Xenos Audio

オーディオと音楽について

原音再生とは?

2012年05月23日 01時02分31秒 | オーディオ
モーグを扱ったGoogleの扉絵が凄いです!

歴代最高の力作ではないでしょうか。録音/再生もできますし。



第59回日本推理作家協会賞を受賞した平山夢明の「独白するユニバーサル横メルカトル」の一文にこんな内容の台詞があります(手許にないのでうろ覚えですが)。

”「時計仕掛けのオレンジ」におけるウォルター・カーロスのベートーヴェンの第9は、ベートーヴェンを超えている。”

まぁ、これは大げさにしても、モーグを駆使したウォルター・カーロスの演奏は、かのグレングールドも絶賛したと言われています。

つまり電子楽器でも楽器は楽器。音楽を奏でることができるというわけです。音楽に対する先入観をなくして聴くならば、これは当然ですね。音を奏でる全てのものは音楽を創生する可能性を秘めているのですから。

さて、オーディオにおける原音再生。原音再生を追求するのがオーディオの目的だとして、そもそも原音とは何でしょうか。

原音を”DISCに入っている情報”と定義してしまうとうまくいきません。

何故か。

そこには何も加えてはいけないことになってしまうからです。何も加えないオーディオが聴くに耐えない音を出すことは
無響室における音響実験が証明済みです。また、DISCに入っている情報と定義するならば耳でそれを判別することは不可能になってしまいます。

現在のオーディオの録音再生システムでは、原理的に、大きく、かつ重要な情報が欠落してしまうのです。

ならば原音の定義は…。


「録音・再生システムが介在していることを実感させない音」


これだと思います。

あたかも、オーケストラが、ボーカルが、そこにいて演奏している。
ドラムが叩かれている。モーグが目の前に置かれている。雷が轟いている。小鳥が囀っている。

これが、究極の原音再生でしょう。

ちょっと考えると、これが、現代の技術では無理であることがわかると思います。
けれど、無理であるからこそ、ほんの少しでも近づいていく、その試みが面白いと思うのです。

無理であるからこそ、アプローチの方法は多岐にわたり、趣味としての幅を広げていると思うのです。









Column

2012年05月21日 22時34分56秒 | オーディオ
今からもう20年も前だと思います。私は当時大学生か或いは社会人になったばかりくらいだったでしょうか。

その年の秋、私はわざわざインターナショナルショウに出掛けたいがためだけに富山から上京しました。

当時の自分にはハイエンド機器など高嶺の花(今もですが)。でもただ純粋に良い音が聴きたいと渇望していました。無料でハイエンド機器が聴けるオーディオショウは、またとない機会だったのです。

そこで、こんな体験をしました。

あるブースにひとだかりができていました。私は人だかりの向こうでどんなシステムがあるのかと興味を持ち、近づきました。

そこには中心に、ある評論家がいて講演をしていました。オーディオマニアなら誰でも知っている顔でした。それまで雑誌でしか見たことのないその評論家は、しかし私が想像していた通りの声や語り口で聴衆を惹き付けていました。

さて、話が終わり、実際にCDがかけられることになりました。

大編成のクラシックが鳴り出した途端、人だかりの中の一人、恐らく当時の私と変わらない20代前半らしき若者が、こう言ってすぐ踵を返し、去って行きました。

「ひでぇ音!」

結構大きな声だったので私は驚いてしまいました。

で、その音に私が、どう感じたかというと…


唖然としていました。

酷い音に、ではありません。その素晴らしい音に、です。

壁面近くに設置されたスピーカーの遥か奥深くまでホールの空気が感じられ、そこで極めて美しい音色のオーケストラが立体的に存在していました。ティンパニは深く自然で、弦は美しく柔らかくかつ力がありました。

それまで聴いたことのなかった形のスピーカーから、それまで聴いたことのなかった音が展開されていました。

私は改めて驚きました。「これを“酷い音”と判断する感性が存在するんだ」と。そう、オーディオシステムの評価は、単なる感性の違いだけではないかと。

私はそのスピーカーが欲しいと思いましたが、その価格は当時の私が購入できる限界の額の、さらに10倍も高価なものでした。サイズもとんでもなく大きいものでした。

諦めざるを得ませんでした。

その評論家の名は菅野沖彦。スピーカーはマッキントッシュのXRT-22といいます。

以後XRTはバージョンアップされ、現代までも生き残っています。しかし、XRT22を超えるのはなかなか難しいように、私には聴こえます。

ラインアレイはただ単に並べただけだとリスナーからユニットへの距離差が生じるためにうまく作動しませんが、マッキントッシュのようにネットワークを工夫し、デメリットを消すことで独自の良さが発揮されるように思います。

メーカーに再評価して欲しい方式です。

SDプレイヤー

2012年05月15日 01時23分32秒 | オーディオ
年末にお邪魔したI様宅の音に驚き、無理を言ってSDメモリプレイヤーをお借りすることができました。
その音は、ご友人から”国内外の著名ハイエンド機を凌ぐ”との評価も受けているとのこと。

到着まで興味津々でした。



当SDプレイヤーはDAC内蔵です。大きさはeAR501とあまり変わりません。
電源部はDAC部とSDプレイヤー部が分離したバッテリー型。リモコンは有線です。

手持ちのWAVファイルを幾つかSDメモリに突っ込み、早速聴いてみることにしました。

音には、心の底から驚きました。音質とか音色とかレンジのような要素よりも、一言で言うと”音場”です。
音像の密度、定位の安定と立体感、音離れの良さ、奥行きの深さといった空間情報が素晴らしいです。
奥行き方向の壁抜けがいとも簡単に実現できます。実在感の向上も顕著です。
我が家のオーディオシステムにこんなポテンシャルがあったのかとある意味安心しました。

現用のCDプレイヤー PRIMARE CD31は、音質的に前任のKENWOOD L-D1をあらゆる点で上回ったのですが、
このSDメモリプレイヤーはCD31をさらにあらゆる点で上回っています。

ちょっと悲しくなりました。このSDメモリプレイヤー、I様に作ってもらったとしてもCD31を下回る価格のようです。
今の自分に買えないのがとても残念です。

ネットワークオーディオか音楽専用プレイヤーか

2012年05月09日 22時42分53秒 | オーディオ
以前何度も書いた気がするのですが、PCによる音楽再生にどうもなじめません。
操作性の無駄が許せないんですよね。
で、ネットワークプレイヤーなら良いかなと思うのですが、いかんせんギャップレス再生ができるものが
LINNとYAMAHAしかないようでこれはとても寂しい。
もう少し頑張ろうよ…と思っていたらマランツからようやく出るみたいですね。



NA-11S1というらしいです。2500EUROということはわが国では幾らでしょうね。

・USB Type-A Input for iPod/USB Flash Stick/HDD playback
・USB Type-B input to use the NA11S1’s DAC as a high quality 192kHz/24-bit soundcard
・Large shielded toroidal transformer More Info...
・XLR Balanced outputs
・FLAC/WAV 192kHz/24-bit playback
・Gapless playback
・Marantz PEC777f3 DSP Filter
・Airplay Ready Audio Streamer
・Ethernet port for streaming audio across your home network and internet radio functionality with Napster support
・Apple Airplay (via optional update) More Info...
・DLNA 1.5 certified and compatible with Windows 7 More Info...
・USB input with iPod Digital More Info...
・HDAM-SA2 output stage
・Compatible with NAS drives
・Coaxial and optical S/PDIF outputs
・Dedicated headphone output with volume control
・Available in Silver and Gold
・Remote control


スペックは十分と思います。個人的には、このデザインにこだわる必要はないと思うのですが…。

あと気になるのはこちら。




iBasso Audio“HDP-R10”という携帯プレイヤーです。

・24bit/192kHz のハイレゾリューションサウンドを再生。
・DSD(DSF)、FLAC、ALAC、AIFF、AAC、WAV、WMA、OGG、APE、MP3 などの幅広いフォーマットに対応予定。
・カナダESS Technology 社の32bit-DAC「SABRE32 Reference audio DAC ES9018」を搭載(I2S 伝送にて接続)。
 I/V 変換には、高精度・低歪みオペアンプをLR 独立して搭載予定。高性能DAC の性能を最大限に引き出します。
・ヘッドホンアンプ部には、Texas Instruments 社の高精度高速オペアンプ「OPA627」および高速バッファ「BUF634」をLR   独立して搭載。iBasso Audio のオーディオテクノロジーを結集した、高いヘッドホン駆動能力を実現しています。
・アップサンプリング機能を搭載。さらにアップサンプリングした音声のデジタル出力やライン出力が可能です。
・4800mAh の大容量リチウムポリマーバッテリーを搭載予定 ( 電気用品安全法に対応)。
・高剛性、 無振動、無共振を追求したアルミニウム合金モノブロック削り出しマウントベースをオプションで用意。
・Android OS 採用。
・Wi-Fi 通信機能(TELEC 認証取得)。
・USB スロット搭載。
・64GB フラッシュメモリーを内蔵。
・Micro SD(microSDHC 対応) カードスロット搭載。
・ヘッドホン出力2 系統(6.3mm、3.5mm)、デジタル出力2 系統、及びライン出力装備。

androidとか、DSD対応とか、ES9018とか、バッテリー駆動可能とか、SDメモリ再生とか、まぁマニア心をくすぐるスペックです。

個人的にはなんだかいかにも良い音がしそうな後者の方にそそられます。後者の方が恐らく遥かに安いでしょうし。
ネットワークオーディオって、(あくまでもイメージなんですが)情報が欠落する気がしてしょうがないんですよね。








Cambridge Audio MINX MIN10 購入

2012年05月06日 00時14分08秒 | オーディオ
すいません。人生最大レベルの多忙のため、更新をサボりまくってしまいました。
お詫びに、(もちろん自己満足ですが)それなりの記事を書こうと思います。

以前、当Blogで面白そうな小型スピーカーがあると書きました。超小型のくせにお値段は結構するので購入をためらっていたのですが、中古がようやく出たので速攻でGETしました。



それは、ケンブリッジオーディオのMINX MIN10です。最近、発売後1年を待たずに何故かMIN10からMIN11へとマイナーチェンジされたようです。

ユニットはベンディングウェーブを積極的に使っているとのこと。キャビネットは一辺が約8cmの立方体です。



ハニカム平板振動板であることがよくわかります…


メーカー発表の周波数特性はこんな感じです。



あまりにも美しい周波数特性に感心してしまいました。驚くことに、軸をずれてもそれほど特性が変わりません。
低域はスパンと切れていて、-10dBポイントが180Hzあたりでしょうか。


音質は本格的です。バランスはこのf特の通りで300Hz以上は極めてフラット。中高域の質がとても良いですし、音離れも悪くないので音楽をきちんと聴かせます。サランネットを外すと若干うるさいので、このスピーカーは多分ネット込みで音作りをしていると思われます。きちんとセッティングすればそれなりに音場も出ます。

ただ、中域以下にはキャビネットのせいか、周波数バランスのせいか癖がつくようです。経験だけで判断すると、多分200Hz以下がしっかり出ているとこの癖は消えるはずで、その意味ではサブウーハー(もちろん純正である必要はない)とセットで考えるべきスピーカーでしょう。

よくこの大きさでよくこの音が…と驚きました。まぁ、この価格で最高の音かと聴かれると多分そうではないでしょうけど、省スペースと高性能を両立させたいならば是非とも推薦したいスピーカーだと思います。

とまぁ、ここまで書いて終了だと単なるインプレ記事なのですが…。折角なので私なりに”分解”をさせて頂きました。

これが、全世界初公開(こんなことして良いのか)のMIN10のネットワークです。



100μFで350Hz以下を落としています。おそらくこの100μFがなくても350Hz以下は降下しており、結果的に急峻なハイパスを形成しています。
当然、超低域を入力しても平気なようにできています。

並列のLCRはかなり強いイコライジングです。4kHz(-10dB)を中心に幅広く減衰させています。多分これがなければハイ上がりでうるさく、癖の強い音になるでしょう。

とまぁ、そんなわけでネットワーク抜きにして素晴らしい特性となっているのではないということが判明しました。ただ、”フルレンジにはイコライジング抜きで癖がなく鳴るものは極めて少ない”と考えている私にとっては、これは当然と思います。

私はこのスピーカーが随分気に入り、サラウンドスピーカーとしてメインシステムに組み入れることを決定しました。
これから購入される方は予め低域がネットワークで切られていることを考慮してシステムを組まれると良い結果が出せると思いますし、また最低レベルと思われるネットワークのパーツを交換したりするのも面白いと思います。