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オーディオと音楽について

発売初日

2017年02月24日 12時09分40秒 | 
断ることが不可能な儀式みたいに買ってしまいました。



村上春樹の新作『騎士団長殺し』
月末で金欠気味なので取り敢えず第1部のみ購入です。

先日、ルメートルの『傷だらけのカミーユ』を面白すぎて2日で読んでしまい、後悔したので、こいつは一行一行噛み砕きながらじっくり読みます。

そういえば



タンノイ オートグラフが作中に登場。
読者の99パーセントは知らないと思いますが、これは1950年代に発表された巨大で複雑で高価なイギリス製のスピーカーです。
残念ながら私は聴いたことがありません。



『ジェノサイド』高野和明

2011年09月11日 07時57分47秒 | 
ハードカバーを購入するにもかなりの勇気が要る生活を送っている。けれどこの本が放つ“買ってくれ”というオーラは強烈だった。
ジャンルはSFなのかな?薬学、人類学、宗教、政治、IT、家族愛他様々なジャンルが盛り込まれるため、一言では表現が難しい。
ただ読了してみて言えるのは、頭の中でひたすら面白いハリウッド映画を見終わったような感触。(アメリカおよび大統領批判が強いので映画化は実現不能だろうけど)
分厚い本ではあるが、ストーリーが気になり結局2日で読み終えてしまった。
兎に角面白い小説を読みたいなら絶対オススメです。

余談。
“日本人による虐殺”の挿話に強く反応している人がいるけれど、本書のテーマが持つスケールからすると的外れだと思う。戦争において日本人だけが無慈悲な殺戮を行わないなんて信じられないからだ。
第一、南京で多くの乳児を刺し殺したことを自慢気に話した男性を自分は知っている。日本人とは、ではなく、ヒトとは、そんな性質を抱える種なのだろう。

小松左京氏の逝去

2011年07月29日 00時17分31秒 | 
小松左京さんが天に召された。「日本沈没」や「復活の日」、「さよならジュピター」等のSF長編で有名な小松氏であるが、ショートショートも、中編も、ホラーも純文学も抜群に面白かった。
ミクロとマクロ、一瞬と永遠の対比を、美しくも儚く、そして優しく表現できる人だったように思う。

知っている人など殆んどいないだろうけれど、日本SFの最高峰『果てしなき流れの果てに』に出てくる野々村と佐世子の愛の物語が、私は大好きだ。

捨てずに持ってて良かった。
明日からまた読んでみよう。


『新世界より』

2011年02月16日 23時41分44秒 | 
だいたい2年に一度くらいの頻度だろうか。素晴らしく面白いと思える小説に出会っている気がする。

それは正に至福の時だ。物語に引き込まれるあまり、頁をめくっている自覚すらなくなり、頭の中で生きた登場人物が話し、躍動する。
愉しくて読み進みたいのに終わりが来るのが嫌で読みたくないという葛藤が生まれるほど。

例えばキングの『IT』、例えば宮部みゆきの『模倣犯』、確か前回は桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』。
人物が徹底的に描けていて、かつリアリティを伴った複雑なストーリーが絡んでいる小説が好きだ。

で、今回は貴志祐介の『新世界より』。言わずと知れたドボルザークの交響曲9番からとったタイトルだ。1000年先の未来が舞台のSFである。ストーリーは書かないが、とにかく貴志祐介の凄まじい想像力には驚嘆した(ラストはまさに自画自賛だろう)。傑作ホラーの『黒い家』と同じ作者だということにもびっくり。

この物語や『都市と星』、『マトリックス』にも登場するが、“完全世界に生まれたトリックスター”という存在に何故か妙に惹かれるものがある。

完全なるものには時折ヒビを入れてやることで、その完全性がより強固になるのだ。

自分は子供なのだろうか

『フィッシュストーリー』

2010年07月06日 20時19分55秒 | 
仙台で生まれ育ち、仕事も仙台でやっているという、いわば生粋の仙台人と先日話す機会があった。
初対面は苦手だ。少し綺麗な女性なら尚更。
ネタに困ってこんなことをきいてみた。

「伊坂幸太郎って知ってますか?」

その人は伊坂幸太郎を知らなかった。
伊坂幸太郎は今や飛ぶ鳥も落とす勢いのミステリ作家である。

登場人物のキャラクタ設定が面白い。物語は大抵軽いノリで入るけれど、謎と伏線が巧妙で、つい物語に引き込まれてしまう。結末はほぼ例外なく爽やかで温かい。

で、物語の舞台は殆ど全て宮城県(特に仙台)なのだ。

だから、宮城県民なら誰でも伊坂幸太郎を知っていると思い込んでいのだ。

『オーデュボンの祈り』『ラッシュライフ』『重力ピエロ』等の長編も良いけれど、今回読んだ中編集『フィッシュストーリー』も伊坂ワールド全開で引き込まれる。

そう、伊坂幸太郎原作の映画化も多い。最近では『重力ピエロ』が有名だ。けれど、個人的には『アヒルと鴨のコインロッカー』がオススメ。
“なんじゃこりゃ?→そういうことか!→大感動!”となる。邦画ミステリの隠れ大傑作と思う。

『悪霊の島』

2010年07月02日 07時50分49秒 | 
『悪霊の島』はスティーヴン・キングの最新刊。上下巻で1000ページを超える大作である。
キングはモダンホラーの大家だけれども、そのストーリーは正直全く怖くはない。

キングの素晴らしさは寧ろ徹底的な細部の描き込みによるリアリティーの高さにある。

想像の産物に過ぎない人や現象が読者の頭の中で実際に生きて、動き、話すのだ。

この小説では、事故で片腕を失った主人公の苦悩と再生が極めて丁寧に表現されている。
キングならではの力作だと思う。

(200〈70〉×12 68.0)


「東京島」

2010年06月22日 07時55分34秒 | 
新刊が最も楽しみな女性作家を一人挙げよと言われたら迷わず桐野夏生を選ぶ。
この作家の作品は幾つか映画化されているが、今年の「東京島」の映画化には驚いてしまった。彼女の傑作群(「OUT」「柔らかな頬」「グロテスク」等)と比較すると明らかに質が劣る気がする。“無人島に残された多数の男と1人の女”という設定はまるで少年の妄想のようだ。心理描写が上手い人なので結局最後まで読んでしまうのだけれど。

主役である“清子”を木村多江さんが演じるのもひっかかる。綺麗過ぎるのだ。
綺麗な人なら無人島のような極限状態じゃなくたって女王になり得るのだから。
けれど、小説の“清子”に適合する人選をしたら、興行としては成功しないのかもしれないな。


「告白」

2010年06月17日 19時40分55秒 | 
最近、松たか子さんと木村佳乃さんがやたらテレビに出ている。映画「告白」の宣伝らしい。

湊かなえ「告白」は娘を生徒に殺された教師の復讐の物語だ。語り口が面白くて引き込まれるが、個人的にはラストが少し不満。
それじゃあ、やり過ぎだろう。
第一章で終わる短編なら良かったのに。

“目には目を、歯には歯を”で有名なハムラビ法典は、復讐を奨励するのではなく、倍返しを禁ずるという目的があったらしい。
それをふと思い出した。


「猿の手」

2010年06月12日 07時45分18秒 | 
映画「運命のボタン」は“ボタンを押せば100万ドルもらえる。そのかわりにどこかで誰かが死ぬ”というストーリーらしい。



“欲しいものを簡単に得られる。けれど代わりに大きな犠牲がある”というテーマといえば、ホラー短編の古典「猿の手」(ジェイコブズ、1902年)を思い出す。

実際この短編の派生がいろんな小説や映画にみられるらしい。
超簡単なあらすじはこうだ。

①老夫婦は、願いが3つ叶う“猿の手”を手に入れた
②夫婦はまず、“金が欲しい”と願った
③一人息子が事故で死に、保険金が入ることになった
④悲嘆した夫婦は、“息子を蘇らせて欲しい”と願った
⑤玄関のドアを何やらぐちゃぐちゃしたものがノックした
⑥夫婦は3つ目の願いを言った
⑦ドアを叩く音がやんだ


この短編の素晴らしさは⑥に尽きる。
この作品の中で作者は老夫婦の3つ目の願いを、具体的な言葉として提示していない。

その言葉は表現を変えると
“自らの平穏のために最愛の人を葬る”ものである。

作者は敢えてこの言葉を読者の想像に委ねたのだろう。

そんな言葉は言いたくない。

だからこの作品は怖いのだ。

ホラー小説ブーム

2005年08月17日 11時05分53秒 | 
毎日厭な暑さが続きます。暑い夏にはホラー小説がお似合いというわけでこの3週位で立て続けに4冊のホラー小説を読みました。

・「ねじの回転」ヘンリージェイムズ
かのスティーヴン・キング曰く、”この百年間に世に出た怪奇小説の中で傑作といえる2作のなかの1作”だそうで期待して読みました。幾通りもの解釈が可能なところが評論家ウケするんでしょうが、難解だし怖くないし正直期待はずれでした。
お気に入り度:★

・「復讐執行人」大石圭
「呪怨」「オールド・ボーイ」「4人の食卓」等のノベライズのキレに比べると若干弱いかなという気がします。実際これはホラーというよりもサスペンスに近いですけどね。大石さんの作品は加害者からの視点が丁寧なので結構好感が持てます。
お気に入り度:★★

・「ビンゴ」吉村達也
540ページ近くある、ホラーとしては大作です。怖さの表現が結構斬新で、後述の「ノロイ」よりも映画化すると面白いのではと感じました。が、動機が克明になっていくにつれ、少し白けていってしまうような感触もあります。
お気に入り度:★★★

・「ノロイ」林巧
(詳しくはこちら
今、映画の宣伝を一生懸命やってますね。”あるノロイに関する取材をしているうちに行方不明になってしまった”という怪奇実話作家の小林雅文さんの日記です。
この企画は”作り話を実話として描く”というものなのですが、その試みが結構画期的で、この小林氏本人のホームページや勤めていた出版社のホームページまで作ってある懲りようです。本物の芸能人(アンガールズ等)まで巻き込まれたとしていて、少し笑えます。
実話として表現するための徹底が足りず、わかりやすい穴がいくつかあってそれが気になります。特にこの小説版を出したのが最大の失敗だと思います。
お気に入り度:★★