田中雄二の「映画の王様」

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『七人の侍』

2020-02-11 15:05:01 | 映画いろいろ

『七人の侍』(54)(1991.11.23.日比谷映画)

 映画館で見るのは75年の“テアトル東京上映”以来だから、かれこれ16年ぶりになる。とは言え、ビデオやLDを手に入れてからは、折に触れて何度も見直しているから、映画より先に映像が頭に浮かんできてしまって困った。

 今回は、英語字幕スーパー付ということで、周りの外国人や、父親や母親に連れられてきた子どもたちの反応を見るのが楽しかった。菊千代(三船敏郎)のコミカルなしぐさや表情には素直に笑ったり、拍手をし、勘兵衛(志村喬)や久蔵(宮口精二)の侍らしい動きに感嘆の声を上げたり、「パパ、これ本当に30年も前の映画なの。それにしては面白いね」と真顔で言ったり…。恐らく、彼らにとっては初めての“『七人の侍』体験”だったのだろう。

 そう思うと、いくら好きだからといって、何度も繰り返して見ることは、決していいことではないのかもしれない。最初に受けた初々しい感動がどんどん薄れ、変に偏ったマニアックな見方しかできなくなってしまうからだ。

(93.7.1.)

 この映画、見るたびに好きなキャラクターが変わる。勘兵衛(志村喬)と久蔵(宮口精二)は、初めて見た時から魅力的に映ったが、例えば、初めはそのうるささが鼻について好きになれなかった菊千代(三船敏郎)が、見直すたびに切なく見えていとおしくなる。

 また、旧知の勘兵衛から「今度は死ぬかもしれんぞ」と言われながら、無言で美しい笑顔を浮かべる七郎次(加東大介)や、若さにあふれた勝四郎(木村功)も素晴らしい。

 そして、山形勲、清水元、仲代達矢、宇津井健ら、七人に成り損ねた俳優たちについて考えてみるのも楽しい。もし山形が五郎兵衛(稲葉義男)や平八(千秋実)をやっていたら、少々あくが強いかもしれないが、彼がホームグラウンドにしていた東映の時代劇とはひと味違った面白さや意外性が見られたかもしれない。

 百姓役では、これまでは左卜全の不思議な存在感ばかりに気を取られていたのだが、最近は小杉義男の朴訥なキャラクターや、藤原釜足の卑屈さやずるさにも魅力を感じるようになってきた。

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