田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『怪獣ゴルゴ』

2016-11-29 09:40:05 | 映画いろいろ

日米英、怪獣映画のキャッチボール



 およそ半世紀ぶりに『怪獣ゴルゴ』(61)を再見した。この映画の大筋は、人間が怪獣を捕らえて見世物にするという怪獣映画の元祖『キング・コング』(33)を踏襲しているが、そこに、人間に捕らわれた子供を親が助けに来るという変化球を交え、親ゴルゴがロンドンを破壊するシーンをクライマックスとした。

 年を取った今となっては、親子で海に帰っていくゴルゴの後ろ姿に泣かされる。監督はロシア出身のユージン・ローリー。彼はチャップリンの『ライムライト』(52)『バルジ大作戦』(65)などの美術監督としての方が名高いようだ。

 ところで、この映画を見ながら“日米英、怪獣映画のキャッチボール”の様子が浮かんできた。それは、1951年にレイ・ブラッドベリが、灯台の霧笛を仲間の鳴き声だと思い込んで現れた恐竜を主人公とする、哀愁を帯びた短編小説『霧笛』を発表したことに始まる。

 それをワーナーが映画化し、『ゴルゴ』に先駆けてユージン・ローリーが監督した『原子怪獣現わる』(53)は、ブラッドベリの“恐竜仲間”で、『キング・コング』が大好きなレイ・ハリーハウゼンが特撮を担当し、「核実験の影響を受けた恐竜」という設定を加えた。

 その設定は日本の『ゴジラ』(54)に強く影響を与えたが、『ゴジラ』は新たに、着ぐるみ怪獣が都市を破壊するという形式を提示する。『ゴジラ』にならって、この英映画『怪獣ゴルゴ』では、着ぐるみ怪獣がロンドンの名所を破壊していく。

 そのゴルゴを下敷きにした日本の『大巨獣ガッパ』(67)では、見世物となった子供を助けに、両親が熱海にやって来る。そしてラストは、朝日をバックに羽田空港から親子で飛び立つ(そこに美樹克彦が歌い上げるテーマ曲が流れる)という、いかにも日本的な“泣かせのシーン”で締めくくった。

 仲間を求めて現れた孤独な恐竜がここまで変化するとは面白い。これだから映画の尻取り遊びは切りがないのだ。

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『映画の森』「2016年11月の映画」

2016-11-28 08:25:27 | 映画の森
共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)11月28日号で、
『映画の森』と題したコラムページに「11月の映画」として5本を紹介。
独断と偏見による五つ星満点で評価した。

ラインアップは

時間とは?記憶とは?が大きなテーマ『手紙は憶えている』☆☆☆☆
思わずマスターに料理を作ってもらいたくなる『続・深夜食堂』☆☆☆
アメリカン浪人”の活躍を描く第2弾『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』☆☆
毎日の生活を平然と送ることの素晴らしさ『この世界の片隅に』☆☆☆☆
早世した異能棋士の波乱の生涯『聖(さとし)の青春』☆☆☆☆

クリックすると拡大します↓



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【ほぼ週刊映画コラム】『ブルーに生まれついて』

2016-11-26 18:33:54 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

ミュージシャンはなぜドラッグに溺れるのか…
『ブルーに生まれついて』



詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1079596
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『メン・イン・キャット』

2016-11-26 09:03:13 | 新作映画を見てみた

何も考えずに楽しめるおバカコメディ



 わがまま社長のトム(ケビン・スペイシー)が、娘の誕生祝いのため、怪しいペットショップの店長(クリストファー・ウォーケン)から猫を買う。その帰り道、会社の乗っ取りを企む社員の罠で猫と一緒にビルから転落したトムは、猫の中に意識が入ってしまう。

 という、何も考えずに楽しめるおバカコメディだが、シリアス俳優のスペイシーとウォーケンが大真面目にコメディを演じるギャップがおかしい。

 強引な仕事のやり口、自社ビルを世界一の高さにしようとする目立ちたがりぶりなど、トムが時折トランプ次期大統領のように見えてしまうところもある。

 監督は『アダムス・ファミリー』『メン・イン・ブラック』シリーズのバリー・ソネンフェルド。原題は「九つの命」でラストでその種明かしがある。

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『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』

2016-11-25 08:57:31 | 新作映画を見てみた

シリーズ化への布石を打ったに過ぎないか



 「ハリー・ポッター」の新シリーズ。魔法動物学者で魔法使いのニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)がニューヨークで巻き起こす騒動を描く。

 舞台は1920年代あたりか。ジェームズ・ニュートン・ハワードのオールドジャズ風の音楽が光る。スキャマンダーのトランクから抜け出したビースト(魔法動物)たちが働く悪戯が見どころだが、彼の人物像がはっきりしないため、やらかしたことの重大性や切迫感が伝わってこないし、彼が愛すべき存在にも映らないのが難点。

 ラストはちょっと切なく、しゃれてはいたが、全体的には中途半端なものを感じた。最後に姿を見せる大物の存在も含めて、これはシリーズ化への布石を打ったに過ぎないということなのか。

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「田中オヤジがおすすめするお正月映画2017」

2016-11-24 12:58:51 | レッツエンジョイ東京

ぐるなび Let's ENJOY TOKYOで
毎年恒例の 
「田中オヤジがおすすめするお正月映画2017」が公開に。

ラインアップは



お正月映画BIG3!
金持ちマダムの道楽話を、粋なコメディに仕立てた『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
主人公と仲間たちの群像劇としても見応がある『海賊とよばれた男』
監督は『GODZILLAゴジラ』のギャレス・エドワーズ『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』

映画の秘密を知るドキュメンタリー
ヒッチコックの映画製作の裏側を明らかにする『ヒッチコック/トリュフォー』
摩訶不思議な世界が眼前に展開する『エルストリー1976 新たなる希望が生まれた街』

ちょっとシュールな気分で
老優マギー・スミスの演技に注目!『ミス・シェパードをお手本に』
落語の世界を思わせるところもある『皆さま、ごきげんよう』

クリックを
http://www.enjoytokyo.jp/feature/newyear/movie/?

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『ダーティハリー3』

2016-11-21 09:19:56 | 映画いろいろ

「泣けるぜ!」



 まずは初見(76年)の際のメモを。

 ハリー(クリント・イーストウッド)がサンフランシスコ市長を誘拐した過激派グループと対決するシリーズ第3弾。タイン・デイリーが魅力的に演じた女性相棒ケイトの人物描写が良く描かれており、原題の「THE ENFORCER=執行人」が示すように、「女だってこのぐらいはできるのよ」と主張するあたりがいかにもアメリカらしい。

 また、これまでは悪に対して目には目を式のクールな面しか描かれなかったハリーの、ユーモラスかつ心優しき一面も、彼女の存在によってうまく引き出されている。

 加えて、身を挺して働く現場の刑事たちと警察の上層部や市長の姿を対比的に描くことによって、権力側が持つ汚さやずるさを露わにする側面もある。と、新人監督ジェームズ・ファーゴが大健闘を見せた一作。

 今回約40年ぶりに見直してみて、この映画のタイン・デイリーは飛び切りチャーミング。事あるごとにハリーがつぶやく「泣けるぜ!=マーベラス」は名ゼリフ。サンフランシスコの街並みをはじめ、ウーマンリヴ、ブラックパワー、ベトナム帰りといった70年代の世相が描き込まれていて懐かしかった。

 ラロ・シフリンに代わったジェリー・フィールディングのジャズ風の音楽も好調。アルカトラズ刑務所跡で繰り広げられるラストの対決は後の『アルカトラズからの脱出』(79)に影響を与えたのか。市長がどこかトランプ次期米大統領に似ていて笑った。など、さまざまな思いがめぐってきた。

 この映画の公開当時に、今のイーストウッドの姿を想像できた者はほとんどいなかったはずだ。チンピラ刑事役から巨匠監督へと変貌し、80歳を越えた今も現役で活躍するイーストウッドに脱帽する。

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【ほぼ週刊映画コラム】『聖(さとし)の青春』

2016-11-19 18:06:20 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

吹けば飛ぶよな将棋の駒に、懸けた命を笑わば笑え
『聖(さとし)の青春』



詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1078443
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ロバート・ボーンと『荒野の七人』そして『マグニフィセント・セブン』

2016-11-18 00:20:25 | 映画いろいろ

 ロバート・ボーンが亡くなった。



 ボーンといえばテレビシリーズ『0011ナポレオン・ソロ』(64~68)のソロ役が最も印象に残っているが、もう一つ、彼を語る上で欠かせないのが『荒野の七人』(60)のメンバーの一人だったことだ。元祖『七人の侍』(54)にはいない屈折したキャラクターのリーを好演し、強い印象を残した。

 どこかインテリのにおいが漂うボーンには政治家の役がよく似合った。同じく七人のメンバーのスティーブ・マックィーンと共演した『ブリット』(68)『タワーリング・インフェルノ』(74)、日本映画『復活の日』(80)でも政治家を演じていた。

 ところが、パロディ映画『宇宙の七人(80)に出てしまうようなおちゃめなところも魅力の一つ。そうした個性の融合がソロ役に生きたのだろう。ボーンの声を吹き替えた矢島正明が、日本でのボーンの人気に果たした役割も大きい。

 ボーンの死で『七人の侍』の侍たちに続いて、ついに『荒野の七人』のガンマンたちも全てこの世を去ったことになる。時の流れとはいえ、何とも淋しい限りだ。

 2009年に出版された『外国映画男優名鑑』(共同通信社刊)で彼について書いたものを転載し、哀悼の意とする。

クリックで拡大。↓


 また、以前「WESTERN UNION EXPRESS」に寄稿した「テレビ洋画劇場の思い出、そして『荒野の七人』」を転載。

クリックで拡大↓



 おまけに、侍→ガンマンのメンバーを記しておこう。

『七人の侍』(54)黒澤明
志村喬(島田勘兵衛)
三船敏郎(菊千代)
宮口精二(久蔵)
稲葉義男(片山五郎兵衛)
千秋実(林田平八)
加東大介(七郎次)
木村功(岡本勝四郎)

『荒野の七人』(60)ジョン・スタージェス
ユル・ブリンナー(クリス・アダムス)=勘兵衛
スティーブ・マックィーン(ヴィン・タナー)=五郎兵衛+七郎次+菊千代
ジェームズ・コバーン(ブリット)=久蔵
チャールズ・ブロンソン(ベルナルド・オライリー)=平八
ブラッド・デクスター(ハリー・ラック)=七郎次?
ホルスト・ブッフホルツ(チコ)ドイツ出身=勝四郎+菊千代
ロバート・ボーン(リー)=なし

『続・荒野の七人』(66)バート・ケネディ
ユル・ブリンナー(クリス・アダムス)
ロバート・フラー(ヴィン・タナー)
ジュリアン・マティオス(チコ)スペイン出身
ウォーレン・オーツ(コルビー)
クロード・エイキンズ(フランク)
ビルジリオ・テクセイラ(ルイス・デルガド)ポルトガル出身 
ジョーダン・クリストファー(マヌエル)
IMDbで調べてみたらこちらもフラー以外はすでに亡くなっていた…。

『新・荒野の七人 馬上の決闘』(69)ポール・ウィンドコス
ジョージ・ケネディ(クリス・アダムス)
モンテ・マーカム(キノ)
ジェームズ・ホイットモア(レビー)
バーニー・ケイシー(キャシー)初の黒人メンバー
ジョー・ドン・ベイカー(スレイター)
レニ・サントーニ(マクシミリアーノ)
スコット・トーマス(P.J.)

『荒野の七人 真昼の決闘』(72)ジョージ・マッコーワン
リー・バン・クリーフ(クリス・アダムス)
マイケル・カラン(ノア・フォーブス)
ルーク・アスキュー(マーク・スキナー)
エド・ローター(スコット・エリオット)
ペドロ・アルメンダリスJr.(ペペ・カラル)
ウィリアム・ラッキング(ウォルト・ドラモンド)
ジェームズ・B・シッキング(アンディ・ヘイズ)

そして年明け公開の
『マグニフィセント・セブン』(16)アントワーン・フークア
デンゼル・ワシントン(サム・チザム)=リーダー(クリス的役柄)
クリス・プラット(ジョシュ・ファラデー)(ヴィン的役柄)
イーサン・ホーク(グッドナイト・ロビショー)(ハリー+リー的、または『新』のスレーター的役柄)
ビンセント・ドノフリオ(ジャック・ホーン)(オライリー的役柄)
イ・ビョンホン(ビリー・ロックス)韓国出身(ブリット的役柄)
マヌエル・ガルシア・ルルホ(バスケス)(『続』のデルガド的役柄)
マーティン・センスメイヤー(レッドハーベスト)初のインディアン・メンバー。

 エルマー・バーンスタインのあのテーマ曲が流れると、多少出来が悪くとも、全てを許せる気持ちになるから不思議だ。

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『オケ老人!』

2016-11-17 08:04:33 | 新作映画を見てみた

杏と老優たちの絡みがなかなか良い



 メンバーは高齢者ばかりのアマチュアオーケストラに若き女性バイオリニスト(杏)が間違って入団し…。少々意外だが杏はこれが初主演作だという。

 クラシック音楽+老優たちのアンサンブル+サクセスストーリー+人情劇と盛りだくさん。まるで漫画のようなでき過ぎの予定調和のストーリー展開に少々鼻白むところもあるが、杏と老優たちの絡みがなかなか良く、最後まで飽きずに楽しめる。特に小松政夫、左とん平の昔ながらの“くさい芝居”が光る。

 エルガーの「威風堂々」、ドボルザーク「新世界」も聴きどころ。

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