ある1枚のCDに収録されている、ある曲の、そのまたある1部分が十全に再生できるか否か。
これに拘るというのは決してせせこましいことではなく、それこそオーディオマニア的行為ではないでしょうか。
ボーカルの吐息の生々しさ、シンバルの質感、弦楽器の艶やかさ等々、誰にでも一つくらいは「これが出せないと良い音とは言えない」というようなこだわりまくる数秒間を持っているはず。
私にもそのような大切なディスクが数枚存在しています。
その中の1枚に中高域トランジェントチェック用として重宝しているものがあります。非売品なので紹介は割愛しますが、それはフルートの生録音ものです。
近距離で録音したものなのでフルートとはいえ強奏の迫力はなかなかのもの。
私にとってのこだわりというのは、そのフルートの強奏において”耳に突き刺さるような激しさが出るかどうか”ということです。
果たしてその部分が”耳に刺さるように”再生されることが変換機として正しいのかどうかは私には判断できません。ただ、私にはそうあって欲しい。ただそれだけなのです。
これまでいろんなスピーカーシステムでこのディスクを聴いてみましたが、ただ1度だけ確かに刺さるように再生したシステムが存在しました。
そのとき私は「ああウルサイ!」と思ってしまったのです。そのネガティブな感覚があまりに強烈であったが故に私にはそのように再生されることが真実であるかのように思えてしまったのです。あたかもそれは超低音に包まれたときの恐怖心にも似ています。
さてVifaのXT25の話です。上の図はfoobarのチャンネルディバイダ画面の1部です。スロープは1次から10次まで、もちろん周波数も自在にかつ瞬時に試すことができます。PCをeAR Master Oneに接続さえすれば実験準備完了。
で、いろいろ実験してみたのですが、出るのですよ。上記の突き刺さる音というのが。
それはクロスを低め(1.5kHz付近)に、スロープを急峻(4次以上)にとることで達成されます。スロープを2次程度にするとパルス性の低域が入ったときに若干歪むというか濁る感じになってしまいます。逆に2次で固定してしまうと歪みを感じなくなるにはクロスを3kHz付近まで上げなければなりません。
「Vifa XT25は-24dB/octで、かつ1.5kHz付近でクロスさせるべし。」そうすると
結構お値段数倍のTWを食っちゃうというか、唯一無二と言ってよい世界が出現するようです。
単体テストではDavisのTW26K2FもACCUTONのC2-12でも全然駄目でした。両者とも2kHz付近が下限のようで、土俵が違うかもしれないし、そもそも危ないですけどね。