草世界館」「浅草シネマ」(一つの会社が経営)。だが、実はいわゆる「ハッテンバ」だったり、時には警察や消防が出動するなど場内はまさにカオス状態。

 多額の借金を背負い、そこに映写係で勤務することになった筆者が体験する疾風怒濤の日々。だが、かつては映画館街として栄えた浅草から、ついに映画館の灯が消える日がやってくる…。

 以前、『名画座番外地:「新宿昭和館」傷だらけの盛衰記』(川原テツ)という本を読んだが、本書も同じように個性的な映画館に勤めた者にしか書けない代物で、カオスから閉館に至るまでの、おもしろうてやがて悲しき物語だった。その川原氏は浅草名画座にも籍を置いていたらしいが、『名画座番外地』と本書の違いは、筆者の荒島氏が映写係であるところだろう。それ故、映写係から見た映画館や観客というユニークな内容になっている。

 荒島氏は自分とほぼ同年代。文中で、1982.4.10.に浅草東宝のオールナイトで『獣人雪男』『怪獣大奮戦ダイゴロー対ゴリアス』『妖星ゴラス』『キングコング対ゴジラ』『世界大戦争』という東宝特撮5本立てを見たと記しているが、自分もその時そこにいた。

 また荒島氏が映写技師をしていた大井武蔵野館と自由が丘武蔵野館(旧武蔵野推理劇場)には自分もよく通った。

 加えて、荒島氏は2011年に『映画館のまわし者: ある映写技術者のつぶやき』を近代映画社から出しているが、その前年に自分も同じ近代映画社から『人生を豊かにするための50の言葉 名作映画が教えてくれる最高の人生の送り方』という本を出した。何か、いろいろとかすっていると思いながら読み進めていくと親近感が湧いてきた。

 さて、浅草東宝よりも浅草六区の奥にある映画館群はやはり怖さが勝って足を踏み入れたことがなかったが、2010.7.17.『男はつらいよ 葛飾立志篇』『明治侠客伝 三代目襲名』で浅草名画座にデビューした。

 そして、スカイツリー元年となった2012.4.レッツ・エンジョイ東京「違いのわかる映画館」で浅草中映劇場と浅草名画座を取材した。話を聞いたのは広報係もやっていたという荒島氏ではなく、支配人だった。中映劇場と名画座は同年の10月に閉館したから、まさにぎりぎりで間に合った取材となった、


【違いのわかる映画館】vol.19 浅草中映劇場/浅草名画座(2012.10.閉館)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2404ff037e7fc20f6a39c6a8e14245dc


 

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『白井佳夫の映画の本』

2024-12-28 10:33:55 | ブックレビュー

『白井佳夫の映画の本』(話の特集・1977)

『2001年宇宙の旅』の謎を解く

ポランスキーの『吸血鬼』の研究

パゾリーニにとってのギリシャとは何か?『王女メディアをめぐって』

『男はつらいよ』をめぐる作家山田洋次の人間的研究

スペクタクル映画としての『ポセイドン・アドベンチャー』

西部劇の典型ジョン・フォード『駅馬車』を徹底分析する

完全分析採録『駅馬車』

『アメリカン・グラフィティ』に描かれたある時代の青春フィーリング

これがミュージカル映画の醍醐味!『ザッツ・エンターテインメント』

アラン・レネ監督に聞く『薔薇のスタビスキ』と私の主題

ルイ・マル監督への好奇心にとんだ質問

アンリ・ドカエ氏 愛をこめて映画と自己についての総てを日本で語る

私にとってのキネマ旬報史

装丁、絵:和田誠

 

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渡辺武信 その3『銀幕のインテリア』『スターダム ハリウッド現象の光と影』

2024-12-26 21:34:12 | ブックレビュー

『銀幕のインテリア』(読売新聞社・1997)

第一章・玄関 『花嫁の父』『破れ太鼓』『ペギー・スーの結婚』『男はつらいよ』『なつかしい風来坊』『利休』『あ・うん』

第二章・鍵と扉 『ナイトムーブス』『テルマ&ルイーズ』『サボテンの花』『サンシャイン・ボーイズ』『刑事マディガン』『愛がこわれるとき』

第三章・居間と席 『逢う時はいつも他人』『わが心のボルチモア』『ラジオ・デイズ』『素晴らしき休日』『裸足で散歩』『暗くなるまで待って』

第四章・椅子 『喝采の陰で』『ゴースト/ニューヨークの幻』『恋の手ほどき』『くたばれ!ヤンキース』『赤ちゃんはトップレディがお好き』

第五章・ソファー 『或る上院議員の私生活』『ハバナ』『刑事マディガン』『ハーフムーン・ストリート』『ジョンとメリー』

第六章・食卓 『ママの想い出』『女たちのテーブル』『再会の時』『グリーン・カード』『結婚記念日』『グッバイ・ママ』

第七章・台所 『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』『TOMORROW/明日』『秋刀魚の味』『アダム氏とマダム』『お茶漬けの味』『グループ』『スクープ/悪意の不在』『モーニング・アフター』『酒とバラの日々』

第八章・寝室 『赤ちゃんはトップレディがお好き』『恋人たちの予感』『我等の生涯の最良の年』『愛と喝采の々』『東京上空いらっしゃいませ』『泥棒成金』『いつも二人で』『南海漂流』『吸血鬼』『恋におちて』『殺しの分け前ポイント・ブラック』

第九章・書斎・本棚 『ダイヤルMを廻せ!』『招かれざる客』『バラキ』『七年目の浮気』『マイ・フェア・レディ』『女は女である』『いまを生きる』

第十章・子供部屋 『普通の人々』『優駿』『さびしんぼう』『ウホッホ探検隊』『家族ゲーム』『陽のあたる坂道』『E.T.』『クレイマー、クレイマー』『ギャルソン!』

第十一章・浴室 トイレ 『四季』『男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎』『ミスター・アーサー』『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』『テキーラ・サンライズ』『リーサル・ウェポン』『遺産相続』

第十二章・階段 地下 屋根裏 『情婦』『風と共に去りぬ』『となりのトトロ』『さよならコロンバス』『日曜日が待ち遠しい!』『ホーム・アローン』『偶然の旅行者』

第十三章・縁側 テラス 『息子』『東京物語』『アラバマ物語』『優駿』『八月の鯨』『愛と哀しみの果て』『マカロニ』『カラーズ 天使の消えた街』『デストラップ・死の罠』『夏に抱かれて』『お茶と同情』

第十四章・灯火 『バウンティフルへの旅』『7人の愚連隊』『殺意の香り』『シー・オブ・ラブ』『リベンジ』『黄昏のチャイナタウン』『ロッキー3』『インパルス』『悲情城市』

第十五章・暖房 暖炉 『市民ケーン』『ベストフレンズ』『めまい』『逃亡者』『007/ドクター・ノオ』『終電車』『影の軍隊』『月山』

第十六章・インテリア 室内の色彩 『幸せはパリで』『ローズマリーの赤ちゃん』『インテリア』『愛と哀しみの旅路』『プリティ・ウーマン』

第十七章・インテリア 個性との関わり 『ティファニーで朝食を』『恋人たち』『愛と追憶の日々』『ドライビング・ミス・デイジー』『若草の萌える頃』『家族の肖像』『少年時代』

第十八章・増改築 『幸せはパリで』『心みだれて』『パシフィック・ハイツ』『ローズ家の戦争』『マネー・ピット』

第十九章・豪邸 『愛がこわれるとき』『砂の上のロビンソン』『二重の鍵』『推定無罪』『華麗なるギャツビー』『イナゴの日』『フォーエバー・フレンズ』『ボディ・ダブル』

第二十章・住まいの祝祭 『マグノリアの花たち』『昔みたい』『イヴの総て』『秋刀魚の味』『荒野の決闘』『刑事ジョン・ブック/目撃者』

渡辺さんは建築家でもある。

 


『スターダム ハリウッド現象の光と影』アレグザンダー・ウォーカー・渡辺葉子共訳(フィルムアート社・1988)

 

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渡辺武信 その2『映画的神話の再興 スクリーンは信じ得るか』

2024-12-26 12:51:37 | ブックレビュー

『映画的神話の再興 スクリーンは信じ得るか』(未来社・1979)

1.夢の再確認
夢の再確認-ロベール・アンリコ『ラムの大通り』
夢として語られる無垢の憧憬-ジョン・ヒューストン『ロイ・ビーン』
古典的夢とその回帰-『カサブランカ』『カサブランカ』に憑かれて
映画を包む至福の闇-フランソワ・トリュフォー『アメリカの夜』
青春映画の内にひそむ映画論的構造-羽仁進『午前中の時間割』

2.夢からの覚醒-痛ましき覚醒者としてのピーター・ボグダノヴィッチ
ある至福の時の終り-『ラスト・ショー』
爆笑に隠された映画的憧憬-『おかしなおかしな大追跡』
映画はただの映画じゃない-『ペーパー・ムーン』
六000本の映画を見た男-ボグダノヴィッチ論

3.アクション映画の啓示性
アクションの啓示性-『ダーティハリー』『フレンチ・コネクション』
ヒーローとは暴力に病んだ者の呼名か?-サム・ペキンパー『わらの犬』
鮮烈な暴力と甘美な叙情-サム・ペキンパー『ガルシアの首』
銃声と流血の中に香る感傷-ジョン・ミリアス『デリンジャー』
血まみれのアリスの悪夢-マイケル・リチー『ブラック・エース』
ギャングたちの野獣的精気-テレンス・ヤング『バラキ』
死によって報われる自己愛-ドウチオ・テッサリ『ビッグ・ガン』
男たちの死闘をおおう組織の影-マイケル・ウィナー『スコルピオ』

4.日活アクションの残照  
あるプログラム・ピクチャーの終焉-ダイニチ映画の崩壊に想う
算出された映画・日活ニュー・アクション-文芸座の四0本連続上映を見ながら考える
遊戯による存在の挑発-藤田敏八論
アクションによる空間の蘇生-長谷部安春論

5.任侠・また旅映画の崩壊
任侠映画の閉鎖性と視覚性-山下耕作『博奕打ち・総長賭博』の回顧上映
任侠映画の変質と退潮-石井輝男『現代任侠伝』加藤泰『日本侠花伝』
侠花は還らず 加藤泰『昭和おんな博徒』加藤泰『日本侠花伝』
股旅映画に希望はあるか-中島貞夫『木枯し紋次郎』
世界の寒さの中で若者たちはくたばる-市川崑『股旅』
サムライ的自己完成への西欧的視点-シドニー・ポラック『ザ・ヤクザ』

6.ぼくたちにとって映画とは何か

装丁、絵:和田誠

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渡辺武信 その1『映画は存在する スクリーンを信じ続ける作家たち』

2024-12-26 07:48:03 | ブックレビュー

『映画は存在する スクリーンを信じ続ける作家たち』(サンリオ出版・1975)

1.ジャン・ピエール・メルヴィル-あるいは映画的昂奮の罠

2.山田洋次-あるいは日本の虚構化

3.ハワード・ホークス-あるいはアクションの啓示性

4.フリッツ・ラング-あるいは超越的空間

5.ブレーク・エドワーズ-あるいはパイ投げの拡大

6.山下耕作-あるいは象徴の文法

7.マーク・サンドリッチ-あるいは遥かなる祝祭

8.スタンリー・ドネン-あるいは空間の躍動

9.加藤泰-あるいは夢の立証

10.アルフレッド・ヒッチコック-あるいは話術の極北

11.ルキノ・ヴィスコンティ-あるいは空間の充溢

12.ロマン・ポランスキー-あるいは怪奇映画の夢

13.ジャン・リュック・ゴダール-あるいは夢の覚醒

装丁、絵:和田誠

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『仰天・平成元年の空手チョップ』(夢枕獏)

2024-12-18 08:16:11 | ブックレビュー

『仰天・平成元年の空手チョップ』(夢枕獏)(1993.5.)

 昭和38年に亡くなった力道山は、実は冷凍睡眠で眠っていただけだった。そして平成元年に当時の肉体のまま蘇生し、前田日明と闘うことに。時空を超えたこの試合の前座を務めるのはジャイアント馬場とアントニオ猪木だった。

 あとがきに「嫌いなレスラーひとりもなし」とあるように、今や細かい団体に分裂してしまったプロレス界の全ての団体やレスラーたちに愛を込めたおかしくも悲しい話であった。

 何しろこの話は、それらの団体の垣根を取っ払うのが冷凍保存化されたかの力道山であり、そうした過去の人物を生き返らせるというSF的な突飛な発想がなければもはやプロレス界の一本化が不可能だということも同時に語ってしまっているからだ。

 とはいえ、この夢の作業は見事であり、ジャイアント馬場が、アントニオ猪木が、前田日明が、藤原喜明が、ラッシャー木村が、生き生きと己の存在をアピールし、こちらが思う通りに行動してくれるくれるのは快感であった。現実には起こり得ない夢を描くのがSFだとすれば、これは優れたSF小説であるに違いない。

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