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藤沢周平著 「よろずや平四郎活人剣(中巻)・離縁のぞみ」

2020年11月02日 11時44分52秒 | 読書記

図書館から借りていた藤沢周平著「よろずや平四郎活人剣(中巻)・離縁のぞみ」(文藝春秋)を 読み終えた。「オール読物」1980年(昭和55年)10月号から1982年(昭和57年)11月号に連載された連作短篇構成の長編時代小説で、1983年(昭和58年)に発刊された(上巻)(中巻)(下巻)の内の(中巻)である。

読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう爺さん、読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも その都度、備忘録としてブログに書き留め置くことにしている。

藤沢周平著 「よろずや平四郎活人剣(中巻)・離縁のぞみ」

本書には 表題の「離縁のぞみ」の他、「伝授の剣」、「道楽息子」、「一匹狼」、「消えた娘」、「嫉妬」、「過去の男」、「密通」の 連作短篇8篇が収録されている。

主人公は 神名平四郎(かんなへいしろう)
幕府目付神名監物の腹違いの末弟(亡父が 台所下働きの下女に産ませた子)、24歳、神名家ではずっと冷遇されていた「冷や飯食い(次男以降の男子)」、雲弘流矢部道場では次席に位置する高弟だったが、実家を飛び出し、道場で知り合った明石半太夫北見十蔵と道場を立ち上げようとするが 明石半太夫の裏切りで計画が頓挫、長屋に住み付き、生計のため、思い付きで始めた商売が「よろずもめごと仲裁」、手間賃でカスカスの暮しをしながら、一方では 兄の目付神名監物から危険を伴う探索や護衛等を命じられ、そのほとんどがただ働きで、不満を抱きながら逆らえず従っている。

第12代将軍徳川家慶の下、天保12年(1841年)頃から天保14年頃、老中水野忠邦が一切の贅沢、無駄を取り締まり、値上がり、不景気を招いた「天保の改革」を断行した時代、水野派と反水野派の政争が有った時代を背景にしている。主人公は 剣の達人でありながら 長屋に住み 「よろずもめごと仲裁」を生業として その報酬で生計を立てる神名平四郎。お人好し、お節介焼きな性分有り、ユーモアをも混じえながら、双方に傷が残らないように もめごとを丸く収めるが 実入りは少なく 暮しは楽にならない。細やかな江戸の情景描写有り、凄まじい斬り合い場面有り、庶民の暮らしと武家の諸問題を、並列で描いた 藤沢周平ならではの痛快娯楽時代劇だと思う。

「離縁のぞみ」
「もめごと仲裁」依頼人は 竹皮問屋粟野屋の女将おとわ(37歳)。角左衛門(43歳)との離縁のぞみ。平四郎は おてる(20歳)に芝居させ・・・。角左衛門に話を付ける・・・・が、
ひょっとしたら あの女将にはめられたかな、平四郎は思う。去り状を貰ったと言って、おとわが二両の手間賃を持って挨拶に来た・・・が 実は・・・。竹皮草履職人松蔵と・・・、

「伝授の剣」
1分銀と穴明き銭83文が全財産になった平四郎の家に、明石半太夫が 「もめごと仲裁」の仕事を持ち込んできた。依頼人は 越後村松藩。直心流筒井三斎道場風切ノ太刀伝授に絡んで、道場の高弟、村松藩藩士日田孫之丞と旗本の嫡男埴生康之介が抜き差しならぬ関係になっているという。一旦金で解決したものの、日田孫之丞に刺客が。神名平四郎、明石半太夫が駆け付け・・・、村松藩からの手間賃は 5両、明石半太夫にも 斡旋料 1両・・・金のことでは 何事であれこの男(明石半太夫)に気を許してはならない平四郎だった。

「道楽息子」
北見十蔵から 「もめごと仲裁」の仕事を紹介された平四郎、早速、依頼人、竹皮問屋橘屋甚兵衛と会うが 道楽息子庄次郎の勘当問題と脅し文の相談だった。裾継のおもんは 甚兵衛の眼鏡に叶ったが・・、問題は 庄次郎。「しまった」「やくざ者が家を襲う」、神名平四郎、北見十蔵が 橘屋裏庭で待ち構え・・・、

「一匹狼」
「もめごと仲裁」の依頼人は 料理屋あづま屋の女将おこま。6年前に夫を亡くしている寡婦(29歳)。幼馴染で互いに好いていた吉次とは おこまが 両親が亡くなり妾奉公したことから 疎遠になっていたが 12年ぶりに 両替屋山幸で、おどし、ゆすりまがいの取り立てをしていることが分かり、吉次の将来を心配する。吉次は荒んでいるが 子供思い。雇い主山幸の刺客に襲われ乱闘、平四郎が駆け付け命拾いするが、吉次の子供3人は あづま屋に・・・。「強情もいい加減にすることだな。三人の子持ちが一匹狼を気取っても仕方あるまい。・・・」

「消えた娘」
平四郎は 兄の目付神名監物、監物の配下樫村喜左衛門の手下仙吉と三人で、小間物問屋仙北屋から出てくる武家を見張った。町奉行鳥居耀蔵配下の者達だという。用心棒として兄に従っていたものだが、その帰途、船積問屋山鹿屋(山佐)前で揉めていた老婆おとらを助ける。おとらは平四郎を訪ねてきて 行方不明の孫娘のきえの件で泣きつかれる。泣きつかれて働いても手間賃は出ないだろうと思う平四郎だが 見捨てることが出来ない性分、乗り出す。山鹿屋佐兵衛、岡っ引き茂作呉服問屋信夫屋の若旦那文次郎、山佐の藤助、笹川の女中おちよ・・・・。仙吉の力も借りて、まるで お人好しの探偵、岡っ引きまがいの平四郎である。

「嫉妬」
平四郎は 北見十蔵の家で、水野忠邦の改革実施以来、一切の贅沢、無駄の取り締まり、倹約、倹約の影響で かえって物価は値上がり、不景気になっている暮しを愚痴り、帰途についたが 途中 捨て子(赤ん坊)を 拾う羽目になった。独身の平四郎は もて余し気味、駕籠かきの三造と女房およし夫婦に協力してもらうが 留守中に若い男が訪ねてきて さらに若い女くみが訪ねてきた。「もめごと仲裁」の仕事となり、旗本小谷外記と金で解決する話をつける。しかしその帰途、小谷外記の養子間瀬仲之進が 平四郎に襲いかかってきて・・・。何故?。

「過去の男」
前篇「嫉妬」の続きになる。平四郎は 赤ん坊を 一番安全と思われる明石半太夫に預けていたが、引き取りに行くと 半太夫の妻女は平四郎に赤ん坊をおんぶさせた。女房に逃げられたあわれな浪人という格好、体裁悪く うつむいて歩いていたが よりによって 平四郎にとっては初恋の女性、今では旗本塚本家の妻女早苗に見られてしまい、落ち込んでしまう。「ついておらん」。赤ん坊を母親くみの叔母の家に送り 小谷外記からの詫び料50両を手渡したが・・今度の仕事は まあまあうまく行った方だな、ちょっぴり満足した。
帰宅すると 「もめごと仲裁」依頼人が待っていた。若い女おあさ(17歳)。おとし(煮豆屋)の紹介客だった。夫婦約束していた桶職人喜太郎(21歳)の様子がおかしいという。鼻緒問屋鮫島屋長兵衛・・実は元高利貸百蔵、喜太郎の実家生駒屋の両親は 借金500両取り立てに負け、首吊り。一席設け手打ちしたが、その帰りに、平四郎と喜太郎は 刺客に襲われる。

「密通」
平四郎が 北見十蔵の家で出会った美人の武家女は 国元の十蔵の元妻女で、縁を切った女性だというが、それ以上のことを十蔵は語らない。平四郎は 十蔵から 再度明石半太夫と3人で道場開設をしないかと持ちかけられる。平四郎が帰宅し、十蔵から貰った胴着を眺めている時、軒先に黒い人影、染種問屋美濃屋八兵衛、「もめごと仲裁」の依頼人だ。昨年妻女が病死、12年間美濃屋で女中として働いて鍛冶職人徳五郎に嫁いだおくまと密通、亭主徳五郎から脅かされているというものだったが・・・・。徳五郎の泣き声、女房おくまにしがみついている気配?、美濃屋の女中おはな「このへんが手の打ちどころだな。これ以上こじらすと 大事なかみさんが本当に出ていくぞ」

(つづく)


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