田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

第88回アカデミー賞授賞式

2016-02-29 18:34:54 | 映画いろいろ

今年のアカデミー賞授賞式のトピックスを挙げるとすればこんなところですかね。



・『ロッキー』から40年ぶりノミネート、『クリード/チャンプを継ぐ男』のスタローン受賞ならず
・超ベテラン、エンニオ・モリコーネがタランティーノの『ヘイトフル・エイト』で作曲賞を初受賞
・『マッドマックス~』最多6部門で受賞
・『ゼロ・グラビティ』『バードマン~』のルベツキ、『レヴェナント:蘇えりし者』で3年連続撮影賞を受賞
・『バードマン~』のイニャリトゥも『レヴェナント~』で2年連続監督賞を受賞
・レオナルド・ディカプリオ5度目の正直、『レヴェナント』でついにオスカー受賞
・作品賞は順当に社会派『スポットライト 世紀のスクープ』へ

詳細は↓
http://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1038765

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『幸福』 (81)

2016-02-29 09:48:15 | All About おすすめ映画

銀残しの技法で映される80年初頭の東京



 この映画の原作は、エド・マクベインの87分署シリーズの『クレアが死んでいる』です。黒澤明監督の『天国と地獄』(64)もそうでしたが、87分署シリーズは日本流にアレンジされて映画化されることが多いです。

 この映画も、書店での銃乱射による無差別殺人事件、被害者の中に若い刑事の恋人もいて…という発端は同じですが、後は市川崑監督独特の世界になっています。

 例えば、水谷豊が演じる村上刑事は、幼い娘と息子を残して妻に家出されたという設定は独自のもの。同時期に公開された『クレイマー、クレイマー』(79)の影響が強く感じられますが、この映画では脚本家・大藪郁子の女性ならではの視点が光ります。

 また、市川崑はかつて『おとうと』(60)でも使用した“銀残し”という処理をこの映画にも施しました。事件を捜査する刑事たち、捜査線上に登場する雑多な人々の姿が、“銀残し”で映される80年初頭の東京の風景の中で描かれます。

 ロブバードが歌った主題歌『幸福 ロンリーハート』も耳に残る名曲です。

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『ザ・ブリザード』

2016-02-28 12:06:24 | 新作映画を見てみた

合言葉は「家に帰ろう」



 1952年、ブリザードが発生した北大西洋上で、巨大タンカーの遭難事故が起きる。船体を真っ二つに引き裂かれ、沈没寸前の船内に取り残された乗組員を救うため、沿岸警備隊員のバーニー(クリス・パイン)と3人の仲間が小型ボートで救助に向かう。合言葉は「家に帰ろう」だ。

 監督クレイグ・ギレスピーが『ミリオンダラー・アーム』(14)に続いて実話を基に映画化。よくぞこんな昔の知られざる話を掘り起こしてきたものだと感心させられる。救助船が小型ボートというところがミソで、1970年代のパニック映画をほうふつとさせるような面白さがあるのだ。

 パインが、救助船の船長役で頑張りを見せるが、これは『スタートレック』シリーズのカーク船長役を意識してのキャスティングだろうか。この映画のパインは、ちょっとますだおかだの岡田圭右に似ていると感じたが、それは別の話。

 ところで、この映画は、バーニーの恋愛、沿岸警備隊の動き、タンカー内の人間模様という三つ巴劇なのだが、ホリデー・グレンジャーが演じたバーニーの恋人の存在が目立ち過ぎ、時折話のテンポが崩れるところが気になった。時代背景を考えれば、無理に女を出さず、男たちのドラマに徹するべきだったのでは、といううらみが残る。

 壁となった巨大な波の下で小型ボートがまるでサーフィンをしているようなシュールな場面など、特撮にも見どころが多い。

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【ほぼ週刊映画コラム】『ヘイトフル・エイト』

2016-02-27 20:42:00 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

2時間48分を飽きさせないタランティーノの力業
『ヘイトフル・エイト』




詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1038694
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『ガープの世界』

2016-02-25 09:58:34 | All About おすすめ映画

『ガープの世界』(82) 

ホエン・アイム・シックスティー・フォー

 第二次大戦中、看護師のジェニー(グレン・クローズ)は瀕死の兵士をレイプし、一人息子のガープを宿します。やがて作家となったジェニーはウーマンリブやフェミニズムの教祖的な存在となり、レイプされた女性を救済する共同体を造ります。

 一方、妻子を得たガーブ(ロビン・ウィリアムズ)は必死に家族を守ろうとしますが、ことごとく裏目に出て、最後は不条理な暴力の犠牲になります。

 価値観が大きく変転した1950~70年代のアメリカを舞台にした異色のホームドラマで、ガーブと周囲の人々がたどる数奇な人生を、時にコミカルに温かみを持って、時に悲しくドライに描きます。

 監督は『明日に向って撃て!』(69『スティング』(73のジョージ・ロイ・ヒル。彼は映画化は難しいとされた二つの小説を監督しています。一本目がカート・ヴォネガットの『スローターハウス5』(72)、そしてもう一本がジョン・アービングの同名小説を映画化したこの映画です。両作は不条理な暴力や死とユーモアが共存する世界を描くという意味で共通しています。

 1980年代はアービングの小説がブームとなりました。彼の処女作『熊を放つ』を翻訳した村上春樹はこの映画を「ロイ・ヒル監督は、シュールで難解な原作を、優しさと温かさで描き、分かりやすく親切にまとめている」と評しています。

 ところで、この映画のオープニングとラストには、青空を背景に上下する笑顔の赤ん坊が映ります。そのバックにはザ・ビートルズの「ホエン・アイム・シックスティー・フォー」(君と一緒に年を取ろう。64歳になっても愛しておくれ)が流れます。これがガーブの誕生と昇天を表しているのかは定かではありませんが、不思議な温かさと悲しさを持ったこの映画を象徴する名シーンとして心に残ります。

 ウィリアムズ、クローズの好演に加えて、最後までガーブ一家に寄り添う性転換したフットボールプレーヤーを演じたジョン・リスゴウが絶品です。

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『アマデウス』

2016-02-24 13:58:36 | All About おすすめ映画

『アマデウス』(84)(1986.1.4.キネカ大森)

天才と凡人の間とは…

 この映画は、大作曲家ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(トム・ハルス)の後半生を、同時代の音楽家サリエリ(F・マーレー・エイブラハム)の目を通してフィクションを織り交ぜながら描きます。

 ピーター・シェーファーの戯曲を基に、ミロシュ・フォアマンが監督しました。映画の主な舞台となるのはウィーンですが、ほとんどの撮影はフォアマン監督の故郷であるチェコのプラハで行われました。

 この映画のモーツアルトは、演じたハルスのケタケタ笑いに象徴されるように、変人として描かれています。彼の本質は誰からも理解されず天才故の孤独感を抱いています。その姿はまるで現代のポップスターのようでもあります。

 一方のサリエリは常識人。モーツアルトの才能の豊かさを見抜き、彼に憧れますが、同時にその才能を憎みます。天才と凡人との対比が見事に描かれます。淀川長治さんはモーツアルトとサリエリの関係を千利休と豊臣秀吉になぞられていました。

 そして多くの人々は自分と同じ凡人であるサリエリの方に共感を抱くのです。演じたエイブラハムはアカデミー賞の主演賞を受賞しました。

 もちろん、劇中には「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「魔笛」「レクイエム」など、モーツアルトが作曲したさまざまな曲がふんだんに登場します。特に、モーツアルトと父親の関係を象徴した「レクイエム」が印象に残ります。

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『ワン・フロム・ザ・ハート』

2016-02-23 08:59:26 | All About おすすめ映画

『ワン・フロム・ザ・ハート』(82)(1982.9.16.渋谷文化)

コッポラの夢の終わり

 フランシス・フォード・コッポラ監督が、超大作『地獄の黙示録』(79)の次に撮ったミュージカル・ファンタジーです。タイトルは「一途な心」とでも訳せばいいのでしょうか。フレデリック・フォレストとテリー・ガーが演じる中年カップルが、大げんかの末に元の鞘に納まるまでを描いています。2人の新たな恋の相手としてナスターシャ・キンスキーとラウル・ジュリアも登場します。

 この映画の見どころは、男女の会話を音楽で表現することを考えたコッポラが、中年カップルの気持ちをトム・ウェイツとクリスタル・ゲイルの歌で代弁させた点。さらに、ネオンきらめくラスベガスをはじめ、全てのシーンがコッポラ所有の映画工房「ゾーイトロープ・スタジオ」のセットで撮られた点にあります。名手ビットリオ・ストラーロが撮った人口の美が光ります。

 ところが実験的な試みが観客に受け入れられず興業的に大失敗。ゾーイトロープは売却され、自前のプロダクションでの映画作りを目指したコッポラの夢は終わりを告げました。この映画はいろいろな意味で時代を先走ったものだったとも言えます。現在の目で見れば全く違う評価がなされるかもしれません。

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『プレイス・イン・ザ・ハート』

2016-02-22 09:19:01 | All About おすすめ映画

『プレイス・イン・ザ・ハート』(85)(1985.4.23.新宿武蔵野館)

登場人物への愛情が画面からあふれる

 1980年代のアメリカ映画の一つの傾向性として家族や農場への回帰主義が多く見られます。その代表作となったのがこの映画です。

 30年代の米南部、夫を失ったエドナ(サリー・フィールド)と幼い息子と娘、借金のかたに銀行から世話することを押し付けられた盲人のウィル(ジョン・マルコビッチ)、流浪の黒人モーゼ(ダニー・グローバー)というハンデを負った者たちが、数々の苦難を乗り越えながら農場を守り、確かな共同体を築いていく様子が描かれます。

 この映画の最も素晴らしい点は、監督・脚本のロバート・ベントンの登場人物たちへの愛情が画面からあふれてくるところです。名手ネストール・アルメンダリスの撮影もそれを助長します。それ故、もうこれ以上誰も不幸にさせたくないと感情移入させられてしまうのです。

 そして、この映画のハイライトはラストの教会のシーンに訪れます。ファーストシーンで殺されてしまったヒロインの夫、彼を誤って殺し、白人に私刑にされた若い黒人、KKK団の迫害に遭って街を去ったモーゼ、と、映画の中から消えていった彼らを再登場させ、カーテンコールを行うのです。ベントンの登場人物たちに対する愛情の深さや家族の絆への思いがこのシーンに集約されています。

 アカデミー賞では、ベントンが『クレイマー、クレイマー』(79)に続いて脚本賞を、フィールドも『ノーマ・レイ』(79)に続いて主演賞を受賞しました。


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『黄昏(81)

2016-02-21 09:30:33 | All About おすすめ映画

映画と現実が重なって見える父と娘の物語



 この映画の主人公は、ニューイングランドの湖畔の別荘で夏を過ごす老夫婦(ヘンリー・フォンダ&キャサリン・ヘプバーン)。年老いて死を意識する夫婦のもとを、父親とそりが合わない娘(ジェーン・フォンダ)と彼女の再婚相手の息子が訪れます。

 そして、老父と少年は釣りを通して世代を超えた友情を築き、死を恐れる老父に少年が生きる気力を与えていきます。やがて老父は自らの考え方や娘に対する態度を見詰め直していくのです。そうした変化が原題通りに“黄金の池の上”で静かに展開されます。夫婦の間に別の人間を置くことで微妙なアクセントを加えていくアーネスト・トンプソンの脚本がとてもうまいです。

 さらに、ずるいのは、父と娘をフォンダ親子が私生活の不仲をほうふつとさせながら演じているところでしょう。この映画の発端は、ジェーンが父を出演させるために戯曲の映画化権を買い取ったといわれています。そしてジェーンから出演を懇願されたキャサリンが2人の間に入って関係修復の手助けをしている感じもします。

 とは言え、やはり3人の名優による演技合戦は素晴らしく、この映画でヘンリーとキャサリンはアカデミー賞の主演賞を受賞しました。キャサリンは4度目でしたが、ヘンリーは長いキャリアの中での初受賞となりました。すでに死の床にあったヘンリーに代わってジェーンがオスカー像を受け取りました。直後にヘンリーはこの世を去ります。

 何だか映画と現実が重なって見えて「最後に和解できて良かったなあ」という気持ちにさせられます。プロデューサー、ジェーン・フォンダの術中に見事にはまったと言ったら言い過ぎでしょうか。

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【ほぼ週刊映画コラム】『クーパー家の晩餐会』

2016-02-20 19:01:11 | ほぼ週刊映画コラム
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

季節外れのクリスマスプレゼント
『クーパー家の晩餐会』



名台詞は↓

『素晴らしき哉、人生!』ネタの
「サンキュー・クラレンス!」
byエレノア・クーパー(オリヴィア・ワイルド)


詳細はこちら↓

http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1037760
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