新交響楽団の第230回演奏会を聴きに行った。今回はモーリス・ラベルの「古風なメヌエット」と「ダフニスとクロエ」、グスタフ・マーラーの「交響曲第4番」というプログラム。
ラベルを初めて聴いたのは、クロード・ルルーシュ監督の『愛と哀しみのボレロ』(81)の劇中音楽としてだった。この映画は、第二次大戦から現代に至るまでの四つの家族それぞれの人生を描いた大河ドラマで、ヘルベルト・フォン・カラヤン、グレン・ミラー、ルドルフ・ヌレエフ、エディット・ピアフがモデルとなっている。
最後に主要人物が一堂に集い、ジョルジュ・ドンがエッフェル塔下で踊るボレロの公演が映される。何か妙な感じではあったが、ひどく印象に残った。
https://www.youtube.com/watch?v=lCtqsUMB3UI
そして、マーラーと映画と言えば、ケン・ラッセル監督が撮った伝記映画『マーラー』(74)があるが、やはりルキノ・ビスコンティ監督が『ベニスに死す』(71)で使った「交響曲第5番アダージェット」が筆頭だろう。
https://www.youtube.com/watch?v=Fvb1ITRFXhc
以前、ビスコンティが大好きだった淀川長治先生の解説口調をまねて『ベニスに死す』について書いたことがあった。
はい、みなさん今晩は。
今夜は私、狂喜しております。何故かと申せば、ついに、ついに日曜洋画劇場でルキノ・ビスコンティ監督の名作『ベニスに死す』を皆さんにお見せすることができるからです。
はい、この映画は、簡単に申せば初老の作曲家が美少年に恋をするお話ですねえ。けれども、もちろんそれだけではありませんねえ。どんな人間でもやがては老いて死んでいくという運命への抗い、そして本当の美とは何か、退廃とはなにかが描かれております。
原作はトーマス・マンです。主人公の作曲家アッシェンバッハを演じるのがダーク・ボガードですねぇ。見事ですよ。アッシェンバッハが憧れる美少年をビョルン・アンドレセンという無名の若者が演じております。その美しいこと、キレイなこと…。彼はビスコンティに見出されて、本当にこの映画のためだけに磨かれたんですねぇ。
それから、音楽はマーラーの交響曲第5番アダージェットが使われております。これがまたこの映画の持つ退廃と美というテーマにぴったりなんですねえ。
それでは、この1971(いっせんきゅうひゃくななじゅういちねん)年度のイタリアとフランスが作った芸術、芸術、美の極致を、じっくりとご覧なさい。後でまたお会いしましょうね。
淀川先生ごめんなさい。