図書館から借りていた 諸田玲子著 「来春まで」(新潮社)を 読み終えた。
諸田玲子著 「来春まで」
第1話 女ごころ、
第2話 新春の客、
第3話 杜の森の殺人、
第4話 七夕の人、
第5話 蝸牛、
第6話 鷹匠の妻、
第7話 来春まで、
代々 幕府の御鳥見役を務める矢島家の家付き女房、珠世(たまよ)を主人公とする、「お鳥見女房シリーズ」の第7番目の作品だ。
「来る者は拒まず」、ころころと良く笑い 両頬にえくぼが出来る 明るく世話好きな珠世、
そんな珠世を慕い、様々な人物が頼ってくるが 相手の立場に立って 明るさと機転、慈愛をもって対処、問題を解決していく物語である。
登場人物に 「珠世どののそばにいると 誰もが身内のように思えてくる」と 言わせる魅力的な女性なのだ。
前作「幽霊の涙」は 御鳥見役の裏の任務、密偵で相模に赴き、死地に追い込まれた嫡男久太郎の命を助け、そのために一命を落とすことになってしまった波矢とその祖父彦三に詫びと礼をするべく 珠世は相模まで出掛け 波矢の墓前で安堵するところで終わっていた。
「来春まで」では 不妊だった 久太郎、恵以夫婦にも待望の初子が恵まれる等 おめでたが続く矢島家だが 次々と難題が持ち込まれ その都度 珠世が動き、おさまっていく。
第7話(六)では 夫で御鳥見役の伴之助が隠居し その労をねぎらう宴に 矢島家に関わる大勢の人達が集まる場面となる。
御鳥見役として活躍する嫡男久太郎、妻の恵以と初子沙耶、次男で大番組与力永坂家の夫婦養子となり上方在番から帰国した久之助、妻の綾と猶子光之助、旗本家に嫁いだ長女幸江とその息子2人、菅沼家に嫁いだ次女君江と夫隼人、石塚源太夫と妻の多津、先妻の子供5人と多門、・・・、
珠世が手厚く看病していたシャボン玉売りの藤助は 昔の恩人、親方の子供にシャボン玉をみせるため三河に旅立ってしまい 楽しみにしていた皆が落胆するが、来春にはきっとやってくると、皆でうなづき合う。
珠世とは従姉で矢島家の居候になっている登美が茶の間と庭を見渡して言う。「それにしても いつのまにやら・・・・、矢島家にこれほどややこが集うことになろうとは 思いもしませんでしたよ」、同じく居候の松井治左衛門も言う。「子は宝。末広がりでめでたしめでたし」
(本書の表紙の装画は その様子を表現しているのだと思われる)
珠世が言う。「主どの。長年のご苦労が報われましたね。あらためまして、ほんとにありがとうございました」、伴之助が言う。「なに、そなたの笑顔と労りがあったらばこそ・・・。こちらこそ礼を申す」。娘達を従えて厨へ向かう珠世の口元に、とびきりのえくぼが浮かんだ。
なんとなく完結?的な終わり方になっているが、次作が有るのだろうか。
読書初心者の爺さん、お鳥見女房シリーズ 第1弾「お鳥見女房」、第2弾「蛍の行方」、第3弾「鷹姫さま」、第4弾「狐狸の恋」、第5弾「巣立ち」、第6弾「幽霊の涙」、第7弾「来春まで」、を読み終えて、ある種、達成感のような?、自身が付いたような?、気分になっている。これまで、長編小説や、シリーズ物小説を一気に最後まで読み通した等という記憶が全く無く、生まれ初めての経験である。諸田玲子氏の小気味良い物語の展開、全体的に平易な文章が心地好く、読みやすい作品だったからこそかも知れないが、次作を読みたくなっている。