田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『天使にラブ・ソングを2』

2020-05-15 09:37:30 | 映画いろいろ

『天使にラブ・ソングを2』(93)(2005.11.21.) 

 オリジナルでは教会を、そしてこの2では学校を救うウーピー・ゴールドバーグ扮する“ニセ・シスター”の活躍がコメディータッチで描かれる。

 レナード・マルティンの『MOVIE GUIDE』によると、このシリーズは大昔のビング・クロスビー主演の『我が道を往く』(44)と、その続編にあたる『聖メリーの鐘』(45)の影響が大きいという。なるほどこれはトリビアだ。

 さてこういう映画を見ると、ブラック・ミュージックのルーツとしてのゴスペルの存在がよく分かる。だから日本人がいくらラップなんかをうわべだけマネしても妙な感じがするのは当たり前なのだ。

 理事長役のジェームス・コバーンのコメディー味を久しぶりに引き出していたのも面白かった。

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『天使にラブ・ソングを…』

2020-05-15 08:54:44 | 映画いろいろ

『天使にラブ・ソングを…』(92)(1998.9.8.)

 ウーピー・ゴールドバーグ主演の尼さんミュージカル。公開時には何だか先が見える気がして見なかったのだが、行きつけの食堂で偶然テレビ放映が始まり、見始めると結構面白くて結局最後まで見てしまった。

 ガラの悪い、売れない黒人ショーガール(ウーピー)が殺人を目撃したばかりに、修道院に身を隠す羽目に陥るが、そこで聖歌隊をショーアップさせて成功してしまう、というストーリー。

 尼さん、教会、黒人と来れば、昔のシドニー・ポワチエ主演の『野のユリ』(63)の流れをくむ映画だと見られなくもない。両作をつなぐのは、黒人音楽のルーツの一つでもあるゴスペルのリズムであり、バラバラの人間たちを音楽が媒介となって結びつけていく変化のさまがストーリーの核になっている点だ。

 とは言え、この映画はガラの悪さや悪ノリぶりが多少鼻に付くが、続編が作られたところを見ると、皆、何らかの形で連帯感や信頼を求めているのだろうなあ、という気がした。

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『トータル・リコール』

2020-05-15 08:20:19 | 映画いろいろ
『トータル・リコール』(90)(1991.2.11.日本劇場)
 
  
 
 クエイド(アーノルド・シュワルツェネッガー)は夢の世界を実体験させる“リコール・マシン”を試したことから、自分が諜報員ハウザーだったことを知る。記憶を作り変えられていた男が、真実を追求するために奔走する。
 
 途中で筋が割れてしまうマイナスはあったものの、冒頭からの坂道を転げ落ちるようなアクションの連続はすごかった。もともとフィリップ・K・ディックの小説は、現実と非現実の狭間を舞台にして、どこか狂気を含み常識を超えたものが多いのだが、そのくせなぜか捨てがたい味がある。それを映像で表現すること自体が至難の技だとも思うので、映画としても十分に面白かったこの作品は、成功作として評価してもいいと思う。
 
 もちろん、その最たる理由は『ロボコップ』(87)に続いて荒唐無稽な話を成立させた監督ポール・バーホーベンの手腕だろうが、オリジナルのシナリオを書いたという、“ミスター・エイリアン”ことダン・オバノンのSF映画作家としての手際の良さも光る。こうしたSF映画は、どうしても特撮のすごさに目が行きがちになるが、実はしっかりとしたストーリーがなければ何も始まらないからだ。
 
 ところで、今のテクノロジーの発達の早さを考えると、この映画で描かれた記憶の消去や書き換えなどは明日にでも可能なように思える。否、マインドコントロールなんてものがすでに行われているようだから、もはや第一段階は終わっているのかもしれない。人間の根源である記憶すら、機械によって自由に変えられる未来とは果たして幸福な世界なのだろうか。確かに嫌なことは忘れてしまいたいが…。などと、柄にもなく考えさせられてしまった。
 
 強くて色っぽいシャロン・ストーンとレイチェル・ティコティンも印象に残るが、オープニングの音楽を聴いた瞬間、あーあの音だ、健在だったんだ、と思わせてくれたのがかのジェリー・ゴールドスミスだった。
 
【今の一言】淀川長治先生は「シュワルツェネッガーがオーストリア出身でバーホーベン監督がオランダ出身なので、この映画にはハリウッドというよりもヨーロッパ映画の雰囲気がある」「この映画はドイツのフリッツ・ラングの『メトロポリス』(26)を思い出させる。映画以外にはできない表現を使っている」と言っていた。また、この映画は2012年にレン・ワイズマン監督によってリメークされた。
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