田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「伊勢佐木町ブルース」

2020-02-04 16:10:46 | 雄二旅日記

 所用で関内に立ち寄った。JR関内駅近くの伊勢佐木町商店街(イセザキモール)には、1968(昭和43)年に大ヒットした「伊勢佐木町ブルース」(作詩・川内康範、作曲・鈴木庸一、歌・青江三奈)の歌碑と、昔の映画のそれを思わせるような看板が設置されている。ピアノをイメージした歌碑の台座のスイッチを押すと、内蔵されたスピーカーから「伊勢佐木町ブルース」が1分間演奏されるという仕組みだ。

 この曲、子供のころは、その意味も分からないまま、冒頭の「アーン、アーン」の吐息を面白がってまねし、青江のことも、変な声の“けばいお姉さん”だと思っていたが、今改めて聴くと、実に切なくていい曲だと思うし、青江のことも、色っぽいハスキーボイスの名歌手だったと思える。年を取るのも悪いことばかりではないのか。

 また、曲のヒットを受けて、東映の歌謡映画『夜の歌謡シリーズ 伊勢佐木町ブルース』(68)が、先頃亡くなった梅宮辰夫の主演(“夜の帝王”と言われていた頃か)で製作され、青江も本人役で出演した。『ウォーターボーイズ』(01)では、印象的な挿入歌として使われている。

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『毘沙門天慕情』 神楽坂

2020-02-04 11:25:34 | 俺の映画友だち

 先日「映画の友」との恒例の飲み会を神楽坂で行った。神楽坂が舞台の映画で思い出すのは、名脇役の砂塚秀夫が主演した『毘沙門天慕情』。当日は、奇しくも「くさい役者」の話題になったが、この砂塚や森繁久彌あたりはその最たるものだろう。というよりも、喜劇畑の人たちの演技は総じて“くさい”のだが、それが、時には嫌味になったり、いい味になったりするから厄介なのだ。

『毘沙門天慕情』(73)(2011.1.31.神保町シアター「新春!喜劇映画デラックス」)

 この映画、以前から見たかったのだが、いろいろと問題があったようで、公開後は、上映はもちろん、テレビ放映もされず幻の作品になっていた。名脇役の砂塚秀夫が、企画・製作・主演した意欲作で、森繁、伴淳、三木のり平、由利徹など、彼と縁のあった喜劇人がゲスト出演している。

 うま過ぎて、見る者にちょっと嫌味な印象を抱かせる砂塚にとっては、太鼓持ち=幇間はぴったりの役どころだが、この映画を見ると、やはり彼は主役ではなく脇役として輝くタイプの人だと感じさせられた。

 何しろ砂塚のワンマン映画だから、見せ場はすべて彼がこなし、ゲスト出演してくれた先輩たちの芸も披露させなくては…となると、どうしても全体が散漫になる。だから、たいした上映時間ではないのに、随分と長く感じてしまうのだ。西村晃の“ニコライの鐘蔵”、大泉滉の“おかまのヒーター”など脇で楽しいキャラクターも描かれていただけにちょっと残念だった。

 ところで、「あちらが帝釈天ならこっちは毘沙門天」という冒頭の啖呵や、砂塚がさまざまなシチュエーションを演じる夢のシーンは明らかに『男はつらいよ』を意識していると感じた。これは同時代に脇役から主役にのし上がった渥美清への対抗意識の表れだったのだろうか。

 逆に、父親(実は育ての親)が森繁で、放蕩息子が、父の死(遺言)で家業を継ぐという設定は、この映画の翌年に放送された石立鉄男主演のテレビドラマ「水もれ甲介」に少なからず影響を与えたのではないだろうか。あのドラマの舞台は鬼子母神付近だったが…。

 ところで、この映画は、新東宝出身の監督・土居通芳の遺作らしいのだが、今回クレジットを見て助監督に小栗康平の名を発見して驚いた。

2011.2.【違いのわかる映画館】vol.05 神保町シアター
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e37b6010d75790454f4f587220b1c945

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『喜劇 各駅停車』

2020-02-04 09:40:36 | 映画いろいろ

『喜劇 各駅停車』(65)(1976.6.20.日曜映画劇場)

 日本映画専門チャンネルで約40数年ぶりの再見。監督:井上和男、脚本:松山善三、撮影:岡崎宏三、音楽:佐藤勝。

 森繁久彌がナポレオンに傾倒しているベテラン機関士を、三木のり平がその助手を演じる。2人は『社長』シリーズなど、喜劇での共演が多かった。この映画も“喜劇”と付いているが、どちらかといえば人情劇の部類に入るだろう。ただ、後輩の助手という役柄でいえば、のり平では年を取り過ぎているように見えるところが難点か。他の出演は、岡田茉莉子、森光子、南利明、山茶花究。

 国鉄(現JR)の協力を得て、高崎機関区、足尾線(現わたらせ渓谷鐵道の前身)を中心に、オールロケを敢行。彼らが乗務する蒸気機関車C12が大活躍を見せる。佐藤の音楽は蒸気機関車の動きによく合う。

 実はこのC12には思い出がある。子供の頃の遊び場の一つだった品川区の戸越公園に、同機の7号車が静態保存されていたのだ。懐かしくなって調べてみると、96年に解体され、今は記念碑だけが残っているという。

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